:ジェラルドフィンジの作品
フィンジの曲は、楽しめる 美しい”作曲された”曲 です。とくに欧米のポピュラー音楽に
慣れた耳の方にも、親しみやすいメロディーのハズです。また
以前 日本のヒトがフィシャーディースカウにインタビューしたときバターワースを録音しないかとい
う話になり、DFは「・・知らない。(??)フィンジなら知ってるが・・」と答えたのが
興味深かったデス。フインジの歌曲は、確かに技巧的で強い表現力を持ったものがあるのです。
・・・・・・
1. クラリネット協奏曲 op、31
・チャールズ グローヴズ指揮 ロイヤルフィル エマジョンソン(cl)
(ASV DCA787)
フインジの晩年へと入る感じの代表的作品。かれの評価を高める作品といえるのでないだろうか。
最もバランスのとれた時代の煮詰められたものといえ、モーツアルト的簡明さに近いものすらある。
チャールズグローブスというひとは、勢いの良い指揮をするヒトでもある。
いわゆる芸術家的な感覚と遠くなってしまいオモシロイだけ という感じになってしまうこともあるが、
これは必然的でずいぶんシリアスではある。この作曲者の晩年の病気(ガン)と同じ感覚の予兆という
べきか、ある自己酷使の白熱さで引っ張り込んでしまうような演奏をしている・・・
このCDは、またスタンフォードのクラリネット協奏曲、ピアノとクラリネットのための間奏曲も収録さ
れており、これもチャーミングなフインジの5つのバガテルと一緒に比較出来る便利なもの。
エマジョンソンも十分な実力のモチヌシ。
& ブライデン トムソン指揮 BBC・ノーザン・シンフォニーオーケストラ ジャネット ヒルトン (cl)
BRYDEN THOMSON BBC NORTHERN SYMPHONY ORC / JANET HILTON CRCB-6029
・ この演奏も、まじめなとても良い演奏。そのクラリネットの歌い方、デリケートな音色の変化。
オケの力は余裕のある感じでもないが誠実な謙虚な節度で指揮される。
(マンチェスター・ミルトンホール1978/9/27録音)
J Allegro vigoroso
K Adagio
L Rondo- Allegro giocoso
2. チェロ協奏曲 CELLO CONCERT op,41
J Allegro moderate
K Andanntequito
L Rondo; Adagio-Allegro giocoso
・ バーノンハンドリー指揮 ロイヤルリバプール フィル R、ウォルフイッシュ
(chandos-8471)
この曲も、フインジの代表作。ほとんど最後期の作品で、又フインジとしては大作・力作的なもの。
彼にとっては、協奏曲のジャンルは重要なものだった。
ハンドリーの演奏も力強いもので、ターナー的カラフルさ?だが、少し茫洋としてしまっているかも?
一緒に 入っている K、LEIGHTON(1929-88)の suite VERIS GRATIAという4楽章の26分程の
チェロのソロを使う曲は、一聴してフインジ、や RVWのフロス カンピや、ウォルトンのベルシャ
ザールの部分を連想するが、1950年に書かれたものでチェロの歌う部分が良く鳴る部分を含み
本質的に淡いタッチのものだがペアの曲としても、また演奏家を愉しむ意味でも あってもいい曲。
● 〈補記〉 このフィンジのチェロ協奏曲のシャンドスの現役盤は、CHAN9949でハンドリーの指揮の
フィンジの方は全く同じ演奏のもの。がペアの曲は入れ替わっていて同じくK、LEIGHTON
の曲だけれど、1956年に出来たOp.31のチェロ協奏曲でチェロは同じ奏者、指揮はブライ
デン トムソン&ロイヤル・スコティッシュ。以前の組曲Op.9も、最後のエピローグ、ソ
ステヌート マ コン モートなど演奏も美しく愛すべき音楽だったけれど こっちの曲の方
が、晩年のフィンジの曲との曲調も合っているとも云えるし、内容もスッキリした管弦楽
法と平面的構成みたいな感じではあるが、素直な展開でより独自性の出た締まった発想の
立派な音楽。また演奏がとても良く、ウォルフイッシュのチェロも非常に見事で、オーケ
ストラはこの指揮者の集中力の爆発したクレッシェンドなどの充実した流れなど、大変、
佳い曲のように聞こえる。フインジの曲は、作曲者の自らのいろんな要素を最後に詰め込
んだようなもの。演奏が難しそうで、研究の余地を今後も探られる必要あり、とも考える
から、同じ演奏を2枚も?とも思う。けれど、わたしと同じように前の盤を持っている人
も、このペアの曲を聴く意味でならこのCHAN9949は、わざわざ買う価値が十分あるかも。
( 2002年12月22日:最近、この盤を買ってみて、思ったこと・・ )
3,ヴァイオリンと管弦楽のためのイントロイト
エイドリアンボールト指揮 ロンドンフィル
4,オーケストラと歌のための作品 「DIES NATALIS」 ( より”驚き”)
20世紀初頭まで埋没していた詩人、トマス・トラハーン(1636-74)に強く触発されて
出来た作品。
「 How like an Angel came l down!
