雑記帖 - つれづれのことのは

No.161
わが故郷の歌

国を持たない遊牧民族クルドの人々をユーモアと愛情と怒りを込めて描かれたずばらしい作品、バフマン・ゴバティ監督の「わが故郷の歌」を観てきました。

昨年、岩波ホールで高野悦子さんにインタビューさせて貰った時にお話をお聞きして以来、是非にと思っていた作品だけに、期待でいっぱい。改めて民族の言葉を含める文化というもの力に感動を深くしました。異なる文化に思いをいたし、認め合うことの必要性を改めて考えさせられます。政治に携わる人達にとって大切なことは「異文化への想像力」と長部日出雄氏書いておられるが、まさに教えられる映画でした。

(2004-08-22)

No.162
台所の窓

台所の窓に、昨年の改造で長年の願いがかない庇をつけてもらいました。日頃、笊や俎板、桶など木製品が大好きで愛用しているため、それらを出窓の外の桟に干したまま仕事に出かけても大丈夫になりました。これまで何度も雨に濡らしてがっかりしていたので、庇を取り付けて貰ったのが嬉しくてならないのです。ありがたやまのほととぎす♪

ところで、うちの台所は西向きで、特に暑い夏の午後なんて、それはもう思い切り暑くなります。窓には通念簾をかけています。通年というのは、北陸の雪も簾が防いでくれるため。夏には、更に、立て簾も利用して、陽射しと暑さを防いでいるのですが、3年ほど前に、鳥さんの運んできた種から桐の木が芽を出し、みるみる大きくなってきました。夏には大きな葉が茂り日陰を作ってくれるので大助かりです。

台所の耐暑対策に一役買ってくれている桐の木なのですが、当然のこととして、ばさばさ葉を落とします。晴れて葉っぱの乾いている内に掃除をと思いながら3週間近くもたってしまい、気がかりでしょうがなかったのです。ようやく今朝、長袖長ズボンに帽子、蚊取り線香、虫除けスプレーの完全防備に身を固めて、落ち葉拾いをしました。ついでに、夏休みにやりたいことシリーズの内、後回しになっていた3番目の勝手口の掃除も決行。ぽこにゃんや通いのブチにゃんが出入りに使っている勝手口も、使い古しの歯ブラシと雑巾で綺麗に掃除して吹き上げ。すっきり、すっかりいい気分。

(2004-08-22)

No.163
スポーツマンシップ

昨夜は眠い目をこすりながら男子マラソンを応援していました。

終盤での突然のハプニングは、はじめ何が起きたのかわからず、びっくり、ぽかん。 「こんなひどいこと、あるもんけっ!」「いっしょうけいんめいに走ってる人になにすんがけっ!」とピィピィケトルの如く頭沸騰させながら応援をつづけたのですが、当のデリマ選手が、最後まで諦めずに走り続け、満場の拍手に包まれて入場してきた時にはじぃ~んとし、ほんとに嬉しそうに投げキッスしながら満面の笑顔でゴールしたのに心底感動しました。これこそリアルタイムの中継ならではの醍醐味。

銅メダルを喜ぶデリマ選手の謙虚なスポーツマン精神にも感動しました。どうも、なにがなんでも「金」でなければというがむしゃら精神には、日頃からちょっと抵抗を感じています。スポーツにも人生にも「遊び心」を忘れたくないと思うから。レスリングの誰かさんのように、ぶっちょうずらで銀メダルを受け取る様子には、本来のスポーツ精神を忘れているのではと思います。

デリマ選手にはぜひとも特別金メダルを。

(2004-08-30)

No.164
語り公演

「平家を語る 祇王」を観て(聴いて)きました。 以前、上原まりさんの琵琶弾き語りで「平家物語」を聴いたのが面白かったので、今回も興味津々。安野光雅さんの「繪本 平家物語」を読んでいたので、状況や風景を浮かべながら聴けたのが面白く、流れるような美しい日本語の語りに、疲れていた筈が、すっかり目が冴えひきこまれてしまいました。

時の権力者・憎っくき平清盛に翻弄されて生きる白拍子達の人生が哀愁をおびた琴の音と凛とした響きで語られ、結末はわかっていても直情派の私は悲しくて涙がこぼれそうになります。これがテレビだと平清盛さんをスリッパではたいてしまっているところ。くわばら、くわばら。身体が弱い癖にやたら気だけ強いのです。

