ALBUM COLLECTION バックナンバー 2006
■January ■Februaly ■March ■April ■May ■June ■July ■August ■September ■October ■Nobember ■December
- WITH ODEN ON OUR SIDE/AMON AMARTH
- CHIMERA/ANDROMEDA
- AURORA CONSURGENS/ANGRA
- TEN YEARS IN HELL/ANNIHILATOR [DVD]
- CITY OF EVIL/AVENGED SEVENFOLD
- THE FINAL REQUIEM/AXENSTAR
- FLY/BLIND GUARDIAN
- A TWIST IN THE MYTH [Limited Edition]/BLIND GUARDIAN
- BELIEVE/BURNING IN HELL
- BURNED DOWN THE ENEMY/BURNING POINT
- PITCH.BLACK.EFFECTS/CALLENISH CIRCLE
- ENTER DECEPTION/CELLADOR
- THE GRAND MACHINERY/CONSTRUCDEAD
- THORNOGRAPHY/CRADLE OF FILTH
- THE DIARIST/DARK LUNACY
- MIND TRICKS/DISARMONIA MUNDI
- INTO A NEW DIMENSION/DIVINEFIRE
- BLACK WINGS OF DESTINY/DRAGONLORD
- UNITED/DREAM EVIL
- THE GRAND DESIGN/EDENBRIDGE
- ROCKET RIDE/EDGUY [Limited Edition]
- THE WINTER WAKE/ELVENKING
- DRAGONHEADS/ENSIFERUM
- BEFORE THE BLEEDING SUN/ETERNAL TEARS OF SORROW
- THIRD ACT/EVIL MASQUERADE
- THE FALL OF AN EMPIRE/FAIRYLAND
- NORTHWIND/FALCONER
- ALLEGIANCE/FIREWIND
- WHEN DREAM AND FATE COLLIDE/FREQUENCY
- DEAD FANTASIA/FOLLOWBANE
- BEYOND THE END OF DESPAIR.../GALNERYUS
- THRESHOLD/HAMMERFALL
- THE DEAD EYE/THE HAUNTED
- IN THESE VEINS/HEARSE
- VIRUS/HEAVENLY
- INSTANT MADNESS/HIGHLORD
- COME CLARITY/IN FLAMES
- REVENGE/IRON FIRE
- A MATTER OF LIFE AND DEATH/IRON MAIDEN
- MANIACAL RENDERINGS/JON OLIVA'S PAIN
- THE BLACK WALTZ/KALMAH
- ONE COLD WINTER'S NIGHT [DVD]/KAMELOT
- AS DAYLIGHT DIES/KILLSWITCH ENGAGE
- REFORMATION/KIUAS
- TALES ALONG THIS ROAD/KORPIKLAANI
- SPIRIT OF THE FOREST/KORPIKLAANI
- KARMACODE/LACUNA COIL
- UNSU/LYZANXIA
- L'OMBRE ET LA LUMIERE/MANIGANCE
- FEEDING THE ABSCESS/MARTYR [IMPORT]
- BLOOD MOUNTAIN/MASTODON
- THE BLACK CIRCUS, Part 1 - Letters/MANTICORA
- THE HOURS THAT REMAIN/MERCENARY
- THE POWERFUL HAND/METATRONE
- WORLD DOMINATION/NAILDOWN
- SPLENETIC/NEGLECTED FIELDS
- NON HUMAN LEVEL/NON HUMAN LEVEL
- TILL DEATH UNITES US/NORTHER
- VERMIN/OLD MAN'S CHILD
- WHEN EDEN BURNS/PERSUADER
- LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE
- OPERATION: MINDCRIME II/QUEENSRYCHE
- SPEAK OF THE DEAD/RAGE
- TRIUMPH OR AGONY/RHAPSODY OF FIRE
- ARMY OF ONE/RIOT
- REVOLUTION ROAD/ROCKET SCIENTISTS
- NOW,DIABOLICAL/SATYRICON
- DANTE XXI/SEPULTURA
- FALLOUT FROM THE WAR/SHADOWS FALL
- BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES
- CHRIST ILLUSION/SLAYER
- SODOM/SODOM
- THE FIRST MOVEMENT/SYMPHONIA
- THE TWILIGHT CHRONICLES/TEN
- CHAOSDRAGON RISING/TERROR SQUAD
- UNDER REPRISAL/THREAT SIGNAL
- THE CRUSADE/TRIVIUM
- BEDLAM/TWILIGHTNING
- III: IN THE EYES OF FIRE [Limited Edition]/UNEARTH
- IMPRESSIONS IN BLOOD/VADER
- CHRIST 0/VANDEN PLAS
- WARBALL/VICIOUS RUMORS
- VISIONS OF EDEN/VIRGIN STEELE
- REDIVIVUS/WINTERS BANE
- DON'T FEAR THE REAPER/WITCHERY
- THE SHADOW CABINET/WUTHERING HEIGHTS
■ | JanuaryANDROMEDA | CALLENISH CIRCLE | DRAGONLORD | EDGUY | NON HUMAN LEVEL | SILENT VOICES | |
CHIMERA/ANDROMEDA |
キメラ/アンドロメダ |
MARQUEE MICP-10567 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。テクニカルなプログレメタルをやってきたバンドですが、このアルバムではバンドの一体感が高まったエモーションとテクニックがシンクロする楽曲重視な姿勢を見せています。。スリリングなムードと緩急激しいスピード感が心地よい1から、トリッキーなリズムからへヴィに展開していくミドルテンポの2は感情が曲進行とともに劇的に昇華されていく一曲になっています。リリカルなイントロから情感豊かにミステリアスなムードが紡がれる3、テクニカルに進む4は緊張感を保って一気にクライマックスへと持っていく激しい展開が堪能できる渾身の一曲。静かなイントロからメロウなパートを経てヴォーカル、ギター、キーボードが感情を爆発させていくダイナミックな大作の5、ヘヴィリフが剣呑なムードを作り出す6は鬱屈を開放するヴォーカルが激しいグルーヴィなナンバー。スペーシーなイントロからの7はテクニカルにスピードを上げていくキラキラキーボードも鮮やかに楽器の圧力を高めるプログレメタル。音空間の密度を上げ下げしながらエモーショナルに進む8、スロー&へヴィに迫る9は黒いムードが破滅を予感させていく長尺のナンバー、ボーナストラックはライヴ音源が収録されています。 テクニカルなプレイが嫌味にならない洗練されたサウンドは、エモーショナルなヴォーカルの力強い歌唱も手伝って、バランス良くドラマティックな仕上がりを見せています。個性と言う点では大分後退した感もありますが、様々な要素やフィーリングが適度に満足できる聴きやすい一枚になっています。 |
同系統アルバム WALK IN MINDFIELDS/IVANHOE THE UNCROWNED/LAST TRIBE ENIGMATIC:CALLING/PAGANS MIND |
PITCH.BLACK.EFFECTS/CALLENISH CIRCLE |
ピッチ・ブラック・エフェクツ/カレニッシュ・サークル |
METALBLADE JAPAN MBCY-1058 [☆☆☆] >>>>>BUY...?オランダ出身のバンドの2005年に発表された5枚目のアルバムです。ベーシストがまた居なくなってしまった模様。前作はスウェーデンな感じのデスラッシュなサウンドを作ってきたわけですが、今度のアルバムではエレクトロニックなエフェクトとか叙情メロディを強化して、まあモダンなメロデス、かなり手垢が付いたスタイルをやってきてます。まあ、アルバム毎にいつも違う音な訳ですが。そういうバンドの暗中模索が毎回提示されるサウンドは、いつもそれなりのクオリティを保っているので、どうこう言うのが難しい代物になってます。アグレッションはそこそこ、メロディまあまあ、曲展開それなり、演奏安定感ありと、このスタイルでこのアルバムしかなかったら、もっと良い評価が下されるんでしょうけど、これだけ似たようなスタイルのバンドがひしめく激戦区では、まあ貶したりはしませんが積極的に薦めるのにも躊躇するような微妙な一枚です。 |
同系統アルバム SADISTIC SEX DAEMON/MISANTHROPE THE ARRIVAL/HYPOCRISY FORCE THE PACE/WITHERING SURFACE |
BLACK WINGS OF DESTINY/DRAGONLORD |
ブラック・ウイングス・オブ・デスティニー/ドラゴンロード |
KING RECORD KICP-1122 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?テスタメントのギタリスト、エリック・ピーターソンのサイドプロジェクトのセカンドアルバムです。ベースがスティーヴ・ディジョルジオからテスタメントにも参加したことのあるデリック・ラミレズに替わっています。荘厳で黒いイントロから繰り出されるのは、壮大で邪悪なブラックメタル・サウンドでエリックのヴォーカルもすっかり本職並。正統派ヘヴィメタルからヨーロピアン・ブラックメタル、さらに自らのルーツであるスラッシュメタルまで多くの要素を一つに集約させていく手法は完成度の高いもので、ネヴァーモアに加入したスティーヴ・スマイスのギターソロも冴え渡り、クリーンヴォイスとデスヴォイスのコントラストも効果的に楽曲を演出していきます。アメリカとヨーロッパを行き来する間に純化されて研ぎ澄まされていくサウンドに、ヘヴィメタルは最終的にアメリカで完成するのだろうか、と思わせられる一枚です。 |
同系統アルバム IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR NYMPHETAMINE/CRADLE OF FILTH |
ROCKET RIDE/EDGUY [Limited Edition] |
ロケット・ライド(初回限定盤)/エドガイ |
MARQUEE MIZP-60004 [☆☆☆] >>>>>BUY...?新世代ジャーマンメタルの雄、エドガイの7枚目のアルバムです。今作ではメロディックメタル界隈ではすっかり有名になってしまった元ヘヴンズ・ゲイトのサシャ・ピートをプロデューサーに迎えて、前作の路線を更に推し進めつつ製作されています。前作での広義のジャーマンメタルを源流に持った正統派ヘヴィメタル・サウンドへの傾倒を見せた方向性は、さらにスコーピオンズ〜アクセプトの系統を強く受け継いだルーツへと遡るロック的なものへと向かっています。ドラマティックに仕上げた大作の1で始める辺りは前作での自信が余裕に繋がった結果と思われ、ハロウィン直系のギターソロまで唄ってしまったアップテンポの2はポジティヴなコーラスで手堅くまとめた感が強まっています。湿ったメロディがキャッチーなコーラスと一体になって迫る3、8は80年代なムードを生み出し、スローナンバーの4はダークな空気が強まったメロウな曲。タイトルトラックはレインボーしてみたくなったハードロックナンバーで、彼らの狙う路線が分かろうかと言うものです。ダイナミックな6は力強く感情を積み重ね、柔らかいバラードの7はすっかり手馴れたものです。スピードナンバーの9は緊張感不足でスピード感が鈍っていたりしますが、シングルカットされた10は彼らの新たなスタンダードになりそうな雰囲気を持っています。ブラジルツアーで気持ちも軽くなったか、アングラみたいなラテンなポップチューンの11、何だかLAメタルみたいなロックナンバーの12で一応アルバムは終わります。初回限定のDVDはアルバム製作風景やライヴ、インタビューとかまあ色々、価格の元は取れます。 とにかく、バンドのメンバーがすっかりリラックスして自由なフィーリングで楽しんで作ったのが良く伝わってくるアルバムで最低レベルの品質は保っていますが、バンドの楽しさが聴き手にまでは今一つ届かないもどかしさが残ります。前作でのギリギリの緊迫感から開放されてすっかり楽になったのは良く分かりますが、サウンドまで釣られて緩くなってしまうことはないだろう、ってもんです。そのおかげでキャリアは長いとは言え、年齢的には若いバンドにも関わらず老成した雰囲気まで漂う始末です。まだまだ丸くなるには早過ぎるし楽な方向にシフトしないで、もっとロケットで突き抜けて欲しかった微妙な一枚です。 |
同系統アルバム AERONAUTICS/MASTERPLAN OBJECTION OVERRULED/ACCEPT STRATOVARIUS/STRATOVARIUS |
NON HUMAN LEVEL/NON HUMAN LEVEL |
ノン・ヒューマン・レヴェル |
SOUNDHOLIC TKCS-85135 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のダーケインのドラマー、ピーター・ウィルドアーがヴォーカルをとり、同じくダーケインのクリストファー・マルムストロムがギターを担当するニュープロジェクトのファーストアルバムです。ベースには元メシュガーのグスタフ・ヒーム、ドラマーにデヴィン・タウンゼンド・バンドのライアン・ファン・ポーデルーエンを迎えています。ミステリアスなイントロから切れ味鋭いドラムとギターリフが激しく迫る緩急の強い1から壮絶な突進力と叙情性の高いギターソロを合わせ持った劇的なナンバーが叩きつけられるアルバムは、厚みのあるギターソロも印象的な暴走突進ナンバーの2、クリストファーの鬱憤を晴らすかのようなフラッシーなギターが全編を支配する3、6、メロウなメロディとヘヴィリフが情感を高める4は9.11に捧げるインストゥルメンタル。壮絶なドラミングに圧倒される5はテクニカルな展開と荘厳なパイプオルガンの響きも手伝ってドラマティックに仕上げられています。クリストファーの隠された面を明らかにするメランコリックなインストゥルメンタルの7、激烈疾走が爽快な8は問答無用の凄まじさ、変則リフが高密度で迫る9は静と動のコントラストが激しいナンバー。アウトロには再び爽やかさと哀愁を孕んだインストゥルメンタルを。ボーナストラックにはW.A.S.P.のカバーを持ってくるあたりが好感触。 メンバーの顔ぶれからして、サウンドの方はどう転んでも激烈メロディック・デスラッシュなわけですが、ピーター・ウィルドアーのデス声も結構様になっていて、超人的なドラミングが聴かれないのもあまり残念ではありません。スタイルとしては、本家のダーケインに近いもので、そこに煽情性の高いメロディを詰め込んでストレートに仕上げた感が強くテクニカルで変則的な本家よりも分かりやすくなっています。手法がかなり煮詰まってきたダーケインよりは、即効性の高い激烈サウンドをネオクラシカルギターで包み込んだ、こちらのバンドに専念した方が良さそうな気配の一枚になってます。 |
同系統アルバム LAYERS OF LIES/DARKANE WOUND CREATIONS/AMORAL THE SICKNESS WITHIN/HATESPHERE |
BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES |
ビルディング・アップ・ジ・アパシー/サイレント・ヴォイシズ |
MARQUEE MICP-10566 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの三枚目のアルバムです。ソリッドなギターリフで押してくる攻撃的なサウンドで組み立てられていく楽曲は前作の流れを踏襲したもので、スリリングでダークな1から長尺で構成力の高いインストゥルメンタルを詰め込んだドラマティックな楽曲を揃えてきます。へヴィリフからセンチメンタルなフィーリングが広がっていくエモーショナルな2では展開と情感がシンクロしながらクライマックスへと向かう密度の高さが聴き所。クランチーなリフがアップテンポで押し込まれる3は伸びやかなヴォーカルの爽快なメロディラインも伴って飛翔感のある仕上がりになっています。エキゾチックな空気も漂うダークなスローナンバーの4は壮大さを持ったダイナミックな展開で物悲しい雰囲気を生み出し、アグレッションも高まる5はソリッドなリフとギター/キーボードソロがドラマティックに昇華するパワーメタルな一曲。神秘的なSEからの6はアコースティックによる叙情性が高まるバラードナンバー。再びスリリングなリフが展開される7はテクニカルなフレーズを積み重ねるシリアスなメタルナンバー、アルバムを締めくくる8はへヴィネスとミステリアスが交錯する長編で感情の高まりが展開とともにうねりを作り出していき、緊迫感と開放感が融和していく渾身の一曲です。 長丁場の曲でも飽きさせずに聴かせる構成力と不安感皆無の安定したプレイが一つになって、劇的なヘヴィメタルを作り出しているアルバムは、プログレ/パワーメタル好きには堪えられないものになっています。これまでに培われてきたドラマ性の演出がダイレクトに聴き手に伝わるようになったあたりは、自分たちの手法を確立した自信の表れと言えるでしょう。オリジナリティも強まってこれからの活躍が期待される一枚です。 |
同系統アルバム ENIGMATIC:CALLING/PAGANS MIND OCTAVARIUM/DREAM THEATER CHIMERA/ANDROMEDA |
REDIVIVUS/WINTERS BANE |
レドヴァイヴァス/ウインターズ・ベイン |
SPIRITUAL BEAST SBCD-1033 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?元ジューダス・プリースト〜現アイスド・アース、さらには自身のバンドBEYOND FEARで活動しているティム“リッパー”オーウェンスが在籍していたことでしか知られていない幻のバンドの2005年に発表された13年振りの復活アルバムです。中心人物であるルー・セント・ポールがドイツのPOWERGODのヴォーカリスト、アレクサンダー・コッホ、さらに元メタリウムのドラマー、マーク・クロスを集めて製作されています。アルバム的には色々あってセカンドかサードか微妙な感じです。強烈なギターリフの応酬で始まるアルバムは一瞬で期待感を最高に高めますが、微妙な感じのパワフルヴォーカルが入ると、…あれ?と、テンションが結構低下。ヴォーカルのパフォーマンスはさておき、純正パワーメタルなサウンドを迷いなく展開していくアルバムは、ソリッドなリフにヒステリックなギターソロも飛び出すドラマティックな1から、アップテンポでクランチーなギターリフを繰り出す2は乾いたメロディが緊迫感を保っていきます。ヘヴィリフがうねりを上げる3、4はミステリアスな雰囲気が高まり、哀愁帯びたメロディがテクニカルに展開していく5はドラマティックなヴォーカルラインが盛り上げるファンタジックな一曲。ヘヴィナンバーの6、8はエモーショナルなヴォーカルが熱く、7ではドライブ感を増して力強さを演出していくソリッドなナンバー、9は畳み掛けるリフが心地よいスピードナンバー。10〜13のボーナストラックはデモバージョンが収録されています。 アメリカンな硬質サウンドにハスキーな熱血ヴォーカルが微妙にフィットしない感じもありますが、慣れてくると最初よりは気にならなくなってくる辺りは、楽曲の魅力がパフォーマンスを上回る作曲能力を感じさせます。今更、リッパー在籍時のことを持ち出しても誰も覚えちゃいませんが、楽曲が生み出すムードはあまり変わっておらず実直なパワーメタルに最近のへヴィネスな感覚が加わった妥当な進歩と言える仕上がりになっています。アルバムが進むにつれて段々テンションが下がっていくのが難ですが、固定メンバーでやっていければ安定したポジションにつけるかもしれない一枚です。バンドとしての活動が今後も順調かどうかは不明ですが、そういえばアメリカのパワーメタルバンドって皆ヴォーカルに苦労してるよなあ…。 |
同系統アルバム SEVEN SEALS/PRIMAL FEAR ASTRONOMICA/CRIMSON GLORY THE CALL/HEED |
■ | FebrualyANNIHILATOR | BLIND GUARDIAN | CONSTRUCDEAD | ELVENKING | IN FLAMES | OLD MAN'S CHILD | PYRAMAZE | WITCHERY | |
TEN YEARS IN HELL/ANNIHILATOR |
TEN YEARS IN HELL[DVD]/ANNIHILATOR |
SPV 9947D [DVD] >>>>>BUY...?ジェフ・ウォーターズ率いるカナダのテクニカルスラッシャーの二枚組DVDです。正直どこから10年を数えているのかは謎ですが、とりあえず映像のクオリティという点ではかなり酷いもんです。初期ビデオクリップなどの貴重映像を集めたディスク1と、各アルバム製作時の事を解説するインタビューが納められたディスク2で構成されているわけですが、まあ、ディスク2は語っているだけなので英語に堪能だとそれなりに興味深く、不自由だと…そうでなくてもバンドの熱心なファン以外は面白くないわけで。そういうわけで、ディスク1をちょっと観てみることにしよう。 オープニングのバンドロゴとかCGのイントロはやたらとキレイなわけですが、さすがにオフィシャルなビデオクリップとは言えB級ホラーっぽい1989年ものの“ALICE IN HELL”はオバサンっぽいアリスンはどうかと、ってアルバムのリリースパーティーにそのモデルも登場するわけだが。ジェフ・ウォーターズのエキセントリックなプレイは最初っからだったんだ!とか、やっぱりアナイアレイターは初期だよな!とか思ったり思わなかったり。で、「NEVER,NEVERLAND」の時のライヴ映像はどこのホームビデオ?って感じの劣悪さだ、これは大画面だとキツイぜ!うちのテレビは小さいが。アクセプトみたいなフォーメーションが素敵。やはりセカンドアルバムの曲は熱いぜ!で、インタビューの合間に流される“ALICE IN HELL”のクリップが目障り。このクリップはかなりの頻度で現れるのでDVDが進めば進むほど効いてくる。 初めて観た“STONEWALL”のビデオクリップは随分洗練されたなあ、って言うか売る気マンマンだなって感じですよ。この路線が正しかったかどうかは今となっては微妙だけど。そしてカナダの「徹子の部屋」みたいな番組(おっさんだけど)に出演するジェフとか、Mステみたいな番組とかってテレビに出れるのかよ!凄いぜカナダ。ああ、マサ伊藤が司会の日本プロモーションの様子とかもある。で、セカンドアルバムのツアーの模様が再び何ですが、こんどはどこのブートビデオ?って感じのキツさ。“SET THE WORLD ON FIRE”になると流石に安心して観られるビデオクリップになってます、まあスタジオセットで金は掛かっていないが!で、問題の「KING OF THE KILL」以降ですよ。このクリップ、ジェフ以外のメンバーの顔見せないんですけど!全員シルエットかよ!(笑) えーと、1994年って何で日本に来たんだっけプロモーション?それはともかく“21”の映像、ドラマーの人にボカシ入ってるんですけど。“SYN.KILL 1”のクリップはロードランナー系な社会派な感じに、映像効果もやっと増えたぜ。2000年のベルギーでのライヴの模様もほとんどブートだしな! バンドの歴史を辿るDVDとは言えクオリティ的にはガッカリなわけですけど、まあ他にアナイアレイターのDVDも無いし動いているジェフが見られるバンドに対するお布施だと思ってファンは入手するのが良いのではないかと。ファン以外にはとてもオススメできない。 |
同系統アルバム THE HISTORY OF IRON MAIDEN [THE EARLY DAYS] |
