ぽこぽこアートメモ - 2009
- [演劇]静かな落日
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何だか小津映画みたいだなあと思っていたら、主人公の広津和郎は「晩春」の原作者(「父と娘」)であると知り、おおなるほど。映画は監督のものだけど、舞台は違う。演奏会と同じく、まるまる生なのだから、本番に至るまでに、いろんな要素がかみあわないとうまくいかない。この作品は、脚本、演出、演技、舞台美術、全てが良質。脚本の吉永仁郎さんは、前に観た「きょうの雨、あしたの風」の脚本もされていると知り、ますます、ほお。他の作品も観てみたい。
出演:劇団民藝
2009-12-03 高岡文化ホールにて
- [美術]2009イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
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今年は、あこれいいなあという作品が、これまで観た中で最もたくさんあった。やはり、CGによる機械的な線よりも手描きの凸凹した線が好きなので、ということは、今年はそういう作品が多かったのかもしれない。一歩足を進めるごとに、それぞれの人が描く世界に入り込んだよう。人の持つ創造性の豊かさは無限なのだなあとつくづく思う。今年から作品につけられていた顔写真がなくなったのがちょっぴり残念。
2009-11-28 石川県七尾美術館にて
- [落語]志の輔のこころみ 其の二十六
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前座は志の彦「寿限無」。師匠登場。子供向けと思われている「寿限無」はホントは奥が深い噺で、欲張りすぎるとろくな事にならないという教訓がこめられているのだというようなこと、オバマさんと鳩山さんの話題、事業仕分け(必殺仕分け人)の話題などを、最近になくどっぷり富山弁で語ってから、一席目「猫の皿」。いってみれば江戸時代の仕分け人、はたき屋さんとも呼ばれていた古美術商が茶店の主人を騙そうとして、逆に見事に一本とられる噺。後半、三味線のおわら節があって、枕なしで二席目「帯久」に入る。それもそのはず一時間超の大作。どうも師匠のしんみり噺は、疲れて苦手。ちょっこりじくどいというか…。
2009-11-14 てるてる亭にて
- [音楽]プラハ国立歌劇場 アイーダ
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なんと4年ぶりのオペラだった。アイーダを観るのは二度目。白と金で統一された舞台装置と衣装。運命の人アイーダは全編通して黒い衣装、恋敵である王女はオレンジになったり青になったり。二言目には神、神、神で、全部神様のせいになってしまう。話題の西本智実さんの指揮が楽しみだったのだが、今晩の指揮はジョルジョ・クローチさんだった、残念。
2009-11-01 オーバード・ホールにて
- [落語]志の輔のこころみ 其の二十四
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前座はメンソーレ「たらちね、コンプレッサーの手品とあって、師匠登場。一席目、インフルエンザ関連の枕があって、本題は「バールのようなもの」。これは二回目。前回はかなりこてこての富山弁だったが今回はそうでもない。二席目、一席目よりもさらに短めの枕でさらりと本題に入る。「浜野矩随」は腰元彫りの噺。前にも聴いたことがあるのだけど、いつどこでだったかが思い出せない。テレビで観たのかなあ。そして前の時は母親が死んでしまったような気がしていたのだけど、たんなる思い違いか。間延びというのではないのだけど、ちょっと重たすぎるというか、こういうのあまり好きではない。二席とも大きめの劇場用の噺だったのは、月末に大きなホールで演るので、その予行演習?だったことを、最後にタネあかしされていた。
2009-10-23 てるてる亭にて
- [演劇]兄おとうと
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揃って東大を主席で卒業し、片や民本主義の思想家で政治学者、片や高級官僚にして凄腕の政治家(第三次鳩山一郎内閣の運輸大臣)と、思想的にはまったく正反対に見える道を歩んだ兄弟の物語。佳作が芸達者な俳優によりますます素晴らしい作品に。いつもの長丁場だったが、あまりそれを感じさせなかったほど。
出演:こまつ座
2009-09-17 高岡文化ホールにて
- [美術]第9回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2009
