ぽこぽこ映画メモ - 2005
- らくだの涙 / The Story of the Weeping Camel / 2003 / ドイツ
- モンゴルの大地で、簡潔この上ない昔ながらの暮らしを営む大家族を中心にした「物語風ドキュメンタリー」(登場人物の誰も演技などせず素のままで、それでいてきちんと物語りになっているという不思議な作品)。産み落とした子供に愛情を示すことの出来ない母らくだに、唄を歌い、馬頭琴を奏でると、なんとも不思議なことに、母らくだは涙をぽろぽろ流し、子供に愛情を示しだすという、これまたライフ・イズ・ミラクル。素晴らしいドキュメンタリーだった。
2005-11-27 富山松竹にて
- ライフ・イズ・ミラクル / Life is a miracle / 2004 / フランス、セルビア=モンテネグロ
- 全編に渡って、スコーンと突き抜けた、楽しくて賑やかなそれでいて哀愁漂うメロディが奏でられ、犬に猫にロバにガチョウにカラスにそしてユニークな人間たちに、と実に個性豊かな役者たちが次々に登場し、なんともエネルギッシュで、戦争の悲惨さもユーモアで吹っ飛ばしてしまうかのような改作。シネモンドで何度も予告編を観ていて、是非観たいと思っていた作品だったけど、さらに予想を上回る面白さに、心からの拍手喝采。
2005-11-27 富山松竹にて
- 永遠のハバナ / Suite Habana / 2003 / キューバ=スペイン
- 映画三昧の二日間(合わせて10時間以上)の〆の映画。ハバナの今を生きる人々を、監督の優しい視線が包み込む。エネルギッシュなハバナの街の、夜明けから晩までを、カメラは、様々な人々にそっと寄り添いながら、各人の一日を描き出す。なんと心地のよい時間の流れ。私は、ハバナの街角で昼寝している気分になって、いつしか、ほんとにうつらうつらと眠っていた。
2005-11-19 金沢シネモンドにて
- ダンシング・ハバナ / DirtyDancing2 : HavanaNights / 2004 / アメリカ
- キョーレツなラテンのリズムが心地よい。ダーティ・ダンシングの続編(?)とのことだけど、導かれて次第に上手になっていった前作とはまた違って、今回は若い二人が切磋琢磨しあって、お互いに羽化していく感じがとてもよかった。あんなダンスが出来たら、チョー気持ちいいだろうなあ。
2005-11-19 金沢シネモンドにて
- 輝ける青春 / LA MEGLIO GIOVENTU / 2003 / イタリア
- 今まで観た中でも最長の6時間映画。前半は確かに面白かったけど、後半はほとんどニコラが出ずっぱりで、やや単調な進行。果たして6時間続けてやる意味はあるかしらん。マッテオと、一つ前にみた「亀も空をー」のアグリンの死の状況がよく似ていて、ダブってみえた。終わって、立ち上がると足元がふわふわしていた。やっぱり長い映画は苦手じゃ。映画は90分に限る。
2005-11-18 金沢シネモンドにて
- 亀も空を飛ぶ / TURTLES CAN FLY / 2004 / イラク・イラン
- ユニークなタイトルとは裏腹に、戦火に生きる子供達の過酷で悲惨な状況をリアルに描きだす。地雷や銃などの武器が、当たり前のように生活の中にあり、親はなくても、足や腕を地雷で失っても、なお逞しく生きる子供達が、切ない、やりきれない。こんな真っ暗闇の状況でも、希望の光は必ずあるんだよという監督の語りかけが聞こえてくるような気がした。
2005-11-18 金沢シネモンドにて
- アワーミュージック / NOTRE MUSIQUE / 2004 / フランス・スイス
- 映画を観ている間中ずっと、「君は、楽な方へ楽な方へと流れる生き方をしているんじゃないか?」「考えることを放棄しがちじゃないか?」と問われているようで、背筋を伸ばして観ていた。
2005-11-14 金沢シネモンドにて
- 旅芸人の記録 / O Thiassos / 1975 / ギリシャ
- 戦争と不安定な政情に翻弄されながら、ギリシャ全土を巡演する旅芸人の一座の波乱に満ちた道行きを、描いている。撮影技術などの細かいことは分からない私にも、とんでもなく長回しのショットで映画が構成されていることはよく分かった。4時間に及ぶ大作。
2005-11-06 高岡TOHOプレックスにて
- メゾン・ド・ヒミコ / 2005 / 日本