FLY/BLIND GUARDIAN |
フライ/ブラインド・ガーディアン |
VICTOR VICP-63370 [SINGLE] >>>>>BUY...?2006年夏に発表予定の8枚目のフルレンス・アルバムに先行発表されたシングルです。新しいドラマーはほとんど無名の人らしいです。まあ、この際専任ベーシストも入れればいいのにね、ハンズィは弾く気が無いようですし。それはさておき、曲の方は多彩な表情を見せながら、ふんだんにコーラスを盛り込んで二転三転していく前作「A NIGHT AT THE OPERA」アルバムの空気を引き継ぐもので、次のアルバムもシリアスなパワーメタルでブッチギリ!って感じでは無さそうです。アコースティック・バージョンで収録された2は彼ららしいリリカルなムードが満載のファンタジックな一曲ではありますが、これもノーマルバージョンの仕上がりは不明。3は60年代に活動していたサイケデリックロックバンド、アイアン・バタフライのカバーで、次のアルバムの参考にはならない訳で、次回作も賛否両論の孤高の一枚になるのは必至って感じでしょうか。ちなみにジャケットのアートワークは残念ながらアンドレアス・マーシャルでは無い、ですがRAGEの新譜も手がけた人らしいですよ。 |
同系統アルバム |
THE GRAND MACHINERY/CONSTRUCDEAD |
ザ・グランド・マシーナリー/コンストラクデッド |
SOUNDHOLIC TKCS-85138 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの2005年に発表された三枚目のアルバムです。ヴォーカルとギターが替わって製作されています。短いノイジーなイントロの直後、凶悪な破壊力で突き進んでいくアルバムは、獣性の強いデスヴォーカルと高圧の鉄壁リフを構築していく2から、ブルータルなサウンドを生み出していきます。スラッシーなリフが荒れ狂う起伏の激しい3ではクリーントーンのコーラスとエモーショナルなギターソロも加えて哀感のコントラストを作りだし、畳み掛けるギターリフが圧迫感を強める突進ナンバーの4、ミドルテンポの5は捻じ込むようなリフワークが切れ込んでいく高圧の一曲、怒涛の爆走チューンの6はあっという間に駆け抜ける怒りの情動。ヘヴィに突進する7は緩急激しくハイテンションのヴォーカルと共に衝動性を高めていき、ナレーションのSEから凶悪なヘヴィリフが展開されていく8は破滅の光景を描き出す荒涼とした一曲。一転して爆走する9はクランチーなリフに荘厳なコーラスの演出も加わった黙示録な曲でドラマティックなギターソロも印象的。ソリッドなリフがスピードを上げ下げしながら突っ込んでいく10は漢臭いコーラスで盛り上げますが、内容は女性の曲。哀愁たっぷりのへヴィなインストゥルメンタルの11から鬱憤を晴らしながらヤケクソ気味に突進するクソッタレ感満載の12へ。ボーナストラックは、邪悪感が高まるアグレッシヴなアップテンポの13、クランチーなリフと哀愁コーラスがアメリカンな感じの14、へヴィなイントロから突進する起伏の激しい15の三曲が収録されています。 メンバーチェンジが何かと激しいバンドですが、生み出されているサウンドは硬質ながらも生々しい感覚を味あわせており、破壊力満点のブルータルなアルバムに仕上げています。リードギターの煽情性とギターリフの壮絶さの組み合わせが作り出す凄絶な情景に彩られた一枚です。 |
同系統アルバム THE SICKNESS WITHIN/HATESPHERE RECLAIM THE BEAT/DEFLESHED MALEVOLENT RAPTURE/LEGION OF THE DAMNED |
THE WINTER WAKE/ELVENKING |
ザ・ウィンター・ウェイク/エルヴェンキング |
ATTIC ARCADE GCCY-1017 [☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドの3枚目のアルバムです。ギタリストとヴォーカリストが脱退して1stアルバムで唄っていたヴォーカリストが復帰して製作されています。ヴァイオリンの調べが響くフォーキッシュなメロディ満載の微妙な力み系ヴォーカルのパワーメタルをやっているアルバムは、豪快なコーラスがテンションを上げていく劇的展開の1から、イタリアの情熱と湿ったメロディが組み合わさったサウンドを作り出しています。フィドルの調べがフォーク色を強めるアップテンポの2はスピードアップするコーラスで煽情力を高め、デストラクションのマイク・シュミーアが参加した3は哀愁帯びたメロディが感情を揺さぶるセンチメンタルなミドルテンポの劇的ナンバー。ハイテンションでフォーキッシュに突っ走る4は緩急も効かせつつ哀愁たっぷりに進み、ミドルテンポの5はトラッドなメロディが郷愁を誘う躍動感の強い一曲。女性ヴォーカルが加わる6はアコースティックに進むまさにフォークな曲、ドラマティックに疾走する7はトラッド色が薄まったオーセンティックなスピードナンバーで泣きそうなヴォーカルと熱いコーラスが聴き所。堅実なトラッドメロディで進む8はデスヴォイス風の叫びも加えて起伏も激しく物語を紡いでいきます。リリカルなイントロから叙情的なメロディが広がる9はキャッチーな展開を見せるアップテンポの曲。フォーキッシュに突っ走る弾むリズムの10は情念高まるヴォーカル&コーラスラインが伴ってテンションを上げていき、トラッドに集約されていきます。再びアコースティックでしっとりねっとり迫る11、ボーナストラックの12はシャープなメロディが鋭く迫る起伏の激しいドラマティックなスピード感のあるナンバー。 ヴォーカルがやたらと苦しそうなのが結構気になったり、メロディックスピードメタルとフォークメタルのどっちつかずになる展開とか、フォークな感覚が血肉にはなっていないのだろうかと思わせるところもあり、良いところとダメなところが相殺されて志の高さがパフォーマンスやクオリティに反映されないあたりが少し残念な感じ。トラッド色は本家の北欧勢に一歩及びませんが、瞬発力と求心力のある北欧風のキャッチーなメロディがもっとイタリアンに消化されていけば、面白い存在になりそうな一枚です。 |
同系統アルバム VOICE OF WILDERNESS/KORPIKLAANI WINGS/SKYLARK FOLKEMON/SKYCLAD |
COME CLARITY/IN FLAMES |
カム・クラリティ/イン・フレイムス |
TOY'S FACTORY TFCK-87399 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの8枚目のアルバムです。アメリカに渡ってメタルコア勢のエッセンスを吸収したサウンドは、突進力のあるシャープでソリッドなリフの1からアグレッションとエモーションが融合したもので、すっかり板に付いた感があります。ミドルテンポの2は煽情性が高まるニューウェーブ風の感覚が戻って、ギターソロもタップリ。情念を吐き出すヴォーカルがクリーントーンも交えつつ進む3は哀愁リフも伴って叙情感を高めていきます。同郷のポップ女性シンガーを迎えた4はクリーンな女性ヴォーカルとデスヴォイスとのコントラストも激しく力強く進むドラマティックなナンバーで、アルバムのハイライトになっています。ヘヴィリフから疾走に移る5は激情を高めつつ一気に突進するブルータルな仕上がり、リリカルなイントロから苦悩と迷いを鮮烈に吐き出していくエモーショナルなタイトルトラック、再び突進していく7はクリーンコーラスも加えて起伏も激しくドラマティックなギターソロも詰め込んで盛り沢山。ミドルテンポでブルータルなヴォーカルと叙情的なメロディが一体となっていく8、扇情的なメロディが積み重ねられていく9はクリーンコーラスで感情の振れが最大限に達する情感豊かながらもメタリックな一曲。キレのあるリフで突進していく10もコーラスワークが印象的、11では更にクリーントーンからのギターソロが扇情力をアップ。イン・フレイムスらしいと思わせる北欧風味炸裂の12は哀愁メロディが旧来のファンを鷲掴みにする別の意味でハイライトなアップテンポのメロディアスナンバー。センチメンタルな静けさを伴った長いパートの後、高まった感情を吐露していくへヴィな13でアルバムは幕を閉じます。 ギターソロや北欧的な感覚を減らして、アメリカナイズてヒットチャートに殴りこみを試みたバンドでしたが、当のアメリカのバンド群が北欧的なものに染まっていて、自分たちのサウンドをやっていないのは自分達だけか!みたいな。そういうわけで、アメリカに渡る前の路線で良かったことを思い出したようなギターソロとかも満載のサウンドが展開されていくアルバムは、モダンな感覚と北欧のメランコリックな感覚が上手く融合できた代物になっていて、迷走感を払拭するものになっています。洗練度が上がった分、情念と言うか抑圧と言うか絶望感みたいなものの温度が下がった気がしますが、これまでの微妙な感じは減った安心感のある一枚になっています。 |
同系統アルバム UNDOING RUIN/DARKEST HOUR ASCENDANCY/TRIVIUM OF LOVE AND LUNACY/STILL REMAINS |
VERMIN/OLD MAN'S CHILD |
魔界獣/オールド・マンズ・チャイルド |
MARQUEE MICP-10578 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ディム・ボガーのギタリスト、ガルダーのソロプロジェクトの6枚目のアルバムです。固定メンバーがガルダー唯一人になってしまい本当にソロプロジェクトになってしまいました。ミステリアスなギターから壮絶なイントロで開幕するアルバムは、邪悪さ炸裂のデスヴォイスが咆哮し、湿ったメロディとサタニックなムードが融合していくミドルテンポの1からコンパクトになったドラマティックサウンドが展開していきます。更にテンポを落として重厚に迫る2は黒い瘴気が充満させて、シンフォニックにスピードアップ。キレのあるリフを繰り出しながら侵攻する3はスラッシーなパートで一転疾走に移る起伏の激しいナンバーでミステリアスなインストと泣きのギターソロも伴って劇的空間を演出していきます。ダイナミックなイントロから速度を上げ下げしつつ迫る4はピアノの響きをアクセントに持った劇的ナンバー、不安感高まるイントロから邪悪なムード満載で進む5はミドルテンポからリズムチェンジして盛り上がる展開の細かいミステリアスな曲、鋭いリフで突き進む6は物悲しいメロディも印象的な劇的ナンバー。怪奇なムードがテクニカルな展開で彩られる7、リリカルなイントロから暗く疾走していく8は狂気を露にしながら劇的に破滅へと雪崩れ込みます。ボーナストラックは粘っこいヴォーカルが哀愁メロディ伴うドラマティック展開へと導かれる9、10は地獄の底の脈動のようなSEが収録されています。 最近の豪華なブラックメタル的な装飾がかなり剥ぎ取られたプリミティヴなブラックメタルに接近したサウンドは、スラッシュメタル然としたムードや正統派メタル風の空気を持ったドラマティックなもので、楽曲の構成力と演出力を確かに感じさせるものです。一人になったことで、しがらみや制約から開放された自由な感覚とあふれる創作意欲が全編に漲るアルバムは、冷気と哀愁漂う暗黒世界を聴き手に提示していく安定感のある一枚になっています。 |
同系統アルバム BLACK WINGS OF DESTINY/DRAGONLORD PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR NYMPHETAMINE/CRADLE OF FILTH |
LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE |
レジェンド・オブ・ザ・ボーン・カーヴァー/ピラメイズ |
KING RECORD KICP-1127 [☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドのセカンドアルバムです。ムアコックっぽい世界観のファンタジーなコンセプトアルバムになっています。元バランス・オブ・パワーのランス・キングの広い声域と声量を持った粘りの歌唱を中心にドラマティックなヘヴィメタルを生み出しているアルバムは、ナレーションを絡めた神秘的なイントロダクションから、クイーンズライクを彷彿とさせる冷気を伴ったメロディとソリッドな空気が緊張感を保ち叙情的なコーラスへと開放されていく2へと。緊迫感高まるギターリフで進む3は緩急を効かせながら進むドラマティックなスピードナンバーで躍動感のあるギターソロが印象的。ピアノの調べを伴ってスリリングに展開する4はスピード感のあるパートからの表情の異なるパートへの転換も鮮やか。キレのあるギターリフで押していく5は緩急も激しい劇的哀愁ナンバー。物悲しいメロディが綴られる6は女性ヴォーカルも加えて劇的に演出していくパワーバラード。アップテンポの7は扇情性の強いヴォーカルメロディが哀愁を誘い、フォーク風のサウンドで彩る8は緊張感を出し入れしながら朗々と進むミドルテンポのナンバー。9はナレーションを加えたインターミッション的な不穏なナンバーで、続くクライマックスの10へ。ソリッドなリフが壮大に広がっていく10は物語の終結を告げる風格を保ちながら、アルバム全体を俯瞰したようなアウトロの11を迎えます。 オーセンティックな劇的ヘヴィメタルのフォーマットに沿った安定したクオリティを持った作品で、とりあえず心配すること無しに聴かせますが、冒頭に抱かせる期待ほどは盛り上がらないあたりは残念。類型を脱するには至らないですが、一定の品質を維持した一枚です。 |
同系統アルバム BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES SILENCE SPEAKS/PLATITUDE ENIGMATIC:CALLING/PAGANS MIND |
DON'T FEAR THE REAPER/WITCHERY |
ドント・フィアー・ザ・リパー/ウィッチリー |
TOY'S FACTORY TFCK-87401 [☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のザ・ホーンテッドのギタリスト、パトリック・ヤンセン率いるバンドの4枚目のアルバムです。アクセプト、プリティ・メイズ、ローリング・ストーンズと有名?バンドの楽曲のタイトルをもじってきたバンドですが、このアルバムではどうやら、ブルー・オイスター・カルトの名曲をもじって…いない模様です、そのまんまだから。それはさておき中身の方は、アルバム毎に微妙にスタイルを変えてくるバンドですが、今作ではドロドロしたデスヴォイスに不穏な空気が巻き起こる重量感と暗闇が渾然一体となったへヴィネスに転化したスラッシュメタルと言った様相を見せています…、ってスレイヤーが「SOUTH OF HEAVEN」で辿った道ってそのままやる気か!ジリジリと迫る高圧力のイントロから、それと一体となる重さとキレが同居するギターリフが緩急を付けながら展開されて邪悪さと焦燥感を高めていく2で幕を開け、へヴィかつソリッドなリフが暗雲を呼び起こす3、4、怪奇なムードが上昇していく5はタイトなビートと威圧感が交錯しあう踏みしめられるようなスローなヘヴィナンバー。これまでのアルバムを継承する突撃性を持った6は邪悪なムードは維持しつつも緩急の効いたスラッシーなナンバーになっていて、ちょっとギターソロが昔のRAGEっぽい。グルーヴィなリフの7は暗いメロディを孕んだミドルテンポの曲、邪悪さが急上昇のヘヴィナンバーの8はエキゾチックなギターソロが怪しさを増していきます。ザクザクしたリフが重量感たっぷりに繰り出されるインストゥルメンタルの9は妖しいギターメロディが不穏な空気を演出し、無慈悲に突進する10へと雪崩れ込みます。尖ったリフが圧迫感を高めていくミドルテンポの11、マーチ風のドラミングから混迷と暗黒が広がるインストゥルメンタルの12から、爆発力のある13はうねる突撃スラッシャー。ボーナストラックは瞬発力の強い爆裂デスラッシュ。 趣味に走ったサウンドを作り出してくるバンドだけに思い切りのよいサウンドの変化は、以前の暴走気味のロックンロールな感覚を期待していると肩すかしを食らいそうですが、スラッシュメタルの歴史を踏まえたスタイルの構築は一周しているだけに、うねるギターソロや捻り込むようなリフなどポイントは押さえたものにはなっています。密度の高いリフで構築される堅牢なサウンドが中心となったアルバムは、スラッシュメタル混迷期を知っている人には複雑な心境に、知らない人には…どうなんだろう?な80年代スラッシュメタル復権中の今時ちょっと外れたスタイルになった一枚です。 |
同系統アルバム SOUTH OF HEAVEN/SLAYER CHIMAIRA/CHIMAIRA FROZEN IN TIME/OBITUARY |
■ | MarchAMORAL | HIGHLORD | METATRONE | NAILDOWN | QUEENSRYCHE | RAGE | |
DECROWNING/AMORAL |
ディクラウニング/アモラル |
WOOD BELL WBEX-25013 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの2005年に発表されたセカンドアルバムです。ドライヴしていくスリリングなイントロからの緩急を効かせたスラッシーな1で始まるアルバムは、テクニカルながらもストレートな感覚が強まったデスラッシュなサウンドを作り出しています。グルーヴ感あふれるリフからキレのあるクランチーなリフへと展開する2は滑らかなギターソロで一服の清涼感を醸し出しつつ混沌としたムードを生み出し、黒いギターリフが唸るタイトルトラックは焦燥感を高めながら緊迫感のある起伏の激しい展開を見せていきます。叙情感の強いリフで進む4は豪腕なコーラスも伴って圧力を高める唸りを上げるタイトな一曲、クランチーなリフが密度を高めるメロデス風パートからテクニカルデスへと変化する5、ドス黒いムードのヘヴィナンバーの6はツインギターが妖しいメロディを奏でるコントラストの強い曲、鬱屈感の強いギシギシしたリフが切迫感を高めるミドルテンポの7、畳み掛けるブルータルなリフが速度を上げ下げしながら突き進みテクニカルなインストへと突入する8、繊細なメロディを奏でていくインストゥルメンタルの9から一転、不穏な空気が沸き起こる10はテクニカルに疾走し、破壊力たっぷりなへヴィパート、センチメンタルなインストなどが入れ替わりする千変万化の一曲。ボーナストラックはモトリー・クルーのカバーですが、既に原型が!? 力技の展開がスムースな流れになって、随分聴きやすくなったサウンドですが、正統派やスラッシュメタルの流れを汲んだドラマ性の強い曲構成は確かなテクニックに裏打ちされる安定感のあるものになっています。期待度を妙に膨らませていく、まだ正体を全て明らかにしていないようなトリッキーだったりスラッシーだったりする変幻自在のサウンドが集約されている一枚です。 |
同系統アルバム THE SICKNESS WITHIN/HATESPHERE YEARS IN WASTE/OMNIUM GATHERUM MALEVOLENT RAPTURE/LEGION OF THE DAMNED |
INSTANT MADNESS/HIGHLORD |
インスタント・マッドネス/ハイロード |
SOUNDHOLIC TKCS-85139 [☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドの5枚目のアルバムです。哀愁帯びたイントロからキーボードの華麗なサウンドが飛び出すアルバムは、ギリギリ感のあるハイトーンヴォーカルが熱く歌い上げるミドルテンポのドラマティックな1から、扇情的なメロディが戻ったイタリアンメタルをやってます。壮大にしてみようと頑張る2は劇的展開を随所に盛り込みつつ低めで推移します。ドラマティックな正統派パワーメタルな3は緊張感も維持されるエモーショナルなギターソロも印象的な一曲。ミドルテンポの4はエモーショナルな雰囲気が高まる展開に無理のある曲、ピアノの物悲しい調べが美しいパワーバラードの5、長編の6はヘヴィリフがプログレッシヴに展開していくトリッキーな曲。ミステリアスなアップテンポのナンバーのタイトルトラック。シンフォニックアレンジのキーボードに導かれる8はダークなムードも持ったキャッチーなナンバー。ボーナストラックは影山ヒロノブのヴォーカルが記憶に残るあの曲を日本語混じりでやってます。 またしても軌道修正したみたサウンドのスカスカ感が、ああイタリアンメタルだなあ、と思わせたりしつつもやっぱり求心力に欠ける代物になってしまっているのは、このバンドの業か。大仰さも力強さも哀愁も疾走感も劇的展開もあらゆるものが少しずつ足りてない楽曲は痒いところに手が届かないもどかしさで一杯で、前作よりも良い様な悪いような、やっぱり変わらないか。一番テンションが高まるのがドラゴンボールZの主題歌って言う時点でもうね。迷走状態が長すぎて、もうどうすればいいのか誰にも分からなくなっている一枚でした。 |
同系統アルバム REDIVIVUS/WINTERS BANE BACK FROM THE HEAT/ARTHEMIS ENSLAVED/STEEL ATTACK |
THE POWERFUL HAND/METATRONE |
ザ・パワフル・ハンド/メタトロン |
KING RECORD KICP-1136 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドのデビューアルバムです。メンバーには一足早く日本デビューしたオリオン・ライダースのヴォーカルとドラマーが在籍しています。荘厳で神聖な合唱隊のラテン語の歌声にドラマティックに導かれるアルバムは、ソフトなハイトーンヴォーカルが希望に満ちたメロディを歌い上げていくクリスチャンメタルになっています。アップテンポで伸びやかな歌声を聴かせる2は何だか神々しいような気がしてくるキーボードサウンドも伴って軽やかに進み、シリアスなムードが高まる3は物悲しいメロディがキラキラキーボードに迎えられてポジティヴに転換されていく様が心地よい一曲です。哀愁メロディとピコピコキーボードが疾走するキャッチーな劇的スピードナンバーの4でテンションを上げつつ、物悲しいムードの5はプログレハード風の展開でドラマティックに。壮大なイントロからヘヴィリフが繰り出される6は快活なコーラスとドラマティックな展開が賛美歌をイメージさせる楽曲。再びスピードアップする7はブレイクしつつ疾走するシンフォニックアレンジのキーボードも盛り上がる劇的ナンバー。クランチーなリフが躍動的に展開されていくスリリングな8、ミドルテンポの9は繊細なメロディが唄われる場面展開の細かいメロハーナンバー、叙情メロディで始まる10はテンポを上げつつ上昇していくポップなナンバー。11は有名曲と同名ですが、関係の無いリリカルな小品です。 カトリック神学校との共同プロジェクトと言う宗教的な側面はさておき、あらゆる要素がポジティヴに展開されていく聴いていて心地良いサウンドは何だか周りが明るくなってくる感じがします。細かいところは色々詰めが甘いですが、いつの間にか少なくなってしまっていた80年代風カラフルサウンドとイタリアンシンフォニックメタルを組み合わせた素直な一枚です。 |
同系統アルバム HEART & ANGER/SECRET SPHERE CIRCLE OF LIFE/FREEDOM CALL THE INQUISITION/AXENSTAR |
WORLD DOMINATION/NAILDOWN |
ワールド・ドミネイション/ネイルダウン |
MARQUEE MICP-10584 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの2005年に発表されたデビューアルバムです。キラキラキーボードのイントロから繰り出されるソリッドなリフが、かなりチルドレン・オヴ・ボドム風味なのはさておき。クリーンヴォイスからデスヴォイスまで表現するヴォーカルを乗せた叙情感を持ったメロディ満載の演奏でメロウなコーラスとの緩急の差も激しく、スリリングなインストゥルメンタルの応酬も聴かせる1から、新人離れしたサウンドを作り出していきます。クランチーなリフの圧力と繊細なメロディのコントラストが鮮やかな劇的ミドルテンポナンバーの2、ザクザクしたギターリフで突進する3はメガデス風なコーラスが印象的なダイナミックな曲。ミステリアスにグルーヴしていく4はダルそうなコーラスのヘヴィナンバー、アナイアレイターっぽい捻ったリフワークが印象的なスラッシーでメロウなコーラスが盛り上がる5、ヘヴィなリフで進む6はアンビエントなムードとロマンティックなメロディを持ったスローナンバー、唸りを上げるギター&キーボードリフで疾走する7は緩急自在に怒涛のパートとメロウなパートを交換しつつ突き進みます。押しの強いタイトなリフで進むアグレッシヴな8はメランコリックなコーラスへと変転し、フラッシーなギター&キーボードソロへと。ソリッドなリフが威圧感をメロディがメランコリックに迫るドラマティックな9、畳み掛けるリフの圧力が心地よい10はキラキラキーボードも元気な突進ナンバー。ボーナストラックの11はパワーメタリックなミドルテンポな一曲。 チルドレン・オヴ・ボドムに多大な影響を受けたサウンドではありますが、その元バンドが更に影響を受けているであろう、80年代スラッシュメタルからの影響も垣間見える先祖返りしそうなダイナミックでコンパクトな楽曲が揃えられているアルバムは、メランコリックなメロディとスラッシーなリフが混然となった叙情メロディックデスメタルに留まらない多様性を孕んだものです。既視感たっぷりのフレーズがふんだんに収められているものの、それらを纏め上げる能力はデビューアルバムとは思えない手馴れたもので、今後の躍進が期待される好感触の一枚です。 |
