ぽこぽこアートメモ - 2008
- [美術]2008イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
-
今年も楽しい作品が勢揃い。主賓のアイナール・トゥルコスキィさんの作品はやはり秀逸で、それからとても気に入ったのが、大坪紀久子さんという日本人女性の作品で、バランス感覚が抜群だった。ほぼ毎年観に来ているけれど、いつも気に入るのは日本人女性の作品だなあ。
2008-12-06 石川県七尾美術館にて
- [講談]神田山陽独演会100連発カヤの中
-
開演10分前に会場に到着したものの、やけにロビーがひっそりしているので、ちょっぴり心配しながらホールに入ると、いつも舞台がある場所に大きな半透明のモンベルのテントが設営されていて、そのカヤに見立てたテントが本当の会場だった。カヤの中ってそういう意味だったのねと、入口で座布団を受け取って適当な場所に座る。中は100人も入らない大きさで、まさに膝つきあわすような感じで、どのお客さんからも山陽さんが間近に見え、山陽さんもすべてのお客さんにまんべんなく目配りしつつ語られる。
いつもテレビで観ている「面白いおじさん」の顔はほんの一面で、講談のこと、農業のこと、漁業のこと、食べもののこと、教育のこと、世の中のありとあらゆることに疑問をもち、するどく突っ込み、ズバリと講釈される。講談師というよりはまさに講釈師。休憩(といっても山陽さんはそのまま席にいて、あれこれ話をしつつ、そしていつの間にか後半に突入)をはさんで2時間半弱。マシンガントークの合間?に自作講談が3つ。「レモン」は、台所で使われなくなったりあるいは一度も使われることのないまま箱に押し込められた道具たちが交わす会話が可笑しく哀しい。山陽さんは、時々、男はつらいよの寅さんに見える。「鼠小僧外伝」は稀代の泥棒鼠小僧とサンタクロースが出会う奇想天外なファンタジー。「ナウルの河童を巡る物語」はカヤの外に青白い光がともりまるで海の中にいる感覚で、そのうえ山陽さんが「お皿に水をやる時間です〜」と噴霧器でみんなに水を撒いて回る。みんな河童になって講談を聞く。この講談はまだ続きがあるんじゃないだろうか。
今度の高岡公演で90何番目だとのことで、100までいったら打ち切りにすると仰っていたが、本当に本当なんだろうか。あまりに勿体ないなあ。
2008-11-12 高岡市生涯学習センターホールにて
- [落語]桂小米朝改め五代目桂米團治襲名披露公演
-
前半は、桂吉弥、桂団朝、三遊亭楽太郎、桂ざこばという贅沢な顔ぶれで門出を祝う。中入のあと、襲名の口上があり、米朝さんもしっかりと口上を述べられる。そして後半、桂南光の後に、いつもよりちょっぴり緊張気味の米團治さんが登場。どんなに衰えても、やはり米朝さんは一門の核であり、上品な芸風が隅々まで行き渡っている。七光りでも何でもいいから、その品を受け継ぎ、後世に伝承していってほしいなあ。
2008-10-27 新川文化ホールにて
- [音楽]オーケストラ・アンサンブル金沢第248回定期公演
-
今回に限り、なぜか1階の特等席からの鑑賞。三階の天井席とは客層がまるで違うので、こそばゆい。グリーグのピアノ協奏曲は小山実稚恵さんの迫力ある演奏がぴったりはまっていた。後半はベートーベンの田園。どの作曲家よりも均整の取れた、すべてを兼ね備えた豊かな響きにうっとり。キタエンコさんの大きな背中が、いつにもまして頼もしく見えた。
2008-10-09 石川県立音楽堂にて
- [演劇]東京原子核クラブ
-
以前、とても面白かった「赤シャツ」と同じマキノノゾミさんの作品なので楽しみにしていたら期待通りだった。長丁場だったのが珠に傷だったが、脚本も演技も演出もすべてよかった。ノーベル賞を受賞した朝永振一郎氏がモデルの演劇。なんと、直後にノーベル賞の物理学賞を日本人3名が受賞との報が入り、あまりの偶然に心底驚いた。
出演:俳優座劇場
2008-10-02 高岡文化ホールにて
- [落語]柳家花緑の落語是見
-
花緑さんの独演会。前半は小話を交えた軽妙なおしゃべりの後に落語「長短」。短気と気長な男のかけあいが楽しい。もひとつ落語「粗忽長屋」。隣通しに住んでいる粗忽者と粗忽者が登場し、どんどんどんどんこんがらがっていく滑稽噺。後半、落語というものについて私見を交えつつ面白可笑しく語られる。そして最後にふたたび落語「笠碁」。他に打つ相手がいないほどへぼ同士の囲碁仲間であるご隠居さん二人がケンカ別れして、最後に仲直りする噺。花緑さんは顔の表情がとても面白い。図ったようにぴったり2時間で終演。
2008-09-27 高岡市生涯学習センターホールにて