- 前作「ジョゼと虎と魚たち」と同じく、土台となる作品を上手に脚色してある。田中泯さんの圧倒的な存在感はさすが。しかし、今回はほとんどベッドに寝ている設定で、舞踏家の泯さんを観ることができなかったのは残念。「たそがれ清兵衛」のふんどし姿は真骨頂だったなあ。
2005-10-30 ユナイテッド・シネマ金沢にて
- トントンギコギコ図工の時間 / 2004 / 日本
- 小学生の頃、一番好きだったのが体育と図工の時間だったなあと、懐かしく思い出しながら、観た。ウチノ先生は素晴らしい。低学年の子供達に、遊びながら釘を打たせ、ノコギリの使い方を覚えさせる。子供達は、高学年になると、それらの基本技術と想像力と工夫する才能をすっかり身につけていて、スゴイ作品を創り出すんである。手持ちカメラで撮ったようなあまり良いとはいえない映像に、いつしかしっかり引き込まれていて、先日七尾美術館で観た絵本の原画展と同じく、自分も一緒に参加して、トントンギコギコやってみたくてしょうがなかった。
2005-10-23 金沢シネモンドにて
- リンダ リンダ リンダ / 2005 / 日本
- とある地方の芝崎高校(つまりはどこにでもありそうな高校)が舞台の青春映画。それにしても、監督も出演者達も若い。リアルタイムでブルーハーツを経験した世代ではなく、設定も2004年の「今」なのだけど、ほとんど違和感がない。そこが、ブルーハーツの偉大なところだなあ。ペ・ドゥナ、香椎由宇はじめ出演者達がみんないい味出している。胸がすかっとするような快作。
2005-08-14 金沢シネモンドにて
- さよなら、さよならハリウッド / HOLLYWOOD ENDING / 2002 / アメリカ
- 猛吹雪の中でのロケのシーンから始まるのっけからおかしい。ハリウッド映画なんて目をつぶっていたって撮れるんだ、というウッディ・アレン監督の皮肉がたっぷり効いていて、あちこちでくすくす笑える楽しい映画。
2005-07-19 金沢シネモンドにて
- タイマグラばあちゃん / 2004 / 日本
- 東北の山奥で大地にどっしりと根を張りたくましく生きたタイマグラばあちゃんの生活を丹念に追っていくドキュメンタリー。電気も水道もない村に住み、厳しい自然の中、40年間ひたすら畑を耕して暮らしてきたじいちゃんとばあちゃん。やがてじいちゃんが死に、その後も一人きりで土を耕し、10年近くの間、同じように生きたばあちゃん。厳しい自然の中で、ほとんど自然界の一部となって暮らすばあちゃんの暮らしは、この上なくシンプルで素敵だ。生気に満ちあふれ力強く、それでいて、どこまでも穏やかなばあちゃんの表情にすべてが凝縮されているようで、その顔を見ているだけで涙が出そうになる。
2005-05-31 金沢シネモンドにて
- ベルリン・フィルと子どもたち / RHYTHM IS IT! / 2004 / ドイツ
- 社会の下層に属する、出身国も体格も年齢も様々な250人の子供達にダンスを教え、ベルリン・フィルと舞台で共演させるというプロジェクトを追ったドキュメンタリー。一部の真面目な子を除いて、最初はてれくさそうにふざけているばかりだった子どもたちが、たった6週間の間に、がらりと表情を変え、いつしかそれぞれの持てる力を出し合い舞台を作り上げていく。このプロジェクトの発起人であるサイモン・ラトルさんはもちろん、実際にダンスを教えたロイストンや脇を固めるスザンナが素晴らしい。常に真剣に、そして我慢強く、子どもたちに対峙し高みへと導いていく。めざましい進歩をとげる子どもたちは、まさにふさわしいバレエ音楽ー劇的にやってくるロシアの春を描いたストラヴィンスキー「春の祭典」に合わせて踊るうちに、自らの体内にひそんでいた春を見つけだしていく。
2005-05-08 金沢シネモンドにて
- コーラス / LES CHORISTES / 2004 / フランス
- 舞台は、およそ50年前のフランスの片田舎。問題児を収容する寄宿学校で、規律に縛られ力で押さえつけられていた生徒達が、新しく赴任してきた教師のもとで歌う喜びを知る。徐々に解放されていく少年達の様子が合唱によって生き生きと表現されている。一人だけ最後まで救われなかった少年がいたのが気がかりだったけど、見終わってからパンフレットを読んで、その不良少年の役を見事に演じた少年は、実際に厚生施設に入っている子だったけど、撮影中は小さい子をよく気遣う優しい少年だったと監督が語っていて、少しほっとした。
2005-05-04 ファボーレ東宝にて
- 誰も知らない / 2004 / 日本