同系統アルバム COME CLARITY/IN FLAMES ARE YOU DEAD YET?/CHILDREN OF BODOM STABBING THE DRAMA/SOILWORK |
OPERATION: MINDCRIME II/QUEENSRYCHE |
オペレーション:マインドクライムII/クイーンズライク |
UNIVERSAL MUSIC WPCR-12262 [☆☆☆] >>>>>BUY...?18年の時を経て描き出される伝説のアルバム「オペレーション:マインドクライム」の続編にして9枚目となる一枚です。不安感と期待感が混濁するイントロダクションの1〜2から繰り出されるのは、タイトなリフにジェフ・テイトのハイトーンヴォーカルがアジテイトしていく乾いたメタルナンバーの3で緊迫感が維持されるサウンドが展開されて、皆の期待に応える超大作かも!?と思わせたりしますが、最近の彼らのムードが引き摺られていくミドルテンポのルーズでエモーショナルな4、ダイナミックに迫る5、過去のメロディを連想させていくダークな6、曲名とは裏腹にすご疲れたムードの7、やっとテンションの上がってきたアップテンポの8、シンフォニックアレンジのキーボードが孤軍奮闘のミドルテンポの9、ロニー・ジェイムス・ディオ御大がドクター・X役でその歌声を堂々と披露する10は流石にアルバムのハイライトとなるスリリングな楽曲で二人のヴォーカリストの掛け合いがドラマティックに展開されていきます。クランチーなリフで押していく11はシアトリカルな感覚が高まる起伏も激しいグルーヴィな一曲でスリリングなギターソロも鮮やかに、このテンションが維持されていればなあ、とか思わされます。ほとんどアカペラとSEな小品の12を挟んで、シスター・メアリーも登場する物悲しいメロディとコーラスが染みる13のパワーバラード、続く14はシンフォニックなアレンジも加わって更にドラマティックに変転していきます。ミドルテンポでドラマティックに盛り上げていく15、空虚な高揚感が描き出されていく16、アルバムを締めくくる17はセンチメンタルなバラードです。 刑務所から出所して混迷の中を彷徨うニッキーを表現するかのようなサウンドは、麻薬中毒者に引き起こされるフラッシュバックのように「オペレーション:マインドクライム」の幻想が想起される釈然としないながらも諦めきれないムードが期せずして演出されていきます、曲数は多すぎる気がするけど。揺り戻してちょっぴりメタル寄りになりプログレメタルで名を知らしめた頃のバンドの面影を少しは感じさせるものですし、ジェフ・テイトのヴォーカルは今も変わらず鮮やかで素晴らしいし、あの頃を思い出させるようなツインギターのフレーズもそれなりに楽しめなくも無い(過去の幻で上書きできるなら)ですが、実際のところディオ御大が絡んだ一曲だけでも充分だったような、いや少なくとも曲を絞って密度を高めた方が良かった気がする一枚です。 |
同系統アルバム BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE TOOLS OF DESTRUCTION/THUNDERSTONE |
SPEAK OF THE DEAD/RAGE |
スピーク・オヴ・ザ・デッド/レイジ |
MARQUEE MICP-10579 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ジャーマンメタルの重鎮、レイジの多分15枚目になるアルバムです。再びいや三度オーケストラとの競演を果たした意欲作になっています。高らかにファンファーレが鳴り響くオープニングから始まる組曲“Suite Lingua Mortis”は、インストゥルメンタルとへヴィメタリックなヴォーカル曲が組み合わされた大作で、プログレッシヴな感覚が強まる劇的で躍動的なインストの2から、ソリッドなリフとオーケストラが一体になって盛り上がりテクニカルなプレイの場面展開も鮮やかな3へ(リフが“MASTER OF PUPPETS”っぽいのはご愛嬌)。ヴォーカルの哀愁メロディが呼び起こすドラマティックなコーラスがライヴでの観客の叫びを喚起するのは必至のこの曲は既にアルバムのハイライト。悲壮感が高まるオーケストラのインストの4を経て、壮大なアウトロからの5はへヴィネスとダークネスが渾然となった曲で、インダストリアルなバンドパートと荘厳なオーケストラパートが融合していくダイナミズムが凄まじい仕上がりで現編成でのバンドの本質的な部分が露になったような代物になっています。テクニカルなプレイがへヴィに展開されるインストの6からオーケストラの繊細な調べを聴かせる7へ。暗いムードを保ちながら迎える8はセンチメンタルなメロディが郷愁を誘うパワーバラードで、エモーショナルなギターソロを加わって情感を最高潮へと高めていき、エンディングは壮大にまとめるあたりが彼ららしさを醸し出します。 パワーメタルだけではないレイジがすべて詰め込まれたような前半とは打って変わって、威圧感たっぷりのメタルリフが叩き込まれるヘヴィでアグレッシヴながらもメロウなコーラスとトリッキーなギターソロが加わる異形ナンバーの9、キャッチーなメロディと厚いコーラスで突っ走る10はレイジ節炸裂のハイテンションなナンバー、リリカルな始まりからパワーメタリックに展開する11はアップテンポでやっぱりキャッチーなコーラスが満載の曲でドライヴするギターソロが心地よいです。馬力を上げて突撃する攻撃的な12、ソフトなパートとへヴィパートのコントラストも鮮やかな13、躍動的なリフで突っ走るキャッチーな14、タイトルトラックは変なメロディと奇妙な展開が炸裂する捻くれたナンバーで、ある意味落ち着く彼らっぽい一曲。16は衝撃のボーナストラック! 「LINGUA MORTIS」「THIRTEEN」「GHOSTS」を経てバンド存続の危機を迎えてまで成し遂げようとした、このバンドのクラシックとヘヴィメタルとの融合への遠く長い道のりを知るファンであれば、ヴィクター・スモールスキを迎えて到達したとても涙無くしては聴けないこの組曲。各々のバックグラウンドが前面に押し出されたクラシックだけに留まらないプログレッシヴな要素も満載の大作は、このメンバーでのバンドの熟成を感じさせるものです。組曲だけで既にクライマックスを迎えていて、いつもの調子の後半を持ち直すのは苦労しているアルバムではありますが、日本語で唄われるボーナストラックは日本人には良いアクセントになっていてファンサービスにも余念の無いバンドの余裕が見られます。アルバムの構成上、尻すぼみになってしまっているものの、野心的で実験的な誰にも真似できないサウンドを現出させる一枚です。 |
同系統アルバム THE EMPIRES OF THE WORLDS/BIOMECHANICAL MAJESTY & PASSION/VICTOR SMOLSKI THE GLORIOUS BURDEN/ICED EARTH |
■ | AprilKALMAH | KORPIKLAANI | KORPIKLAANI | MANIGANCE | SEPULTURA | SODOM | VANDEN PLAS | |
THE BLACK WALTZ/KALMAH |
ザ・ブラック・ワルツ/カルマ |
KING RECORD KICP-1141 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身バンドの4枚目のアルバムです。へヴィでドロドロ感のあるイントロから広がっていく叙情的なメロディを奏でるキーボードとギターが乱舞する疾走ナンバーの1から凶悪さを増したヘドロデスヴォイスとの美醜のコントラストも激しく突き進むサウンドは、スラッシーなリフで緩急を付けながら軽やかに疾駆する2、畳み掛けるリフで圧搾する3でも濃密なメロディが分厚く迫り、メロディに支配される4はブラストビートと叙情感が重なり合う起伏の激しい曲で、エモーショナルに繰り出されるギターソロも耳を惹きます。センチメンタルなインストの5を経て、大仰な叙情感を炸裂させるイントロからメランコリックなメロディを紡ぎだしていくタイトルトラックは煽情力が最大限に発揮される劇的ナンバー。トラッド風味のメロディが起伏も激しく突進していく7は唸りを上げるインストゥルメンタルが一気にムードを加速していきます。ミステリアスなムードで突進していく8は沈み込んでから盛り上げるメロディワークがちょっとメガデスっぽい。物悲しいメロディに檻のように取り囲まれていくミドルテンポの9、怒涛の突進力を見せる10もメロディとの相克が緊張感を生み出していくダイナミックなナンバー、キャッチーなメロディの応酬で叙情感を高めていく緩急の激しい11、ボーナストラックはスリリングなリフからの官能的なインストゥルメンタルも鮮やかなファストナンバー。 爽快さの欠片も無いデスヴォイスを際立たせる、古典的なインストゥルメンタルのアレンジと、粘性の強いメロディワークが合わさって独特の感覚を作り出しているサウンドは、北欧の荒涼とした空気を伝えるもので、これまでの路線を維持する安定感のあるものです。テンションの高い前半から叙情感が強まっていく後半に向けて気分も吊られて沈んでいく辺りが難ですが、微妙なバランスを保ちつつ濃厚なメロディを積み上げていく手堅い手腕もすっかり板に付いたサプライズは少ないながらも落ち着いて聴ける一枚です。 |
同系統アルバム WORLD DOMINATION/NAILDOWN UNDOING RUIN/DARKEST HOUR IDOLATOR/BLOOD STAIN CHILD |
TALES ALONG THIS ROAD/KORPIKLAANI |
世にもコルピな物語/コルピクラーニ |
SOUNDHOLIC TKCS-85141 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの三枚目のアルバムです。パーカッションが脱退し、ベーシストが交替して製作されています。調子っぱずれなアコーディオンの調べに導かれるアルバムは、かなり酒量が増えたフォーキッシュなサウンドを展開していきます。どう考えても下手過ぎだろ!なフルートと暴走気味のアコーディオン、さらにコーラスもドラムも騒々しく突き進む宴もたけなわなハイテンション疾走ナンバーの1から、アップテンポでハッピーに緩急もつけて突っ走る2、牧歌的なイントロからやっぱり駆け抜けつつ静かなパートの哀愁たっぷりの3、やっとスピードを落とした4は郷愁を感じさせるダイナミックなナンバー。再びアップテンポでドライヴするフォーキーなインストゥルメンタルの5を挟んで、物悲しいムードを高めていくミドルテンポの6へ。雄臭いコーラスで押し切るミドル〜アップテンポの7、酒が抜けたかシリアスなムードで突進する8、早口で突撃する9、アップテンポなのにセンチメンタルなムードも漂う10、ボーナストラックはグダグダ加減が何だか心地よいインストゥルメンタルが収録されています。 ギターがいらないんじゃないかと思わせるヴァイオリンとアコーディオンのインパクトが強まるサウンドはヴォーカルの酒焼けっぷりもすっかり堂に入ったようで、飲んだくれメタルの名に恥じない北欧フォークメタルを作り出しています。酒が抜けないうちに終わらせる気かよ!な勢いたっぷりに考える暇も無く過ぎ去っていきアルバム一枚ハイテンションで突っ走りますが、これってもう完結してるな。 |
同系統アルバム THE WINTER WAKE/ELVENKING IRON/ENSIFERUM INHUMAN RAMPAGE/DRAGONFORCE |
SPIRIT OF THE FOREST/KORPIKLAANI |
翔び出せ!コルピクラーニ/コルピクラーニ |
SOUNDHOLIC TKCS-85142 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの2003年に発表されたデビューアルバムです。今となっては飲みが足りないおとなしさすら感じさせるサウンドは、吐き捨てヴォーカルにヴァイオリンやフルート、パーカッションなどを加えたトラッドな風味が強まったファンタジックなものになっています。伝説と言うか衝撃のPVのテンションはそれほど感じさせませんし、個性もあまり発揮されていませんが、まあ安心して聴けることは聴ける一枚です。 |
同系統アルバム BATTLE METAL/TURISAS SWORD'S SONG/BATTLELORE EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA |
L'OMBRE ET LA LUMIERE/MANIGANCE |
ロンブル・エ・ラ・リュミエール〜陰と光〜/マニガンス |
MARQUEE MICP-10572 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フランス出身のバンドの3枚目のアルバムです。センチメンタルなイントロダクションから始まるアルバムは、タイトなギターリフでシリアスなムードを演出していくアップテンポの劇的な2へと進んでいきますが、これまでのようなキラキラ感が少し減って、タフな空気が増加したサウンドになっています。キャメロットを彷彿とさせるメロディアスなフレーズも飛び出す3はテクニカルなプレイで何転も繰り返すドラマティック展開の連続のスピードナンバーでこれまでの路線をパワーアップしたかのような一曲で渾身のインストゥルメンタルパートが圧巻。憂いを帯びたムードでタイトに展開していく4、躍動感のあるリフで突っ走る5はキラキラキーボードが自己主張を強め、神秘的な雰囲気からへヴィに展開するミドルテンポの6は開放感のあるコーラスで盛り上げます。さらにスピードを上げる7はハイテンションな疾走曲。バラードナンバーの8を挟んで、スリリングなリフが躍動的に繰り出される9はドラマティックなサビと緊迫するギターソロが印象的。ダークに迫る10はメタリックなリフもタイトに迫るアップテンポの一曲。荘厳なイントロからエモーショナルなフレーズが炸裂する11はジリジリ盛り上げていくフラッシーな曲、アウトロの12はテクニカルなプレイが堪能できるインストゥルメンタル。ボーナストラックには前作の曲のライヴバージョンが収録されています。 フランス語の流麗な響きがもたらすファンタジックなムードをソリッドになったサウンドが力技でシリアスなムードへ引きずり込むアルバムは、ストレートなヘヴィメタルの感覚も強まって硬派な印象を強めています。ドラマ性を強めたインストゥルメンタルパートに象徴される自分達の特徴を活かしつつも、パワーメタリックに寄った側面を見せている一枚です。 |
同系統アルバム LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE CHIMERA/ANDROMEDA HEART & ANGER/SECRET SPHERE |
DANTE XXI/SEPULTURA |
ダンテ XXI/セパルトゥラ |
VICTOR VICP-63397 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ブラジル出身バンドの10枚目のアルバムです。ダンテの「神曲」をテーマにしたコンセプトアルバムになっています。これまでのトライバルかつハードコアなバンドのサウンドからは予想できない、ヨーロピアンな闇の感覚とオーケストレーションのイントロダクション、インターミッションを導入したアルバムは、全編を暗いムードで覆い尽くしており、これまでのファンを唖然とさせそうな代物です。咆哮ヴォーカルのブルータルでアグレッションな本編部分は大方今までの路線を踏襲するものですが、ストリングスやホルンなどこれまで以上に様々な楽器が使われたサウンドは、シンフォニックなパートまで加わる衝撃的な5を含む、唸りを上げて攻撃的に迫る2〜6までの地獄篇。 アポカリプティカとも競演したバンドが換骨奪胎したかのようなストリングスの響きも物悲しい8やセンチメンタルでブルータルな10、トライバルな感覚が戻るへヴィな11、スラッシーな突進ナンバーの13などで構成される苦痛に満ちたヘヴィナンバーで綴る煉獄篇。そして、呪文の詠唱から壮大に展開していく14〜15の天国篇の三部に分かれています。ボーナストラックにはジューダス・プリーストのカバーが収録されていますが、このアルバムの方向性なら他の曲の方が良かったような。 ヴォーカリストのデリック・グリーンが持ち込んだアイディアが民主的になったバンドに受け入れられたことで結実したコンセプトアルバムは、新たな局面に挑戦するバンドの可能性と方向性を示すと共に、ヴォーカリストのパフォーマンスが多彩な音楽性に追随しきれない限界やドラマ性を作り出すための楽曲構成の経験不足なども露呈させています。新たな要素がバンドの意気込みと当初の期待値ほどには実際のサウンドには反映されなかったものの、新生セパルトゥラを感じさせる次回作への期待も高まる一枚です。 |
同系統アルバム FROZEN IN TIME/OBITUARY POSSESSED 13/THE CROWN UNTIL THE END/KITTIE |
SODOM/SODOM |
ソドム/ソドム |
KING RECORD KICP-1126 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ジャーマンスラッシャーの重鎮バンドの11枚目のアルバムです。唸りを上げる凶悪なギターリフと、今ではすっかりお馴染みのブルータルな吐き捨てヴォイスのコンビネーションが繰り出す1は20年にも及ぶバンドの歴史を吹き飛ばすような威圧感と破壊力に満ちたミドルテンポのナンバーで、ここに来て更にクオリティを上げてきたアルバムを象徴するものです。三人で出している音とは思えないブルータルな突進ナンバーの2では切れ味鋭く重いリフを緩急自在に使って突き進む脂の乗ったスレイヤーを彷彿とさせるナンバー、哀愁帯びるメロディを含みつつダイナミックに進むミドルテンポの3は盛り上がりっぷりがまるでメガデスのような。クランチーなリフに乗せて情感を吐き出していくヴォーカルの咆哮にエモーショナルなギターソロが合わさった4は正統派メタルなムードの一曲。タイトなビートで小気味良く突っ込んでいく5はドライヴするリフがテンションを高めていくアップテンポのナンバー。グルーヴィなリフでへヴィに進む6は静と動のコントラストも鮮やかなダークな一曲。再びキレのあるリフでスラッシーに特攻する凶悪な7、這いずるようなリフの邪悪なムードの8は徐々に盛り上げていくヘヴィナンバー。暗い熱気を帯びてジリジリとテンションを上げていく9、キレキレなスラッシュナンバーの10、ミドルテンポの11はリフの壁にある意味キャッチーなコーラスを乗せるパワフルなナンバー。 ボーナストラックはソドムらしいですが日本人だとちょっと微妙な気分になる曲名の爆発力を持って突進するスラッシュナンバーが収録されています。 ヘヴィメタル然としたダイナミズムやドラマティックとさえ言える曲展開などを内包しつつ、未だ衰えを知らぬ猛烈なスラッシュ・サウンドを生み出していく様は、若手バンドも物ともしない存在感を見せ付けます。スラッシュメタル全盛期を思い起こさせる、熱気とパワーが全編を覆い尽くすサウンドはバンド経験とセンスの結実を感じさせ、さすがにバンド名を冠する自信と説得力を合わせ持ったハイクオリティのアルバムになっています。 |
同系統アルバム ENEMY OF GOD/KREATOR INVENTOR OF EVIL/DESTRUCTION DON'T FEAR THE REAPER/WITCHERY |
CHRIST 0/VANDEN PLAS |
CHRIST 0/VANDEN PLAS |
INSIDEOUT MUSIC SPV48792 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。近作はデュマの「岩窟王」をテーマにしたコンセプトアルバムになっています。合唱隊の歌声にドラマティックに繰り出されていくキーボード&ギターのハーモニーが緊張感を高めるイントロダクションから、粘りのある独特のハイトーンヴォーカルが起伏の激しいメロディを歌い上げていくスリリングに展開するインストゥルメンタルパートも鮮やかな1で始まるアルバムは、湿り気を帯びた空気が全編を包み込むダークでエモーショナルなサウンドを描き出していきます。続くヘヴィナンバーの2はテクニカルなプレイも効果的に配しつつ、エモーショナルなコーラスへと導く場面展開の激しい一曲でスリリングなギターソロも印象的。楽器陣とヴォーカルが一体になってエモーショナルな空気を醸造していく3はセンチメンタルなメロディが開放されずに渦巻く物悲しくも劇的な長編。硬質なギターリフが盛り上がりを見せていくヴォーカルメロディを誘う4はキーボードの繊細さとタイトなギターによる緊迫感が交錯していくドラマティックなミドルテンポのナンバー、ドライヴするリフがダークに発展していく5は浮遊感のあるクリアーなコーラスへと進み、フラッシーなギターソロへと雪崩れ込みます。リリカルなピアノの調べが切なさを高めていくバラードの6では情感が膨れ上がり、荘厳なコーラスへと突き進みます。緊迫感高まるダイナミックなイントロからシャープなギターリフが更に緊張感を増す7はパワーメタリックな密度とスペースのあるコーラスが融合する一曲。叙情感たっぷりに唄い上げるヴォーカルが導く8はオーケストレーションも加わってドラマティックさに輪を掛けるサヴァタージあたりを彷彿とさせる壮大なナンバー。さらに物悲しいメロディが押し寄せる9はしっとりとアルバムと物語の終焉を告げていき、流される涙の海に沈んでいきます。ボーナストラックは本編に入れないのが惜しい、涙はまだ枯れ果てていなかったセンチメンタルメロディからスリリングに展開するドラマティックナンバーが収録されています。 満を持してコンセプトアルバムに挑んだバンドの気概を存分に味あわせてくれるサウンドは、その悲哀に満ちたモチーフもバンドのカラーとシンクロして悲劇性の強いドラマを描き出していきます。緻密な描写によって構築されていく華麗な音の演舞に酔いしれる、バンドの総力を注ぎ込んだ渾身の一作です。 |
同系統アルバム THE BLACK HALO/KAMELOT METROPOLIS PT.2:SCENES FROM A MEMORY/DREAM THEATER CHIMERA/ANDROMEDA |
■ | MayDISARMONIA MUNDI | ENSIFERUM | EVIL MASQUERADE | LACUNA COIL | NORTHER | PERSUADER | SATYRICON | TERROR SQUAD | TWILIGHTNING | |
MIND TRICKS/DISARMONIA MUNDI |
マインド・トリックス/ディサルモニア・ムンディ |
SOUNDHOLIC TKCS-85144 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドの三枚目のアルバムです。メンバーが次々脱落して一人プロジェクトになっていますが、前作に引き続きソイルワークのビョーン・ストリッドがヴォーカルで参加しています。湿ったメロディが怒涛のように炸裂していく、いわゆるメロディックデスメタルなサウンドですがクリーントーンのヴォーカルとビョーンのデスヴォイスに加えてセンチメンタルなコーラスワークが変幻自在に幾層にも連なりあって超劇的空間を創り出していく様は、ある意味ヴォーカルアルバム。ここぞという時には魅力的にスリリングなプレイを聴かせるインストゥルメンタル部分は楽曲の山場を一気に盛り上げますし、シャープなギターリフは先鋭性を露にしたサウンドを現出させ、豊潤なメロディをメランコリックに響かせるキーボードと有機的に絡み合っていきます。一人で製作しているだけあって、インストとヴォーカルに掛けるメロディの配分をあまり気にしないという事はあるかもしれませんが、ここまで人の声の比重が高まるメロデスサウンドはかなり異質な存在です。 バンドのメンバーはサッパリ集まってはいませんし、集まっても孤高の世界を崩してしまってダメになってしまう可能性も無きにしも非ずですが、一人の才能でここまでの作品を作り出せることを証明する一枚です。 |
同系統アルバム THE UNBORN/MORS PRINCIPIUM EST STABBING THE DRAMA/SOILWORK COME CLARITY/IN FLAMES |
DRAGONHEADS/ENSIFERUM |
ドラゴンヘッズ/エンシフェルム |