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回を追う毎にCGによる作品が増えていくような気がする。CGは、どれもぺらんとした感じがして好きじゃない。入賞作品は、なるほどすごいと思うのもあったけど、どうしてこれが入賞なのかと思えるようなのもあって、人の価値観は多種多様だな。
2009-09-13 富山県立近代美術館にて
- [落語]志の輔のこころみ 其の二十二
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前座は志の彦「真田小僧」、志の春「狸賽」。志の春さんの狸がかわいい。一席目、枕はもちろん総選挙で、いつにないマシンガントーク。どうやって、官僚が隠している金を暴くか民主と自民の攻防戦が見物だと。本題は「試し酒」。さげまでひたすら楽しめる。二席目、枕は、鶴瓶さんの話題。彼の人を引き寄せる「吸引力」がいかに凄いかという話の後で、「抜け雀」に入る。なぜか一文無しを引き寄せる吸引力を持つ宿屋の亭主が主人公のファンタジー。優しい気持ちになれる。
2009-09-05 てるてる亭にて
- [落語]柳家小三治独演会
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大入り袋がでた今回は枕が目玉の高座だった。親交の深かったフランク永井さんの追悼。ヒットはしなかったけれど、小三治師匠が一番好きだったという曲「公園の手品師」などをしみじみと唄われる。枕が主役になったときにされることが多いのかなあと思われるお得意の「小言念仏」で〆。もちろん爆笑。後半は、前半に唄いそびれた(わざと?)「公園の手品師」の三番からいきなりはじまり、最後は「野ざらし」。幽霊が出てくるが、怪談ではなく、面白可笑しい滑稽噺。師匠、今日は今まで見たなかで一番お元気そうに見えた。
2009-07-21 石川県立音楽堂 邦楽ホールにて
- [落語]志の輔のこころみ 其の二十
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先月に引き続きてるてる亭。落語を聴くにはほどよい大きさの小屋。なぜかするどい視線で立っている警備員だけが愉快な娯楽の場に違和感あり。今まで、志の輔師匠の高座は、新作だったり、朗読っぽいものだったりと、あまり普通でない噺が多かったので、なかなかなじみにくかったのだが、今回は、気軽にわははと笑える古典落語が二席。猿後家も面白かったが、大名房五郎が痛快。やっぱりこういうのがいいな。
2009-07-18 てるてる亭にて
- [落語]てるてる亭一周年記念 志の輔のこころみ 其の十八
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まくらは、いつもの時事問題をおもしろおかしくぽつぽつと。それをディープな富山弁でしゃべるので、たぶんこれは富山の会場限定で、そして富山県人にしか分からないであろうおかしさ。長いまくらの訳は、後の室井さんとの対談で明かされていたが、いつものお客さんとはかなり様相が違うので、何をしゃべろうか探っているうちに1時間近くたっていたとのこと。一席目「だくだく」。隣の浪人先生に描いてもらった家具や調度をそこにある「つもり」で暮らすはっつぁんの家に、目の悪い泥棒が入り、豪勢に見えた家具調度が絵であることにやがて気がつき、そこからはとった「つもり」になって、やがて目が覚めたはっつぁんとの「つもり」ごっこのドタバタ劇を繰り広げる。後半は、室井さんとの対談の後に、二席目「高瀬舟」。高座にかけるのは初めてという噺というか現代風の講談とでもいうのか。森鴎外の名作を師匠なりに解釈し語って聞かせる。これからも、てるてる亭では、初めてかける噺をやったり、ちょっとした実験場というか秘密組織というか、そのような場にしていきたいとのこと。
特別ゲスト:室井滋
2009-06-12 てるてる亭にて
- [演劇]三屋清左衛 門残日録~夕映えの人~
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社会の底辺に暮らす人々が主人公となることが多い中で、権力の中枢に居た人が主人公という、藤沢周平さんものではちょっと珍しい作品の舞台化。三屋清左衛は、目覚ましい出世を果たし、息子に家督を譲った後、悠々自適の日々かと思いきや、なかなかそうはいかず、また、長年引きずっていた葛藤や、武家社会への辟易とした思いなど、様々なものがぐるぐる渦巻き、かなりどろどろの激しい舞台。
出演:俳優座
2009-05-29 高岡文化ホールにて