(2004-09-01)

No.165
田舎暮らし

田舎暮らしは、高速走ってもプールで泳いでも、すいてるし、快適だし、感謝、感謝の日々。広い部屋に大の字になってお昼寝する夏の休日など、縁側から入ってくるさやかな風に吹かれていると、まるでそのまんま極楽。田舎が大好き人間です。

ところが先日、富山での用事を終え、ひとりで手打ち蕎麦屋さんへ行った時の事です。10年程前に新設された大学に単身赴任だという白髪に口髭の一見紳士的な教授が、身につけているのは全て有名ブランドものという地元出身の講師とおぼしき女性に案内されてやってきました。混み合う時間帯で、ちょうど席が満席だったので、相席をどうぞと、私と同じテーブルにつかれたのですが、
「田舎で何にもおいしいものがございません」
「田舎の蕎麦ですから、たいしたものではないんです」
「田舎にはまともな食を供するお店がございませんで」
「別のお店の方が先生にはお薦めなんですが、今日は生憎休業日でして」
汗して蕎麦を茹でているご亭主にも聞こえそうな声なのです。
昔から「声の大きな人に悪人はいない」といいますが…

それからも「スイスの友人が蕎麦打ちを趣味としているが蕎麦粉が手に入り難い」とやら、「フランスの和食店で食べた蕎麦がなかなかいけた」とやら、辺り構わずの大声のうえに、さらに我慢がならなかったのは40代とおぼしき女性のつけている香水の香り。鼻が曲がりそうで吐き気がする位の強力な臭い。そしてなにより、水もお米もお酒もお魚も美味しく、きときと新鮮食材を誇る田舎の良さがなんにも判っていない会話がえんえんと続くのに、うんざりでした。

そのうち、ご自分でもここ1年程蕎麦うち修業に励んでいるという教授の方が、運ばれてきた蕎麦を食べて一言「うんっ?この蕎麦は、茹で方がたりん。生臭ささが残っている」と、断定されたのです。食は好きずきといいますし、嗜好は人それぞれ。このお店の蕎麦が美味しいと思っている常連さん達でいつも混み合っているお店なのです。蕎麦は二八とはいえ、蕎麦粉を厳選してあるので香りはなかなかですし、丁寧に摺られた山葵はいつも甘く香りよく、かりっとした天麩羅も軽くて私は大好きです。

ここにいたって我慢限界。お節介で我が儘で我慢のない性格がむらむらと頭をもたげてしまいまいした。私としてはめいっぱい静かに、声をひそめ、「申し訳ありません、お話がはずんどられますが、ここは蕎麦屋さんながですちゃ。おいでになる時は、是非とも、香水は控えめにしてくだはれ!」と、どんぐり目をなかばめらめらさせつつ言っておりました。田舎には、まだまだこわいおばはんが、すんどるのよ。

(2004-09-07)

No.166
馬肥ゆる秋

材料が揃ってたっぷりあるとそれだけで豊かな心持ちがするという困った性格です。正調欲張りばぁさんの資格充分。思い出すに、両親共々暮らしに関してはお金を惜しまず、たっぷりの備えが好きだったのでした。常々凸さんからも指摘されていて、その度に反省して深く頭をたれ、この生活態度を改めようと殊勝な決心をしてみるのですが、大概のところ三日と持ちませんな。最近では、私が悪いんじゃない、これは強力な遺伝子なのじゃと開き直ってます。

昨日も、地元で一番人気の(昔八百屋さん)スーパー佐武さんへ久しぶりに買い物に出掛けたところ、新鮮でお買い得な地の野菜がどっさり一杯。入荷したての地元の小芋、枝付きの枝豆、箱売り小茄子、ぷちぷちの実がついたとなわ、ひとかかえもある泥付きの赤ずき、しっかり実が肥えたささげ豆、地の茗荷、曲がったとげとげのきうり。「みるモノ乞食」の名の如く、まるで大きなつづらをしょった欲張りばぁさんそのもの。まだ更に買い残したものはないかいなぁと、目はキラッキラッ。

