ぽこぽこ映画メモ - 2008
- おくりびと / 2008 / 日本
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いやはや完成度の高さに驚いた。主役の本木さんはもちろん、脇役の人もみんなそれぞれに素晴らしい。物語の展開もテーマも、人生の核心をついていて、笑えて泣ける最高の映画だった。しかし、日本の若い女優さんはスリムを通り越して、完全に痩せすぎで、どうしてだろうなあと思う。
2008-11-03 ファボーレ東宝にて
- しあわせのかおり / 2008 / 日本
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金沢ロケの映画。いかにも金沢の街角にありそうな中華料理屋さんが舞台となっている。物語の中心となる厨房が質実剛健でよい。人一人がまるで無駄なく動ける空間は、隅々までピカピカに磨き込まれており、どっしり重い中華鍋と飴色のつやを持つ大きな蒸籠の存在感がなんともいえない。欲を言えば、展開を後30分詰めてもらえると、間延びしなくてもっといい作品になったのになあ。
2008-11-01 イオンシネマ金沢フォーラスにて
- チェブラーシカ / Чебурашка / 1969 / ロシア
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オレンジの箱の中に入っていた、どこからきたのか自分が何なのかまるで分からないチェブラーシカ。動物園で働いている(この設定がそもそも楽しい)ワニのゲーナたちとのユーモラスな交流に心が温まる。アコーデオンの哀しい響きがまたなんともいえず。
2008-10-18 フォルツァ総曲輪にて
- 赤い風船・白い馬 / Le Ballon Rouge・Crin Blanc / 1956・1953 / フランス
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最初に白い馬。主人公の少年がかっこよすぎる。まるで未来少年コナンのよう。純真な少年の心を表現するには白しかない。赤い風船は、少年が風船と友達になるファンタジー。ラストが最高。昔よく空を飛ぶ夢を見たけれど、飛ぶと言うよりはふわふわと浮かんでいるような感じだったのを思い出した。
2008-10-18 フォルツァ総曲輪にて
- オーケストラの向こう側 フィラデルフィア管弦楽団の秘密 / Music From The Inside Out / 2004 / アメリカ
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舞台以外での楽団員達の日常や心情を丹念に追っていく。ソリストを目指していたが、中途で挫折し、やがてオーケストラの中で奏でることの素晴らしさを見出したコンサートマスター、ほんとはジャズをやりたかった人、ラテン音楽が大好きな人など、楽団員はまさに百人百様。そんな生まれも育ちも様々な人々が、100人余りも集って一つの音楽を奏でる。それぞれ違う境遇で生まれ暮らしているけれど、音楽を愛する気持ちは皆共通しており、その思いによってすべてが結びつき、一人では生み出せない音を生み出していく。
2008-08-15 金沢シネモンドにて
- 基礎訓練 / BASIC TRAINING / 1971 / アメリカ
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新兵がプロの兵隊になっていく過程を、海兵隊の訓練模様を通して、時にはユーモラスにたんたんと記録したドキュメンタリー。たった2ヶ月足らずの訓練のうちに、若者達の心がすっかり軍隊に染まっていく。それは、何度も出てくる行進のシーンに象徴されている。全ての足並みが揃った時に、各自の個性や理念は存在しないものとなる。訓練途中で、ケンカをしたり怠けたりして懲罰を加えられる若者は、普通の社会では人としてごくまともな考えを持っているのに、軍隊においてはたんなる厄介者として扱われる。そういうことを、良いとか悪いとかではなく、たんたんと映しだす映像が強烈だ。
2008-08-15 金沢シネモンドにて
- さよなら。いつかわかること / GRACE IS GONE / 2007 / アメリカ
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いかにもアメリカらしいロードムービー。父は、突然の妻の死を受け入れることが出来ず、ふぬけのようになりおろおろするばかり。それに対して、娘達は、父のように横向きになることなく母親の死というものにまっすぐ向き合い、受けとめる。テーマも撮り方も全体に新鮮味に欠けるというか、なんかどこかで観たことあるような気がした。同じように戦争の犠牲を描いたロードムービーの「ランド・オブ・プレンティ」は、やはり秀逸だった。
2008-08-31 フォルツァ総曲輪にて
- 歩いても 歩いても / 2008 / 日本
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「誰も知らない」同様に、「人の暮らし」を慈しむように丹念に撮っている。ヒトの心の機微をこれ以上うまく表現することはできないんじゃないだろうか。「フツー」が鍵言葉となっており、フツーの大人にもフツーの子供にもそれぞれに心に抱えているものがあって、それらがじわじわ絡み合い、ときにはぶつかり、ときには寄り添う。
2008-08-15 金沢シネモンドにて
- 崖の上のポニョ / 2008 / 日本
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すべて手描きによる作品とのことで、なるほど素朴な線がなんとも言えない味を出している。主人公が5歳の少年とあって、5歳の子供にあわせた目線で物語が展開する。ぽにょの母親だけがなんとも違和感のある美女で、なんかちょっとどうだろうと思った。全体に緻密な構成によって作られた作品ではなく、何となく思いつきで作っていったらこうなった、みたいな印象を受けた。
2008-08-13 ワーナー・マイカル・シネマズ高岡にて
