雑記帖 - 旅日記
- No.16
2007夏〜福地温泉 -
恒例の夏の旅行は、昨秋に家族が一人増えて、ますます楽しみな行事となりました。といってもおたまちゃんはまだ10ヶ月。というわけで、遠出は避けて、今年の行き先は福地温泉「かつら木の郷」。ここの本家で長兄の経営する「湯元長座」さんは以前に訪れたことがあり、しつらえや温泉がよかったので、事務所の慰安旅行でも再訪しました。しかしながら、部屋数が30室とやや大型のため団体客がいるのが難。店は小体、宿ならば10室以下がよいなぁ〜。
そこで選んだのが「かつら木の郷」です。予約の電話をいれ、料金設定の安い部屋を二部屋との希望を伝えると、「お子様連れのお客様には(料金の高い)離れを予約して頂いて、二間続きの部屋に5人と赤ちゃんで入っていただきます」という強気の対応。お盆で夏休みのど真ん中で、お宿にとっては一番の最盛期でかき入れ時。しかし、こちらも皆が仕事を持っているので休み時、というかここしか揃って休めない。「ちょっこ儲け主義でないがか?」「いっつも10畳二間続きに二人で寝とんがに、息つまっぞ!」とはやくも疑心暗鬼になったトさんは腰が引けぎみだったのですが…。
しかししかし、聞くと見るとは大違い。大満足の温泉宿でした。100年以上前の新潟の豪農の舘を、えっちらおっちら移築してこられた甲斐も精もあってばやく(=大いにあり)で、「凄いっ!偉いっ!羨ましいっ!何がって?度胸が!」
「規模を10分の1程にした終の棲家を作りたい」と思い続けてかれこれ30年。庭には四季折々に花を咲かせる好みの樹をこれとあれといれて、木舞を組んで粗壁を塗り、中壁に1年、さらに仕上げの漆喰に1年かけ、床は無垢材で軒を深くとり、「泣きたいほどにシンプル」と言わしめた桂離宮にならって唐長さんの襖を入れ、10年経つと白さが本物になる手漉きの和紙の障子を入れ、使い勝手が良くて風の通るこぢんまりした家を、と夢想する日々。
現実は、不便で風の通りが悪くて湿気だらけの古屋を、ぶつぶついいながらこっち直し、あっち直し、そっちにも手を入れたかと思うと、今度はこっちが悪くなり…。きりのない手当て繰り返すうちに、とうとう還暦を迎えてしまっていたのです。夫婦揃って小心者で、ど〜んと使う資金も無ければ貯める能も無い。仕事の合間をぬって行きたい旅に出かけ、食べたい物を食べ、飲みたい物もしこたま飲んで、となるとまあ貯まるわけはないのですが〜。いつまでたっても実現はかないそうにもないと、夢の家は半分いや8割方諦めの境地の昨今なのです。
でも、もうこれ以上の贅沢は言いません、望みません。例え、お食事所が炭火で熱くて汗流れても、例え、椅子でなくて膝が痛くても、例え、とろとろロースの飛騨牛が食べきれないほど多くてもかまいません。終の棲家は夢のまた夢でも、年に一度、ボーナス握りしめて皆で出かけることならできます。
とりつきから、玄関へと進むと、涼しげな暖簾が風にゆれてました。もう、それだけで笑顔がこぼれ、期待がどんどん膨らみます。その上、玄関には、子供の時から大好きな桂離宮仕様の格子柄(藍染めと生成)の暖簾がかかっているではないですか!3千坪の庭は大好きな自然を生かした雑木の庭(主樹はもちろんかつらの樹)!そしてこれも嬉しいことに掛け流しの透明な温泉!
建物に入れば、でっかく大胆な吹き抜けと、ざっくりしつつも細部にまで意匠が施されている広間。ホールでお茶を頂きながら館内の説明を聞き「やっぱり飛騨の匠なんだなあ」と頷くばかり。お部屋に案内されて「あらまぁっ」と思わず座卓をなで回してしまいました。所帯を持って初めての座卓は、じぃちゃんに目利きしてもらった研ぎ出しの漆塗りで、当時の我が家の家計にはまったく余裕のない事を知っていたばぁちゃんとじぃちゃんに買ってもらったのですが、何とそれにそっくりです。高低の調節可能な折りたたみの枕も誠に具合がよく、うりこさんの知人でもある水谷さんの器もどれもこれも雰囲気によく似合っていて素敵でした。すっかりお気に入り殿堂入りです♪
文 ぺこ 編 ぽこ
関連情報
- かつら木の郷
→詳細 - 萬葉館
〒506-1434 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地温泉
Tel: 0578-89-3889
営業時間: 10:00〜16:00
定休日: 木曜、第3金曜
URL: http://www.geocities.jp/banbakan/
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