だんだん気が大きくなって、なんかやたらと焼き松茸が食べたくなり、手にとって急に正気に戻り、外国産の小さな松茸を6ヶ選びました。無添加のかまぼこも売っているし、有機栽培の生芋こんにゃくも手にはいるし生湯葉も扱ってます。乾物コーナーでは、どんこの干し椎茸を選び、ぽこにゃんの大好物おかかもどっさり買いこんで大満足。食材ばかりでてんこ盛りの篭が、さすがに恥ずかしくなり、縞ススキと秋明菊とほおずきも買いました。もうすっかり秋ですね。

(2004-09-08)

No.167
へいへいほぉ~

休日の今朝は早くに目覚め、ゆっくり読書して、マリアカラスさんを聴きながらのんびり入浴。ついでにお風呂をごしごしごしごし磨いていたら、すっかりくたびれて朝寝のし直しとなり、涎をたらして寝ていたところへ…、「トルルル~」。

電話のベルはきっと近くの温泉へでかけようという友からのお誘いに違いないと受話器を取ると、「今日はいい天気になりそうだし、電動ノコが借りられる事になったから、薪割りにいかんまいけ!」とストーブ愛好家の仲間でもあるタッちゃんから突然のおたっし。汗を流すのはもっぱらスポーツでと決めているトさんは、不幸の手紙をあけてしまったかのように半泣き状態。私は身体が弱いクセにけっこう力仕事で汗を流すのが好きときているので「わぁ~いきたいきたい、たのしそう」。

30分も走ればもう到着してしまう近さなのですが、緑深い森の中は、燕が飛び交い、木の香りいっぱいの秋風が心地よい。とりあえずは2トンを目標に定め、薪を選び、割り、積み、休憩を挟んで2時間余の流れ作業は順調に手順良く進み、みなの気持ちは「与作はぁ~木ぉ~切るぅ、へいへいほぉ~へいへいほぉ~♪」。そろそろこの辺でと切り上げ、車ごと体重計にのっかってみれば、薪の重さは1.2トン。

自宅の物置に流れ作業で薪を積み上げ終わったところで、本日の作業は終了。爽やかで明るく、労働の満足感で汗が光っていました。おかげでこの冬はどんな寒さがきても大丈夫。みなさんどうもごくろうさんでした。では、このへんでおやすみなさい。

(2004-09-11)

No.168
陶芸展にて

知り合いの陶芸家の方から秋の作品展の案内が舞い込む季節になりました。昨日はそのひとつ奥川さんの作品展へ出かけました。会場は、繁華街の中ほどにある洋装店の3階。昔は高岡で最も賑わっていた商店街も、今や、日中はシャッター街となりはて、猫とばぁちゃんしか散歩していないとう情けないことになっています。

昨日の全国地価評価の発表をみると富山県の商業地区の下落率は全国一。不況の嵐が吹きまくっています。台風一過の晴天はいつくるのでしょうか。その昔、「列島改造」とやらを叫んで土地の価格をどんどん高騰させ、投機の対象とし、地上げ屋と称する暴力団を横行させ、日本全土の購入代金で巨大な国アメリカがかるく10個は買えるまでの馬鹿値にして、バブルに浮かれて喜んでいた日本人も滑稽で馬鹿げていたのですが、最近のアメリカ式郊外大型店の乱立で地元の小さな商店が無惨に潰されてゆく様子には、怒りと情けなさで胸が痛みます。日本ならではの経済政策を持たないこの国の無策ぶりにはつくづく呆れますが、間違いなく私もその内のひとりの日本人なのです。

嘆いてばかりはいられないので、がんばっているお店を応援したいし、陶芸作品にも興味がいっぱいで、開場と同時に駆けつけました。一番乗りと思いきや先客あり。なんとたっちゃんのおばさま(母上の姉)でした。たっちゃんの母上は地元で万葉研究家として知る人ぞ知る有名人。そのお姉さまは陶芸の研究家として名が知れた方で、先生と呼ばれていらっしゃる。お舅さんが東京で骨董店を営み、そのお手伝いをされていたのです。御歳85歳とは思えぬ溌剌とした表情と堂々とした風貌で存在感十二分。

