雑記帖 - つれづれのことのは
- No.411
淑女達がゆく そのに -
二日目の沖縄は、気持ちよく爽やかに目が覚めた。 午前中は、自由にホテルライフを楽しもうと予定はない。いい計画だな~。 今回持ち込んだ本は、以前から読もう読みたいと思っていた「時間をほどく」小栗康平監督の著作。なんとなく沖縄時間に似合うようなきがしたんさぁ~。
昨夜の下も向けないほどに食べ過ぎてしまったお腹のこなれを更に手助けするために、ぽこさんとふたりでプールへ。トルコブルーの美しいタイルを敷き詰めた温水プールは掃除を終えたところで、もちろん一番の入場者。「どうぞ、どうぞ」とここでもにこやかで笑顔が自然にこぼれる。
1時間で1キロ余を、ゆっくりゆっくり歩いてバタ足で泳いでと、時間がほぐれていく。窓の外のまわりの風景も館内も実に静寂。自分達の泳いでいる様子がハンマース・ホイの絵を見ているように静かでほぐれた時間を過ごした。
センスよく選ばれた品々の並ぶお店で目の楽しみも。ホテルで使用されている着心地の良いパジャマや可愛いスカートをバーゲン価格でぽこさんに選ぶ。昨年はとさんの在庫を購入したので、今年はぽこさん用を。凸さんにも長袖のTシャツを二人で選ぶ。ゆっくりショッピングを楽しむなんてめったにないこと。たのしいんさぁ~。
豪華で品数の多い洋風バイキングはとても食べられそうにないので和食の「粥定食」を頂く。少しづつのおかずや甘い柔らかいお粥さんが嬉しい。美しいくセンスよく泡盛の甕が並べられているので、とさんへのお土産に「35年物、わけてもらえますか」と尋ねたが、気の毒そうに「お店用です」と申し分けなさそうな言葉が返ってきた。残念。 今度は、とさんとここで泡盛を楽しもう。
ゆっくり食事を楽しんで、ホテル内をしずしずと散歩していると、しきりやうりこさんとばったり「どこにおったがけ・・・」と元気が溢れている。しばらくして海辺のレストランに顔を覗かせてびっくり。てんこ盛り山盛りの御馳走を前にたべるきまんまんの淑女が4人、いやはやまいった。人ごとながら自分のお腹を思わずさすっているばぁばなのでした。
午後はマッサージを予約。石垣生まれ沖縄育ちの心やさしいおばさんでした。 「マッサージを覚えたおかげで沢山の人に出会い、沢山の言葉をかわして、今日を元気に迎えて感謝なのさ~」ここでもまた気持ちのいい時間。外出組はお土産の泡盛を求めて酒造元へ、お魚さんを求めてグラスボートに、地元の果物を買いに直売店へと忙しい。
夜は喜瀬別邸に出かけて落合シェフの設定するレストランで夕食。ばぁさんは、昨夜の飽食がたたって夜は軽くすませる。元気な淑女達は、更にホテルライフを満喫するために夜のプールにお出かけ。それぞれに楽しい休日なのでした。
最終日、朝から免税店、三越とお土産の買い物を済ませ、バーバリィーでとさんやたまさんぽこさんの服を買い込んでほくほく笑顔のばぁさんは、勢い余って高価な夏のジーパンもお買い上げ。三越にゆくと早くも明日の献立が頭に浮かんで主婦の顔。美味しい豚足の煮込みや三枚肉をかいこんで大急ぎで予約のお店を目指してダッシュ。
いつもの通り、突然のお誘いにもかかわらず顔を出して下さったのうさぎさんと久しぶりの再会を果たしたのが、とさん推薦の「たん亭」さん。首里城が見渡せる小さなお店で石垣人のご主人の接待で供される八重山料理はどれもこれも美味しく、設えに使われている城間さんの家具は自宅で愛用している文机だし、石垣出身のご亭主は「サムさんかい?」とのうさぎさんと言葉を交わしてみれば、父君をお世話された人だととわかり、更にお食事が美味しく感じられる。沖縄人独特の澄んだ瞳の若者とちゃっかり写真に納まる淑女も出現。和やかな時間が流れる店内で、賑やかな淑女の旅の顛末を語り、近況を語り、あっという間に時は過ぎてゆくのでした。
最後の空港でジィマミーを買い、泡盛を買い、「あっ、豆腐よう、買えんだねぁ~。またくるんサァ~」と名残はつきないのでした。名前こそ呼ばれなかったものの時間間際でぎりぎりに乗り込んだ飛行機、椅子に落ち着くやいなや、お約束通り深い眠りに落ちていくぺこばぁさんなのでした。
最後になりましたが、今回も極東最大の基地嘉手納を見渡せる道の駅に立ち寄った。初めての沖縄を経験する人には是非知って貰いたいし、日本人として基地の現実を知っておきたい。
(2009-03-09)
- No.412
お江戸 -
お江戸から帰りました。最近、多忙な日々で風邪もようやく治ってきたので、手配師ぽこさんがプレミアムで準備してくれていました。たすかった。で、ちょっと「おっ」っと思えたのは、提供される食事がちとましになってきたことです。和食というのも嬉しかった。夕食に貰ったお酒が純米吟醸だったのもよろしい。
今回、フランスが日本食の判定する事の善し悪しの程はこの際問わず、とにかくミシュランみっつって?ということでお鮨の「水谷」へ調査員?として出かけましたので報告いたします。
