※(注1)・・・「シュペングラーの様式概念についてのメモ」
シュペングラーOswald Spengler(1880-1936)・・・・は、1930年代頃大変流行し、そしてその後の第2次大戦後の雰囲気・ 学問風土の中では時代遅れ扱いにされがちになったもので、その発想を今扱うとすれば、確かに 色々な問題難点を含め考 慮すべき存在になる。単純な科学主義、実証主義者たちが、反発するのは、簡単な世の流行だった訳だし、また実際そこに は20世紀始めのロマン主義の残った「生の哲学」の流行からの色彩が反映している。そして 少なからぬ「疑似科学」へ の傾き(彼自身 科学主義への批判の論点を持っていたが、実証主義的歴史学に対してより歴史学的であろうしたことが、 ミイラ取りがミイラになったような印象を生む・・)もあり、批判はしかたのないものもある。アドルノなども、そのある種 の『権威主義』の傾向に対して、厳しく批判する態度を見せている。 実は、アドルノは文体的にもシュペングラーの延長的なところもあるし、彼がシュペングラーに興味を少なからず持ってい ることは歴然としているが、何しろ「・・芸術商売のでっち上げた芸術史の一片としての表現主義とかいう厚顔無恥の道化芝 居・・」などと公言し(西欧の没落-音楽と彫塑と-)没落形態の実例として断言する相手だから、党派的態度を一応とるアド ルノがキビシイのは当然なのではある。とはいえど、アドルノが十分なシュペングラー理解を持っていたとは、色々な観点 から云えそうもない。 ところでシュペングラーの発想は大きな問題点も抱えていたにせよ、実は 他の芸術哲学を論じた誰よりも、具体的な芸術 分析の観点からは、非常にメリットのある立場であることは改めて考えていい。まず、 全世界史的規模の視点により、個々の文明形態と芸術、経済、政治、科学技術を一応均等に関連させ、その相似性を問題と した発想の重要性。観相学なる視点(これもアドルノとある程度重なる。ただし、アドルノは、彼の否定の概念から根本的 に個別的で、真に包括的な概念形成を行えないし、逆に シュペングラーは様式概念が先走り、個別的考察が非常に不足す る・・・) 「・・世界史を完成させるところの有機的諸単位の内的構造を、細心の注意で明らかにし形態学的に必然的なものと本質的 なものとを、偶然的なものから区別し、出来事の表情を理解し、そうして、その表情の基礎となっている言語を探求するこ とである・・」 (観相学という方法について基本的に述べている箇所の1つ。『・・没落』世界史の問題・有機体としての文化より・・) また唯物論的発想へ(真のマルクスでないにせよ、マルキスト的社会主義)の史観的アンチテーゼ。近代中心主義の相対化 (・・これはシュペングラーの創意の源泉でもある)など、また勿論 有名な「アポロン的、ファウスト的」というような ”文化区分”・・・etc 20世紀のあるひとつの流行が去りつつある今、シュペングラーの作り出した概念は、むしろ新鮮な面白さがあるのでないか? もちろん、そのままで、というのでなく新しい取り扱いをする事によって。たとえば、 ”仮晶”という概念など、アラビア文化やロシア文化という大きな実績のある文化に適用するのは如何にも偏見の匂いがする が(イスラム時代は仮晶を脱しているとされる)、『戦後の日本文化』に当てはめれば、ずっと面白くはないか?というよう に見ること・・・ (偏見と言っても普通思われている以上に例えば、ずっと”反ナチ的”であり、アーリアン・セムというのは馬鹿げた合い言 葉であると強調しているし、大衆迎合的な発想は、この人の嫌悪する没落形態でもあり、その憤死?の理由ですらありうる。) ある程度体系的なヘーゲルの美学、ショーペンハウアーの影響を総合する立場にあるし(ニーチェ、ゲーテなどのアイディア を踏まえ) さらに 実際より、時代が下っているため現代芸術への(根本的に批判的ではあるが)視点も含まれるのも 重要なことで、このことも様式に対する彼の考察を他の美学を単独に論じた人々に比べて有利なものにしている・・ 例えば、 印象派美学には寛容なそぶりを見せ、その解釈も興味深い、があまり素直に受け取るのは禁物で また、ラファエロ等の記述にみるシュペングラーのルネッサンス理解には特筆すべきものもある・等々・・・ (ついでに、非常に簡単にして、云い足すなら、シュペングラーは西欧のルネッサンスはギリシャローマの古典美を、ファ ウスト的な動力学の中で、結局 表面的=架空の構成として造形したというふうにいっているのである。・・・だから、 レオナルドの『3王礼拝図』が、「・・あらゆる体躯的なものが浮動しているのである」というふうに彼には見える。) (2000・10月頃、殆どの部分記入。2002・5/12・6/4・6/22補いの9行&4行&3行程度足す) 上の話しをもっと詳しく云えば、 『 シュペングラーとGBショーとニーチェの関係? 』 HOME→