- [音楽]クレメラータ・ムージカ&ギドン・クレーメル
-
出来たてほやほやの赤羽ホールにて初めて聴く演奏会。室内楽向けのこぢんまりとしたいいホール。各曲ごとにクレメラータ・バルティカの中から数人が奏者となる。舞台すぐ横の袖席からの鑑賞で、そこはかとない憂いを称えた表情で演奏する楽団の人たちも、間近に見ると時にはうっすら笑みを浮かべつつ他の楽団員と視線を交わし、そんな様子が手に取るようによく見えてとても面白かった。
2008-09-20 北國新聞赤羽 ホールにて
- [音楽]北欧物語 ギドン・クレーメル&クレメラータ・バルティカ×井上道義&OEK合同演奏会
-
天井席より双眼鏡から覗いて見るクレーメルさんは、袖無しの背広のように見えるちょっと変わった服を着て、以前にはなかった口ひげをはやされ、ぐっと年寄って見えた。その分だけ、演奏は以前にも増して円熟し、この上なくまろやかな音色が脳に心地よく響き渡る。
OEKの演奏を聴くと、やはり岩城さんの姿が胸いっぱいに広がる。そう思うと、いつもさっそうとして躍動感にあふれた(ほとんど踊っているような)指揮をされる井上氏だけど、背負っているものの重圧は相当だろうなあ。
それにしても、ちょっと演奏時間が長すぎるなあ。
2008-09-18 石川県立音楽堂にて
- [音楽]アン・サリー「うたのおくりもの」
-
デビューの頃から耳にしていたアン・サリーさんの歌声を、生で聴く初の機会。富山には初来訪とのことで、昨夜滞在した宿で螢を見ていたく感動されたもよう。前半は、ギターの笹子さんと二人での演奏。後半は、夫さんを含むバンドと一緒の演奏。ミュージシャンというと、そこはかとなくすさんだ感じが身についているヒトが多いなあと今まで思っていたのだけど、今回のメンバーにはそんな退廃的な感じはみじんもない。そして会場のお客さんもまた、ある意味でクラシックの観客よりも上品な感じで、ヤンキー率の高い富山でもこんな人達がたくさんおられたんだなあとしみじみ感動を覚える。親子券というのもあって、ちっちゃい子供連れの若い親子もたくさん来場していたのだが、暴れていたのはごく僅かの子供だけで、あとはじっと黙って聴き入っていたり、時折、心地のよい笑い声を発したり。なんとも和やかな雰囲気に包まれていた。お医者さんで美人で歌が上手でと何拍子も揃っているのに、ぜんぜん嫌味な感じのない、ごく自然体の歌いっぷりに酔いしれた夜。
2008-06-28 福野文化創造センターヘリオスにて
- [音楽]樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
-
力強い演奏に大人っぽさが加わり、ぐいぐいと引っ張られていく心地よさといったらない。それなのに客席はたった三割ぐらいの入りで、あまりにも失礼ではないか。
2008-06-11 石川県立音楽堂にて
- [演劇]足摺岬
-
生きることに絶望した主人公が、自殺をするつもりで母の故郷を訪れたが、その地で出会った人々の暖かさにふれ、最後には生きる希望を見出す。しかし田宮虎彦さんの原作は、もっとずっと暗い結末。作者自身も結局最後には自殺を選んだ。演技も演出も素晴らしい分だけ、何故この作品だったのかがよく分からず。
出演:劇団俳優座
2008-06-08 高岡文化ホールにて
- [演劇]嫁も姑も皆幽霊
-
脚本も演出も役者さんもみんなよい。質の高い喜劇は最高。
出演:劇団NLT
2008-04-19 高岡文化ホールにて
- [音楽]天沼裕子と若き音楽家たち vol.1 韓流チェリスト ユン・ソンを聴く
-
小さめのホールでの小粋な演奏会。暖かくやさしいチェロの音色に包まれてここちよくなる。合間の天沼さんのおしゃべりも楽しい。
2008-04-11 石川県立音楽堂にて
- [落語]立川志の輔独演会
-
前座、手品ときて、師匠登場。時事問題に関するつぶやきのような枕があって、前半は「バールのようなもの」。調べてみると、清水義範氏の短編小説が元になっているとのこと。こてこての富山弁によるはっつぁんとご隠居の会話がおかしい。中入りの後に、後半は「ねずみ」。伝説の彫り師である左甚五郎が登場する噺で、かなりの長丁場だった。志の輔さんの落語は、なぜだか聴いているとちょっぴりお尻がこそばゆいような気がする。小三治さんや扇橋さんのように粋ではないし、小米朝さんのように登場するだけで後ろに後光が射しているようなオーラもないけれど、いかにも富山県人らしい、富山で生まれ育った人にしか出せない地味さが何ともいえない持ち味になっている。
出演:立川志の輔
2008-02-21 富山市婦中ふれあい舘にて