- 胡同の理髪師 / 剃頭匠 / 2006 / 中国
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映画に先立って高野悦子さんの講演がある。定番の深紅のスーツで登場された高野さんは、昨年、盲腸炎に罹り、入院とその後の養生のためほとんど一年間の仕事を棒に振られたのに、この4月の映写会に合わせるかのように蘇ることができたのだと、理知的な雰囲気はそのままにより物静かな口調で語られる。岩波ホールの創設期とその後の歩みにおいて、まるで意図しないのに何故か節目に中国映画を上映してきたことについてや、自身の出生地である中国と両親の出身地富山との、見えない所で繋がっている運命のようなものをこの頃しきりに感じるといったお話しなどを、とりとめなく話される。
胡同(フートン)では、日本の江戸時代における長屋のような佇まいや人情が、つい最近までそのまま営まれていた。しかし「胡同のひまわり」でも描かれていたように、都市の近代化に伴って完全にやっかいものとなった胡同の存在は、北京オリンピックを前に、解体が急ピッチで進み、今や風前の灯火となっている。押し寄せる近代化の波には、全く抵抗手段の持ちようもない。仮に、その外観や建物が保護されたとしても、そこに住む人々の「暮らし」が保存されることはないだろう。
主演俳優がついぞみつかならくて、結局本人が主役を演じることになってしまったというチンおじいさんは、演技の必要などまるでない、そこにいるだけで絵になるお祖父さん。胡同でのチンさんの暮らしをフィルムに焼き付けただけでも意味のある作品。
2008-04-13 黒部市国際文化センターコラーレにて
- 潜水服は蝶の夢を見る / LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON / 2007 / フランス=アメリカ
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カメラは彼の唯一動く目となり、周囲を見つめる。つまり観客は彼の視点を追体験する形になる。意識ははっきりしているのに、自分の身体が自由にならない、気の狂いそうなもどかしさがぼんやり理解できる。そんな状況の中で、一冊の本を書き上げてしまった主人公の強靱な精神力にただ敬服するばかり。
2008-03-29 富山シアター大都会にて
- サラエボの花 / Grbavica / 2006 / ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=オーストリア=ドイツ=クロアチア
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容赦ない暴力と戦争の悲惨さを現実そのままに描いていた「パーフェクト・サークル」を観たときの衝撃を思い出した。映画は、内戦中に男達が無惨に殺されていったのと同じくらいの、その後の女性達の苦しみを描く。でも、私はパーフェクト・サークルは女性なくしては成り立たないと思う。というよりは、女性は生まれながらにパーフェクト・サークルなのだ。この世の中の男が、いつになったらそのことに気づき目覚めるのか。
2008-03-23 福井メトロ劇場にて
- ONCE ダブリンの街角で / ONCE / 2006 / アイルランド
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灰色にいぶされたようなダブリンの街は、何だか北陸と似ていて、静かな波が漂う海の景色もどことなく富山湾を見ているよう。そんな親近感のある街角で繰り広げられる物語にいつか自然と入り込んでいた。聴くほどに切ない歌声とギターの音色がじわじわ心に沁みてくる。そしてやっぱり、女性の強さがここにもある。
2008-03-23 福井メトロ劇場にて
- ガチ☆ボーイ / 2008 / 日本
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記憶障害というものが実際にどんなものなのか全然知らないのだけれど、生きる意味を根底から奪ってしまうものであることは想像に難くない。そんなどうにも重いテーマと青春のほとばしるエネルギーを、肉と肉がぶつかりあうプロレスを通して、鮮やかに描き出す。うちに閉じこもりがちな日本映画の枠を気持ちよく突き破ったとびきりの傑作。
2008-03-22 高岡TOHOプレックスにて
- この道は母へとつづく / Italianetz / 2005 / ロシア
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ワーニャはひたすら母を求めて歩く。降りかかる様々な困難などものともしない。純粋無垢な幼い瞳でまわりを見つめ、生まれながら身につけている本能によって、とっさにありったけの知恵を絞って、間一髪で窮地を脱する。子供達にわざとらしい演技がまるでなく、ごく自然なのがとてもよかった。
2008-03-16 フォルツァ総曲輪にて
- 僕のピアノコンチェルト / Vitus / 2006 / スイス
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天才少年の葛藤を、美しいピアノの調べにのせて描く。人生の達人であるおじいちゃんに支えられ、両親の深い愛に包まれつつ、やがて少年は自らの足で自らの意志で人生を歩き始める。それは天才であろうがなかろうが関係なく、自ら人生を選ぶことは誰もが持つ権利であって、たとえ親でも侵すべからざるものなのだ。
2008-03-11 フォルツァ総曲輪にて
- ペルセポリス / Persepolis / 2007 / フランス
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版画のようなアニメーション。白黒の素の線が、縦横無尽にのびやかに動き、無限の表現を生み出す。マルジの祖母の科白がいい。「バカなやつらに傷つけられても相手が愚かだからと思えばいい。そうすれば仕返しをせずに済む。この世で恨みや復讐ほど最悪なものはない」。
2008-01-19 金沢シネモンドにて