まず驚いたのは、10席しかない子店です。気に入りました。 すっきり実に美しく磨き上げられ無駄がなくシンプルです。気に入りました。 半分は若者で礼儀正しくおとなしく食べている人達でした。びっくりです。 「私達の二十代は、貧乏だったなぁ~」ととても羨ましかったのですが、上質な者を認める若者達に拍手です。気に入りました。ピーターの父上・吉村流の地方舞のおっしょうさんと、初対面だというのに楽しく会話が弾みました。美しい着物姿で実に美味しそうにお鮨を食べながら張りのある若々しい声でした、
で、感想はといえば日本のお鮨って決して食べ飽きないし世界に誇れる事間違いなし。 そして、日頃地の魚を中心に食べているお鮨は、決してひけをとらない処か劣ることのない美味しさだとつくづく富山が有難く思えたことです。水の美味しさ、山の豊かさ、湾に流れ込む海流の条件が揃って美味しい魚が当たり前のように食べられる有り難さに、改めてきときとばんざいです。
年に何度かお江戸に出かけると、感じることは「東京人は早足でよく歩く」です。 みなさん、やたら早足で、かつ無口です。着ている物や持っているバックや袋物はそれなりに時代に合っていると思うのですが、どこか精気にかけているのが気になる処です。町並みはどこも似ているのが残念ですが、さすが銀座はシャッターが降りていないのでほっとしました。
初日はいつもの「松翁」さんへ、二日目の夕食は、蕎麦の「流石」さんへ。 品数が益々豊富になり、どれもこれも美味しく感動でした。 飛行機でも食事が出ると判っていながら、欲張りなふたりは、やっぱしあれもこれもと注文し、もう一本、もう一本とお酒がすすみ。こまった。そして、美味しいものを食べている時のみんなの顔はいいですね。
窮屈な住宅事情にお江戸は住む処とは思えないのですが、それだからこそ楽しみを求めて文化が花開いてきたのかな。 今回は、ドキュメンタリー「小三治」と映画「シリアの花嫁」間違って出かけた西洋美術館「ルーブル展」でした。 芸は人なり。明日を信じて人は思考を重ね、楽しく明るく生きるのだと心がぽっと温かくなる映画でした♪ 今年は結婚40年を記念して、根性いれてあくせく働き、やっぱしあくせく遊びます。 いつになったら、ゆっくりするのやら~~~。
(2009-03-13)
- No.413
シリアの花嫁 -
お江戸の岩波ホールで観た映画は「シリアの花嫁」。日本人の私にとっては衝撃の映画でした。花嫁のパスポートが「無国籍」なのです。ニュースでは耳にしたことのあるゴラン高原はとても美しく、約60年余にもわたって争いを繰り返している地とは思えない静かな高原風景なのですが、そこに生を受け育って民族の誇りを抱く多くの人々が、自ら「無国籍」を選んでいることを知りました。
キリスト教・イスラム教・ユダヤ教とイスラエルを巡る争いは、なにがなんだか実の処よくは判らず、神がほんとにいるなら争いなんぞ起こさぬ筈だと単純に考えて神の存在を信じない私には、こんがらかってほどけぬ糸を前にしたようないらいら感に戸惑うだけ。
しかし、西洋美術館のルーブル展でも感じたのですが、ヨーロッパの人々の生活を支配していた神の存在は確かに大きかったようですし、いつの時代も支配者にとって手段として神の名を借りるのが手っ取り早く、人心を捉えやすいのだろうと改めて思われた。
日本人が何の抵抗なく神式で結婚式に望み、死んだ時には仏式で弔われて疑いを持たないのも私にとっては不思議でならない事のひとつなのですが、八百万の神様といい七福神といい、好みは人それぞれで百人百様、神さんもいろいろ居て、祝ったり頼ったり願いを聞いて貰った方がいいのかもしれません。
離婚を経験した花嫁は、写真でしか見たことのない親の決めた相手(人気のコメディアンという設定がどこかユーモラスなのが救いです)と結婚するため、生まれた故郷には二度と戻れないことを承知でひとりで国境を越えて行く決心を固める結婚式の日の出来事を宗教や習慣やしきたりに翻弄される家族と周囲の人達を暖かくユーモアのある目で時にはコミカルに撮っています。
妹を心配しながらも自分自身が新しい人生への選択に意を強くする姉。 囚われの身になるであろう危険を畏れず自分の意思を表明してデモに参加する父親。 ロシア人との結婚を反対され、断絶状態にあった親子の関係を修復しようとする長男。 イタリアで楽しく暮らす人生を選択した次男坊。と、それぞれにどこか不安な関係をもちながらも、みんなを暖かく見守るどっしりとした母の存在が心を捉えて、前向きに生きていこうとする花嫁の決心に拍手と声援を送っている私がいました。
モントリオール国際映画祭受賞を初めとして数々の賞に輝いた作品は、見応えがあり考えさせられる映画でした。
(2009-03-15)