How bright are thins here!
When first among his works I did appear
O how their Glory did me crown!
The World resembIed his ETERNlTY,
In which my Soul did walk:
And everything that l did see
Did with me talk.
The Skies in their Magnificence.
the lovely lively Air.
Oh how divine,how soft,how sweet.how fair!
The Stars did entertain my Sense:
And all the Works of God so bright and pure.
So rich and great.did seem.
As if they ever must endure.
ln my Esteem.
A Nativ Health and lnnocence
Within my Bones did grow,
And while my God did all his Glories show
I felt a vigorin my Sense
That was all SPIRT:I within did flow
With Seas of Life like Wine:
l nothing in the world did know
But‘twas Divine.
」
# 4楽章のアリオーソの歌詞。英詩の意味と響きの表現が計算された頂点で力強く結びつく...
・リチャードヒコック指揮 シティーロンドンシンフォニア
(tenor) フィリップ ラングリッジ
(london-425 660-2)
【以上、ここまでの記述はほぼ2000年1月頃のもの。2002年1月の2,3の言葉位は修正アリ】
【ピアノ伴奏による歌曲集】
♪ 20世紀の時流からかけ離れたようなヒューマンな態度の固持は、ドイツリートの全盛期のそれに近くさえある。
2次大戦後の時代が一区切りついた今、これらの作品の真価は、再考される必要がある・・・・
● 『 TO A POET op13a 』 ● 『 OH FAIR TO SEE op13b 』
● 『 A YOUNG MAN′S EXHORTATION op14 』
● 『 EARTH AND AIR AND RAIN op15 』 ● 『 BEFORE AND AFTER SUMMER op16 』
● 『 TILL ERATH OUTWEARS op19a 』 ● 『 I SAID TO LOVE op19b 』
上の歌曲は、フインジ・トラストの出している優れた歌手を起用したヒューペリオンの
CDA66015、CDA66161/2などで、聴く事が出来る。
これらの歌曲において、特に重要なのはトマス・ハーディーの詩との関係で、シューベルト、
シュ−マン、ヴォルフなども、これ程 1人の詩人に長く拘って自らの歌曲に採用してはい
ないと云われている。詩句構成の不均整さと建築的造形性の両立、デリケートで意外性のある
部分に人生の真実を見る気質などは、この詩人とこの作曲家との共通性を確かに見て取る事は
出来るだろう・・・・・・。
【上、6行くらいは2002年1月11日記述】
こういったフィンジの歌曲を、考えるには単に”通俗的”と誤って考えられているロジャー クイルターの歌曲
そして彼からつながるところの、ピーター ウォーロックへの影響、対するフィンジの歌曲へ、といったこの世
代の重要な英国の歌曲作曲家的な“流れ”と、その後のウォルトン、ブリテンらに続く、そういった個人的とい
う意味でも、ある種「センチメンタル」な歌曲作家たちから離れ、「社会的に思考する作曲家」に転じていった
“流れ”・・というような見方が必要だと思う。これらの流れと世代間の対比を、意識して考えるのは、重要なヒ
ントになる・・・。
※ 『クイルター・ウォーロック・フィンジらの歌曲について:』
【上、6行くらいは2001年8月25日記述】
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