AB2a :・・・・・・チェロ協奏曲                    /ビオラ協奏曲AB2b/ピアノとOrchのためのコンチェルタンテAB2c/




        cello cocerto  (1956) 

                                 ◆2002/11/30改訂部分あり◆






 I. Moderato

 II. Allegro appassionato
 
 III. Tema. Lento
           Improvvisazioni    
     var. 1. Lento --
     var. 2. Risoluto tempo giusto. Brioso --
     var. 3. Allegro molto --
     var. 4. Rapsodicamente --
     var. 5. A tempo di No. 6, 1st movement, ma un po' piu lento --
     var. 6. Adagio





        1)   チェロ協奏曲    パーボ ベルグルンド指揮     ボーンマス so   ポール トゥルトゥリエ(cel)
 


                                               (EMI CDM 7630202)

     1973年1月に録音されたもの。ベルグルンドのイダ・ヘンデルと78年に入れたVn協奏曲のレコードの前のものとなる。
     ベルグルンドは重要なシベリウスの指揮者だそうだが、昔から WWのシベリウスの影響ということは云われてきた。特に 
          交響曲1番などにそういう指摘をする人が多かったが、よりVn協奏曲にはソレがあると見るのはいろいろな点から考えて
     もよいことではある・・・。ベルグルンドのWWのVn協奏曲の録音は重要なものである。そして、このチェロ協奏曲のベル
     グルンドも、改訂版の初演者という以上に、ウォルトンの作品の演奏の変遷の上で重要と思う。共演相手の影響が当然加わ
     って作用してくるが、ベルグルンドはクールな明晰さでハッキリしたフォルムの音楽を作るということは、共通していえる
     特色のようで、そこがなにかしらそれ以前の演奏と違った意味合いを生み出していくのか?。さらに、そこにトゥルトゥリ
     エの鮮明な色彩感のチェロの扱い方が、ある意味フランス的な感じでこの盤の全体的印象を作り出している。もちろんこの
     WW後期的な曲で、そこに地中海風の明るさというのは意図されていいことでもあるが、のそれは、やっぱり例えばミヨーや
     イベールのそれとは根本的に違うものがなければ重要なものが欠落してしまうのである。(・・後期的作品に、イベールの直   ※※※
     接的影響があるとはいえそうなのだろうと思うけど)そこに必要なもの。それはヘレニズム哲学風の瞑想というべきもの、
     かもしれない。単に、南方的というより、かっての帝政ローマの統治を支えた思考の光と影の姿。 19世紀以降の大英帝
     国?と古代ローマを結ぶものは、やはり存在していて、そういう発想は、ミヨーやイベール、またドビュッシーやラベルに
     おいても、”ある重み”という姿として、結局存在していない。
     そういう感じのことを、今まで云う人がいないのは(日本ではもちろん、多分世界的にも?・・)不思議な気もするが、その
     種の味わいがウォルトンの音楽には、実はあって、交響曲2番、2楽章の悲哀や、このチェロ協奏曲の3楽章の人生の秋の
     感触として聞こえるものが、”遊び”でなく、そこに今日の世界の在り方が支えられているというのは、ベートーベンのあ
     る種の音楽がそうであるのと似た意味で、大げさなことでもない。

     このレコードにおいて、2楽章のアレグロアパショナートなどの名人芸とオーケストラの音響はオーディオ的で確かに聞き
     応えがあり、そして、この演奏の明るさは、呑気な明るさとは 正反対の 非常に鮮明で鋭利というべきもの で、その優
     れた録音といっていいと思う。けれど、さきに書いたような意味では、 非常に鮮明で鋭利などということも含め、上手に
     ただ演奏家としてやってしまうことといった、そういうことが、かえって この曲の本質から 遠ざけてしまうかもしれな
     いとも思ってしまう。そしてVn協奏曲以上に、この曲で、むしろ起こってしまうのかもしれない・・・と。
     3楽章のWWのこだわった変奏曲形式なども鮮明な細部の音響の刺激は、印象を散漫的としてしまい、いろいろと凝った作曲が
     展開される割に、音も薄く 何か 最終的に 据わりの悪いカンジが、残るという、この曲でまま 意識される演奏とこのレ
     コードも無縁ではない。
     その意味で 同じコンビで このCDの盤で一緒に収められているショスタコーヴィッチのチェロコン第1番のより理解しやす
     くもあり、演奏家的発想に訴える、 そっちの曲の方が、安定した名演で(ショスタコービッチの実は奇形的な思考法の良く
     わかるこの名曲?)同様なアプローチでも、陰気くささ 貧乏くささを払拭した結果となって、何か良い曲に聞こえてしまっ
     ていたりする。(苦笑?)

