雑記帖 - 旅日記

No.14
2007春~カナダ「呆れた話」 その2
絵:あーれー
あーれー

着いた日は雨だったのに、翌日はからりと晴れ。師匠のブッチャンにパチンとスイッチが入る。「上行きましょう、上」「えっ、いきなり担ぎは無しですよ」と牽制するが、いまやパドックの馬状態の師匠には何の效果もなかった。「あっTーバーのランプついた!」動き始めたばかりの一番上部のショーケースTーバーに乗って、そこからは担ぎ。通常は広い広いグレーシャーコース。ところが師匠の指定は一本目がブロウホール。要はシャンパングラスみたいな斜面。えーいきなり、ここ?あっちに広いとこあっがに(あるのに)。

ヒマラヤ8000m男のO君が、カナダ娘に負けじと新雪を気持ちよさげに滑り降りる。かってションベンチびった崖も今日は柔らかい新雪なので意外と滑りいい。やっぱカナダや~。2本目は、ルビーボウル。ここは、上部は狭いが、途中から開けている。広いと言っても崖は崖。おまけに下部は雪が重くて足が取られる。師匠の新妻が足を取られて珍しく転倒、ちょっと足をひねった模様。師匠「でも無理せんだらいけるやろ」って。

午後は、クルワールエクストリーム。いわゆるスダン。よくエクストリムの大会が開かれる長い長い急斜面。午後なのに、まだ雪が良くて気持ちいい。師匠や大ちゃんのおかげで段々こんな変態世界にはまってしまう。あっちに愛機シュトクリがうなるほど性能を発揮してG感覚が味わえる快適なグルーミングバーンがあるというのに。しかし、ここまでは、いわゆるゲレンデコースとは違うというもののスキー場内エキスパートコース。

2日目は、バックカントリーの天国と地獄が待っていた。そもそもウィスラーは、隣のブラックコムと併せて北米最大のスケールを誇り、ゲレンデ面積が7000エーカー。といわれても、ぴんとこないが、立山、剣岳、大日岳、薬師岳を全部ゲレンデにしたようなスケール。4つの氷河と20のボウルがあり、上から下までの滑走距離は約12キロ。しかし、師匠のぶっちゃんは、整地されたゲレンデにはまるで興味がなく、カナダ到着以来「バックカントリー、バックカントリー」と呪文の様に唱えている。バックカントリーは、要はゲレンデ外の総称と思うが、彼には一つしかないらしい。といいつつ、段々バックカントリーがこの世の桃源郷に思えてくる。天使の誘惑は焼酎だけど、これは悪魔の誘惑。そもそも、ここをブっちゃんに教えたのは、大ちゃんだった。大ちゃん、おかげで冥土の土産がどっさり出来すぎて三途の川は重量オーバーで渡れないかも。

トは観念して、オールマウンテン用の板を借りた。持参したシュトクリSLより、スキーのセンターが少し幅広である。生憎、今日も晴れ。お約束のバックカントリーに向かう。ブラックコムのグレーシャーの最上部をトラバース気味にスキーを担いで喘ぎあえぎ、一歩一歩登り詰める。カナダ人は、シールを付けた山スキーですたすた追い越してゆき、いずこかへ消えてしまう。いろんなコースがあるらしい。

途中小休止したところで、O君が日本では求めにくいというジルブレッタの山スキーにシールを貼る。いきなりギアチェンジして、すたこらさっさと登りだす。さすがに早い。担いでいる我々がいかにもださい。担ぐこと約一時間、漸く頂上に。ブリティシュ・コロンビア州の山岳景観が360度広がる。担いだ人だけに対するご褒美だ。遙か向こうの山にはヘリスキーのシュプールが見える。でもヘリスキーは約7、8万円。ちなみにリフト券は日券が85カナダドル。倍近くに感じる。

「ところで、どこ降りるんですか?」「ここです」といわれても、下が見えない。「とにかくなんとか30m降りて、左へトラバースして下さい。そうしないと帰れません」。5回目の師匠が先行し、O君がずり落ち気味におりる。さて、おっかなビックリで横滑りしてゆく、雪が走る、超急、「トさん、こしひけとっよー」「わかっとっわい」何とかジャンプターンを試みるも、怖さから山にへばりつくような着地のため、益々ずり落ちる。左右1ターンずつで、二人の処へなんとかずり落ちた。

ずり落ち地点から数100mトラバースして、もう一回担ぎで急登。そこがグレーシャー氷河へのコルになっており、極楽斜面だった。立山の山崎カールか、長治郎の雪渓のような長い長いバージンスノーの世界。ここが師匠の「バックカントリー」だった。自然に出てくる嬌声「きゃほきゃほ~っ」と叫びながら、雪煙を舞上げ一気に数100m滑る姿をご想像あれ。

3日目は、ウィスラー。最近は、ウィスラーを滑ることが少ない。ここでは、お約束のハーモニーリッジから、2度ドロップイン。最後は、クリークサイドへ滑り終える。同行の連中は、こんな中級斜面は何もすることがないと言わんばかり無造作にすべり降りる。

4日目は、2度目のぶっちゃんバックカントリー。出発まで、新婚夫婦の葛藤が有ったが、ぶっちゃん、「おれ、2台担ぐから」と強引に出発してしまう。トは、今回は、ディパックのサイドにスキーをくくりつけたので、随分楽ちんだった。その後は、地獄と天国の繰り返し。まさか、このコースを2回も滑るなんて。

O君が、町の本屋で、ウィスラーエキスパートコースガイドブックと、バックカントリー地図を買ってくる。これによると、バックカントリーコースは無数に有り、ブッチャンバック・カントリーは、ほんの入り口で、スティープコースとなっている。ここでは、山スキーが必須アイテムかも知れない。

さて、折しもこれを書いている時に、カナダヘリスキーで雪崩事故発生。亡くなられた方へのご冥福お祈りします。しかしながら、カナダと日本では、自然に対する考え方が全然違う様に思う。日本でのスキーはままごと遊び、カナダでは自然との対峙、又は勝負。あちらでは、雪崩は発生するもんだという前提で、バックカントリーへ入るときは、ビーコンやスコップが必須アイテムとなっている。ヘリスキーに乗るときや、任天堂パークの上級者コースに入るときは、事故が発生しても責任は問いませんという誓約書に署名させられる。あなたの自己責任で自由に遊びなさいと言う思想が徹底している。

バックカントリーは、河豚の胆のようなモノかも知れない。フランスシャモニーに行ったとき、スキーインストラクターは、掃いて捨てるほどいるけれど、山岳ガイドは、ソルボンヌ大学合格より難しい国家資格だった。スキーが旨いことと、山を知っていることは全然違う。スキーの達人の、ベント・グレーバーやマルチン・クガニックもオフピステで命を落とした。

Highslide JS
初っぱなの滑りが、ここ
(ウィスラーにて / 2007-03-26 / ト)
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この先に待っているのは、天国?それとも!?
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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天国への入口?
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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シャンパングラスの底めがけて
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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ブッチ師匠がゆく
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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師匠ぉ~待ってぇ~
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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お先にぃ~
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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うへぇ~また担ぐんですか
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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老年よ大志を抱け
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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生きててよかった
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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ここは天国三丁目、さてお次は?
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / O)
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お~い、大丈夫かあぁ~、と新夫
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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ずごごぉ~
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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行きます
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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とぉりゃぁ~、と新妻
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)
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アコから降りてきた
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / O)
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ココ
(ウィスラーにて / 2007-03-27 / ト)

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