雑記帖 - yo:ku:nel

No.181
オレの酒

さて、「オレの酒」。酒好きのトも参りました。野沢温泉「いけしょう」で隣り合わせになったヒゲさん。昨年も隣り合わせで話をして、天下の遊び人で有ることは、合点承知。沖縄やヨーロッパの話題に話が弾む。夕食にトがビールを頼むと、いきなり例のお酒をとのご注文。いかにも、上手そうにぐびぐび。トは、ビールが終わり、宿のお酒を。いかにも水っぽい。見るに見かねて、ヒゲさんの奥さんが、これをどうぞと、妖しげなラベルの「オレの酒」を勧めて下さった。ラベルは、ヒゲさんの自画像。

なんと、これが文字通り「オレの酒」で、自分の田んぼで造った5百万石を佐渡島の「北雪」に持ち込み、400リットル純米吟醸に仕込んで貰った酒という。今年で3年目。北雪を選んだ理由は、ステンレスではなくてガラスタンクがあるので、発酵過程が目に見えるからとのこと。「北雪」は、野沢でもかっては、今「天法」の久保田酒店にあった。上品な味で、呑みやすかった記憶がある。

「オレの酒」は、なかなか複雑な味、一筋縄ではいかない、一杯や2杯では味が分からぬと言いつつあまりの旨さについつい杯を重ねた。ヒゲさんご馳走様でした。 「5百万石」は、新潟、富山、福井が産地なので、飲み慣れているのかも知れない。いつの日か、トも「オレの酒」を。

余勢をかって、ヒゲさんご夫婦と一緒に毎年2月の3連休の恒例のジャズフェステバルにアリーナへ繰り出す。これが面白かった。司会兼パーカッションの横山さんがめちゃめちゃ上手い上に、ギャグに爆笑。ヴォーカルの金子晴美さんがまた上手い。スキーは、カナダ以来のブッチ師匠ご夫婦と。なぜかトだけ雪まみれだったが愉しかった。3連休の野沢はかっての賑わいが戻ったようだった。

(2007-02-13)

No.182
大信州 信濃薫水 純米吟醸 槽場詰め

名前に、大とか日本一とか世界とかつけるのは、大体がろくでもないことが多い。一方で、かわいげの有ることもある。元祖とか、本家とかいうのも怪しい。しかし、この大は、なかなか。ここの純米大吟醸は、日本一安くて美味しいかも。松本市島立に蔵が有るが、ここは富山から、松本インターに向かう途中の地名。あの辺で、いつもリンゴを買っている。いつも通っているのに、うかつにもこの蔵には気付かなかった。

さて、この酒。この時期限定で、新聞紙にくるんである。槽場詰めと言うことは、当然、火入れなしで、タンクからそのままのお酒と言うことだろう。使用米が、最近開発された「長野県産ひとごこち」。酵母は不明だが、これも最近長野県で開発のDか?フルーティで、するりとした喉ごし。長野のお酒は、料理と言い、山国なので、ただただ甘いというイメージが強かったが、「天法」といい、最近侮れない。

(2007-02-19)

No.183
おらの酒「越畑」

「いけしょう」で埼玉のヒゲ親父から、佐渡の「北雪」で仕込んだ「俺の酒」を呑ませて貰って、美味しかったことを報告したら、今回、そんならおらもとヒゲ親父の弟分のような風貌の陀羅佛さんが、おらの酒「越畑」を持ち込んだ。

花咲く棚田の里京都の越畑村で栽培した「日本晴」を伏見の招徳酒造で仕込んだお酒。ラベルは、陀羅佛さんの似顔絵ではなくて、越畑在住の墨絵画家篠原画伯の題字。ちゃんと和紙を使っている。そー言えば、我が家に篠原画伯が伏見の酒蔵を描いた墨絵があったなー。昔からの繋がりか、それとも単なるサケスキヤーか。招徳酒造は、伏見では玉の光と並んでいち早く純米酒づくりに取り組んだ蔵とは、陀羅佛さんのご説明。お味は、伏見のお酒特有の滑らかな舌触りと喉ごしが好ましい。いまだ訪ねたことがない越畑の棚田を彷彿とさせるような素朴な味わい。

今回は、残念ながらヒゲさん同士の遭遇は無かった。野沢温泉が、なぜか大人気で若者や外人であふれかえっている。古くからの愛好家にとっては、一過性の人気と思いたいが、今回愛好家をまたまた増やしてしまったようで、もー誰にも教えんぞ。

(2007-03-04)