- 今この瞬間にも、都会の片隅で、あの4人の兄弟姉妹が誰にも知られることなくひっそりと暮らしているんじゃないだろうか、と思わせるようなリアルな作品。子供達だけのひそやかな生活を、透明な映像で切り取ってゆく。母親の無責任、の一言では片づけられない、押しつぶされそうなほど重たいテーマ。
2005-03-16 富山松竹にて
- 少女ヘジャル / Hejar / 2001 / トルコ
- どっちも同じくらい頑固なじいちゃんと5歳の少女ヘジャルの交流に泣き笑い。しかし、地獄を通り抜けたときにヘジャルの瞳に焼き付いた光景は、一生離れないに違いないと思うと暗澹たる気持ちになる。憎しみの感情は、こうして生み出され、積み重なってゆくのだろう。
2005-03-13 金沢シネモンドにて
- エレファント・マン / The Elephant Man / 1980 / アメリカ=イギリス
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ジョン・メリック役のジョン・ハートさんの演技がほんとに素晴らしい。眼と手による感情の表現が、ことのほか繊細で美しく、過酷な運命を背負って生きるエレファント・マンを見事に演じきっている。劇場にはエレファント・マンも登場し、思わず記念撮影。
2005-03-12 金沢シネモンドにて
- イブラヒムおじさんとコーランの花たち / MONSIEUR IBRAHIM ET LES FLEURS DU CORAN / 2003 / フランス
- ごちゃっとしてそれでいて気さくな雰囲気の漂うパリの裏街ブルー通りがとてもよかった。イブラヒムおじさんが営む雑貨店も、お店に入って棚をじっくり眺めてみたくなるような魅力に満ちていたなあ。
2005-03-12 金沢シネモンドにて
- やさしい嘘 / Depuis qu'Otar est parti... / 2003 / フランス=ベルギー
- 娘と孫娘が、年老いたエカばあちゃんを思うあまりについた嘘が、ついにエカばあちゃんにパリに行くという決断をさせるに至り、そして、真実が明らかになったとき、エカばあちゃんは、事実を静かに受け入れ、もっと大きな嘘(愛)で娘と孫娘を包み込んでしまうという、ふんわりと素敵なストーリー。なんで舞台がグルジアなんだろうと思ったら、ベルトゥチェリ監督が、あのイオセリアーニ監督の助監督としてグルジアでの撮影に参加して、映画を撮るならグルジアがいいと思っていたそう。今回の映画の影の主人公というか、登場しない噂の人オタールの名前はもちろん、イオセリアーニ監督に由来する。
2005-03-06 富山松竹にて
- 巴里の恋愛協奏曲 / Pas sur la bouche / 2003 / フランス
- 華やかなオペレッタ。アメリで主役だった女の子ユゲットと岸惠子さんにそっくりなジルベルトなどなど、着せ替え人形のように次々と素敵な衣装を着ては登場してくる。オペラと違って、オペレッタはハッピーエンドで終わるところがいいところ。
2005-02-25 高岡ピカデリーにて
- パッチギ! / 2005 / 日本
- 私が生まれる少し前の1968年の京都が舞台。まっすぐでひたむきな若者達のエネルギーをスピード感溢れる展開で見事に表現してみせた爽快な作品。身体中にみなぎるパワーや、理不尽な社会に対するやり場のない怒りを、てっとりばやくストレートに表現するには、やっぱりケンカだったんだろうなあ。といっても生半可ではなく、命がけの真剣勝負なので観ていても気持ちがよかった。なぜだか知らないけど朝鮮サイドを応援しながら観劇。青春時代とそのままシンクロするぺこさんは特に大感動のご様子で、また、京都生まれ京都育ちのジュンちゃんは、丁度あのころ高校2年生で、まさしくあの主人公と同世代。
2005-02-20 ワーナー・マイカル・シネマズ高岡にて
- 家族のかたち / ONCE UPON A TIME IN THE MIDLANDS / 2002年 / イギリス
- イギリスのさびれた炭坑町が舞台で、そんな町にいかにも住んでいそうな人たちの、いかにもありそうな日常を描いている。それぞれに幸せになりたいと思いつつ、空回りしたり、もつれたりしてなかなか上手くいかない。最後は、なんとかかんとかそれぞれに家族のかたちを見つけてハッピーエンドで映画は終わったけれども、これからもきっと似たようなことを何度も繰り返していくんだろうなあ^^。
2005-02-19 富山松竹にて