- [音楽]マリア・ジョアン・ピレシュ ピアノリサイタル
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これまでコスモホールに出演した演奏家で、入善駅から歩いてきたのはピレシュさんが初めてとのこと。音楽は特別なものではなく、暮らしの一部、身体の一部という、いかにも常に自然体で暮らすピレシュさんらしい。
クラッシックの演奏会では、楽章間の拍手はしないのが原則だけど、今日はそれに加え、ピレシュさんの要望により曲間の拍手もしないでくださいとのことで、こういう演奏会は初めての経験。ショパンの最晩年の楽曲により構成された演奏を、何か重々しい儀式に参列しているような静粛な心持ちで聴く。
それなのに、後部座席に座った老夫婦が、音楽に陶酔しているのか?ひっきりなしに鼻をすすったり、細かい咳払いをしたりととても耳障り。そして最後の最後に、一番静かなところでハンドバッグをぱっかんと開けて何やらガシャガシャとしまい込み、最後のピアノの音と同時にバッタンと閉じるという、ほんと絞め殺してやりたいような人達であった。
出演:マリア・ジョアン・ピレシュ(ピアノ) パヴェル・ゴムツィアコフ(チェロ)
2009-05-10 入善コスモホールにて
- [落語]春風亭小朝独演会
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前座のひろ木さんはまだまだ。今日もあでやかな袴姿で小朝師匠登場。マクラは、先日浅草でやっていたのと同じネタがかなりある。源平盛衰記の一節「扇の的」。現代ではイケメン俳優が演じることの多い義経だが、実は140cmの小男で顔もまずく、故にカリスマ性がまるでなかったという設定で、合間に様々な脱線を織り交ぜ、爆笑につぐ爆笑。後半、ひろ木さんのへたな三味線の後、今度は着流し姿で師匠登場。怪談「牡丹灯篭」。ここから会場が暗くなったため、途中ですこし眠たかった。もちろんあちこちに笑いをちりばめつつも、じっくりと聴かせる噺。至高の芸をたっぷり堪能。
2009-04-24 石川県立音楽堂 邦楽ホールにて
- [落語]林家いっ平改め二代目林家三平襲名披露興行
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運の良いことに、夜に出演する予定だった扇橋さんが今日だけ昼の出演となり、久しぶりにあのふにゃふにゃと力の抜ける唄が聴けて嬉しい。今日はタコの唄ではなく、青い空の唄だった。柳亭市馬、三遊亭金馬、林家木久扇、鈴々舎馬風、林家ぺー、昭和のいるこいる、林家正蔵、春風亭小朝、林家正楽、林家三平。そうそうたる顔ぶれ。ひとりひとりの持ち時間があまりないということもあり、小話をつなぐ漫談的なものが多かった。三平さんは、華やかな船出にふさわしく、顔がきらきらと輝いて素敵だった。
2009-04-17 浅草演芸ホールにて
- [音楽]オーケストラ・アンサンブル金沢第254回定期公演
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ロシア出身のキタエンコ氏の指揮によるリムスキー・コルサコフの曲は、今まで聴いたアンサンブル金沢の演奏中、1、2位を争う出来だったように思う。「昔々」と語り出すヤングさんのヴァイオリンはじめ、各場面で、それぞれの楽器が素晴らしい響き。
出演:ドミトリ・キタエンコ(指揮) 黒瀬 恵(オルガン) 菅原 淳(ティンパニー)
2009-01-30 石川県立音楽堂にて
- [音楽]庄司紗矢香ヴァイオリンリサイタル
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予報以上の大雪という生憎の悪天候での演奏会となったが、嬉しいことに会場はほぼ満席で、もちろん終演後は満場の拍手。そのせいか、アンコールを予定していたよりも多く奏でられ、その後に予定されていたインタビュー時間が短縮されるというハプニングもあったが、全体に素晴らしい演奏会だった。ほんとうに華奢な身体のどこからあんなダイナミックな演奏が生まれくるのか。ひとたび演奏を始めると、まるでリングに上がったボクサーか獲物を狙うハンターのように集中力の塊に変身する。
それだけに、演奏後の笑顔は、ほんとうに神々しいまでに美しい。インタビューの時は、演奏するときよりもよほど緊張しているようで、小柄な身体がますます華奢に見える。といっても、とても25歳とは思えない落ち着きで、熟考しつつ自分の気持ちや考えを自分の言葉で話され、世の中にはこんな桁外れの人もいるのだなあとつくづく思わずにはいられない。
出演:庄司紗矢香・イタマール・ゴラン
2009-01-12 入善コスモホールにて