UNIVERSAL MUSIC UICO-1103 [MINI] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドのサードアルバムに伴うミニアルバムです。フロントマンのヤリ・マエンバがウィンターサンに注力したため脱退、後任にノーサーのペトリ・リンドロスを迎えています。雄大な情景が広がるフォーキッシュなタイトルトラックの1はミドルテンポで勇壮なコーラスを築き続ける壮大な曲、センチメンタルなメロディが滲み出すミドルテンポの2はブラストビートも加えつつヒロイックな世界観を提示していきます。リリカルなインストの3は孤独感と郷愁をかきたてる哀愁の一曲。一転して怒涛の突進を見せる4は哀愁を孕みつつデスヴォイスが咆哮するダイナミックでドラマティックなナンバー。やたらとハマっているアモルフィスのカバーの5、フィンランドのフォークのカバーメドレーの6が収録されています。 新曲にデモナンバーのリメイクとカバー曲を収めたミニアルバムですが、バンドの生真面目さが伝わるサウンドは余所のハッピーなヴァイキングメタルとは一線を画すものになっていて、センチメンタルな側面が際立っています。差別化を図るのにメランコリックな方面に寄るのが吉と出るか凶と出るか、それともフルアルバムでは新たな側面を見せてくれるのか、かなり予断を許さない一枚になっています。 |
同系統アルバム TURIS FRATYR/EQUILIBRIUM THE SPIRIT OF UKKO/KIUAS FATE OF NORNS/AMON AMARTH |
THIRD ACT/EVIL MASQUERADE |
サード・アクト/イーヴル・マスカレード |
MARQUEE MICP-10594 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドの三枚目のアルバムです。すっかり既視感を覚えるメンバー交替劇に長年のファンは嘆息気味でしょうが、バンドの創設メンバーであり元ロイヤル・ハントのヴォーカリストのヘンリック・ブロックマンが脱退して、元タイム・レクイエムのアポロ・パパサナシオ、更にベーシストに元SINPHONIAのトール・イェッペセンを迎えて製作されています。スペーシーでグルーヴィなイントロダクションから始まるアルバムは、堂々としたパワーヴォイスを引っさげて細かい切り返しを繰り返しながらドラマティックに突き進む2で湿り気を帯びたネオクラシカルワールドを展開していきます。暗く粘っこく迫る3はミステリアスなインストゥルメンタルで引っ張るへヴィ&キャッチーなナンバー。アップテンポでトリッキーなリフを刻む4はオーセンティックなメタルチューン、黒いムードで進む5は濃密なエキゾティック感が漂うグルーヴィな曲、オペラティックなヴォーカルでシアトリカルに迫る6は感情の振幅も大きくスピードアップするインストも一気に盛り上げるダイナミックなナンバー。ヘヴィナンバーの7はエモーショナルな歌唱とのコントラストが印象的、3拍子で躍動感を演出していく8はフォーキッシュなメロディも絡んで物悲しく帰結します。バロック調のインストの9を挟んで、モダンな空気も漂わせながらドラマティックに結ぶメタリックな10でもネオクラシカルなギターソロは健在。メランコリックに悲壮感と叙情感が熟成されていく11はドラマティックなパワーバラードでオペラティックなパートで一気に盛り上げます。ボーナストラックの12は大河の流れのようなインストゥルメンタル。 クセのあった前任ヴォーカリストよりも骨太で安定感抜群の歌唱を披露するヴォーカルに支えられるサウンドは、素っ頓狂なほどエキセントリックだったりエキゾティックだったりするところがかなり薄まって、よりレインボーというか伝統的スタイルのへヴィメタルになっています。伊達にゲストにデイヴ・ローゼンタールを呼んでいないって感じです、一曲だけだけど。ヴォーカルの性質に合わせたのか引っ張られたのかは定かではありませんが、やすやすとは躁状態にならない恐ろしく落ち着いた感じになってしまって、何だか20年くらいやってるベテランバンドみたいなムードを醸し出す、変にアクが抜けてしまった大人向けネオクラシカルアルバムです。 |
同系統アルバム THE INNNER CIRCLE OF REALITY/TIME REQUIEM CHAINED/AT VANCE SILENCE SPEAKS/PLATITUDE |
KARMACODE/LACUNA COIL |
カーマコード/ラクーナ・コイル |
MARQUEE MICP-10595 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。エキゾチックでへヴィな1からソフトな男性ヴォーカルと女性ヴォーカルの柔らかい響きに包み込まれるサウンドが展開されるアルバムは、メランコリックなムードが最高潮に高まるメロディックロックを作り出します。パワフルな歌唱を見せる女性ヴォーカルがヘヴィリフを引っ張るミドルテンポの2、アラビアンな風が吹きすさぶ3はエッジの効いたヴォーカルスタイルが浮遊感を孕むコーラスへと移行するミドルテンポの曲、メランコリックなメロディの波状攻撃の4、男女ヴォーカルが有機的に絡み合う5、アグレッシヴなギターサウンドと浮遊するコーラスが融和する6〜7の連曲、ツインヴォーカルがパワフルに圧倒していくミドルテンポの8、アップテンポでキャッチーなメロディが浮き沈みするダイナミックな9、気だるいムードをへヴィなサウンドで塗りつぶす10、へヴィに妖しげなメロディが展開される11、13、センチメンタルなメロディが優しく流れる12、ボーナストラックの14はメランコリックなナンバー、15はサードアルバム収録曲のアコースティックバージョンです。 不穏なへヴィネスが作り出す暗闇とセンチメンタルなメロディが生み出す灯火が、幽明な影を次々と映し出していく幻想絵巻を克明に刻んでいくアルバムは、やっぱり叙情感に押しつぶされないイタリアンの熱情が燃え上がって骨格のしっかりした感覚を与えていきます。耽美と狂おしい煩悶が激情の火花を散らしながら交錯する独特の世界を築くイタリアンゴシックな一枚です。 |
同系統アルバム VOL. 4/LULLACRY THE SILENT FORCE/WITHIN TEMPTATION FALLEN/EVANESCENCE |
TILL DEATH UNITES US/NORTHER |
ティル・デス・ユナイツ・アス/ノーサー |
UNIVERSAL MUSIC UICO-1102 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの4枚目のアルバムです。やたらと勢いのあるイントロから繰り広げられる北欧メロディックデスメタルの嵐は、吐き捨てデスヴォイスもすっかり板に付いたヴォーカルの叫びと触れれば切れそうなギターリフの応酬が渾然一体となって突っ込んでくる1から、鮮烈に繰り出されるメロディアスなギターソロと冷気を伴うキーボードも詰め込んで一気呵成に攻めあがります。骨太リフを繰り出して聴き手を圧迫していく2は鬱屈したムードを小出しに炸裂させていくミドルテンポのナンバーで、唸りを上げるフラッシーなギターソロがインパクト大。間髪入れずに始まるバンド名を冠した3は破裂感の強まる躍動的なナンバーで、叙情リフも加えながらドライヴしていく振幅の大きい曲。デスヴォイスが唄うミドルテンポの4はキャッチーな感覚とメランコリックなメロディが際立つ哀愁のナンバー、センチメンタルなメロディの波状攻撃を仕掛けるアップテンポの5、リリカルなメロディとへヴィなリフが同居する6はクリーンヴォーカルも加わって叙情性に拍車を掛けるミドルテンポの曲、叙情メロディが駆け巡る7は切れ味を増していくギターが凄みを増していきます。今時こんなタイトル付けるか?という8は後先考えずに突っ走る暴走ナンバー。ドタドタしたリフがキラキラキーボードと一緒に繊細なメロディを紡いでいくミドルテンポの9はメロウなコーラスで盛り上げます。これまた今時なタイトルの10はタイトなリフで固めていくミドルテンポの曲でスピードを増しつつテンションを上げていきます。中盤までかったるいへヴィ&メロディアスな11はギターソロは耳を惹く彼ら流のバラード。クランチーなリフを叩きつける12はハードなパートとメロディアスなパートの斬り返しも鮮やかに表情を変えていくアップテンポのナンバー。 ボーナストラックには2005年に発表されたミニアルバムが丸ごと収録されています。 流麗な速弾きギターソロもそこかしこで決まる躍動感のあるメロディックデスメタルが、中心人物の課外活動のブランクも感じさせずに繰り広げられていくアルバムは、何だかすっかり安定したと言うか、サウンドがこなれて誰でも無くなりつつあると言うか北欧メロデス最大公約数みたいな代物に接近しつつあるようです。ヴァイキングメタルをやっていた影響か、やたらと威勢が良くなったヴォーカルに引っ張られる弾けた感覚は、赤いジャケットだけに三倍の速度を生み出したりはしませんが、ブレーキの壊れた感じはミニアルバムの方が強いなあと思わせつつ、閉塞感が強まってきたこのスタイルでは割と健闘している一枚です。が、とりあえずクリーンヴォーカルのみだと、ちょっとゆる過ぎるのでその試みは止めといたほうがいいだろう。 |
同系統アルバム WORLD DOMINATION/NAILDOWN UNDOING RUIN/DARKEST HOUR THE UNBORN/MORS PRINCIPIUM EST |
WHEN EDEN BURNS/PERSUADER |
ウェン・エデン・バーンズ/パースエーダー |
MARQUEE MICP-10598 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。ヴォーカリストが専任になって新たにギタリストが加わって製作されています。ナレーションのイントロダクションから威圧感たっぷりに迫る突進疾走ナンバーで始まるアルバムは、ヴォーカルがあまりにも似ているブラインド・ガーディアン型の哀愁と激情が同居する起伏の激しいアグレッシヴなサウンドが詰め込まれており、独立性を持ったギターソロも更にキレを増してデスヴォイスに急接近したりする特徴的なパワーヴォーカルも馬力を上げていきます。ミドルテンポの2はレイドバックしたムードが漂うメランコリックなナンバー、高圧のギターリフで叙情感を煽る3はハイテンションのヴォーカルとシンガロングなコーラスが一体となって迫る劇的ナンバー。オーセンティックなヘヴィメタル風のミドルテンポの4は激情のメロディと硬質なリフが合わさる。アコースティックなイントロからヘヴィリフを展開させていく5は感情を叩きつけていくアップテンポの曲でトリッキーでエモーショナルなギターソロも印象に残ります。邪悪な空気が満ちるタイトルトラックはアグレッシヴなアップテンポのナンバーでデスヴォイスなクワイアを盛り込み、唸りを上げるギターソロも激しく緩急をつける劇的な一曲。叙情的なイントロから一転ブラックメタル風な疾走感を見せる7はダークなリフと漢臭いコーラスが突撃する曲で、フュージョン風のギターソロがムードを切り返します。キーボードが満載で哀愁と叙情性を全力で繰り出す暗いスローナンバーの8、静と動を柔と重を切り替えながら扇情的に迫るインストゥルメンタルの9、リリカルなイントロから突進する10はフックのあるリフが躍動する急展開の一曲。ボーナストラックは昔に作られた曲をリメイクした怒涛の突撃ナンバー。 ほとんどブラインド・ガーディアンなサヴェージ・サーカスとは異なる局面を目指して、その影響を徐々に薄れさせていくサウンドは、メロディックデスメタルやモダンなヘヴィロックの要素も取り込みつつ、独自性を持ったパワーメタルへと向かっているようです。アグレッション高まり熱気あふれる、これが若さか…と感じさせる勢いと周到な展開を合わせ持ったサウンドが詰め込まれる、バンドの存在感を示したアルバムです。 |
同系統アルバム DREAMLAND MANOR/SAVAGE CIRCUS JEANNE D'ARC/THY MAJESTIE BURNING IN HELL/BURNING IN HELL |
NOW,DIABOLICAL/SATYRICON |
ナウ、ダイアボリカル/サテリコン |
ROADRUNNER RRCD-31002 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ノルウェー出身のバンドの6枚目のアルバムです。いかがわしさ炸裂のイントロから悪魔教団の信徒が生贄を求めて迫り来るようなミドルテンポの楽曲が揃えられたアルバムは、呪詛めいたクラッシュ・デスヴォイスに悪夢のようなギターリフが詰め込まれていくサウンドが満載です。クリアーとも言えるシャープなサウンドとは裏腹に不快感を伴う空間を描き出しながら這いずるリズムによって暗黒世界を作り出していく様は、即物的なブラックメタルを超えた観念的で深層意識に侵入する毒素のようです。微妙に変化しつつ重ねられていくフレーズがアルバムを繰り返すほどに聴き手の不安感とバンドの怨念を拡大していく、辺獄に響く闇の勢力の侵攻を告げていく邪悪という言葉で表現するしかない一枚です。 |
同系統アルバム HERETIC/MORBID ANGEL ANNIHILATION OF THE WICKED/NILE DON'T FEAR THE REAPER/WITCHERY |
CHAOSDRAGON RISING/TERROR SQUAD |
カオスドラゴン・ライジング/テラー・スクワッド |
WORLD CHAOS PRODUCTION KDM-021 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?日本のスラッシャーの二枚目のアルバムです。吐き捨てダミ声ヴォーカルが炸裂する激烈サウンドは混乱と衝動が爆発する1からハードコア的な日本語歌詞でのアジテイトが加わる壮絶な代物になっていて、ブレイクを効かせながらインプロバイゼーションされたエモーショナルなメロディも顔を見せるドライヴ感の強い2、3はハードコア的な瞬発力を見せ付ける怒涛の爆裂スラッシュナンバーながらも流麗なギターソロを入れるあたりが初期のメガデスやアナイアレイターを彷彿とさせます。ブルータルデスメタルっぽい混乱と暴走を見せる4、テクニカルでシャープなメロディラインと吐き捨ても際に迫るヴォーカルがぶつかり合いながら一体となっていく5、突進力を上げた6は叩き斬るようなリフが荒れ狂い衝動的なシャウトが一転、プログレ風パートが加わる激しい切り返しを見せていきます。オールドスラッシャーな7はストップ&ゴーも激しく突っ走ったかと思えばキャッチーなフレーズを混ぜ込んで変態プログレへ。混乱しながら転がりまわる衝動的な8、ドラマティックでオーセンティックなメタル風な9ではプログレハードなギターソロで表情を一変させる展開の激しい一曲。静かなメロディが波紋を描くように広がっていくインストゥルメンタルの10、一転して激しさを増すリフが荒れ狂う11はありえない展開を見せていく分類的にはパワーメタルナンバー。 混沌の中から衝動と整合性を無作為に取り出してくる、予想の付かないサウンドが醸造されているアルバムは、バンドの持つポテンシャルと無制約なフリーキーな側面を色濃く感じさせるものになっています。鋭利なリフから華麗なフレーズまで何が飛び出すか分からないギターに、ハードコアな色合いを強めるヴォーカル、激しい曲調の変化に自在に対応するリズム隊が一体となって生み出していくサウンドが、ジャンルの枠組みを簡単に飛び越えて、聴き手の概念を覆していく意外性と新感覚に満ちた高密度のアルバムに結実した作品です。 |
同系統アルバム SCHIZO DELUXE/ANNIHILATOR TERROR FOR SALE/TERROR 2000 INVENTOR OF EVIL/DESTRUCTION |
BEDLAM/TWILIGHTNING |
ベッドラム/トワイライトニング |
UNIVERSAL MUSIC UICO-1101 [MINI] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドのミニアルバムです。骨のある力強いハイトーンヴォーカルに導かれるメロディックメタルは、哀愁たっぷりのメロディを使ったロックナンバーの1から一筋縄でいかない多彩な曲展開を見せ付けるクオリティの高さを味あわせます。ハードな感覚の2ではソリッドなリフにアグレッシヴなヴォーカルを乗せる骨太メタルを聴かせ、3では一転湿ったメロディで進むエモーショナルな80年代風ハードロックな曲調を見せます。アップテンポで躍動的に迫る4はハイテンションのハイトーンをフックに劇的なコーラスへと雪崩れ込む展開の激しい曲。アコースティックでブルージーに迫る5は楽曲の骨格だけでも魅力を発散できるバンドの地力を感じさせます。 凄まじい安定感を持って更に普遍的なヨーロピアンメタルに接近したサウンドは、テクニカルなツインギターも予想外の展開を披露してバンドの懐の深さを改めて再確認させられます。一曲にこれだけ多くの要素を詰め込めば、それはアルバム製作にも時間が掛かるだろうと思わせる捻りを効かせた展開に王道的なメロディを配したダイナミックな曲群は、ミニアルバムと言うことを忘れさせる密度の高さと続くサードアルバムへの期待感を煽る強力な代物です。 |
同系統アルバム ROCKET RIDE/EDGUY [Limited Edition] THE POWERFUL HAND/METATRONE LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE |
■ | JuneAVENGED SEVENFOLD | FOLLOWBANE | FREQUENCY | IRON FIRE | SHADOWS FALL | |
CITY OF EVIL/AVENGED SEVENFOLD |
シティ・オブ・イーヴル/アヴェンジド・セヴンフォールド |
WARNER MUSIC WPCR-12319 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?カリフォルニアはオレンジ・カウンティ出身のバンドの三枚目のアルバムです。メタルコアから派生したバンドが選択したサウンドはオーセンティック、さらには正統派路線まっしぐらのヘヴィメタルにLAメタル的な躍動感を加えた華のあるものです。ヴォーカルのスタイル自体はロックンロール色が強いにも関わらず、アイアンメイデン張りのツインギターが北欧メロディックスピードメタル風のメロディを響かせながら進む楽曲には、新しさと古さが共存する不思議な感覚が感じられたりするミスマッチの妙と言うか巡り巡って一体化したような。アイアンメイデンのデビューアルバムのようにパンキッシュなヴォーカルにプログレッシヴな感覚を持ったハードロックが組み合わさって作り出されたヘヴィメタル、という素材自体は既存のものでも組み合わせの目新しさによって新たな流れを生み出した事象が、この21世紀にも起こったのかもしれないと思わせなくもありません。サウンドの多様性が極大になってしまったような現在のシーンでこれに続くバンドが現れるかどうか分かりませんが、このスタイルを追求してくれる限りは正統派ヘヴィメタルファンにとってもメロディックロックファンにとっても歓迎すべき存在の一枚です。 |
同系統アルバム UNCHAINED/UNCHAINED GRIME VS.. GRANDEUR/FALCONER THE POWERFUL HAND/METATRONE |
DEAD FANTASIA/FOLLOWBANE |
デッド・ファンタジア/フォローベイン |
SOUNDHOLIC HMJ-0003 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?京都出身の二人組バンドの二枚目のアルバムです。メルヘンチックな調べが一転して激しく突き進むイントロダクションから始まるアルバムは、キーボードとギターが奏でる湿ったメロディが乱舞し、吐き捨て系のデスヴォイスも凶悪に進む展開の激しいメランコリック・スピードナンバーの2へと。メロディの扇情力も更にパワーアップしたサウンドは、続くブラストビートで緊迫感を高める凶暴な突進ナンバーの3でメロディとスピードの融合を果たし、優雅に流れるセンチメンタルな4では哀愁と激情が交互に繰り返される劇的展開を見せていきます。タイトルトラックはシンフォニックなキーボードを絡めたイントロからスピードを変化させながらメロディを重ねていく展開が荘厳さと情感を高めていく重層な一曲。叙情感たっぷりに激走する6は哀愁キーボードが前面に出しドラマティックチューンでギターソロも負けじと存在感を見せます。キラキラキーボードで疾走する7は、ポップな感覚を持ったメロディとジャーマンメタルを彷彿とさせるクワイアが一体になった高揚感高まるナンバーでアルバムでも少し毛色の変わった曲。オルガンの調べも荘厳なゴシック調のインストゥルメンタルの8を経て、物悲しいメロディが壮絶に繰り出されていくメランコリックからアグレッシヴへと流転する9へ。衝動に任せて怒涛の疾走を見せる10はキャッチーなメロディも伴って白熱する劇的ナンバーになっています。 エキセントリックなビートと日本人の琴線に触れるメロディをふんだんに盛り込んだアルバムは、爆発力を孕んだ展開と求心力の強まったスピード感が更に磨きを増し、叙情性と扇情性、さらには扇動性も強化されたサウンドが凝縮されており、前作からは確実な進歩を感じさせるものになっています。メンバーが揃ってバンド活動が軌道に乗ることを願って止まない一枚です。 |
同系統アルバム CRADLE OF INSANITY/SERPENT SPECTRAL/SKYFIRE WINTERSUN/WINTERSUN |
WHEN DREAM AND FATE COLLIDE/FREQUENCY |
ホエン・ドリーム・アンド・フェイト・コリード/フリークエンシー |
KING RECORD KICP-1168 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。デスメタルやパワーメタルのバンドで活動していたメンバーが集まって2002年に結成されています。哀愁メロディを伴った動感のあるギターリフにハスキーなパワーヴォーカルを乗せたサウンドは、エモーショナルなコーラスにテクニカルなギターソロがドラマティックに花開くアップテンポの1から新人離れした安定感を持った楽曲へと進んでいきます。ソリッドなへヴィリフに粘りのある歌唱を聴かせるミドルテンポの2でも哀感たっぷりのプログレッシヴなギターソロを加える劇的演出。叙情メロディを積み重ねながら情感を炸裂させていくヴォーカルのパフォーマンスがコーラスへと繋がっていくミドルテンポの3ではスリリングなインストが北欧メロデスへと転化していく様がスウェーデン。シャープなリフで突っ走る4はスピードを変化させながらドラマティックに進むテクニカルでエモーショナルなネオクラシカル風味のナンバー、ヘヴィリフと唸るヴォーカルが情念を煮え立たせながら進むスローナンバーの5、一転して躍動感を増したリフで朗々と唄われるパワフルな6はドラマティックなコーラスも熱いメタリックなナンバー。アップテンポの7はオーセンティックなスタイルのストロングナンバーでデスヴォイスも飛び出す熱血ナンバーで既存のスタイルに新風を吹き込もうとする意欲が伺えます。叙情メロディがアップテンポに展開されていく8はパワーメタルなスタイルでヴォーカルが情熱込めて歌い上げるダイナミックな一曲。泣きのメロディがソリッドなリフに連れられて豊かなコーラスへと移る9は劇的展開の妙を楽しめる曲になっています。ボーナストラックは1,2のでもバージョンが収録されています。 時折現れる新しい要素が停滞感の強かった伝統的スタイルにアクセントを加えていく楽曲が詰め込まれたアルバムは、各々のアイデアや経験を詰め込んで新しい風を起こそうという気概を見せるものになっていて、様々なヘヴィメタルが開花するスウェーデンならではの完成度の高さを感じさせます。 すでに実力派なバンドが生み出していくサウンドに、それまでのキャリアに裏打ちされたパフォーマンスは既に新人離れしたレベルに達しており、オーセンティックなヘヴィメタルに力強い援軍となりそうな勢いに満ちている一枚です。 |
同系統アルバム CHAINED/AT VANCE LONG LOST PRIDE/IMAGINERY TOOLS OF DESTRUCTION/THUNDERSTONE |
REVENGE/IRON FIRE |
リヴェンジ/アイアン・ファイア |
SOUNDHOLIC TKCS-85147 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドの3枚目のアルバムです。紆余曲折あって熱血メタルに回帰した模様。いきなりハイテンションでパワーヴォーカルがハイトーンで叫ぶの突進メタルで始まるアルバムは、緩急も効いたダイナミックで勢いのある1からとことんメタル。2では勇壮なメロディがアップテンポに展開されていき、フォーキーなパートも飛び出してヴァイキング風な装い。へヴィにのたうつ3はエモーショナルな叫びも熱いかなりドリーム・イーヴル風のスローナンバー。ドラマティックな語りから入る4はマノウォー的な展開を見せるアップテンポな曲でヒートアップするギターソロも印象的。叙情的イントロから熱気漲るコーラスで盛り上げていく5は勇壮さと郷愁を合わせ持つドラマティックな楽曲。ギャロップするリフが畳み掛けられるアップテンポの6はクワイアにギターソロも火が出るほど熱い鋼鉄ナンバー。ミドルテンポの7はやっぱりマノウォーっぽい雄々しいナンバー。フットワークの軽い8はキャッチーな湿ったメロディも伴ったアップテンポの曲、コンパクトなリフからキャッチーなコーラスへと繋いでいく9はミステリアスなムードも孕んだフックのある一曲。モダンなムードで展開する10はダークなリフと重苦しい展開が切れ味を増すヘヴィナンバー。11の哀愁のバラードで芸風の広いところを見せつつ、重厚に展開される12はコーラスが妙にキャッチー。ボーナストラックの13はキラキラ繊細パートから炎上しながら突っ走る疾走ナンバー、14は朗々と歌い上げるヴォーカルが哀愁を誘う静かなナンバー。 パワー全開で唄いまくる結構器用なヴォーカルとエモーショナルなギターに圧倒されるアルバムは、バンドイメージやジャケットから想像される垢抜けそうな音(歌詞は別)よりはかなり洗練度が高い突撃一辺倒ではないバラエティのある高品質のパワーメタルを作り出しています。バンドの熱気と意欲が聴き手に激しく伝わる迷いの無いパワーメタリックな一枚です。 |