- 酔画仙 / CHIHWASEON / 2002 / 韓国
- 酒と女なしでは絵が描けなかった放蕩画家スンオプの謎の生涯をたどる物語。後に韓国三大画家の一人として称されるようになるが、徹底して束縛を嫌い、権力にこびへつらうことなく、自由であり続けようとした。それだからこそ、どこまでも流れるような奔放な筆致が生み出されたのではないだろうか。
2005-02-18 富山松竹にて
- ニュースの天才 / SHATTERED GLASS / 2003 / アメリカ・カナダ
- 「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」によく似た話で、こちらは文才と詐欺の両方の才能に恵まれてしまった青年の話。面白かった。
2005-02-12 ユナイテッド・シネマ金沢にて
- ベルヴィル・ランデブー / LES TRIPLETTES DE BELLEVILLE / 2002 / フランス=カナダ=ベルギー
- フランスのアニメーション。孫を助けるために、ばあちゃんが飼い犬と一緒に大奮闘する物語。想像を絶するほどデフォルメされた絵が面白い。ストーリー展開といい、絵といい、たぶん日本人の感覚では作り出せないだろうなあと思われる。
2005-02-12 ユナイテッド・シネマ金沢にて
- スーパーサイズ・ミー / SUPER SIZE ME / 2004 / アメリカ
- 「一ヶ月間マクドナルドだけを食べ続けたらどうなるか」というドキュメンタリーで、監督自らが人体実験する。マイケル・ムーア作品をかなり意識した作り。小さいときからきちんとした母親の手料理で育ち、健康そのものだったスパーロック監督は、日が立つにつれ、みるみる深刻なダメージを身体的にも精神的にも受けていく。心配するベジタリアンの恋人や家族、即刻止めろと忠告する医者。にもかかわらず、最後までやり抜いたのがほんとに凄い。合間には、利益だけを追求し続けてきたアメリカの食品業界の実態やいかにして肥満大国が作られたかについて詳しくレポートし、未来の子供達への危惧を訴える。見ているうちに、こちらまで胃のアタリがおかしくなってきた。
2005-02-04 ユナイテッド・シネマ金沢にて
- 山猫 / IL GATTOPARDO / 1963 / イタリア=フランス
- 没落の一途をたどるイタリア貴族を鮮やかに体現したバート・ランカスターがなるほど見事。圧巻は、甥の花嫁とワルツを踊るシーン。いつまで見ていても見飽きないような、優美を絵に描いたような踊りに魅了された。映画は90分までがベストの私にとっては、それが例えどんな良作であっても2時間を超えると途中で「見疲れ」してしまう。山猫はなんと3時間を超える大作。それでも名作中の名作だし、やっぱり見ておきたい。覚悟を決めてから観たということもあって、それほど長いとは感じなかった。
2005-01-29 金沢シネモンドにて
- 四月 / Aprili / 1962-2000<復元版> / グルジア
- オタール・イオセリアーニ映画祭「イオセリアーニに乾杯!」の中の一作品。グルジア時代に撮られた作品とのことで、白黒の無声映画。科白がない代わりに、リズミカルな音楽が巧みに物語の展開を盛り上げていく。ヘビードランカームービーの「素敵な歌と舟はいく」とは少し違っているけれど、でもやっぱり独特の面白さがある。
2005-01-22 金沢シネモンドにて
- みんな誰かの愛しい人 / COMME UNE IMAGE / 2004 / フランス
- 「ムッシュカステラの恋」「家族の気分」でもそうだけど、ポンポン交わされるセンスのいい会話がいつもながら楽しめた。有名人の父を持ってることや、太っていることにコンプレックスを持っている主人公の女の子が、この先、どんな家庭を作っていくのか楽しみだなあと思わせる、暖かいラスト。
2005-01-16 富山松竹にて
- クリビアにおまかせ! / Ja Zuster Nee Zuster / 2002 / オランダ
- 昨年劇場で見逃したので、DVDをお年玉?に買ってきた。1960年代にオランダで大人気だったTVドラマシリーズだそう。そこに立っているだけで、いかにも頼りがいのあるクリビア(君子蘭の意)はクリビア・ホーム(療養所?)のナース。そのホームに住むへんてこりんな住人と近所の人々が繰り広げる、楽しいミュージカル。ポコにゃんも思わず踊り出しそうな面白さ!
2005-01-02 ぽこぽこ映写室 (DVD) にて