ぽこぽこ映画メモ - 2007
- 題名のない子守歌 / 2006 / イタリア
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どことなく寂しげな陰影を持つ街トリエステを舞台に、前半はひたすら謎に包まれた展開で、徐々に事件の秘密が解き明かされていく。
2007-12-22 金沢シネモンドにて
- いのちの食べかた / 2005 / オーストリア・ドイツ
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説明は一切なし。どこの国とも分からない。食糧が生産され、収穫され、加工されていく現場の様子がたんたんと映し出される。工場のベルトコンベアーの上を流れていく農産物や牛や豚や鶏は、ほとんど部品の一部のように見えるが、まぎれもなく生きている「いのち」なのだ。ヒトはなんと罪深い生き物なんだろう。
2007-12-21 金沢シネモンドにて
- 陸に上った軍艦 / 2007 / 日本
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人間が人間扱いされない軍隊の歪んだ世界を、最も下層にいた兵士の眼を通して描き出す。上官たちは、戦争が終結したとたんに報復を恐れて一斉に逃げ出したと言うのだから、彼らにも、自分たちが異常なことをしているという自覚はあったということか。
2007-11-03 金沢シネモンドにて
- シッコ SiCKO / SiCKO / 2007 / アメリカ
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今回もムーア監督の快進撃が続く。保険会社と医療機関と政府の癒着のからくりを解き明かし、なぜアメリカには国民皆保険が成立しないのかをとことんまで追求していく。自らが先頭となり、身体をはっているところが、ほんとにすごい。
2007-10-28 ファボーレ東宝にて
- 見えない雲 / DIE WOLKE / 2006 / ドイツ
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映画としてはあまり出来がいいとはいえない。とても重要性の高いテーマだけに、もうちょっと描きようがありそう。井上ひさしさんは改めて素晴らしいなあと思う。しかし、我先に逃げようとする人々はとてもリアルで、一瞬にして社会の秩序を失わせてしまう原発の怖さがよく伝わってきた。
2007-08-25 フォルツァ総曲輪にて
- 天然コケッコー / 2007 / 日本
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やわやわゆるゆる。耳障りのいい、舌触りのいい、手触りのいい、今の日本の若者社会の一端を映し出す。つくりものなんだけどね。
2007-08-17 京都シネマにて
- ヘイフラワーとキルトシュー / HAYFLOWER & QIILTSHOE / 2002 / フィンランド
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いかにも北欧らしい色彩が画面いっぱいに溢れた、コメディ仕立ての楽しい作品。だけど筋立てやテーマは実にしっかりしている。どこまでも無邪気で我が儘な妹としっかりもののお姉ちゃんという姉妹に、何かとだらしない両親、さらに周囲には、親切なんだけどへんてこりんな近所のおばさんや、どうにもしまらない警察官たち、という変な大人ばかり。どうも身近な状況に思い当たるような気がして…。
2007-03-31 フォルツァ総曲輪にて
- 明日へのチケット / TICKETS / 2005 / イタリア=イギリス
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いくつもの国境を超えながら走る国際列車の中で、様々な言語を話す乗客達が織りなすドラマを、三人の監督が鮮やかに見事に描き出した。列車に乗り込んだところから映画が始まり、降りたところで映画も終わるという、全編を通してほとんどが列車の中でのシーンなので、いつしか自分も電車に揺られている乗客の一人になったような気分で観ていた。とりわけラストが痛快で、観後感がとてもよかった。
2007-03-21 フォルツァ総曲輪にて
- はなればなれに / BANDE A PART / 1964 / フランス
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ゴダールの日本初公開となる作品。映像と音楽が、ジャズ演奏のように交互に掛け合いながら、展開していくのが楽しい。ルーブル美術館の中を駆け抜けたり、1分間の沈黙ゲームがあったり、あちこちに悪戯のような遊びがちりばめてある。
2007-03-17 金沢21世紀美術館シアター21にて
- NARA:奈良良智との旅の記憶 / 2007 / 日本
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奈良さんは、製作活動以外のことにはまるで無頓着。生活におけるこだわりなんてものは一切ない。着る物はTシャツかトレーナーにジーンズ、食べる物はその辺で適当に。とにかく全精力を製作に注いでいるのだ。独特の光が宿る眼や、訥々と青森の方言で話す口ぶりから、誠実な人柄が伝わってくる。彼の作品は、孤独の中でとことんまで自己を見つめ、わずらわしい人間関係や物欲も含めて、余分なものは一切身につけず、その結果生み出されてきていた。それが、ある日、友と出会い、共同製作するようになる。やがて、仲間はどんどん増え、ついには故郷の人々なども巻き込んで大がかりな作品を作り上げるに至る。昔、孤独な頃に描いていた絵はもう二度と描けないだろうけど、そのかわり今は、昔は思ってもみなかった作品を創っている、と語る。今後、その作風がどんな風に変化していくのか興味がつきない。
2007-03-11 金沢シネモンドにて
- 佐賀のがばいばあちゃん / 2005 / 日本
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ちょっと前評判に惑わされた感じ。全体に作り物めいた感じが抜けきらない。映画というよりはテレビドラマを観ているような感じだった。
2007-03-02 ワーナー・マイカル・シネマズ高岡にて
- 母たちの村 / Moolaade / 2004 / フランス・セネガル
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一夫多妻制、絶対的な権力を持つ村長や長老をはじめとする男達、唯一の楽しみであったラジオの没収、そして野蛮きわまりない割礼の手術、アフリカの小さな村で、現状打破のために立ち上がった母たちの力強い歌声。それにしても、文化の根底に流れる気質というか何というか、あまりにも容赦がないことに驚かされる。日本とは全く違うんだなあとつくづく感じた。
2007-03-02 金沢シネモンドにて
- 世界最速のインディアン / The World's Fastest Indian / 2005 / ニュージーランド=アメリカ
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この映画は必ず映画館の大画面でみるべし。死の危険と隣り合わせで疾走するオートバイの迫力が、画面を通してぐんぐん伝わってくる。ニュージーランドの小さな田舎町で、ただひたすら「世界最速を出すこと」に人生をかけ、生活のすべてを費やして暮らしている老人マンローが、ある日とうとうアメリカのボンヌヴィル塩平原目指して出発し、様々な困難に遭いながらも、それを自らの智恵と人々の善意で乗り越え、ついに塩平原にたどり着く。マンローはどんな人の心にもすっと入り込んで、あっという間に魅了してしまう。その愛すべき人柄をアンソニー・ホプキンスが好演。
2007-02-25 ユナイテッド・シネマ金沢にて