No.184
クレオパトラの涙

クレオパトラの鼻の話なら、聞いたことがあるけれど、クレオパトラの涙は、ご存じない。あんな高慢な女が、涙なんか流すもんか、へい、ごもっともだけど、高慢な女こそ涙を流すんです。クレオパトラは、昼間はめいいっぱいつっぱてはいても、時に一人芳醇なグルジアワインを傾け涙したという言い伝えから、グルジアワインの別名となった。

チャーチルは、「このワインを生涯にわたり買い占めたい」といったとか。トもそういいたい。 今回の野沢温泉ツァーですっかり主人公になった陀羅佛オネー丹がグルジア白ワインの特級を持ってきてくれた。お初のグルジアワインは、ドライですっきり、こんなタイプの白は、飲んだことがない。あっという間に4人で飲み干した。誰も涙を流さなかったけど、美味しかった。

実は、オネー丹は、昨秋グルジアの友人の画家宅で約1ヶ月滞在しその間ワイン造りを手伝ったという。ロンドンから、グルジア行きの飛行機に乗るとき、チェックインをして空港ロビーで待っていたら、隣のママに赤ちゃんちょっと見ててと言われ赤ちゃんを預かっていたら、ママが出発時間迄に帰ってこずに飛行機は荷物だけ載せて、出発してしまって、3日間飛行場近くのホテルで(実は、当時ロンドンには、陀羅佛さんがいたのだが、ここで助けを乞うと一生言われると思って意地はって連絡せずに)着の身着のままいたとか。

グルジアのワイン造りに、コンドームが使われていて、瓶の栓に付けられたコンドームが、膨らんだら発酵が進んだと言うことで、また、コンドームを取り替えて次の作業に進むとかの話を、周囲を抱腹絶倒させながら語ってくれる。ホンマにちょっとした立川志の子だ。

処で、グルジアってどこだと言われそうだが、トもわからない。グルジアワインが美味しいことは、かって、岩波ホールの高野悦子さんにインタビューしたとき教えて貰った。とにかく、ワインや食べ物が美味しく、文化豊かな国だという。ワイン評論家のヒュー・ジョンソンは、ワインのルーツは、グルジアに有りと言っている。少なくとも5000年以上前からこの地でワイン造りは行われていたようだ。その頃と同じ作り方で、今でもワインが造られているという。シルクロードの西の端、コーカサス山脈の国、東西の交易が昔から盛んで、世界遺産も複数あるという。

陀羅佛さんから、グルジア行きましょうとお誘いを受けたが、シルクロード点々旅行がライフワークの一つである、トぺこは是非グルジアに行ってみたいもんだ。

(2007-03-05)

No.185
まんさくの花

スキーに惚けていたら、いつの間にか世の中は春。ひさしぶりの花のお江戸には、黄色のレンギョウやら紅梅や白梅が咲いている。神田の町角には、本州一早く咲く桜、伊豆の河津桜が咲いていた。河津桜を見に行って、はや5年たったんだなー。

神田と言えば、「松翁」の蕎麦。一番乗りだった。相変わらず、涎がじゅるじゅる出てくる、日本酒の垂れ幕。常連の〆張鶴や神亀、四季桜、飛露喜などと並んで、何と今冬一番沢山呑んだ長野の「天法」の垂れ幕が初めて有るではないか。さすが、松翁さん、あんたもわかっとねと嬉しくなる。

池波正太郎が、原稿書きに山の上ホテルに泊まると昼は松翁の蕎麦だったらしい。(「池波正太郎の食まんだら」佐藤隆介より)。蕎麦味噌、生湯葉、胡麻豆腐に合う酒はと悩みに悩んで、選んだお酒が、秋田の「まんさくの花」。春なので、花が付いた名をという選択。お味は、春に相応しく、軽くて華やかな味、香りは若い。

春の野菜天麩羅が美味しい、菜の花、こごみ、蕗のとうが苦くて香ばしい。そして白魚が山ほど。ここの天麩羅を食べていれば、専門の天麩羅屋に行かなくても良いほど。蕎麦は、ぺこさんは、一番好きな田舎、とは芥子の変わり蕎麦とそれぞれ普通蕎麦。それに、後口に小倉蕎麦掻きと腹一杯食べた。

蕎麦の感触はと言えば、寿司飯で例えれば、小布施「せきざわ」が、ふわっーと握られ、口の中でばらっばらっとくずれる蕎麦とすれば、松翁のは、しまった寿司飯という感じ、でした。

(2007-03-12)

