: ヴォーンウィリアムスの小品(もしくは 組曲作品 )
## ヴォーンウィリアムスは、単純な”素朴さ”にも見えてしまう 実験的作品 を作り出した 一方、 稀なくらいの表情豊かで巧妙な音楽的描写を含む小品を、作り上げる名人でもあった・・・ ◆◆◆ ----- ◆◆◆ ◆◆◆ ----- ◆◆◆ 1, ヴァイオリンとオーケストラのための「あげひばり」 ” The Lark Ascending ” 2, 弦楽合奏のための「富める人とラザロ の5つの異版」 N マリナー指揮 Theアカデミーオブstマーティンインザフィール (London) B トムソン指揮 ロンドンフィルハーモニックOrc (Chandos) 3. 管弦楽のための「すずめばち」 古代ギリシャのアリストファネス原作の喜劇のための劇伴音楽。 5つの部分から成っている。リムスキー・コルサコフなどを思わせる 愉しいオーケストラ音楽。 これは、エイドリアン・ボールトの演奏が、有名。68年録音のものなど、 彼の特有の厳めしさからくるユーモアの感覚の出たものが、曲調と重なり 独自の魅力になっている。それは必ずしも古めかしいものとも云えない。 作曲家の1920年代の古い自作自演盤もあり、面白さもあるが、非常にせか せかした感じがして、音も良くないしやはりそんなに愉しめるものでない とも思う。 (2002・10/22) ・エイドリアンボールト指揮 ロンドンフィルハーモニックOrc (EMI) 4, 賛美歌にもとづくオルガンのための前奏曲 「Rhosymedre」 5,クラリネットとピアノのための「6つのイギリス民謡」 ・エマ ジョンソン(cl) (ASV) 6,ピアノ伴奏の独唱曲 「菩提樹のある原っぱ」 「静かな正午」 ・イアン ボストリッジ(Tenor) ジュリアス ドレイク(pf) 「静かな正午」は、ラファエル前派の DG ロセッティーの詩によった3分半位の歌曲。その詩と音楽によっ て、植物の”緑”、夏の”青い空”、”白い”雲の渦、女性の手のバラ色、白い小さな花の散らばった一面 の”銀”、”金色”きんぽうげなど・・が鮮明なイメージが与えられていく。さらに、空から垂らされた糸の ような、留まったトンボの胴の碧のラインの”光沢色”も加わって出来たPRB好みの絵画的色彩空間が、話 者と女友達の「大いなる正午」?の時間で静止してしまう。ヴォーン ウィリアムスは、その 静止の時間 の”意味深”さを、全く自らのもの、として豊かに描き出す。 (2001年3月頃記載。同一内容の文章で、流れを2002・12/1少し再修正) なお、この下の曲は、1903年出版されたロッセッティーの詩による歌曲集『ハウス・オブ・ライフ』の6曲のうち2曲目。(2003/2/25) 7, 賛美歌の旋律による2つの前奏曲: Eventide(宵) & Dominus Regit Me、 MonkとDykesによる原曲の小さい編成のオーケストラのために編曲したもので、1936年英国南西部の都市ヘレ フォードで作曲者自身の指揮で、初演されている。レント・ソステヌート、アンダンテ・コン・モートの両方 とも平穏で静かなまるで何でもなく見えもする短い曲だが、その編曲により独特の不思議な雰囲気を帯びる。 ブライデン トムソン盤で交響曲8番と一緒に納められているが、この演奏のデジタル録音のクリアーな分析さ れた響きがもともと牧歌的な曲を、さらにもっと何か抽象的な別次元の出来事のようにイメージさせる。 (2002・10/22) ブライデン トムソン指揮、ロンドンシンフォニーOrc CHAN8828 8, Partita for Doble String Orchestra: 4つの曲からなり、初演は1948年3月、ボールトの指揮で行われた。 RVWの代表的な重要作品に属する。 9, Concerto Grosso for String Orchstra: 5つの曲からなり、この曲の初演もボールト。アルバートホールで1950年11月。 RVWは、ボールトの指揮を交響曲などでも大変、評価していた。(そういう彼の肉声の録音なども残っている・・) この曲も、RVWの代表的な重要作品。 10, ノーフォーク・ラプソディー No,1&2 Norfolk Rapsody No1: Bryden Thomson Lodon Philharmonic Orchestra 11, 映画『北緯49度線』のための、 "49th Parallel" ”Prelude” 邦題『潜水艦轟沈す』というタイトルで、NHK・BS2でやってたから、 見た人も多いかも。(この邦題はかなりヒドイ・・・) ハドソン湾で沈没してしまったUボート乗組員たちが、何とか国境の 49度線にそってバンクーバーに逃げよう(日本船を使って帰る計画、 ただ最後に残ったヒルト大尉は逃げ回って米・カ国境のナイアガラ近 くで捕まる・・)とする話しで、エスキモー居住区、ウイニペグ、ロッ キーの山林等の北米大陸の様々な一般市民と接触し、逃亡者たちの偏 狭さが、市民たちと比較して描かれる。短編のエピソードの連続みた いな感じで、有名な俳優が各々登場するオムニバス映画風にも、結果 的になっている。 明らかに戦争協力映画だが、日本やナチのありがちなものに較べると 『ヘンリー5世』が、戦争協力映画でもあったのに、近いくらい上等 な感受性にも耐えうるもの。(オリビエも率直なフランス系カナダ人 の11ヶ月新聞も読めず、戦争すら知らない狩りの生活から戻ったばか りの陽気な人物として登場する。ドイツ人にどこか親愛の感情を無く してしまう事ができない人なのだけれど、残念ながら、彼は、その逃 亡中のナチ将校率いる一人に撃たれ殺されてしまうが・・・・) (ついでに書いておけば、西ドイツ映画「UボートDas Boot」は、上等な方の 戦争映画といっていいけど、最近の映画「U571」は、かなり 品位の欠けた ”本歌どり”で、世相の妙な不安定を表しているのかも?) マルコポーロから出されれたVWの映画音楽集のCDにおいて、A・ペ ニーの指揮などの演奏で聴け、とても魅力のある映画音楽なのだが、 映画冒頭の前奏曲部分のみで、映画に使われている他のもっとある 音楽は入っていないし、そのプレリュードも2分18秒しかなく、 もうちょっと続いて欲しかったな、と思ってしまう。演奏はさわやか なものであるけど、すこし弱い感じなので、そんな印象になるのかも・・・・ (2003/2/25&3/2に修正加筆) ・・・・・・・・・etc・ ◇人物と経歴、交響曲など・・・ // ◇HOME