同系統アルバム THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL GRAND ILLUSION/NOCTURNAL RITES DEFYING THE RULES/HIBRIA |
FALLOUT FROM THE WAR/SHADOWS FALL |
フォールアウト・フロム・ザ・ウォー/シャドウズ・フォール |
TOY'S FACTORY TFCK-87404 [EXTRA] >>>>>BUY...?マサチューセッツ出身のメタルコアバンドの新曲含む企画物アルバムです。純粋な新曲である6曲は、スラッシーなリフにエモーショナルなギターソロが絡む緩急の激しい突進ナンバーの1、クランチーなリフが突き刺さるアップテンポの尖った2、若干スピードを落としてヘヴィリフを繰り出していく威圧感の強い3、泣きメロリフがブレイクしつつ炸裂していく疾走ナンバーの4、ドタドタ突っ走る5はスクリーモなコーラスでテンションを上げる一曲。ヤケクソ気味に特攻していく怒涛のデスラッシュパートからグルーヴィに展開していく6と、叙情メロディとエッジの効いたギターリフがたっぷりの楽曲が揃っていて、安定感と停滞感が絡みあう次のアルバムにも過剰な期待をしないで済む出来ばえになっています。 リレコーディング曲の来日記念盤にも収録された7は初期に作られた楽曲で、ミドルテンポの混沌としたムードを伝える起伏の激しい曲、8はサードアルバムのボーナストラックに収録されていたアップテンポのナンバー。 残りのカバー曲はやっぱり新録ながら全て既発表曲で、ニューヨークのヘヴィロックバンド、ONLY LIVING WITNESSのカバーの浮遊感のある9、同じくニューヨークのハードコアバンド、LEEWAYのアグレッシヴでハイテンションな10、11は日本盤ボーナストラックだったデンジャラス・トイズのカバー。 新曲自体は、これまでの路線を継続するもので、特にサプライズとかはありません。自分たちの楽曲の再録は、まあプロダクションとかに不満でもあったんだろうと言う事で容認できる範囲ですが、カバー曲を再録するというのは、何だかサッパリ分かりません。カバー曲の10が一番盛り上がるって言うのもどうかと。その労力は次のアルバムに向ければ良いのにと思わせられる上に発表した理由が謎に満ちている一枚です。 |
同系統アルバム MIASMA/THE BLACK DAHLIA MURDER UNDOING RUIN/DARKEST HOUR OF LOVE AND LUNACY/STILL REMAINS |
■ | JulyCELLADOR | EDENBRIDGE | GALNERYUS | NEGLECTED FIELDS | RIOT | SYMPHONIA | TEN | THREAT SIGNAL | |
ENTER DECEPTION/CELLADOR |
エンター・ディセプション/セラドール |
METALBLADE JAPAN MBCY-1071 [☆☆☆] >>>>>>BUY...?アメリカはネブラスカ州で結成されたバンドのデビューアルバムです。ライオットのサンダースティールを高速化したようなハイトーンヴォーカルも熱い1から強力なスピード感と威勢の良いクワイアが高揚感を生み出しているアルバムは、ドラゴンフォース以降のバスドラムが破れそうなブラストビートを持ち込んだ息もつかせぬ超高速メロディックナンバーの2で更にスピードアップする箍の外れた壊れっぷりを披露していきます。ドライヴしていくリフが心地良い3は起伏の激しいメロディが聴き手を煽るやっぱりスピードナンバー、ってこのアルバムにはスピードナンバーしかありません!哀愁帯びるイントロからスピードを上げる4はギャロップするリフがオーセンティックなメタル感覚を呼び起こさなくも無い劇的ナンバーで湿ったコーラスがキャッチー。エピックなイントロから特攻していく5はスタスタ刻むドラムが忙しいファストナンバー。高揚感を高めるメロディが連鎖していく6はハロウィン血統のスピードナンバー。スラッシーに突っ走る7はヴォーカルのビブラートが気持ち悪いながらも明るいコーラスへ。マーチ風のイントロからそれでも突っ走る8は疾走感がすっかり効いてきたポップなコーラスとブラストビートでハイになる一曲。 ボーナストラックは4と8のデモ音源で不安定さに拍車が。 ハロウィンとドラゴンフォースを足したようなサウンドは、ブレーキを付け忘れた高馬力のスポーツカーでガードレールの無い峠道を突っ走っているみたいな早送りみたいな強烈なビート感とハイテンションのヴォーカルに、これは求心力のあるキャッチーなメロディを紡ぎだすギターが一体になったスリリングな展開でガシガシ攻め込んでくる代物。もっともそのスリリングな部分と言うのは、ギリギリ感の強い(たまに踏み外す)唄いっぷりと急ぎすぎて心拍数が上がる破綻しそうな演奏によってもたらされる綱渡り的な感覚が大勢を占めたりしていますが。とりあえず曲が詰まんないと思ったらスピードを1.5倍してみよう!とシンプルに実行してみた、やりすぎアメリカンのスピード廃人な全力疾走している一枚でした。 |
同系統アルバム INHUMAN RAMPAGE/DRAGONFORCE BURNING IN HELL/BURNING IN HELL BATTERING RAM/IRON SAVIOR |
BEYOND THE END OF DESPAIR.../GALNERYUS |
ビヨンド・ジ・エンド・オブ・デスペアー/ガルネリウス |
VAP VPCC-81542 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?日本から羽ばたく様式美バンドの三枚目のアルバムです。メンバーは各々別の活動もしていますが、それぞれの経験値が収束されたようなサウンドに仕上がっている模様。シンフォニックで物悲しいイントロダクションから導かれるアルバムは、力強さを増したスタイルのハイトーンヴォーカルが歌い上げていく叙情メロディが炸裂するスピードナンバーの2でドラマ性を高めたスリリングな展開と感情を激発させるギターソロが発動して一気に盛り上げると、泣きのメロディ暴走状態の小気味良い疾走ナンバーの3で更に畳み掛けられる劇的展開。ミドルテンポの4はエモーショナルなメロディが積み重ねられる情念系ヴォーカルが堪能できる一曲。ネオクラシカルなフレーズがこれでもかと劇的に繰り出されるスピードナンバーの5、キャッチーなメロディが耳を惹く6は明るいムードのハッピーなナンバー、一転して7はへヴィなムードが蔓延し鬱屈しながらもギターソロが存在感を示すナンバー。疾走感と叙情感が交錯しながらドラマティックに展開する8はテクニカルなプレイも飛び出す緻密な一曲。叙情バラードの9、フックのあるリズムからドラマティックに飛翔していく10は二段階のギターソロが盛り上げます。ネオクラドラマティックナンバーの11は力強いオペラティックなヴォーカルがカタルシスを生み出す渾身の一曲。ピアノが哀感たっぷりのメロディを紡いでいくインストゥルメンタルの12でアルバムは幕を閉じます。 中低音域を増やしたヴォーカルのスタイルに伴って、力強さと安定感を増したサウンドが展開されていくアルバムは、日本人の琴線をかき鳴らしそうな哀愁メロディ炸裂のアルバムで完成度は高まった一枚です。 |
同系統アルバム KEEPER OF THE SEVEN KEYS -THE LEGACY-/HELLOWEEN THIRD ACT/EVIL MASQUERADE L'OMBRE ET LA LUMIERE/MANIGANCE |
SPLENETIC/NEGLECTED FIELDS |
スプレネティック/ネグレクテッド・フィールズ |
SPIRITUAL BEAST SBCD-1039 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ラトヴィア出身のバンドの三枚目のアルバムです。女性ヴォーカルはとっくに居なくなっています。ノイジーな工業的SEが不安感を煽るイントロから、ザワザワしている凶悪なデスヴォイスがミステリアスでテクニカルな異様なバックに乗って怪しげな世界を作り出していく2へと進むアルバムは、狂ったメロディとスペーシーなサウンド、更に予想も付かない展開で聴き手を圧倒していきます。ザクザクしたリフで進んでいく3は伝統的メタル風のドラマティックな展開も孕みつつ、シンフォニックなキーボードが荘厳なムードを演出します。キーボードとギターが乱舞して突進していく4は唸るリフが攻撃性を増し畳み掛けるインストが様々な感情を描き出していきます。トリッキーなリズムにフレーズがまとわり付いていく5は予想不能の音が四方から襲い来る混沌としたナンバー。スローなイントロからねっとりしたメロディを刻んでいく6は怪しげなムードを維持しながらソリッドなギターリフの崩れるメタリックな曲調へと変転していく表情の異なるパートを組み合わせた曲。開放感が少し加わったイントロから悶え苦しみながらフレーズを連ねていく7は物悲しいメロディと狂ったフレーズがぶつかり合う異空間。センチメンタルなインストゥルメンタルの8から激しさを増した9はテクニカルなビートを刻みつつ圧迫感を高めていきスペーシーなインストゥルメンタルへと展開する謎めいた一曲。 ボーナストラックはセカンドアルバムのデモ音源が3曲収録されています。 ジャケット同様の異様な音空間が広がる、邪悪で混濁したサウンドはまさにエクストリーム。何をやるか分からない非人間的なムードと情感残るメロディが混在していく濃密で異質な空気が生み出されていく一枚です。 |
同系統アルバム WOUND CREATIONS/AMORAL YEARS IN WASTE/OMNIUM GATHERUM IRRADIANT/SCARVE |
ARMY OF ONE/RIOT |
アーミー・オブ・ワン/ライオット |
TOSHIBA EMI TOCP-67977 [☆☆☆] >>>>>BUY...?アメリカンハードロッカーの13枚目のアルバムです。ヴォーカリストは何が何だかよく分かりませんが、とりあえずマイク・ディメオが担当しているようです。ついでにアザラシもジャケットにメインで登場。すっかり伝統になったスピードナンバーで幕を開けるアルバムは、ハスキーヴォーカルのマイク・ディメオとの調和も馴染んだ、バンドの状態はどん底だけど!な哀愁ナンバー満載です。ブルージーなフィーリングを持ったミドルテンポの2は叙情感たっぷりのコーラスワークが印象に残る一曲、へヴィなリフと哀感たっぷりのメロディが交差する骨太な3、6、アップテンポの4はエモーショナルなヴォーカルとの絡みがメロウなコーラスへと導く哀愁ナンバー。ソリッドなリフが低いところから開放感のあるコーラスへと誘う5、かなりやっちゃった感の強いスピードチューンの7は知らない人や大ファンの人には幸せな展開が訪れます。再びブルージーな8はオールドスタイルのロックナンバー、虫の声のSEからレインボー風の哀愁メロディをエモーショナルに聴かせる9、ドライヴするギターリフが情念込めて歌い上げるヴォーカルと一体になって進む10は存在感を見せ付ける逞しいメタルナンバー。インストの11はイタリアの映画音楽の巨匠が作ったロミオとジュリエットのテーマからインスパイアされた曲、硬質なリフと情感たっぷりのヴォーカルが道連れの12はドラマティックなコーラスが感情を刺激します。 ボーナストラックには、昔の曲って良いよね!なライヴを収録。 ヴォーカリストが余所で成長したことが楽曲のクオリティを高めてはいますが、肝心の曲の方は伝統的と言うか古典的と言うか停滞気味と言うか、あまり変わっていないのでライオットに期待されるものは大方満たしているもののそれ以上ではないわけで。これもいつも通りですが、昔のアイデアを引っ張り出したとか、似たような曲が多いというのもかなりマイナスイメージ。とは言え、哀愁ハードロックとしては一定のレベルはいつも通り保っているし、マーク・リアリも充分なくらいには弾いているので、安心感を得たい向きには必要充分な一枚にはなっています。もっとも、いつも通り音は絶望的なくらい劣悪な仕上がりですが。 |
同系統アルバム ELEGIES/MACHINE MEN UNCHAINED/UNCHAINED REALITY/WINGDOM |
THE FIRST MOVEMENT/SYMPHONIA |
ザ・ファースト・ムーブメント/シンフォニア |
NEXT MUSIC ASCD-22 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?東京で活動するバンドのファーストアルバムです。ピアノとストリングスによる柔らかいメロディとマイルドなハイトーンヴォーカルが織り成すロマンティックでファンタジックな1で幕を開けるアルバムは、続く煌くキーボードサウンドに導かれるテクニカルでハードな側面が増した2で、パートの切り返しも鮮やかな構築性の高いドラマティックな展開を繰り広げていきます。繊細なメロディを紡ぎだしていく3は、暖かな日差しを感じさせる優雅な時間が流れる優しいナンバー。彼らのハードな側面を表す4はシャープなリフが展開されていくスピードナンバーで煽情性の高いメロディと開放感あふれるコーラスが心地よく広がっていきます。叙情的なメロディが積み重ねられていく5はトリッキーなプレイを組み込みながら暖かいムードを作り出し、スリリングなフレーズで組み立てられる6は変拍子も多用しつつ、緊張感を維持するインストゥルメンタルが地力を見せ付けていきます。ファンタジックなムードとセンチメンタルなムードが交錯するメロウな7はアルバムの幕を閉じるのが惜しまれるような郷愁感すら生み出します。 テクニカルなプレイと多彩なメロディを提示する楽曲は、心地良く体を包みこむサウンドと新人離れした安定感のあるパフォーマンスに裏打ちされてその魅力を最大限に発揮しており、バンドのビジョンを明確に伝えるものになっています。個人的には2から初めて1を最後にした方がコマーシャル的に落ち着くような気がしますが、それはさておきアーティスティックなこだわりを感じさせる作曲と、危なげないヴォーカルの表現力にテクニカルなプレイが合わさった美しい世界が堪能できる一枚です。 |
同系統アルバム ROOM V/SHADOW GALLERY THE INQUISITION/AXENSTAR FREEMAN/LABYRINTH |
THE TWILIGHT CHRONICLES/TEN |
ザ・トワイライト・クロニクルス/テン |
MARQUEE MICP-10582 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?英国産メロディックバンドの8枚目のアルバムです。ベーシスト、更にドラマーが脱退したため、セッションドラマーがプレイしています。哀愁帯びた劇的で壮大なイントロダクションから始まるアルバムは、彼ららしい湿ったメロディと重層なコーラスがドラマティックに展開されていくスケール感の大きな1から、「ナルニア国物語」をテーマにした2は叙情メロディが溢れ出すタイトなリフと多重コーラスも加わった劇的展開が素晴らしい全盛期のクイーンズライクを彷彿とさせる正統派ハードロックナンバーで、ここ最近の鬱屈を振り払う曲に仕上がっています。センチメンタルなムード漂う3は神話的な題材のメランコリックで幻想的なバラードナンバー。共通モチーフのメロディからのハードなリフが展開される4はダークな雰囲気が躍動的に描き出されるミドルテンポのナンバー、しっとりとした爽やかなラヴソングの5、アクティヴなギターリフがポップな感覚のメロディと合わさった明朗で希望に満ちたロックナンバーの6は彼らのキャッチーな部分が全開になった一曲。メランコリックなメロディとシリアスなムードが交錯する7は湿ったキーボードとギターがドラマティックに展開する初期に近い曲になっています。シンプルでキャッチーな叙情ロックナンバーの8、物悲しいメロディが哀感をもたらすハードロックな9は真摯な姿勢が伝わる劇的ナンバー、再び大作となる10は悲壮な感覚がドラマティックに昇華されていくクライマックスからのアウトロでアルバムを締めくくります。ボーナストラックは明るく優しいポップナンバーが収録されています。 繰り返されるモチーフが全体の調和と統一感を高めているアルバムは、バンドに融和したギタープレイや、いつも通り変わらぬ歌唱を聴かせるヴォーカルも、活力を取り戻した楽曲の元で更に表現力を増したように聴こえます。バンドの中心人物であるゲイリー・ヒューズのソロアルバムでの経験が反映された楽曲とこれまでの延長線上にあるキャッチーでコンパクトな楽曲もバランスよく配置され、彼らの魅力が上手く引き出されています。追い詰められると真価を発揮してみせるバンドの地力を伺わせる会心の一枚です。 |
同系統アルバム LADY MACBETH/LANA LANE FOREVER ENDEAVOUR/NOVAK PAPER BLOOD/ROYAL HUNT |
UNDER REPRISAL/THREAT SIGNAL |
アンダー・リプライザル/スレット・シグナル |
MARQUEE MICP-10607 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?カナダ出身のバンドのデビューアルバムです。バンドの結成は2003年。咆哮型のブルータルヴォイスとクリーントーンのメロディアスなヴォーカルを絡めたいわゆるハイブリッドメタルをやっているアルバムは、圧力の強いソリッドなリフで畳み掛けクリーンなコーラスでメロウなムードを演出する1から手の込んだフレーズを詰め込んだサウンドを生み出しています。引っかかりの多いギターリフでドライヴしていく2は不穏な空気が唸りを上げながら透明感のあるエモーショナルなコーラス、さらに滑らかなギターソロへと導くミドルテンポのナンバー、スラッシーなリフで怒涛の突進力を見せる3は切れ味鋭くスリリングなギターソロも聴き応えあり。突進型の4はブレイクの多いリフを叩き込みながら感情を露にするコーラスで盛り上げます。リリカルなイントロから叙情メロディとアグレッシヴなリフを積み重ねていく4はヘヴィネスとメロディが交錯するミドルテンポのエモーショナルナンバー。シャープでソリッドなリフを繰り出して緊迫感を高めていく5はドラマティックなツインリードギターを絡めつつ浮遊感のあるコーラスへと帰結する劇的な6、トリッキーなリフで不安感と圧迫感を演出する7はメロウなギターソロで空気を一変させるコントラストの強い曲、唸りを上げるヘヴィリフがテクニカルデスっぽいムードを捻り出す8でもエモコーラスが色んな空気を払拭し、ドライヴするタイトなリフが咆哮ヴォーカルと一体になって進むスラッシーな9、さらに突進する攻撃的なリフがブレイクしながら転がりまわる10、スラッシーに暴走する11はヒステリックなギターを絡めつつ問答無用で突き進み、エモーショナルなパートからの二転三転する展開が印象的です。 ボーナストラックの12、13は1と6のデモバージョンが収録されています。 ソイルワークやイン・フレイムスと言った北欧叙情メロデスあたりから、テクニカルデスの複雑系リフワークを組み合わせたようなサウンドは仕上がってみれば、メタルコア勢にかなり方向性が近いものになっているものの、ルーツがメタルなだけに整合性も高く緻密に構成される隙の無い楽曲が揃っています。先達バンドの影響はまだ多く見受けられるものの、多くの要素を詰め込みながらも上手くまとめ上げる能力と技術的にも高いパフォーマンスが安定感のあるサウンドに結びついており、時折見せる印象的なパートに次への期待感を抱かせる一枚になっています。 |
同系統アルバム MIND TRICKS/DISARMONIA MUNDI COME CLARITY/IN FLAMES STABBING THE DRAMA/SOILWORK |
■ | AugustBLIND GUARDIAN | EDENBRIDGE | FAIRYLAND | FIREWIND | MANTICORA | SLAYER | UNEARTH | VADER | |
A TWIST IN THE MYTH [Limited Edition]/BLIND GUARDIAN |
ア・トゥイスト・イン・ザ・ミス(初回限定盤)/ブラインド・ガーディアン |
VICTOR VICP-63548 [☆☆☆] >>>>>BUY...?ドイツ出身のバンドの8枚目のアルバムです。結成以来メンバーチェンジが無かったバンドから遂にドラマーが脱退し、今後が危ぶまれたりもしましたが、新たに無名の新人ドラマーを加入させて製作しています。久しぶりにスラッシーなリフのアグレッシヴな1で始まったアルバムは、クイーン大好きの派手なコーラスワークも健在でドラマティックな楽曲を揃えています。続く2はミドルテンポで物語を紡ぐように曲を展開させていくダイナミックな曲、フォーク風のメロディがファンタジックに展開されていくキャッチーなアップテンポの3、オペラティックな複雑展開で進むシングルカットされた4、ゆったりと流れる空気が牧歌的なムードを生み出す5、焦燥感の募るメロディで進むエモーショナルなミドルテンポの6から少しスピードが上がった7、8。叙情感あふれるコーラスが哀愁を誘うミドルテンポのファンタジックナンバーの9、ソリッドなリフがやっと現れる10はインストがちょっと詰めてくるメタリックな曲。ダークなムードも漂う11はコーラスからスピードを変化させて盛り上げるドラマティックな曲。ボーナストラックの12はアコースティックパートを中心にセンチメンタルなムードを演出するムーディなナンバー。13は4の別バージョンが収録されていますが、そんなに変わりません。 楽曲自体の装飾が減ったことで、ギターソロやインストゥルメンタルパートが浮かび上がるようになったのは良かったですが、コーラスは最近の調子のままなので、ちょっとバランスが悪くなったような。それはさておき、全体を流れるエキサイトしないサウンドは、冥王サウロンが存在しないロード・オブ・ザ・リングみたいな気の抜けたというか、ホビット庄にずっと滞在しているみたいなユルいムードに包まれており、“神話”と言うよりは“おとぎ話”みたいな毒にも薬にもならなそうな感覚が漂い、思わずジャケット詐欺だ!とアピールしたくなります。 そのあたりの空気が影響しているのかどうかは定かではないですが、耳ざわりの良いサウンドと余裕を持ったアルバム作りが、何だか全力を出していないように楽曲を聴かせます。以前の限界スレスレの可能性を追求するために意地悪なプロデューサーに痛めつけられる必要性を強く感じさせるところです。バンドとしての個性は充分に発揮されてはいますが、ヘヴィメタルとしては余りにも攻撃性や緊張感、そしてダイナミズムが欠如してしているアルバムになってしまったブラインド・ガーディアン・ロックが炸裂していく一枚です。 |
同系統アルバム TOUCHED BY THE CRIMSON KING/DEMONS & WIZARDS TALES ALONG THIS ROAD/KORPIKLAANI DUST TO DUST/HEAVENLY |
THE GRAND DESIGN/EDENBRIDGE |
ザ・グランド・デザイン/エデンブリッジ |
KING RECORD KICP-1172 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?オーストリア出身のフィメールヴォーカルバンドの5枚目のアルバムです。ギタリストが脱退、ベーシストが交替して製作されています。さらにゲストミュージシャンにオランダのロビー・ヴァレンタインが参加しています。ヴァレンタインらしいゴージャスなコーラスワークとピアノのイントロから豪華さが三倍増しくらいになったダイナミックな大作の1からファンタジックでドラマティックな世界が広がるアルバムは、エンジェリックヴォイスも優美に流れて、これまでのサウンドを更に洗練させたものになっています。ストリングスのイントロから優雅に流れるメロディとタイトなサウンドが一体となって天上へと昇る2、ハードな側面が少し強まった3はそれでも可憐さを失わないアクティヴなナンバー。叙情的なピアノの調べをバックに繊細に歌い上げるアコースティックナンバーの4、エッジを効かせたリフと豪華な演出でダイナミックに迫る劇的ハードロックナンバーの5、優しいメロディが流れる6はコーラスも美しい柔らかなポップチューン。センチメンタルなファンタジックナンバーの7、再び豪華なコーラスが加わった大作のタイトルトラックはドラマティックさを増していくコーラスワークにフォーキーなメロディ、さらにスパニッシュなギタープレイと多彩な音楽要素を詰め込んだ渾身の一曲です。ボーナストラックは映画007シリーズの主題歌をカバーしています。 華麗で繊細なサウンドを追求していくサウンドは、近いスタイルのナイトウィッシュの動向が不透明な中では、その存在感を強くアピールしており、独自の幻想世界を打ち立てた一枚になっています。 |