No.186
春告げ酒

春告げ鳥は、鶯。春告げ草は、梅。じゃー 春告げ魚は? 魚遍に春の鰆?それともさより?正解は、鰊のようだ。しかし、富山では、ほたるいかがでまわると春〜。今晩は、春の食卓。ぽこさん作ほたるいかの唐揚げ、鰻の蓮蒸し、ふくらぎの刺身、キャベツと鮭の煮物、ほかいろいろ。うっめー。

これに合わせる春告げ酒は、何にしよう???悩んだあげく、えいと貰いもんの桐箱入り純米大吟醸磨き2割3分「獺祭」をぱかんと開ける。山口県岩国市のお酒。自家栽培田んぼの山田錦使用。

蕎麦でもお酒でもその他人生のいろいろは磨けばそれで良いのかというわけじゃあるまい?蕎麦で言えば、ぺこさんは、磨き上げた更科よりは、田舎蕎麦が好きだ(但し、わがままもんのぺこさんは細いのでないと×)。とは、お酒は、精米度50%台の純米酒で充分だ。

でも、この2割3分は、なかなかふくよかで、喉に全然ひっかっかるものなくすいすい入る。磨きさえすれば、良いと言うことは決してないが、「獺祭」はなかなか。神田の蕎麦屋「松翁」にも常備してある。

本日は、富山でもお江戸ほど暖かかった。富山にも春が来たー。 お江戸の春告げグッズは、花粉症対策マスクだった。

(2007-03-13)

No.187
蕎麦屋の昼酒

を、本日堪能した。小布施「せきざわ」で。昼12時に到着、きょうは番号札かと思ったら、即インだった。ラッキー。冬場だからか。注文は、いつもの店主「おまかせ三味」。どうせ、酒がいるとわかっているので、はじめから、「お酒も」。出てきたのは、「夜明け前」。おー藤村君か。やっぱ、伊那の酒。ふむふむ、まず匂いを嗅いでみる、わーまるで林檎の香りやにか、お味は、「まだ、あげそめし前髪」のように初々しいちゃ。なんちゅう甘くて、まろやかながいね。

よっしゃ、道がついた。もう一本、別のをお願いしますといちおう標準語で、注文する。今度は、滋賀県の「大次郎」。これも、お初。在来工法ならぬ在来日本酒という感じのしっかりしたお酒。とにかく、蕎麦屋の昼酒というのが、とてつもなく贅沢に感じる。これも、日頃額に汗して働いている(こう書くことが、汗!)ことの、功徳ということにしといてくだはれ、たのんます。せり人さんの、日曜ゲレンデビールとかわらんちゃ。

ついでに、コース外で、天麩羅も漬物もお願いしますということで、結局12時インの、2時アウト。フレンチか、イタリアンのコース料理並みになってしまった。お酒のみならず、本命の蕎麦は、絶品の(との評価は、三重○)鴨南蛮、緑色のせいろ(ぺこさんの三重○)、更級。そして、最初に粒粒の蕎麦掻き。

今回感じたのは、ここの料理は、たとえば、鴨南蛮について言えば、鴨も葱もとにかく厚切りでころっとしてやわらかい。漬物、天麩羅もそう。素材の旨さを心ゆくまで堪能して欲しいという心使いとみた。「包正」やかっての「彩々」に通じる思想。デザートの蕎麦の蒸し菓子「むらくも」は、バター味を感じるので、聞いてみると、答えは「ウィ」。やっぱり。おいしいので、本日のお宿へのお土産とする。宿でも、大好評だった。

(2007-03-20)

No.188
ラングドックワイン

フランスワインは、ブルゴーニュとボルドーだけではない。地中海に面したラングドック地方。ランドドック・ルーションとくくられる。ここの作付面積は、約40万haで、フランス最大の生産地で、フランスのワイン生産量の約4割を占めるという。地中海性気候で年間平均気温は約15度。かっては、日常消費型のワインが大量生産されていたが、近年品質の高いワインが増えているようだ。

その中でも、注目されているのが、「ペイル・ローズ」。ファースト・ヴィンテージが1988年。以後、低収量、無清澄、無濾過により、造られ、生産量は、約3300ケースのみ。その内の3分の一が、上級の「Clos des sistes」と「Clos des Leone」に。今回、石ノ湯ロッジで、マスターから貰って呑んだのが、この後者の1993年物。ラベルは、ピンク色で、左側に絵柄が。

一口飲んだだけで、違いがわかる。と、ぺこ、たけどんが一様に美味しいと口走る。赤ワインに期待する色、こく、香り、華やかさかさが有る。さすがに、全部飲み干すのは、気が引けて、飯山に住みついた隣席のオージーまー君と、シェフの池さんに一滴ずつお裾分けをする。