「75歳までは病気一つしませんなんだ。リュウマチで両膝に人工関節をいれましたが、まだまだ杖で何処へでも出かけます。今日も自分で運転してここまでやってきました。今月は3カ所のお茶会に顔をだして、あと2カ所に招待されております。」 「今から65年前、初めて立山登山をした折りには伏木測候所の所長さんと修業に来ていた大学生さんの案内で称名滝から八郎坂を歩いて登ったのですが、6時に家を出発しても室堂到着が夜になってしまったもんですよ。立山の観測所は伏木測候所の管轄で、そこに泊めて戴く手筈になっていて、先に宮様がお越しになった時に準備された立派なお布団が残っておりましたので使わせて戴きました。」 「地獄谷の露天温泉では、そばの川のお水をたして温度を調節し、だれもいない天然の露天風呂に浸かったもんです。当時は地獄谷の番をしているおじじがひとりだけだったのです。翌日天候をみて2時半に起床し、室堂から頂上を目指しました。登りは1時間35分。下りは速くて28分でした。私は健脚で山猿でかっぱだといわれておりましたよ。昔は、バタフライとシンクロはありませなんだが、クロール、平泳ぎ、背泳ぎとなんでもできます。昨年の手術前まで、プールで泳いでおりましたよ。」

なんともおそれいる記憶力と重みと迫力。楽しい話しが尽きることなく湧きだし、あっというまに小1時間が過ぎていたのでした。やや緊張の面持ちで美味しい栗きんとんとお抹茶をご馳走になり、いつまでもお達者でご活躍下さいとお別れしてきました。あんな風に元気で歳を重ねる愉しい人生はなかなかにおもろいぞと愉快な心持ちになり、元気が湧いてきました♪

(2004-09-23)

No.169
温泉三昧

秋の野沢温泉に行ってきました。スキーシーズンとはうってかわって、静かでひなびた温泉街の風情と味わいがありました。いつものごとく、宿に着くやいなや、歩いて30秒の「熊の手洗」温泉へ。お湯につかると、じぃ~んと芯から温もり、じわじわと疲れがほどけてゆきます。一日の仕事を終えた地元のおばちゃんやおばぁちゃん達が、つぎつぎに、一日の汗と疲れを流しにやってきます。

大切に手入れされた古民家の宿「いけしょう」さんの小さな庭には、白い秋明菊や、赤くて細い水引草が咲いています。勝手口の水場のところでは、おじさんがたっぷりの原木なめこをバケツでじゃぶじゃぶ、木の葉や泥を丁寧に洗い流して夕餉の準備に忙しく、部屋には、おばさん手作りの山栗の渋皮煮にきゃらぶきが用意されていました。いつも手作りのおやつでもてなして下さるのです。二人仲良く働きもんのおじさんおばさんの笑顔と温もりが、何ともいえぬ心地良さ。

美味しく飲んで食べ、おしゃべりしながら温泉につかってぐっすり眠りこけ、目覚めてまた温泉でからだをのばし、心も体もお腹も果報。明くる日は温泉街の朝市へ。地元の人が、収穫した野菜に茸に山の実、自家製漬け物や梅干しなどを持ち寄って開いている素朴な市です。どっさり買い物をした後はまた温泉。お部屋で一休みすると「ごはんが、できましたよぉ~」と声がかかる。作ってもらうお料理の美味しさはまた格別!

同行したフィリピンのお客様は日本語の上手な大学の運動学の教授。これまで、ひたすら滑ることだけにしょたれて(夢中になって)いて、百回は前を通り過ぎたであろう「スキー博物館」「おぼろ月夜の館」に、彼女の希望で初めて入館。日本の美しい風景をそのまま唄ってみなに愛されている童謡を作詞された高野辰之先生の記念館です。館を出ると、自然に唄を口ずさんでました。

秋の夕陽に 照る山紅葉
 濃いも薄いも 数ある中に♪

(2004-09-27)

No.170
きのこ汁

今朝は、野沢の朝市で手に入れた山の幸できのこ汁と決めていました。塩漬けになっていたぶなはりだけを一番に塩抜き。昆布を浸して出汁の準備。「美味しくてほっぺがおちるよ、天然だからね」と張りのある声で実に美味しそうな顔して売っていたおばさんは、節高の手も艶のある顔も日焼けして元気な人でした。

舞茸は、張り付いた柴や泥をとるのが仕事。じっくり20分かけて丁寧に掃除。包丁を使わずに手で裂いて下準備。たっぷりの昆布出汁に下準備のすんだ舞茸の軸の部分だけは先に煮込み、ぶなはりだけとしめじとお豆腐を入れ、お酒と味醂とお醤油で味を付けて土鍋ごと食卓へ。家中がきのこの香りでいっぱいでした。

(2004-09-28)