   (以上 2000年3月頃→2002年11月30日:2000年3月頃載せた同一内容を補筆部分10〜18行中などに、2行文程追加。整理 )
       
                         ・・より詳細を加筆予定です・・








    2)          ブライデン トムソン指揮   ロンドンフィル   R、ウォルフィッシュ(cel)

                                               ( CHANNDOS 8959)


       そもそも、WWのチェロ協奏曲は、演奏において ポイントの絞りにくい曲といえるのでないか?
       ほぼ同じジャンルにある前作と似たような関係の有る交響曲2番の場合も、定着的な演奏解釈に辿り着くにはスト
       レートではなかった。チェロ協奏曲の方も 多分 名人芸的なソロパートのおかげで交響曲のような不評の話は、
       聞かれない訳だが、同じような問題があるはずである。
       これは、91年に録音されたもの。ベンジャミンブリテンの主題によるインプロビゼーションとか無伴奏チェロの
       パッサカリアとか、パルティータといった重要な曲と一緒に収められている。ブライデントムソンは、同じシャン
       ドスのシリーズの交響曲2番において、特筆すべきといっていいい、興味深い要素を、演奏解釈に示している。
       それはウォルトンの音楽のある面に対する 特別な感覚の共有ともいえるものかもしれない。
       彼自身は、いわゆる大指揮者タイプのヒトとかなり違う音楽づくりであって、普通のレパートリーに近い感覚のも
       の場合、例えば、この全集でもWWがバッハのオーケストラ編曲を手がけた「ワイズヴァージン」の演奏などにも、
       (・・マッケラス盤の普通の意味で立派な演奏 に対比して)ある偏りが生じた演奏(あるイミ、一本調子のような
       カンジ・・)となってしまう欠点は明瞭で、その種の問題を本当は持つヒトでは有るのだ。
       ところが、単なる2流どころ(?)とは云えず場合によっては特別なある深さに至るということが起こっているの
       がこの人の演奏の興味深さでもある・・・・・
       彼のスタンスからの取り組みは、このCDでも感じられる・・・・・
                             
                   (この部分 2000年3月頃載せたもの)

                        ⇒参照:以上の記述と、「ブライデン トムソンの録音全般について」(2001年5月)








    3)      シャルル ミンシュ指揮   ボストンSO          (cel)グレゴール・ピアティゴルスキー



                                          60年2月22日 録音、(RCA)
                                                      

          これは、この曲の初演者の演奏。この作品が献呈されている位で、優れた代表的な演奏でもある。
          C、ミンシュの演奏は、切れ味のあるところはちゃんと出ているし、G、ピアティゴルスキーも特に
          3楽章カディンツァなどしっかりとした鳴り方で、名人的魅力がある。また この楽章の”人間的”
          陰影感は印象的。ただし、2楽章は特別群を抜いた力強さがあるわけでもない。最近の優秀なひとた
          ちの方がここで、ある飛躍的な世界をより作り出せている傾向はある。
          全体としてとても立派な演奏だが、この音楽の語る世界が少々”職人的”の話しに留まっているゆえ
          のヒューマンな表現のしっかりした感じ、ともう一歩のプラスアルファの欠けたものという面がある。
                  


                      ( この部分 2002年9月に記す・・)





    4)       アンドレプレヴィン指揮   ロンドンフィル       ヨーヨーマ (cel)



                                          84年1月録音、(CBS SONY-28AC2101)
                                                      上の番号は、LP 今はCDも出ている・・

         
           全般に中庸的、淡泊な解釈といえ、全体の作りはプレヴィンのスタンダードを目指すような姿勢自体が
           この盤の特徴とすることが出来るだろう。冒険的な表現から本質的に遠く、また 結果としてWWの音
           楽の持つ不思議な逆説的問題意識からも、最も遠くなってしまっている。ヨーヨーマの流れるようなチ
           ェロの卓越した腕前が、聞かれるのは勿論だが ほとんどWWの音楽の本質と関わらない部分で、弓さば
           きを全曲で天真爛漫風に続けている感じは、この録音のあるむなしい印象につながってしまっている・・・



                     ( この部分 2000年3月頃載せたもの )





   5)           サイモンラトル指揮   バーミンガム市響      リンハレル  (cel)



          イギリスものの演奏でも注目されるラトルにとって、ウォルトンのCDが、この曲と交響曲1番を組んだコレ1枚位 しか
          かれのディスコグラフィーで見あたらないということは は、それ自身興味深いことではある・・・・
                   (下記のところにこのラトルのチェロコンについて書いてあります・・)

         上の記述は、少し古い。99年に新しく入れた「ベルシャザル・・」とこの交響曲1番の同じ録音を組ませたCDが出ている。
      




                          ⇒『 NOTE : サイモンラトルのブリテンとウォルトン 』・・・・・