同系統アルバム LUXAETERNA/AQUARIA CONSIGN TO OBLIVION/EPICA ONCE/NIGHTWISH |
THE FALL OF AN EMPIRE/FAIRYLAND |
ザ・フォール・オヴ・アン・エンパイア/フェアリーランド |
MARQUEE MICP-10610 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フランス出身のバンドの二枚目のアルバムです。オリジナルメンバーのウィルドリック・リエヴィンとヴォーカルのエリサ・C・マーティンが脱退し、メンバー編成が大きく変化して製作されています。期待感を高めるオーケストレーションのイントロダクションから、スリリングなスピード感あふれる起伏の激しいドラマティックなエピックメタルを演出する2へと雪崩れ込むアルバムはサウンドの方向性には全くブレも無く、新たに加わった男性ヴォーカルもハスキーなハイトーンヴォーカルを前任者に近い感覚で聴かせています。風雲急を告げるイントロから激しい感情を叩きつける、コーラスワークも重厚でドラマティックな3、大仰なコーラスからの不穏なインストの4から、ミドルテンポでオペラティックな展開の5へ。哀愁帯びたメロディを切々と唄い上げる6は女性ヴォーカルも加わってセンチメンタルなムードが高めるドラマティックナンバー。開放感のあるコーラスと畳み掛ける展開が劇的なスピードナンバーの7、シンフォニックながらもリリカルなインストの8から緊迫感高まるギターリフを繰り出していく9は飛翔感も全開のドラマティックナンバー。重厚なイントロからスピードを上げ下げしつつ進む10はアグレッシヴな面が強調されたスリリングな一曲。女性ヴォーカルが叙情的に唄う11は壮大さも伴ったファンタジックなナンバー、シンフォニックに疾走してみる12は煌びやかな演出とダイナミックな展開で盛り上がる渾身の大作。メルヘンチックな13は女性ヴォーカルが唄う優しいナンバー。ボーナストラックの14は突撃タイプの緊張感のあるスピードナンバー。 オリジナルのファンタジーストーリーを展開していく、これまでのスタイルに忠実なシンフォニックでエピックメタルなサウンドは、結局のところこのスタイルを極めつくしたラプソディーをよりファンタジックにしたようなものになっていて、力任せの強引さも控えめなので聴きやすく仕上がっています。安定したクオリティを持った楽曲はある程度の魅力はありますが新規性とか独自性と言った要素に乏しいので、このスタイルのサウンドに馴染んでいる人にはアピールするのが難しそうな一枚です。 |
同系統アルバム CIRCLE OF LIFE/FREEDOM CALL BEYOND THE SEA/DARK MOOR DIFFERENCE/DREAMTALE |
ALLEGIANCE/FIREWIND |
アリージャンス/ファイアーウインド |
KING RECORD KICP-1175 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ギリシア出身のバンドの4枚目のアルバムです。ヴォーカリストにはタイム・レクイエムなどで活動しているアポロ・パパサナシオ、ドラマーには元メタリウムのマーク・クロス、そして中心人物のガス・G.は他の全ての活動を清算して製作に挑んだ作品です。ソリッドなギターリフが唸りを上げ、パワフルなハイトーンヴォーカルが湿ったメロディを唄い上げるダイナミックな1から、タイトでシャープなリフでアグレッシヴに迫る2、ゴシックメタル風味な叙情感を持ったメロディアスな3はエモーショナルな感覚が高まるミドルテンポのナンバー。オジー・オズボーンあたりを彷彿とさせる伝統的なハードロックナンバーの4は中盤の哀愁帯びたパートから、キャッチーなコーラスも伴ってドラマティックなムードを生み出します。キーボードのイントロからドライヴしていく5はスウェーデンの女性シンガーソングライターをフィーチュアしたデュエットナンバーで二人のヴォーカルによるドラマティックな掛け合いも鮮やかな正統派メタルナンバーに仕上がっています。6は思索的なムードが広がるダークでエモーショナルな一曲。大仰なイントロからスリリングなリフが繰り出されていくスピードナンバーな7はヴァースからの熱いコーラスと高速ギターソロで盛り上がる劇的ナンバー。ザクザクしたリフでパワフルに進む8はマーク・クロスの手による湿ったコーラスのラウドナンバー。バラードスタイルのインストゥルメンタルの9から情感豊かに大きくドラマティックに展開していくミドルテンポの10へ。メロウなロックナンバーの11、クランチーなリフで突き進むパワーメタリックな12はスケール感のあるコーラスで盛り上げて、リッチー・ブラックモア風味のギターソロが更にエキサイティング。ブルージーなヴォーカルとオーセンティックなリフでタイトルまでブラック・サバスみたいな13でアルバムは幕を閉じます。 高い位置で安定したパフォーマンスでドラマティックな楽曲を生み出しているアルバムは、伝統的なスタイルを現代的なサウンドで忠実に再現したもので、様式性と即効性の強いものになっています。ガス・G.のこのバンドに精力を注ぎ込んだ意気込みが十二分に伝わるその完成度は、オールドスタイルな聴き手はもちろん、新しいメタルファンにも強くアピールできるものになっている、バンドの渾身の一枚です。 |
同系統アルバム WHEN DREAM AND FATE COLLIDE/FREQUENCY BEYOND THE END OF DESPAIR.../GALNERYUS REDIVIVUS/WINTERS BANE |
THE BLACK CIRCUS, Part 1 - Letters/MANTICORA |
ザ・ブラック・サーカス・パート・ワン〜レターズ/マンティコラ |
ART UNION ARTSG-014 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドの五枚目のアルバムです。19世紀のアメリカを舞台に、謎のサーカス団を帯同する一人の男の目線から描いたコンセプトアルバムになっています。オペラティックなヴォーカルが舞台の開幕を告げる壮大なイントロダクションの1から、楽曲をインストゥルメンタルなどの小品で繋いでいく構成を取ったアルバムは、続く壮絶なギターリフをパワフルに繰り出していきスリリングなコーラスを組み込んだ演出、さらに緊迫感高まるギターソロががドラマティックな楽曲をさらに盛り上げるスピードナンバーの2で聴き手を圧倒していくパワーメタルの嵐。不安感の残るメロディの3からの躍動感あふれる4は底辺に流れる不穏なムードが緊張感を維持する楽曲で、リリカルなパートとのコントラストも激しく迫ります。ブラッドベリの「何かが道をやってくる」のようなシチュエーションの5〜6は、歌詞と曲が完全にシンクロするダイナミックなパワーメタルナンバーで、ドラマティックなコーラス、さらにショッキングな演出も伴ってアルバムのハイライトになっている壮絶で会心の一曲になっています。映画「フリークス」を彷彿とさせる情景の7は絶望と悲哀が交錯するセンチメンタルなナンバー。一転して激しさを増す8は物悲しさを保持しながら怒りに満ちて突き進む振幅の大きいダイナミックな曲で、緊迫感あふれる壮絶なインストゥルメンタルが圧巻。女性コーラスのインターミッションの9を経てソリッドなギターリフを叩きつけていく10は女性ヴォーカルとの絡みで叙情性を演出するメランコリックな劇的ナンバー。物悲しい語りのインターミッションの11から、攻撃性を剥き出しにするパワーメタリックな12へと。朗々と歌い上げるヴォーカルとフックの効いたリフが一体になって迫るこの曲は突進力と叙情性が融合する彼ららしいものに仕上がっており、第一部を締めくくり続編に繋げる期待感を高めます。ボーナストラックはアルバムの雰囲気を壊さないように荘厳で物悲しいインストゥルメンタルナンバーが収められています。 ラヴクラフトあたりに影響を受けた書簡による叙述形式の古典的な怪奇小説スタイルのアルバムは、普通にやればゴシック的なムードになるような物語をパワーメタリックに染め上げてしまうのが、バンドの業の深さと言うか不器用さを伺わせ「肉の蝋人形」が「蝋人形の館」にリメイクされたらスラッシャーホラーになってしまったみたいな現代的なアレンジを思いださせます、そりゃパリス・ヒルトンだってCDデビューするってものです。その辺りの些細な違和感をラブクラフトへの愛情と敬意、さらに勢いと力技でねじ伏せるあたりが正にマンティコラ。彼らのヴィジョンとの親和性の高い題材を、水を得た魚のような活き活きとしたパフォーマンスとドラマティックな演出で、この怪しいムードを持った世界観を立体的に構築するのに成功しています。この際思い切って二枚組でリリースして一流バンドに挑めば良かったのにと思わせる、すっかり続編が待ち遠しくなる一枚です。 |
同系統アルバム HORROR SHOW/ICED EARTH TOUCHED BY THE CRIMSON KING/DEMONS & WIZARDS WHEN EDEN BURNS/PERSUADER |
CHRIST ILLUSION/SLAYER |
クライスト・イリュージョン/スレイヤー |
WARNER MUSIC WPCR-12366 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スラッシュメタルの帝王、スレイヤーの9枚目のアルバムです。ドラマーにデイヴ・ロンバードが戻ってオリジナルメンバーで製作されています。最近では珍しい始まり方のイントロから、殺傷力の高い怒涛のスラッシュナンバーの1へ。スピードダウンしたパートが“SKELETONS OF SOCIETY”みたいなこの曲は緩急も激しく狂気染みたギターソロが満載でオリジナルメンバーのマジックを見せ付けます。更に力押し突進ナンバーの2でも不穏なパートとのコントラストが。ミドルテンポの3ではテンポアップする展開からの凶悪なムードが濃厚な邪悪オーラを演出していきます。ドロドロした澱んだ空気が垂れ込めるミドルテンポの4、怪しげなムードが熾き火のように燃え上がる5、うなりを上げるリフで突撃する6はハードコアスタイルでアジるヴォーカルと一体になって突き進む暴走列車。ヘヴィナンバーの7では凶暴に呪詛を吐き捨てていく姿とグロテスクなギターソロが圧倒的な存在感を生み出します。8は苦痛と懊悩が渦巻く中、ギターソロが空気を切り裂いてスピードアップ。宗教なんてクソッタレな9は悪魔の数字を叫びつつ暴走していきます。スピードを変化させながら憤怒を叩きつける10も崩れ落ちるようなギターソロがテンションを上げていきます。 「SEASONS IN THE ABYSS」あたりに戻ったような作風は、これまでと全く変わらないブラックメタルでもないのにファッキン神様で攻撃的な姿勢をより直接的に前面に押し出して、物分りが良くなりそうだった前作までの空気を払拭するものになっています。彼ら独特のギリギリのドライヴ感は今までだとスピードを緩めそうなあたりで更にアクセルを踏み込んでしまう、誰もブレーキを踏まない初期の天衣無縫っぷりが戻ってきたところは、オリジナルメンバーの凄みを見せ付けることに。20年以上もプレイし続けて未だにこんなサウンドを作り出せるイカレっぷりにすっかり感服させられる、男は黙ってスレイヤーな一枚でした。 |
同系統アルバム SODOM/SODOM THE GRAND MACHINERY/CONSTRUCDEAD INVENTOR OF EVIL/DESTRUCTION |
III: IN THE EYES OF FIRE [Limited Edition]/UNEARTH |
スリー:イン・ジ・アイズ・オブ・ファイヤー(初回限定盤)(DVD付) /アンアース |
METALBLADE JAPAN MBCY-9005 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?マサチューセッツ出身のメタルコアなバンドの三枚目のアルバムです。出音がいきなり疾走感が炸裂する唸りを上げてドライヴするギターリフと咆哮するクラッシュヴォイスで衝動性を露にしていく楽曲は、スラッシーな感覚も高まる緩急の激しいもので、展開の細かい1から感情高まるメロディのパワフルなサウンドを作り出していきます。クランチーなリフがブレイクしながらスピードを上げ下げして突っ走る2、メロウなイントロから叙情感を孕むリフで吼えるシャープな構成の3、アナイアレイター風の忙しいギターリフで転げ落ちる4、高速メガデスみたいなリフが暴れまわる5なども、緩急をきっちり付けてくる律儀な楽曲。更にスピードアップしたリフがタイトなビートと交互に繰り出しつつ突進していく6は曲調の切り返しも激しい一曲、アジテイトするコアなビートからジャンプしていくダイナミックかつリリカルなメロディが繰り出される7、ツインリードのリフがアイアン・メイデン風だったりする8はメランコリックなメロディとドラマティックなギターソロを中心に正統派に近いサウンドを作り出します。マッシヴなリフで突き進むへヴィな9はメロウなパートとのコントラストも激しく情感を高め、ソリッドなリフと鋭角なメロディで圧迫感を高めていく10、哀感帯びたギターとピアノの清廉な響きが染みるアウトロの11。ボーナストラックにはライヴが二曲収録されています。 叙情メロディは残るものの、いわゆるギターソロらしいギターソロは大幅に減ったスラッシュメタル的なリフ主体の構成になっていて、その感情の起伏がダイレクトに楽曲に反映されていくソリッドな感覚のサウンドは、ハードコアなスタイルの曲をヘヴィメタルの素材で組み立てたような印象を与えます。いわゆる北欧叙情メロデスの柔和な部分を削り取ったような。方向性や展開が似ている曲が少なくないものの、衝動が容赦無く叩きつけられる戦闘的なメタルサウンドは、ギターリフこそヘヴィメタル!なメタル右翼な人やネオクラなソロなんか聴けるかよ!なコアな人の琴線をかき鳴らす暴風みたいな一枚になってます。 DVDの方はライヴでフォーメーションっぽいことをやってたのが好印象。 |
同系統アルバム WORLD DOMINATION/NAILDOWN FALLOUT FROM THE WAR/SHADOWS FALL MIASMA/THE BLACK DAHLIA MURDER |
IMPRESSIONS IN BLOOD/VADER |
インプレッションズ・イン・ブラッド/ヴェイダー |
MARQUEE MICP-10609 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ポーランド出身のバンドの7枚目のアルバムです。暗雲立ち込めるシンフォニックなイントロダクションを経て、地響きのようなドラミングと掘削機のようなギターリフが炸裂していくミドルテンポのイントロから凶悪なギターソロを絡めて転調しながらダイナミックに突進していく高密度の2へ雪崩れ込むアルバムは、凶暴さも変わりないデスヴォイスも加えて圧倒的な破壊力を見せ付けています。さらに高速ソロと怒涛の突進力を見せる3でも中間部での怪しさを保ち、破滅的な美しささえ感じさせるイントロからの4は「神は死んだ!」と叫ぶ絶望的に荒廃した一曲。荒れ狂うリフが心地良い暴虐ナンバーの5、壮大なイントロからの6は重厚な展開のドラマティックなヘヴィナンバー。ソリッドなギターリフと高速ソロが畳み掛けられる突進ナンバーの7、ブルータルデスの極北を逝く8、やっぱり非人間的に突っ走ってみる9ではエモーショナルなギターソロがムードを一変させ、圧縮率の高いデスラッシュナンバーの10はあっという間に駆け抜けていきます。11はスレイヤーのドラマティックな名曲のカバー。物悲しいイントロからへヴィなリフに覆い尽くされていく12はトライバル風のビートも加わった暗黒が生み出されていく大作です。 前任ドラマーの死という不幸な出来事も吹っ切れたのか、壮絶で破壊力満点のブルータルデスメタルなサウンドが広がっていくアルバムは、血臭立ち込める胡乱な雰囲気で染められていく彼らの持ち味を存分に発揮したものになっています。徹頭徹尾、猛烈な嵐のような怨念サウンドをやってのけるその凄まじい気概に圧倒されるドス黒い衝動が広がっていく一枚です。 |
同系統アルバム THE GRAND MACHINERY/CONSTRUCDEAD ANNIHILATION OF THE WICKED/NILE THE SICKNESS WITHIN/HATESPHERE |
■ | SeptemberAMON AMARTH | BURNING IN HELL | DIVINEFIRE | HEAVENLY | IRON MAIDEN | MERCENARY | ROCKET SCIENTISTS | VIRGIN STEELE | |
WITH ODEN ON OUR SIDE/AMON AMARTH |
ウィズ・オーディン・オン・アワ・サイド/アモン・アマース |
METALBLADE JAPAN MBCY-1075 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの6枚目のアルバムです。ドスの効いたデスヴォイスと骨太ヘヴィリフで畳み掛けるアップテンポの1から勇壮さと力強さを持った不変のヴァイキングメタルをやってのけるアルバムは、泣きのメロディも炸裂するミドルテンポで圧迫感を高めていくヘヴィナンバーの2、熱気を帯びて突進するファストナンバーの3で攻撃性を露にします。重厚なムードで進む4は哀愁のメロディを伴って物悲しい空気を演出していきます。迫力ある5はパワフルなリフと荒涼とした空気が絡み合うミドルテンポのナンバーでセンチメンタルなギターソロが涙腺を刺激します。勇壮なメロディがへヴィに展開されていく激情的な6、戦闘的なムードと叙情メロディが交錯していくファストナンバーの7、哀愁の旋律がこだまする8は北海に眠る鎮魂歌。再び勇壮さが戻る9は叙情メロディが積み上げられていくミドルテンポのナンバーで、絵巻風の壮大さを生み出します。 神話的な勇壮さと北欧の哀愁帯びたメロディはこれまで通りですが、全体的には活力漲るパワフルさが戻ってきたサウンドが展開されています。特筆するほど特に変わったことは無いですが、太っ腹のMETAL BLADE JAPANがボーナスディスクまで付けてくれた、不変不動で磐石の安定感を誇る安心印の刻まれた一枚、いや二枚になっています。 |
同系統アルバム CHARACTER/DARK TRANQUILLITY IMPRESSIONS IN BLOOD/VADER THE SPIRIT OF UKKO/KIUAS |
BELIEVE/BURNING IN HELL |
ビリーヴ/バーニング・イン・ヘル |
SOUNDHOLIC TKCS-85148 [☆☆☆] >>>>>BUY...?ブラジル出身のバンドの2枚目のアルバムです。ギタリストとベーシストが脱退して、メンバーを補充しましたが、新たなギタリストはギネスブック認定の世界最高速プレイヤー!(どうやって計ったんだよ)トライバルなイントロダクションから繰り出される楽曲は、ハイトーンヴォーカルと高速ギターが合わさったメロディックスピードメタル。キュルキュル鳴りまくるギターとツーバスで叩きまくるドラムがダイナミックにスピードを変化させて展開していく2、哀愁帯びたメロディで疾駆する3はテンション上げたヴォーカルとシンフォニックアレンジのキーボードが高揚感を演出していきます。押しの強いリフで進むタイトルトラックはアッパーなテンポで信念を貫きます。唸りを上げるギターリフが切れ込む5はヒロイックなムードを高速で描き出します。イーヴルなムードとエキゾチックなメロディで突っ走る6、朗々とした展開をやっぱり高速でやってしまうヴォーカルが熱い7、ちょっと息をつけるバラードナンバーの8、侍をテーマにした9は和風メロディで突っ走りそうで、やっぱり普通にメロスピってしまう一曲。広がりを見せるメロディと高速ギターが叙情的に展開していく10、11〜12はスケール感の大きいドラマティックな組曲になっており、イントロダクションから疾走展開に移る鮮やかな転回のまま押し切っていきます。 ボーナストラックの13はやっぱり高速ナンバーです。 高速プレイで即効性の高いサウンドは、キャッチーなメロディを伴って一気呵成に突き進んでいきます。それなりに起伏のある展開は崩れる寸前のギリギリな感じを生み出していきますが、ところどころは崩れているような。ギターソロの入り方やコーラスなどの楽曲展開のバリエーションが乏しいので、目先を変えようとしている割には同じような感覚ばかりが襲ってくるのが難ですが、勢いに身を任せてあまり何も考えないで聴く分には楽しめる一枚です。 |
同系統アルバム ENTER DECEPTION/CELLADOR INHUMAN RAMPAGE/DRAGONFORCE DREAMLAND MANOR/SAVAGE CIRCUS |
INTO A NEW DIMENSION/DIVINEFIRE |
イントゥ・ア・ニュー・ディメンション/ディヴァインファイア |
KING RECORD KICP-1192 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。不穏な空気と壮大さが交錯するシンフォニックなイントロダクションから、哀愁メロディと大仰な演出が迷い無く繰り出されていく2へ。スリリングなキーボードとソリッドで高密度のギターリフがへヴィに迫るドラマティックな構築美を作り出しており、パワーヴォーカルによる歌詞はロックしているのにサウンドは徹底的にヘヴィメタルな一曲。続く3はデスヴォイスの叫びも加わったメロデス風のアグレッションを見せるパワーメタリックなナンバーで、叙情感あふれるコーラスとスリリングなギターソロが山場を作ります。クランチーなリフと緊迫感高まるキーボードが一体になって迫るタイトルトラックはキャッチーなコーラスとインストゥルメンタルが劇的に迫るコンパクトな一曲。重厚なイントロから疾走していく5はデスヴォイスも加わって、スピードの上げ下げの大きい展開と大仰なフレーズで盛り上げるドラマティックなナンバー。ファルセットのハイトーンが空気を切り裂く6はスリリングな展開で引っ張る、熱気あふれるコーラスも劇的な楽曲。ボーナストラックの7は荘厳なコーラスからの激烈リフがキーボードと絡み合いながら進む起伏の激しい突進ナンバー。派手なシンフォニックアレンジで始まる8はソリッドなリフで突き進み、デスヴォイスとも掛け合いながら壮絶に展開します。アグレッシヴなリフとデスヴォイスも絡んだ9は構造的には伝統的なメタルのスタイルを保ちながら豪華で暗いムードを作り出します。畳み掛けるスピード感あふれるギターリフで突進していく10は攻撃性と繊細なコーラスが交錯する展開の妙が味わえる一曲。物悲しい雰囲気が漂う11はシンフォニックなアウトロでアルバムは幕を閉じます。 北欧メロディックデスメタルかブラックメタルもかくやと言う壮絶なパートとシンフォニー・エックス張りのネオクラシカルテイスト、更に過剰なほどのシンフォニックなアレンジが一心不乱に詰め込まれているアルバムは、前作に感じられた自身への不信感や停滞感が吹っ切れた先鋭的なサウンドになっており、金の鉱脈を再発見して何かが弾けてしまったみたいなバンドの歓喜と開放感が全編に渡って炸裂している模様です。ある意味、北欧エクストリームメタルの極北を行くサウンドは、袋小路に陥りやすいシンフォニックメタルに異なる可能性を開いており、パワーメタルとしてもメロディックメタルとしても高品質にまとめられたハイテンションな一枚に結実しています。 で、やっぱりバンドのスペシャルメッセージは要らないんじゃないかと思われます。 |
同系統アルバム L'OMBRE ET LA LUMIERE/MANIGANCE THIRD ACT/EVIL MASQUERADE VERMIN/OLD MAN'S CHILD |
VIRUS/HEAVENLY |
ヴァイラス/ヘヴンリー |
