:CA 映画、舞台用作品


The Film Music of William Walton etc-シェークスピア作品
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1) ”スピットファイア前奏曲とフーガ”
                                           (1942)                                                
いわゆる、”バトル オブ ブリテン”の哨戒にあたる、英軍機。ただし、残念ながら、この写真 は、戦後のアトラクション用の「バトル・オブ・ブリテン小隊」で、上から、スピットファイアMk19、 同PRMk19(写真偵察機形)、Mk9、Mk2A,で最前列の機体は、スピットファイアでなく、 ホーカーハリケーンMk2Cである。 スピットファイアを設計した技術者、RJミッチェルを中心に描いた1942年 映画「First of the Few」のもともとは映画音楽として、この曲は作曲された。(ミッチェルは”風とともに去りぬ” のアシュレイ役、そしてその後 戦死みたいなことになった※俳優レスリーハワード) 1936年 スーパーマリン社が、開発した スピットファイアは 世界的に見て ”引き込み脚”を採用した 第1世代の戦闘機といえ、メッサーシュミットbf109、少し遅れてゼロ式艦上戦闘機などと 同じく、 流線形のモダンスタイルの代表するもので、それ以前の1次大戦の複葉機の面影を残すものから、一線を 画している。 イギリス最初の低翼単翼引き込み脚の正式戦闘機は、ホーカーハリケーンの方で1935年11月6日に初飛行 したが、ホーカー複葉機の設計で英空軍から信任されていたシドニーカーム技師の作った機体は彼の フュリー複葉戦闘機を発達させた木金混合骨組みに一部布張りであることがわかる太め胴体の機体で スピットファイアのより流線形を際立たせた美しさはない。  (※・・ついでに云えば実際のバトルオブブリテンよりもっと後、写真のmk19辺り以降の型は、大出力のグリフォンエンジン        を無理をして搭載し、ノーズが延びるなど初期の流線型が崩れていく。ムスタングなどと似たラインになって        くるが、戦後のアメリカの影響を暗示してるといえなくもない? ・・・・・・・・・・・・・  ) 放物線テーパーの翼と細い胴体をマッチさせた優雅な機体は、飛行性能を向上させたが手作業的な加工が     増え、量産しづらいという面もあった。(とはいえ20種以上の改良型をもち20351機生産された) この外見の点でも、メッサーシュミット博士の設計が、量産し易さを狙って直線部分を多くしているの と対照的となる。(bf109は約35000機) イギリス本土上空戦ではレーダー捕捉の効果、航続距離の 問題またロンドン爆撃の性急な優先等の作戦、ゲーリンク指導による全体的難点を考える必要があり ,40年夏の英国での空戦で敗退したたからといって、スピットファイアmk1がbf109Eより無条件に優 れていたわけでもない。 特に初めの頃 燃料噴出装置を標準装備していたbf109は、急加速や背面飛行においてもシリンダーに 安定して燃料を供給できたのに、スピットファイアの気化器を使った方法では供給が途切れるため、 bf109のパイロットは、急降下・ターンして スピットファイアを急加速で振り切るということが出来た。 (この体験は映画「バトルオブブリテン」のパイロットたちによって語られるシーンがある・・・・) また、真正面のプロペラ軸を通して発射する20mm砲に見られるような、その武装も重要な特徴だった。 のちのG-10型では故障や問題も持っていたが 30mmのMK108も装備されたり、それは非常に強力さを発揮 する場合もあった。一方 スピットファイアはその他の運動性能は上回っていたので、トモエ戦的な局面と なれば一般に有利となった。ブリテン島上空では 後半 戦術の転換により落とされたbf109eは増えたが むしろ 両者は良く似たタイプの飛行機であり、バトルオブブリテンの結果においても能力的に互角なもの であったのが実際で、複葉機からの完全な転換を図る、その当時の技術的状況に答えたものであり、違い は産業思想 国民性などのシンボル的要素といってよく、航続距離 速度もエンジン形式も似ていた。ホーカ      ーハリケーンの方は、bf109に対抗する力はなかった、が より簡便で扱いやすく、サブ的に広く使われ、 こういった役割分担は、他の各国の空軍等の機種配置にも、類似した関係として見いだすことができる。 あたかもそれぞれの国々でその分野での人間の位置、役割分担、棲み分け関係のように・・。   【以上、2000年2月頃の掲載、正し、その内最後3行と以下18行は、2001年7月頃の掲載】            ※          ※          ※ ある意味この曲は、戦争協力の音楽で、この種のものは、案外 大家的作曲家の多くが手がけていたりする。 分かり易さは、非常に求められるし、まずペシミスティックな戦争観は、当局によって最初から拒絶される。 当然問題は、ある種類のものにせよ、今もこういったものの中では抜群に、この作品が魅力的であることは 多くの人が感じる所であろう。          ※          ※          ※ 前奏曲は、17小節の短い序奏があって、そして、ハ長調の分かりやすい口笛でも簡単な主題の部分が歌われる。 それが1オクターブ上がった格好で再びやられた後、ちょうど空中で機体が大きく翻って旋回するような、 ハ短調を経由してト長調につなぐ効果的な経過部分を使って、またさっきのメインの主題が5度高いト長調で もう一度歌い出される。金管の華やかな補助旋律の流れが付け足され、管弦楽全体がより、活発に鳴らされなが ら、景気の良いコーダで結ばれる。この前奏曲の中でも、序奏部は、最も魅力的で、ウォルトンの効果的なファ ンファーレと、スマートでなだらかな和声の、簡潔 率直な音楽が、マッチして他の作曲家では得られない ”スピットファイア”の音楽になっている・・・・。 フーガは、ある意味フーガとは思えないくらいの簡単なしくみで、フーガは単純な繰り返し音楽でない・・ (シェーンベルク)との批判に相応するかのような所もあるが、これについては色々問題とされるとも思う。 ただし、今 簡単にいってこの問題は演奏の工夫で、随分違ってくるといっておく・・・ 映画では、工場労働の忙しさに対応してこの音楽は使われたらしいし、作曲家のコメントもそのようなもの だったと思うが、中の短い中間部の短調の静かな部分は、夜間飛行を思わせ、また全体の忙しい動きは、 戦闘的なものであるととるのは、自然だろう・・・     (詳細な話はまだ、もっと続ける予定・・)               ●  ウィリアム ウォルトン指揮、ハレ管弦楽団        貴重な自作自演盤だが、この曲に関しては録音が古いとやはり、愉しめないというところ・・           ハレの古い音が、聞ける点では注目。           1943年、6月録音。なお63年のフィルハーモニアでの録音があるらしいが、未聴。      ●  チャールズ グローヴズ指揮、ロイヤルリヴァプール Orc        この演奏が、一番 LP時代から 馴染みの感覚で、この曲のイメージとして 筆者などにはある。        前奏曲の勢いの良さは、ピッタリだが フーガはもっと持続力のある感覚の方が望ましい、        とは思う。                 1969年の録音。      ●  ネヴィル マリナー指揮、アカデミー ST マーティン イン ザ フィールズ        シャンドスの全集盤。「戦時のスケッチブック」そして映画には一部しか使われなかった「バトル オブ        ブリテン」の主要部といったよく似た傾向の他の作品も、一緒に収録されており、また小さいことだが        前奏曲とフーガが、CDの2つのトラックに分かれているのも含めて便利なCD。        マリナーは、いつもの調子で悪くはないけど、さわやかな明るさもあった方が、この曲の場合、        もっとチャーミングだろう・・          1990年の録音。                                      →HOME◆
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