ビートルズに近づくためには、どうしても避けて通れないのがサウンド面からのアプローチです。最初にお断りしておきますが、僕はその道の専門家ではなく、楽譜もタブ符無しでは満足に読めません。しかし、長年、ビートル少年をやっている端くれとして感じるところを述べさせていただきます。ビートルズの演奏自体は天賦の才能を持ったポールを除き確かに決して上手とは言えず、超高度なテクニックを要求するものもありません。これは、スタジオ録音のように取り直しが効かないコンサート実況録音やリハーサルが収められた多くの海賊盤や、最近出たアンソロジーシリーズでも十分証明されています。これなら俺だってできるぞと諸兄も思われるでしょう。それ故バンドを組んでも、ビートルズの曲を皆が知っているピアノのバイエル(教則本)程度の通過点としか考えず、よりテクニカルな面が強調できる方面へ走ってしまう傾向があります。しかし、彼らの奏でるのは決してビートルズではなく、ビートルズらしきものなのです。一番多いのが、エフェクターの部類で完全武装し、アレンジやアドリブのオンパレードで固められるものです。ビートルズのサウンドはギター一本の生音でもビートルズに成り得るのです。また、プロのコピーバンドも然りで、妙に感傷的で、あまりにも音が綺麗で洗練され過ぎていて、どこかが違うなといつも感じてしまいます。(青春酒場で聞き流すBGMには良いのですが・・・。)ビートルズサウンドの神髄は生音中心の荒削りでスリリングなジョンとジョージのギターサウンドとポールの天才的なベースランニング、リンゴの生真面目なリズム職人魂、そして何と言ってもエモーショナルですばらしいハーモニーが一番の楽器になっているところなのです。実は一番やさしくて一番難しいのがビートルズなのです。