海老で、鯛を釣った感じ。というのは、「せきざわ」さんに失礼か。「せきざわ」さんの「むらくも」5個と鱒寿司をお土産にした御礼だった。ついでにたけどんのお土産神田駿河台のお菓子何処「ささま」の最中も付けた。これは、岸朝子さんの手土産の一品とか。いずれも、スタッフに大好評。皆さん、「むらくも」の美味しさに感激して蕎麦を是非食べに行きたいという。ホンマに毎日食べにゆける距離だ。

ことお酒に関しては猫に小判のマスターと左党のトのシルクロード的物々交換でお互いに幸せな夜だった。

(2007-03-24)

No.189
秋鹿純米吟醸 山廃無濾過生原酒

今回の関西プチ子守旅行で出かけたお蕎麦やさん京都の「金井」と大阪天七の「たかま」にあったお酒が「秋鹿」。大阪のお酒。といっても、大阪の山の中らしい。蔵元自ら米造りに精出す真面目蔵で、純米酒のみの蔵。お味は、生原酒では、するっとはいるだけで特徴が判らないが、表日本の酒であることは間違いない。

さて、「金井」は、何と言っても、蕎麦通京の陀羅仏さんの京都の蕎麦一押しのお店。相変わらず大繁盛。西陣の一角の軒の低い民家がいかにも感じよく、トイレに糸巻きがぶら下がっているが、京の陀羅仏さんの忘れ物じゃないかと気にかかる。大晦日以来だが、ふじおか、せきざわを経験した後でも、蕎麦が腰があって美味しい。

さて、今回は、凸介君のお供で、もう一軒大阪天七の「たかま」。マスターはかの「ろあん松田」で修行したらしい。店に向かう途中、向こうから来る若者の自転車にぶつかりそうになったおっさん、こちらも自転車が、「おんどりゃ、何処むいとるんじゃ ぼけ〜」。おーこわー、 これぞ、大阪。今回は、法善寺横丁も、通天閣も、体験せず、「海遊館」の疑似浪速横丁しか体験しなかったので、貴重な浪速生体験だった。

「たかま」の前で待つこと三〇分、ようやく狭い店に入れた。まずは、お酒のメニュー。ここも、なかなかの取りそろえ。北陸のよしみでとりあえず福井の「白岳仙」純米吟醸にする。真面目なお酒である。肴は、ほやの塩辛、豆腐の味噌付け(殆ど豆腐よう)など、左党にたまらないつまみが揃っている。蕎麦は、もり、田舎とも細くて、美味しいが、とは、もりの繋がり方にややむらがあると感じた。

向かい席に、大ちゃん風の若者が、彼女連れで陣取る。座るなり「鴨汁蕎麦」と注文。いかにも慣れている感じ。いまや、大阪の若者も、ソースこてこて、たこ焼きや、お好み焼きではなくて、本物の蕎麦を、求める時代となったか。

何のせ、寒かったがいね。京都・大阪とも花見どころで、なかったちゃ。

(2007-03-31)

No.190
オーストラリア シラーズ

オーストラリアのアデレード近くのバロッサ・バレーは高級ワインの産地として有名。今回、ここの「ピーターレーマン」の、「ストーンウェルシラーズ2002」と「エルダートン コマンド2003」を呑んだ。

実は、今回の研修生に「ワイン三銃士」がいて、夜な夜なワインの研鑽に励んでいるらしい、しかも、一〇〇〇円ワインだけではなくて、一本は高級ワインを開けているという。彼等のご要望が数々の賞に輝いた「ピーターレーマン ストーウェルシラーズ」だった。なぬっおぬしらできるなと思いつつ彼等に便乗して、バロッサバレーを代表するシラーズ2本を氷見の「ヴィレッジセラーズ」から取り寄せる。後者は、かのパーカーさん九六点ワイン。

とにかく、二本とも、濃密な味わいであり、複雑な味わいがある。日頃美味しい美味しいといって呑んでる1000円ワインが、蛙のション弁のように水くさい。ピーターレーマンは、バロッサバレーの185軒の農家と契約して、その中でも「小粒で黒々とした上質の葡萄」を選りすぐり、18ヶ月熟成、5年後に発売という。

シラーズは、土の香りがむんむんとする。カベルネソーヴィニオンとは、そこが違う。二つの違いは、わずかで、個性の違いだけ。エルダートンの方が、果実味がまさり、やや華やかな感じがする。濃いワインを飲みたいという方には、お薦めである。

(2007-04-20)