MARQUEE MICP-10608 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フランス出身のバンドの4枚目のアルバムです。バンドからメンバーが三人脱退するという緊急事態を乗り越えて製作されています。前作でメロディックメタルを俯瞰して再構成を行って新機軸を見つけ出したと思われたバンドでしたが、メンバーの大幅交替に伴ったサウンドの原点回帰ですっかり、カイ・ハンセンのヴォーカルによるガンマ・レイに戻ってしまいました。とってもカイ・ハンセンなシャウトからのアップテンポナンバーの1からコーラスの切れ込み方からギターソロ、メロディまで、どこがガンマ・レイと違うのか探す方が難しい楽曲が詰め込まれています。ミドルテンポのメロディックな始まりを聴かせるキャッチーな2、アタック感の強いリフで押し込む3はテクノ風味のビートも加わってダイナミックに突き進みます。どこかで聴いたようなイントロからスリリングな疾走感を生み出していく4はお約束を外さないスピードナンバー。分厚いコーラスとタフなギターリフで迫るミドルテンポのへヴィな5では、ソナタ・アークティカのトニー・カッコが加わって力強い歌唱を聴かせています。ネオクラシカルなイントロからの6はキレのあるリフで迫るスリリングなナンバー、湿ったメロディで低いところから上り詰めていく7、ララクライのターニャとのデュエット曲の8はジャーメイン・ジャクソンとピア・ザドラのスピードアップしたカバー。展開の激しい9はオーケストレーションやコーラスを詰め込んだ奇妙な一曲。ボーナストラックの10はアウトローなムードのミドルテンポの曲、11は2の日本語バージョンですが、テキトーな日本語訳と違うことを唄っているのが素敵です。 あまりのそっくりさんっぷりに呆気に取られてしまいますが、本家の方が停滞気味の現在では若さあふれる活きの良さと勢いがある分、クローンとは言え楽しんで聴けるところもあり、求心力のあるクオリティの高さは折り紙付。ガンマ・レイ及びカイ・ハンセンがシーンから去るような事があれば、存在価値も高まりそうなものですが、バンドの未来と音楽的な志という点ではどうなんだろうなあ、と思わずにはいられない一枚です。 |
同系統アルバム MAJESTIC/GAMMA RAY KEEPER OF THE SEVEN KEYS -THE LEGACY-/HELLOWEEN DIFFERENCE/DREAMTALE |
A MATTER OF LIFE AND DEATH/IRON MAIDEN |
ア・マター・ライフ・アンド・デス〜戦記/アイアン・メイデン |
TOSHIBA EMI TOCP-66616 [☆☆] >>>>>BUY...?英国のメタル重鎮の14枚目のアルバムです。とりあえず、一曲目は元気なリフのアップテンポのナンバーですが、どうも無理矢理感が否めないのは気のせいか。必要性が不明の複雑な展開の2はエンジン壊れた車みたいなスピードの上がらなさっぷりに息切れでもしてるのかと眩暈がしそうです。3はフラッシーなインスト展開の妙が少し味わえますが、そこに至るまでの忍耐力が要求されます。エキゾティックなフレーズも飛び出すアップテンポの4はスピードを上げたいヤニック・ガーズの無言の抗議が聞こえてきそうな相克の一曲。緊迫感高まる5はヴォーカルとギターの頑張りが伝わるやっぱり長尺の曲。6はどこの“TEARS OF THE DRAGON”?って感じの劣化ぶりにクラクラしますし、7とか8はフレーズの執拗な繰り返しに違う曲なのかどうかも疑わしくなってきます。9〜10も更に苦痛度が増していく大作揃いです。 同じような曲調で塗りつぶされたモノトーンのアルバムは、ブルース・ディッキンソンが孤軍奮闘してる感じばかりが伝わりますが、それもどうやら空回り。アルバム全編が、すでに余剰部分を切ることのできなくなっているスティーヴ・ハリスの偏執的な長丁場の楽曲で埋め尽くされているのが苦行レベルの詰まんなさなわけで時間以上の長さをたっぷり味あわせてくれる上に曲の区別も付きゃしない、ギターソロはさすがに三人もいれば多少はマトモなものも出ては来ますが。エイドリアン・スミス&ディッキンソンだけのポップな曲が必要なんじゃないか、正直。その辺りを補うために無理矢理、六人編成にしたんじゃなかったのか、ブルースのソロアルバムをメイデン名義で出して貰った方が絶望感が少なかっただろうに。空虚な音が無為に繰り返されるだけの無限地獄に叩き込まれる恍惚の無常の境地に達した、まさに音楽界のグイン・サーガな一枚です。 |
同系統アルバム UNCHAINED/UNCHAINED ELEGIES/MACHINE MEN TYRANNY OF SOULS/BRUCE DICKINSON |
THE HOURS THAT REMAIN/MERCENARY |
ザ・アワーズ・ザット・リメイン/マーサナリー |
MARQUEE MICP-10614 [☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドの4枚目のアルバムです。ベーシスト不在で製作されています。哀愁孕むクリーントーンのヴォーカルとデスヴォイスのハイブリッドなスタイルのメロディックなヘヴィメタルを作り出すアルバムは、クリーンヴォーカルが唄う叙情的なメロディがドラマティックに積み重ねられていくアップテンポの1からソリッドなギターリフと扇情性の強いギターソロが結びついた楽曲が繰り出されていきます。ムードを一転させる2は咆哮デスヴォイスのアグレッシヴなパートとクリーンヴォーカルのコーラスが組み合わさったヘヴィなコントラストの強いナンバー。泣きのメロディが炸裂するクリーントーンの叙情ナンバーの3、クランチーなリフとクリーンヴォーカル更にメロディックなギターが絡みつく4は、サビがデスヴォイスのアグレッションとエモーションが交錯する曲で彼らの特徴が良く表れています。デスヴォイスに導かれてクリーンヴォーカルが情感豊かにスケール感の大きいメロディを紡ぎだす叙情的なナンバーの5、メロデス風なリフで進む開放感あるコーラスへと登りつめる起伏の激しい劇的スピードナンバーの6、ヘヴィリフで進む7は浮遊感あるヴォーカルがもたらす叙情感とのコントラストが強いミドルテンポのナンバー。デスヴォイスのシャウトから扇情的なメロディを積み重ねる8は北欧的な冷気を孕みつつセンチメンタルに過ぎていくミドルテンポの曲、激情を吐き出すデスヴォイス主導のタイトな9はクリーンなコーラスと絡んでドラマティックな展開を見せるエモーショナルなナンバー。大作のタイトルトラックはダブルヴォーカルによる強い衝動と情感が次々に押し寄せるメロディの渦が巻き起こる展開の激しい力作になっています。ボーナストラックにはライヴが二曲収録されています。 メロディックデスメタルの出自から、ほとんどクリーンヴォーカルの哀愁メロディックメタルになってしまったアルバムは、ヴォーカルのスタイルも伴って攻撃性とか破壊力が大分削られてゴシックメタル的なムードと叙情的なメロディが重ねられていくものになっています。音作り自体はメロディックデスメタルの名残を残すソリッドな質感を保っていますが、ネオクラだったりエモーショナルだったりするギターソロの影響もあって、パワーメタルに近い感覚を与えています。クリーンヴォーカルの押しがちょっと弱いので、少し引いたような印象のあるサウンドですが、ドラマティックなメロディックメタルとしては安定感のある一枚になっています。 |
同系統アルバム LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE COME CLARITY/IN FLAMES BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES |
REVOLUTION ROAD/ROCKET SCIENTISTS |
レヴォリューション・ロード/ロケット・サイエンティスツ |
MARQUEE MICP-90023 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ラナ・レーンの活動で知られるキーボーディスト、エリク・ノーランダー率いるロックバンドの4枚目のアルバムです。ゲストだったNS/スティックプレイヤーが正式メンバーになっています。70年代プログレッシヴロック的なノスタルジーを感じさせるメロトロンの響きが優しいイントロダクションで始まるアルバムは、ラウドなドラムとスペーシーなキーボードとワイルドなギターが合わさったプログレハードな2へと。パワフルさとマイルドさを兼ね備えるヴォーカルに自由なプレイを聴かせるキーボードサウンドが一体となって迫る力強い一曲になっています。ミステリアスなメロディで紡がれる3はエモーショナルな歌声が大胆な展開を引っ張っていきます。センチメンタルなムードのバラードパートからドラマティックなインストを聴かせる4、情景が次々変化するカラフルなムードのインストゥルメンタルの5からのタイトルトラックの6は、ハードな側面が際立ったキャッチーなコーラスも伴ったロックナンバー。ムーディなサウンドが緩やかに流れていく7、ピアノの静かなパートからスペーシーな感覚が増していくインストの8。9は古参プログレバンド、ムーディー・ブルースのカバーが収録されています。10はゆったりと流れるメロディの波が物悲しさと憂いを描きだしていきます。 ディスク2は、沈鬱なムードで始まるダークファンタジーなプログレハードナンバーの1から、1970年代のイギリス特撮SF「謎の円盤UFO」のテーマソング(憶えてるような忘れてるような)のカバー、ブルージーな雰囲気が漂う3は飛翔感伴うコーラスからリリカルに展開していきます。パワフルなヴォーカルがリードする、ミステリアスで暗いムードで迫るダイナミックな4、グルーヴィなリフで進むへヴィな5はアグレッシヴなヴォーカルからのトリッキーなインストパートの転換が鮮やかな一曲。スマートに進むフュージョン風のインストの6、シンフォニックなアレンジも加わった7は彼ららしいハードロックナンバー。スペーシーな広がりを見せる哀愁のインストゥルメンタルでアルバムは幕を閉じます。 70年代からの血脈を受け継ぐプログレハードなサウンドをいつも通りに展開していくアルバムですが、流動的なメンバーが次第に絞られてきたことによる焦点が定まった感が現れてきた…ような。更にエリク・ノーランダーのソロアルバムよりも、あまり手を広げない狭い範囲で動き回るバンド的なサウンドが楽曲自体の特徴や魅力を露にしている感が強まっています。派手さは少ないものの安定感のあるパフォーマンスと懐古趣味で何が悪い、な潔さが心地良い味わい深い一枚です。 |
同系統アルバム LADY MACBETH/LANA LANE THE TWILIGHT CHRONICLES/TEN ARMY OF ONE/RIOT |
VISIONS OF EDEN/VIRGIN STEELE |
ヴィジョンズ・オヴ・エデン/ヴァージン・スティール |
T&T RECORDS TT00652 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?アメリカンエピックメタルバンドの11枚目のアルバムです。毎度のことですがコンセプトアルバムです。ドラマティックなサウンドと特徴的なウィスパースクリームとファルセットを携えたヴォーカルが描き出すのはオペラティックな曲展開のエピックメタル。メロディ重視であまり力まなくなった歌唱がオーセンティックながら起伏の激しいダイナミックで華麗な展開に乗ってセンチメンタルな世界を作り出す1から、不穏な空気がパワフルに迫る2は重層的な展開を見せるアルバム一番の大作。パワーメタリックなリフで押し出す3は威嚇的なムードがドラマティックに広がるテンションの高まる一曲。シンフォニックなイントロから急転直下スピードを上げ下げしていく起伏の激しい展開を見せる4はリリカルなパートとアグレッシヴな突進力が交差する壮絶な曲で、彼らの本領発揮と言ったところです。ラウドなムードが高まる5は叙情的なコーラスで一気に鬱屈を開放していき、センチメンタルなパートでクールダウン。沈痛なイントロから哀感たっぷりで迫る6は感情を高めてながら音の厚みを増していく劇的ナンバー。ロマンティックでソフトで広がりを感じさせる7、重厚な出だしからソリッドなリフと哀愁のメロディが重なり合う情感高まる8、アルバム内では比較的コンパクトな9は劇的に突っ走るスピードナンバー。スローテンポで情感を蓄えていく10、ムードを受け継ぎつつピアノのイントロから始まる11はそれまでの全ての感情の高まりを集める大作。 7分以上の曲が大半の大作ぞろいのアルバムは、これまでのスタイルを更に洗練させて彼ららしいサウンドを作り出しており、年月を重ねて円熟味を増した職人芸を見せています。パワーメタルとしてはサウンドに厚みが欠けるとか、展開が濃すぎて完走するのに気合が必要とか今まで通りの点もありますが、このロマンティックなヘヴィメタルが生み出す劇的世界を変わらずにやり続ける信念にはすっかり頭が下がる重厚長大な一枚です。 |
同系統アルバム BEYOND THE SEA/DARK MOOR THE LAST SUPPER/GRAVE DIGGER THE FALL OF AN EMPIRE/FAIRYLAND |
■ | OctoberANGRA | AXENSTAR | CRADLE OF FILTH | ETERNAL TEARS OF SORROW | HAMMERFALL | KIUAS | LYZANXIA | MARTYR | MASTODON | RHAPSODY OF FIRE | TRIVIUM | VICIOUS RUMORS | WUTHERING HEIGHTS | |
AURORA CONSURGENS/ANGRA |
オーロラ・コンサルジェンス/アングラ |
VICTOR VICP-63615 [☆☆☆] >>>>>BUY...?ブラジル出身のバンドの6枚目のアルバムです。神学者であるトマス・アクィナスの「オーロラ・コンサルジェンス」なる著作にインスピレーションを受けたコンセプトアルバムで、難解さがサウンド面でも反映された様子。民俗音楽調ファンタジーメロディックメタルだと皆の認識が落ち着いてきたあたりで、何だかバンドのアイデンティティを揺るがすようなアルバムを出してしまうのは、アンドレ・マトスが居た頃と変わらないので、このプログレと言うか今までと違うことをやりたがりな傾向は残ってるメンバーのせいなんだなあ、と改めて思うわけでして、復活作とか前作とかはこんな音楽を本当はやりたいのに今まで無理してたんだよ!って感じですか?ギタープレイはプログレメタルをやるよ!っていう気合の入りっぷりですが、ヴォーカルは置いてけぼりになってるあたりプログレに向いて無いんじゃないかしら、と疑問が浮かびます。結局のところ普通に駄目なメタルアルバムになってるあたりが何とも…。重苦しいテーマも彼らのサウンドとの相性が良いとはとても言えないもので、ラテンの血はそれじゃあ燃えないだろうと思われます。また何だか空中分解の予感を孕んだ別の意味でスリリングな一枚になってしまってますが、とりあえず、ANGRA OF FIREにして出直すってのはどすか、あ、炎がかぶってる? |
同系統アルバム CHIMERA/ANDROMEDA BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE |
THE FINAL REQUIEM/AXENSTAR |
ザ・ファイナル・レクイエム/アクセンスター |
KING RECORD KICP-1202 [☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。ギタリストが二人脱退し、新たなギタリストを加えて4人編成で製作されています。パワフルさが増したイントロで始まるメロディアスでスリリングなプレイを聴かせる1から、メンバー交替の影響を感じさせない楽曲を繰り出すアルバムは、センチメンタルなハイトーンヴォーカルが哀愁メロディを唄い上げるメロディックメタルを作り出しています。ソリッドなリフが哀愁のメロディを呼び覚ます緊迫感のあるスピードナンバーの2、哀感たっぷりのメロディが硬いギターリフに乗って涙腺を刺激するツインギターも心地良い3、切れ込むギターリフも鋭い4はへヴィな展開も見せる飛翔感のあるアップテンポなナンバー。ドラマティックなイントロからクランチーなリフが詰め込まれていくパワフルな5、ハードロッキンな哀愁メロディックナンバーの6、さらに湿ったメロディが繰り出されるアップテンポの7、オーセンティックなリフワークがエモーショナルなギターソロへと繋がっていく8、勇壮さと哀愁が交錯するミドルテンポの9、ソリッドなギターリフで畳み掛ける攻撃的な10、スピードを更に上げるドライヴする11、ミドルテンポでじっくり聴かせる12、ボーナストラックは日本向けのスピードナンバーが収録されています。 周囲の環境変化の苦難がサウンドに力強さを与えたか、これまでよりもパワーメタリックな側面が強まった哀愁メタルをやっているアルバムは、本質的には変わらないものになっています。アルバムタイトルは何だか不穏な感じですが、楽曲は安定しているメロディックメタルの常道を行く一枚です。 |
同系統アルバム THRESHOLD/HAMMERFALL BUILDING UP THE APATHY/SILENT VOICES LEGEND OF THE BONE CARVER/PYRAMAZE |
THORNOGRAPHY/CRADLE OF FILTH |
ソーノグラフィ/クレイドル・オヴ・フィルス |
ROADRUNNER RRCY-21265 [☆☆☆] >>>>>BUY...?イギリス出身のヴァンパイアメタル・バンドの7枚目のアルバムです。ギタリストとベーシストが交替しています。荘厳でシンフォニックなイントロダクションが一気にムードを高めていくアルバムは、最近のシンプルでオーセンティックなヘヴィメタル路線を踏襲したもので、ドライヴ感の強い2から起伏の激しいファストナンバーを繰り出していきます。哀愁メロディが衝動的に展開されるダイナミックでドラマティックな正統派ナンバーの3、邪悪なムードが高まる4はヒステリックなデスヴォイスが畳み掛けるブラストビートも飛び出す威嚇的なナンバー。ドゥーミーな背徳感と哀感を湛えて進むスローナンバーの5、更にスピードダウンしたイントロから疾走する6はドライヴ感の強いリフと展開の妙が楽しめる一曲。ミドルテンポでウィスパーヴォイスも使って怪奇ムードを演出するドラマティックな7、疾走感の強いイントロからメランコリックでセンチメンタルなムードが漂うスローパート、さらにスピードを上げ下げして突き進む場面切り替えの激しい8、メロディアスなギターリフがとソリッドなリフがダイナミックに交錯していくキャッチーなムードも携える9、ヴァイオリン、ピアノなども絡んで哀愁を醸し出すインストゥルメンタルの10、邪悪さと荘厳さが絡み合う起伏の激しいドラマティックな大作の11、 12は英国ポップバンドの邪悪なカバー、ボーナストラックの13はSAMHAINのカバーが収録されています。 ヴォーカルスタイルとバンドのヴィジュアルイメージはさておき、メジャーに移ってからは音楽的にはダークな正統派ヘヴィメタルになってしまっているので、ブラックメタルと言うには既にどうなんだろう、って感じですが、デンマークの暗黒メタルの雄、キング・ダイアモンドにますます接近してきたのは個人的には楽しいわけでまあ良し。正統派メタルなら超高評価ながらもハッタリを効かせたブラックメタルの要素が激しく低下しているのが難ですが、適度にいかがわしくて、適度に耽美で、適度に危険な匂いのする背徳的な雰囲気が一般層にも受ける…かもしれないサウンドがちょっと悪魔っ子したいリスナーにフィットしそうな一枚です。 |
同系統アルバム ABIGAIL II:THE REVENGE/KING DIAMOND FROZEN IN TIME/OBITUARY VERMIN/OLD MAN'S CHILD |
BEFORE THE BLEEDING SUN/ETERNAL TEARS OF SORROW |
ビフォア・ザ・ブリーディング・サン/エターナル・ティアーズ・オヴ・ソロウ |
MARQUEE MICP-10618 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの5枚目のアルバムです。活動休止状態にありましたが、約5年ぶりに復活しました。ギタリストとキーボーディストが交替して製作されています。哀愁が雪崩を打って押し寄せるイントロから、帰ってきた!感が爆発するセンチメンタルなキーボードを引き連れたダイナミックなメロディックデスメタルが展開されていく1は彼らの魅力が炸裂する慟哭のデスヴォイスと北欧の悲哀に満ちたメロディが次々繰り出されるナンバー。オーケストレーションも炸裂する派手なイントロから緊迫感を高めつつ突進する2はテクニカルなフレージングを絡めつつ煌びやかに劇的に進み、叙情感が波のように押し寄せるクリーントーンのヴォーカルも加わった3はロマンティックなムードも内包するエモーショナルな曲。哀愁と爽快感が交錯するスピードナンバーの4はドラマティックなギターソロが涙腺を刺激します。ゴシック風の哀愁スローナンバーの5〜更に女性コーラスも加わって重厚に展開していく6は二曲のコンビネーションも高まる組曲。クランチーなギターリフが壮麗なキーボードで融和されていく7は起伏の激しいメロデスチューン。スピードアップして畳み掛けるドラマティックな8、叙情メロディがオーケストレーションされつつドラマティックかつセンチメンタルに積み重ねられていく、二面性を持ったオペラティックな大作の9でアルバムは幕を閉じます。 空白期間に昨今のメロデスやら何やらの要素を吸収して、ソフトな当たりが強固な一撃へと変換されていったサウンドになっているアルバムですが、彼らの特徴であるドラマティックな展開とメランコリックなムードは堅持されており、一流バンドへ一歩近づいたような印象が強まっています。いつの間にか、このスタイルのバンドも減ってきて新鮮さすら覚えるロマンティック・メロディックデスメタルになっている、他が脱落している内に頭角を現してしまいそうなタイミングの良い一枚です。 |
同系統アルバム CHARACTER/DARK TRANQUILLITY IDOLATOR/BLOOD STAIN CHILD DEAD FANTASIA/FOLLOWBANE |
THRESHOLD/HAMMERFALL |
スレッショルド/ハンマーフォール |
MARQUEE MICP-10615 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの6枚目のアルバムです。不穏なコーラスのイントロダクションから始まるアルバムは、シンプルなギターリフとキャッチーなコーラスが繰り出される湿ったメロディ満載のオーセンティックなヘヴィメタルを展開する、彼らの特徴的なサウンドが詰め込まれています。マノウォー張りに熱気あふれるクワイアとコーラスワークが高揚感を高めるアップテンポの2、ミドルテンポの3ではエモーショナルな歌唱がコーラスを伴ってアクセプト的な重量感を生み出していきます。アグレッシヴなパートと滑らかなコーラスのコントラストも激しいアップテンポの4、重厚なコーラスを加えたセンチメンタルなパワーバラードの5、伝統的なリフワークのアップテンポのテンションの高い6、ドライヴするギターリフが叙情的なメロディを誘うソリッドな7、荘厳なコーラスのイントロから迫力あるリフが重量感をもって迫る8は希望を感じさせるコーラスが印象的なナンバー。懐かしささえ感じるキレのあるリフが熱いインストゥルメンタルの9、ドラマティックなイントロから不穏な空気を孕んで突っ走る10、アルバムの最後を飾るのは超重量級のリフで圧迫感を高めていく迫力満点の11。 ボーナストラックには同郷のハードル選手がコーラスに参加した2のスペシャルバージョンとライヴ曲が収録されています。 まさにアクセプト後継と言った分厚いコーラスに、シンプルながらもキャッチーなメロディを詰め込んだハンマーフォール節が全開になったピュアなヘヴィメタルサウンドは、これまで彼らの積み重ねてきた経験から生み出される説得力、更に貫禄すら感じさせる風格あるもので、信念を曲げずに活動してきたバンドの集大成的なものになっています。過剰な装飾を剥ぎ取って、曲の構造までもシンプルに突き詰めた楽曲は経験値の高いメタラーには多少物足りなく聴こえそうではありますが、何も変えないこと自体を魅力へと転換させたスタイルを武器に、更に飛躍しようとするバンドの意気込みを見せ付ける一枚です。 |
同系統アルバム MISSION NO.X/U.D.O. THE LAST SUPPER/GRAVE DIGGER ARMY OF ONE/RIOT |
REFORMATION/KIUAS |
リフォーメイション/キウアス |
UNIVERSAL MUSIC UICO-1114 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの二枚目のアルバムです。へヴィなリフのイントロから始まるアルバムは、暑苦しいダミ声ヴォーカルがクランチーなリフに乗せてフラット〜メロウなメロディを歌い上げていくパワーメタリックなスタイルで、前作から更にオーセンティックなメタル分が増してきています。湿った北欧的メロディのサビと疾走感あふれるインストパートが印象的なミドルテンポの1、ダイナミックなイントロからヘヴィリフを重ねていく2はトリッキーなフレーズの展開が力強さを生み出していく変則的な曲。波乱含みのメロディが期待感を煽る3はセンチメンタルなパートが北欧メロデス風味なアップテンポのナンバー。滑らかなギターのイントロから突進していくピロピロキーボードソロも爽快なスピードナンバーの4、リリカルなメロディが切々と紡がれるインストの5から、ブラストビートで疾走するデスヴォイスも加わったメロデス色の強まったドラマティックな6へ。這い寄るヘヴィリフで迫る7は畳み掛けるファストパートとのコントラストが激しいテクニカルな曲。エモーショナルなメロディが唸りをあげていくコーラスの厚いパワーバラードな8、勇ましいメロディが広がっていく9はマッチョな感じのパワーメタルナンバー。ミステリアスなキーボードのイントロからドラマティックに飛翔するタイトルトラックは邪悪なムードを保ちながら重厚に突き進む勇壮な一曲。ボーナストラックはジェスロ・タルのカバーが収録されています。 何だか今までこんな代物が存在しなかったみたいに思われるのが癪だし、誰も書いてくれないので改めて書きますけど、キーボーディスト常駐のジャーマン・パワーメタラーなエンジェル・ダストにチルドレン・オブ・ボドムなソロパートを加えれば、すっかりこんなサウンドが出来上がるわけで。それはともかく北欧から現れたにも関わらず熱気あふれる楽曲が揃えられています。細分化したヘヴィメタルも最近では統合、収束するスタイルが増えてきて、このメロデスとパワーメタルを融合させていくサウンドが新しさと伝統を兼ね備える新世代パワーメタルの主軸になっていくような気がしないでもない、思ったよりも上手く融合しなかったような一枚です。 |
