北国新聞 2002年10月22日 朝刊より


門徒戸数が減少し、寄付金集めで頭を悩ませる寺院が能登地区で目立っている。過疎化の波が信仰の世界にも及んだ格好で、輪島市の真宗大谷派末寺では、本山の東本願寺(京都市)が徴収した「懇志金」の完納ができず、ついには本山と能登教務所(七尾市)を相手に訴訟を起こすまでになった。
同じ宗派でも金沢地区などとは制度の違いや門徒の増減で差もあり、深刻さを広げている。


 裁判になっている寺院は輪島市河井町、同派正覚寺=山吹啓住職(四七)=。
半額近い未納金に関し、「債務不存在確認」を求めて金沢地裁七尾支部に訴えを起こした。
 懇志金は一九九八(平成十)年の「蓮如上人五百回御遠忌」の記念事業で九四年から四年間、本山が全国三十教務所を通じ末寺から集めた。
正覚寺への依頼額は四百五十六万八千四百円。
うち半額近い二百四万七千円が未納で、能登教務所から毎年督促状が届いた。
このため、昨年、七尾簡裁に調停を申し立てたが、不調に終わった。
 懇志金の割り当ては各寺の門徒戸数を基準にしている。
能登教区では、明治期の資料を戦後、八掛けして運用。
正覚寺の場合は三百五十二戸から二百八十二戸となった。
しかし、山吹住職は門徒戸数は現在百八十六戸に過ぎず、寺の努力では限界があるとしている。
 関係者によると、門徒戸数の減少は過疎化が進む能登で共通の悩みとなっている。
教区の下部組織である組内でも対策に頭を痛めているケースが多いという。
 例えば、寺の実態に即し、門徒戸数の減少を次々申告をすれば、組全体の連帯責任となり、逆に一力寺当たりの負担(懇志金)が重くなるとのジレンマを抱える。
長引く景気低迷で、門徒にも遠慮がちとなり、僧職の本分とされる「宗門の護持」とのかっとうに悩まされる構図である。
 山吹住職は「門徒の減少で払いたくても払えない寺の実情も理解してほしい」と、門徒戸数の見直しを迫る。
これに対し、能登教務所側は答弁書で、教務所は真宗大谷派の地方執行機関にすぎず、訴えは宗教団体の自治によって決定すべきで「法律上の訴状」にあたらず不適法だとしている。
 適正化委員会などで対策を協議してきた能登教務所の大町慶華所長は「昨今は門徒を定義し、把握すること自体も難しい。
過疎化に伴う見直しは必要だが、懇志金を減らすわけにもいかない」と打開策を模索している。
 東本願寺の徳永誠総務部主事は「門徒戸数が適正でなければ見直しの声が出てもおかしくない。
教区内の協議で解決を図ることを望みたい」としている。




本山御依頼金 | 週刊新潮 | 寺門興隆
裁  判 | 御遠忌・修復懇志金 |  調  停
拝啓 宗務総長殿 | 質問状と回答
請願書(1994年)  | 近江第1組本山経常費調停

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