同系統アルバム OF HUMAN BONDAGE/ANGEL DUST TILL DEATH UNITES US/NORTHER ARE YOU DEAD YET ?/CHILDREN OF BODOM |
UNSU/LYZANXIA |
ウンス/リザンクシア |
KING RECORD KICP-1203 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?フランス出身のバンドの三枚目のアルバムです。リズム隊がすっかり更新されて製作されています。へヴィなビートを刻むイントロから畳み掛けるようにソリッドなギターリフが繰り出されていく、デスヴォイスと攻撃的なダーティヴォイスのツインヴォーカルと突進力を見せる1から小気味良いリズムチェンジを見せる激しい展開を味あわせてくれるアルバムは、唸りを上げる不穏なリフで突き進む2の妖しいコーラスやメロディアスなギターソロで盛り上げる手法など、これまでの彼らのスタイルを更に先鋭にしたようなものになっています。メタリックな感触が強まったリフの3ではエモーショナルなヴォーカルとのコントラストが鮮やかに描き出されダイナミックに展開していきます。エモーショナルなリフから威嚇的なデスヴォイスが飛び出す4はメロディアスなコーラスとギターソロも伴って妖しげに進みます。ドラマティックに感情を叩きつけていくミドルテンポの5、へヴィリフでグイグイ引っ張るアグレッシヴでソリッドな質感の6、タイトルトラックはダイナミックな展開に和風メロディまで飛び出す異色の一曲。凶暴性を露にしていくヘヴィナンバーの8はギターソロからの開放感が印象的。スイングするギターリフが冷気を漂わせる威圧的で重厚な9、怪しいフレージングが炸裂していくヘヴィな10でもエモーショナルなコーラスを爆発させ加速していきます。クランチーなリフでリズムチェンジを繰り返しながら襲い掛かる11、熱のこもったヘヴィリフで圧迫して攻撃性を増大させていく12、ボーナストラックはデスメタリックなムードとエモーショナルな感覚が交差するドラマティックなナンバーが収録されています。 攻撃性が過去最高に高まったサウンドが展開されていくアルバムは、整然とした構築性も増して安定感と普遍性も強まっています。フューチャリスティックなムードをエモーショナルなヴォーカルやメロディで覆い尽くす手法はメタルコアにも通じるものですが、流行とはあまり関係ないところで自分達の手法を追求しているように見えるセンスを感じさせるのはフランス産ゆえでしょうか。伝統的なヘヴィメタルを土台にしたアグレッシヴでダイナミックな世界が広がる一枚です。 |
同系統アルバム III: IN THE EYES OF FIRE/UNEARTH THE GRAND MACHINERY/CONSTRUCDEAD NON HUMAN LEVEL/NON HUMAN LEVEL |
FEEDING THE ABSCESS/MARTYR |
フィーディング・ジ・アブセス/マーター |
GALY RECORDS GALY-048 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?カナダ出身のプログレッシヴ・デスメタル・バンドの2006年発表のサードアルバムです。唸りを上げるギターリフと狂乱のドラムが混沌を生み出していくサウンドは、吐き捨てデスヴォイスを伴って予想の付かない異次元世界を生み出していきます。畳み掛けるトリッキーなリズムとスリリングなギターが一体となって迫る1、不穏な空気を巻き起こしながらクランチーにのたうつ2、怪しいメロディを積み重ねながら起伏の激しい展開を見せる3、荒涼としたメロディを刻みながらスローテンポで進む4はフュージョン的な小品インストナンバー、一転してアグレッシヴな展開を見せる5は振幅の大きい浮遊感と緊張感が交錯する一曲。鋭いリフで攻める6は圧迫感が加速していく突進ナンバーで沈み込むようなインストパートがアクセント。畳み掛けるリフと不安感を持つメロディが混濁しながら進むシャープな7、うねるリフが導く硬質なメロディとクランチーな展開が圧迫感を生み出す8、4部作となるインストの9からのナンバーは、スリリングなプレイを聴かせる変拍子が炸裂する10、ものすごく短いインストの11、重量感たっぷりに展開するダークなナンバーの12で形成されていき、ヴォイヴォドのカバーの13で幕を閉じます。 テクニカルなプレイが生み出す緊迫感と一瞬の空白の後に訪れるフュージョン的な浮遊感が行きつ戻りつしながら作り出していく高密度の音世界は、先達の流れを汲みながらも整合性の高い楽曲を提示していきます。緻密に制御された唸りを上げる音の奔流に圧倒される凶悪な一枚です。 |
同系統アルバム THE UNDERCURRENT/SCARVE PASSENGER/MNEMIC SPLENETIC/NEGLECTED FIELDS |
BLOOD MOUNTAIN/MASTODON |
ブラッド・マウンテン(初回限定盤)/マストドン |
WARNER MUSIC WPCR-12457 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?ジョージア州アトランタ出身のバンドの三枚目のアルバムです。分厚い音のラウドなギターリフで突進する猛烈な1から広がるテクニカルと感情表現豊かな野太いヴォーカルが繰り出すトライバルな感覚が心地良いアルバムは、70年代ハードロックなムードも漂わせながら流転していく2、ミステリアスな空気が静的な感覚を伴って流転するメロウな3、プログレ的な混沌を孕んだトリッキーなフレージングが織り成す攻撃的な感覚が衝撃的な4、さらに狂気度が増加する混乱した5、そして狂気が最高潮に達する混沌の坩堝と化したインストゥルメンタルナンバーの6へと。サイケデリックなムードを漂わせるグルーヴィなナンバーの7、起伏の激しいリフワークで押し込む8は鋭角と鈍角が混在する重量感たっぷりの曲。不安感を煽るメロディと予想の付かない展開で突き進むダイナミックな9、柔らかいムードのイントロで油断させるプログレ風味と驚愕の強まる10、混迷した物語の終着点を見つけ出す浮遊と墜落を繰り返しながら流転する探索行の11はスペクタクルを迎え、そして総ての物語を昇華に導くインストゥルメンタルの12でアルバムは幕を閉じます。ボーナストラックには2のライヴバージョンが収録されています。 野性と知性が交錯し神話めいた冒険譚が広がるサウンドは、まさに高貴な野蛮人と呼ばれるにふさわしい世界観が提示されるていきます。プログレッシヴロックとラウドロックが一体となった70年代サウンドを受け継ぐ新世代のプログレサウンドがのたうっている混沌の鍋に投げ込まれていく一枚になっています。 |
同系統アルバム DANTE XXI/SEPULTURA BLESSED BLACK WINGS/HIGH ON FIRE NOW,DIABOLICAL/SATYRICON |
TRIUMPH OR AGONY/RHAPSODY OF FIRE |
トライアンフ・オア・アゴニー/ラプソディー・オブ・ファイア |
VICTOR VICP-63617 [☆☆] >>>>>BUY...?改名して出直しを図るイタリア出身のバンドの6枚目のアルバムです。えー、前作の続きとなるヒロイックファンタジーなストーリーが描き出されていくアルバムですが、オーケストラや合唱隊も加わってスケール感はどんどん大きくなっていますが、曲自体はすっかり出汁の取れなくなった出しガラって言うか、もうネタ切れだろ、常識的に考えて…。デジャヴとか記憶のフラッシュバックが起こってばかりで、ちっとも新譜を聴いている気がしてこないんですが、壮大で重厚なクワイアとかオペラティックなヴォーカルとかド派手なオーケストレーションとか、あれ良いところがイッパイなのに、なんでこんなにダメなんだろう…と自問自答したくなってくるあたりが、OF FIRE クオリティ。良いメロディとか曲展開が思いつかないなら、クラシックの名曲でもサックリとパクった方がマシだよ!と思うわけで。ついでにオーケストラだけでやった方が、自分たちのサウンドを見直せていいんじゃないでしょうか。“炎の”が付いた割にはサウンドはちっとも熱くない、次のアルバムが本当に心配になる一枚でした。 |
同系統アルバム INTO A NEW DIMENSION/DIVINEFIRE THE FALL OF AN EMPIRE/FAIRYLAND HEART & ANGER/SECRET SPHERE |
THE CRUSADE/TRIVIUM |
ザ・クルセイド/トリヴィアム |
ROADRUNNER RRCY-21266 [☆☆☆] >>>>>BUY...?アメリカ出身のバンドの3枚目のアルバムです。唸りを上げるクランチーなギターリフに、ジェイムス・ヘットフィールドばりの吐き捨てヴォーカルが乗る様が正にメタリカという感じの楽曲が揃えられたアルバムは、そこに彼らの特徴だった叙情メロディを組み合わせた代物で、メタリカ全盛期には多くのバンドがこんなスタイルを模索していたなあ…と感慨深くなるような作品になってます。 今にも“MASTER OF PUPPETS”とか“BLACKEND”が始まりそうな曲展開ばっかりなのが素敵ですが、そこに切れ込んでくるメロディアスなパートは本家って言うかカーク・ハメットには出来そうに無いなあって代物なのが最大の売りでしょうか。この手のスタイルとしては凄く上手くアレンジしているし、本家をリスペクトしている感も伝わりますが、ああ本当にスラッシュメタルも一周回って帰ってきたんだなあとつくづく思い知らされた一枚です。 |
同系統アルバム CHAOSDRAGON RISING/TERROR SQUAD SCHIZO DELUXE/ANNIHILATOR THE ART OF DYING/DEATH ANGEL |
WARBALL/VICIOUS RUMORS |
ウォーボール/ヴィシャス・ルーマーズ |
MARQUEE MICP-10619 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?アメリカン・パワーメタルの雄、ヴィシャス・ルーマーズの何度目かの9枚目になる復活アルバムです。製作までにメンバーの入れ替わりがありましたが、リズム隊にオリジナルメンバーが帰ってきた事に加え、新ヴォーカリストに元HELSTER〜DESTINY'S END〜セブン・ウィッチーズのジェイムズ・リヴェラ、更にゲストギタリストにナイト・レンジャーのブラッド・ギルスが加わるという期待高まるラインナップになっています。サンプル音源で煽りまくっていたハイテンションのパワーメタルナンバーの1でハイトーンシャウトと80年代に回帰したかのようなギタープレイを炸裂させるアルバムは、ロブ・ハルフォード大好きなヴォーカルがパワフルに叫ぶヘヴィメタル然としたものになっています。アップテンポでソリッドなギターリフを繰り出していく2はルーズなサビとフラッシーなギターが合いまったダイナミックな曲、ミステリアスなイントロからヘヴィリフが積み重ねられる3はクライマックスに向けてエモーショナルな感覚が高まるミドルテンポのナンバー。攻撃性の高まるパワーメタルな4は耳慣れたギターリフが懐かしいオーセンティックなスタイル。タイトルトラックはダークなムードが押し寄せる威嚇的でドゥーミーな曲。熱気高まるミドルテンポの6は往年の彼らを彷彿とさせるダウナーなコーラスが特徴。ドライヴしていく7はシンプルな仕上がりのアップテンポのナンバー。バラードナンバーの8を挟んで、ホラー風のイントロから小気味良いリフが展開されていく9はドラマティックに突き進むアップテンポのナンバー、凶暴性の高いヴォーカルとクランチーなリフで攻撃性を生み出す10は起伏の激しい展開で邪悪に迫る最後をちっとも飾らないテンションの曲です。 挨拶代わりの超ハイテンションな1曲目はさておき、硬質なフレーズとシリアスなメロディの積み重ねでドラマ性を生み出していく彼らの特徴的なスタイルの正統派パワーメタルサウンドが戻っている2以降の楽曲は、スリリングなギターパートが当社比180%で繰り広げられる皆の記憶の中にあるヴィシャス・ルーマーズを忠実に復活させたような代物です。前作あたりでも復活の兆しはありましたが、昨今の伝統的スタイルのヘヴィメタルの復活の影響もあってか、ここに来て完全に自分たちの初期の衝動に任せたオールドスタイルでも構わない潔さが露になったサウンドが戻ってきたという感慨を深めます。ヴォーカルスタイルが激しくロブ・ハルフォードなので曲によってはジューダス・プリーストに聴こえなくも無いですが、とりあえず完全復活の手応え充分な一枚です。 |
同系統アルバム REVENGE/IRON FIRE REDIVIVUS/WINTERS BANE ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL |
THE SHADOW CABINET/WUTHERING HEIGHTS |
ザ・シャドウ・キャビネット/ワザリング・ハイツ |
SOUNDHOLIC TKCS-85154 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?デンマーク出身のバンドの4枚目のアルバムです。前作で迎えた新ヴォーカリストに加え、マンティコラのギタリスト、マーティン・アレンダル、ピラメイズのドラマー、モルテン・ゲイド・ソーレンセン、元プラティテュードのキーボーディスト、アンドレアス・リンダール、LOCH VOSTOKのベーシスト、テッディ・モラーとメンバーを刷新して製作されています。ロニー・ジェイムス・ディオの暑苦しさを倍増させたパワフルヴォーカルが熱唱し、ネオクラシカルなフレーズとフォーキッシュなメロディがドラマティックに目まぐるしく展開するサウンドは前作同様ですが、凶悪なスピード感が更に強化され聴き手を置き去りにして突っ走る独自の世界が繰り広げられていきます。曲単位での互換性の高いパートの組み合わせが多様に提示され、更に緩急が強い展開が延々と続くため、曲自体の境界線も曖昧になっている凄まじさですが、個々のクオリティが異様に高いので妙な説得力が生まれるのが恐ろしい。多少なりとも落ち着ける曲はミドルテンポが中心の3とリリカルでヒロイックに展開する7(加速しちゃうけど)くらいで、後は何が飛び出すか予想も付かない音の無間地獄。ボーナストラックは同郷のプログレバンド、ACHEのカバーが収録されています。 中心人物のエリック・ラヴン・クリステンセンのビジョンが総てを支配するアルバムになってしまった作品ですが、その方向性は新メンバーでは阻止不可能の完全な暴走状態で、完成度の高かった前作を顧みれば沈み行く船からネズミが逃げ出すみたいにメンバーが居なくなったのも納得の壮絶さ。次々繰り出されていく音の奔流に流されるままになって自分の居場所すら見失う、混乱と混沌が広がる誰にも真似出来そうにない嵐が丘な一枚です。 |
同系統アルバム THIRD ACT/EVIL MASQUERADE TALES ALONG THIS ROAD/KORPIKLAANI THE WINTER WAKE/ELVENKING |
■ | NobemberDREAM EVIL | THE HAUNTED | HEARSE | KILLSWITCH ENGAGE | |
UNITED/DREAM EVIL |
ユナイテッド(初回限定盤)/ドリーム・イーヴル |
KING RECORD KICP-91208 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。アルバム製作前にヴォーカリストとベーシストの脱退騒ぎでゴタゴタした上に、ファイアーウインドに専念することにしたギタリストのガス・Gに続いてドラマーのスノーウィー・ショウまで脱退してしまったバンドですが、新たなメンバーを導入して完成に漕ぎ着けています。ドラムロールも激しいスリリングなイントロ(ボーナストラック)から、パワー全開のギターリフでゴリゴリ押していく哀愁帯びたメロディも健在の開放感あふれる2へと繋いでいくアルバムは、メンバー交替の影響を全く感じさせない安定感あるサウンドを作り出しており、パワフルなリフで威嚇的に迫るメタル魂が燃え上がるアップテンポの3、ヘヴィナンバーの4では迫力ある歌唱と勇壮なコーラスで盛り上げていきます。キャッチーなリフがダークなメロディと共に跳躍していくドラマティックな5は飛翔感あふれるコーラスとフラッシーなギターソロが印象的。迫真のヴォーカルパフォーマンスが曲を引っ張るパワーメタリックな6、捻じ込むようなギターリフで突き進む起伏も大きい破壊力満点の7、メタルアンセムなミドルナンバーの8、ヒロイックな題材が勇壮かつ劇的に描き出されるミドルテンポの9、パワーとエモーションが炸裂するバラードの10を経てボーナストラックの11は、やたらと日本向けな哀愁メロディで突っ走るドライヴィンなファストナンバーで海外ファンに恨まれること請け合い。ジューダス・プリーストを激しく全力でリスペクトしてみるパワーメタリックでドラマティックな12、更にボーナストラックの13はLAメタル風のキャッチーなムードを持ったアップテンポのナンバー。唸りを上げるヘヴィリフで畳み掛ける14は湿ったメロディのコーラスで緊迫するムードを演出していきます。15はギリシャの女性シンガーの曲のへヴィなカバーで脱退した二人も参加しています。 さらに初回限定盤のボーナスCDは、泣きのメロディが炸裂するパワフルなアップテンポの1、キュートなイントロからウルトラヘヴィなリフとエモーショナルな歌唱が捩れながら押し進む2、センチメンタルなメロディで突っ走るハードロッキンな3、ダークなムードが漂うエモーショナルな4、情感が爆発していく緊張感のあるメタリックな5はアイアン・メイデンを彷彿とさせる劇的さを持つ一曲。 今まで順風満帆で進んできたバンドでしたが、ここに来てのバンドの存続すら危ぶまれる状況を乗り越えて、更に強靭さと強固な信念を手に入れてヘヴィメタル道を邁進することを決意したことを強く感じさせるサウンドを作り出しています。新しいメンバーのパフォーマンスもすこぶる良好で、今後の活動への不安を感じさせません。プロデューサーとの二足のわらじを履いていたフレドリック・ノルストロームの微妙なシーンを読んだ優等生なサウンドを覗かせていたこれまでのアルバムから、自分達の理想に忠実で空気を読まない真のヘヴィメタルな作品を生み出した背景には、やはり不幸に襲われないとヘヴィメタルに忠誠を誓うことが出来ない宿業を感じさせなくもありません。紆余曲折を経て文字通りのヘヴィメタル・バンドに生まれ変わったような強力な一枚です。 |
同系統アルバム THRESHOLD/HAMMERFALL ALLEGIANCE/FIREWIND SEVEN SEALS/PRIMAL FEAR |
THE DEAD EYE/THE HAUNTED |
ザ・デッド・アイ[初回限定盤]/ザ・ホーンテッド |
TOY'S FACTORY TFCK-87408 [☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。前作で方向性の拡散を図ったバンドですが、今作でもスラッシュメタルの歴史をなぞるかのようなヘヴィネスを重視したサウンドを追求しています。不穏なムードが高まる暗いイントロから繰り出される2はへヴィでソリッドなギターリフが炸裂するダークなナンバーで、荒れ狂う吐き捨てヴォーカルも激情を叩きつけながら、緩急を付けて突き進みます。骨太のリフでスラッシーに突進する3、うねりながら感情を炸裂させていくアップテンポの4はスピードダウンしてのエモーショナルなパートでムードを変えていきます。リリカルなパートからメタルコア風に展開していく陰鬱なヘヴィナンバーの5、重装備で突進する6は衝動を開放するサビで浮遊感を演出します。ゴシック風のパートとヘヴィパートのコントラストで感情を描き出す7、11、グルーヴィでダークな感覚が押し寄せる情動的な8、短いインストのボーナストラックの9を経てスピードを上げていく10は殴打系のリフと咆哮で盛り上げつつ静かなパートで抑揚を付けていきます。鬱になってくるエモーショナル系のヘヴィナンバーの12、13はドカドカ突っ走りそうで失速するスラッシュナンバー、ボーナストラックの14、15は弾けたビートで変なノリのアップテンポの曲とグッタリしそうなドゥーミーな曲。16は這い寄る低音で迫るのたうつヘヴィナンバー。 スラッシュメタル低迷期のような暗く鬱々としたムードにすっかり支配されるサウンドは、変化を付けた展開が彼らの爆発的な破壊力を持った暴走スラッシャーな部分を打ち消しており、メタルコア勢に近いメロディと緩急の展開で構成される楽曲になっています。衝動性の発露が特徴だったバンドですが、ギタリストのサイドプロジェクトのウィッチリーしかり、メンバーの方向性が全てこのスタイルへと向かっている模様なので、何か突然変異でもしない限り、初期の路線に戻ることは無さそうです。何だかシーンの流れに追従しているみたいなもどかしさが残る不完全燃焼な一枚でした。 |
同系統アルバム SEASONS IN THE ABYSS/SLAYER DON'T FEAR THE REAPER/WITCHERY CHIMAIRA/CHIMAIRA |
IN THESE VEINS/HEARSE |
イン・ディーズ・ヴェインズ/ハース |
SOUNDHOLIC TKCS-85155 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデンで活動する元アーク・エネミーのヨハン・リーヴァと友人マックス・ソーネルの三人組バンドの4枚目のアルバムです。サードアルバムがレーベルの事情で不遇な扱いを受けて心機一転の一枚です。ハードコア的な突進力にロックンロールするビート感、更にメロディックデスメタルの哀愁を兼ね備える骨太なサウンドを作り続けているバンドですが、それらの要素の融合が着実に進んでいるアルバムになっている本作は、豪腕のギターリフが唸りを上げる哀愁のイントロから激しさを増して特攻していく起伏も激しい壮絶な劇的デスラッシャーなナンバーの1で幕を開けます。咆哮も迫力を増したヨハンのヴォーカルやエモーショナルなギターソロは独特の感覚を放っており、グルーヴィなリフがスピードを上げていく2はハードコア的な突進力を孕んで呪術的で威嚇的な展開を見せていきます。更に重装備でパンキッシュな突進を見せる3はヒステリックなヴォーカルとアグレッシヴなギターソロも加わってハイテンションで一気に振り切っていきます。続く4もハードコアな感覚を残す攻撃性とヒステリックな感触が一体となったスピードナンバー。5はSATOR CODEXのカバーで、元ネタがサッパリですがミドルテンポのヒステリックなヘヴィナンバーになってます。激烈に突進する6はスリリングなギターソロからムードを一変させる変化の激しい曲、メロディックデスメタル色が強まった扇情的なリフで突き進む7は鬱屈したムードがギターソロで刷新されるドラマティックな曲。バンド名を冠するドゥーミーなムードの這いずるインストゥルメンタルの8、ラウドロックな9は派手なビートを響かせながらオーセンティックなギターソロに雪崩れ込む多様性を伺わせるナンバー。ボーナストラックの10はダークな空気に満たされるヘヴィなイントロが一転して暴走する劇的な一曲。 メロディックデスメタルとプリミティヴロックの混沌とした融合が生み出す衝動性の強いサウンドは、整合性が高まっている北欧産メロデスと一線を画すものになっています。原始的な蛮性と獣性をコントロールしつつ爆発力を生み出す展開の妙が独自性を高めていき、バンドが内包する鬱屈が一気に弾け飛ぶ一枚になっています。 |
同系統アルバム ENEMY OF GOD/KREATOR RIDERS OF THE APOCALYPSE/DEMONOID THE SICKNESS WITHIN/HATESPHERE |
AS DAYLIGHT DIES/KILLSWITCH ENGAGE |
アズ・デイライト・ダイズ/キルスウィッチ・エンゲイジ |
ROADRUNNER RRCY-21268 [☆☆☆] >>>>>BUY...?マサチューセッツ出身のバンドの4枚目のアルバムです。迫力あるデスヴォイスとサビでエモーショナルなメロディを歌い上げるノーマルヴォイスを絡めて進むヘヴィな1から始まるアルバムは、ソリッドな感触とヘヴィな音像を更に増した2、叙情感を前面に出したエモーショナルなタイトな3とこれまでの作風を踏襲したものになっています。キレが足りない感じも残る突進ナンバーの4、センチメンタルなイントロで始まる5はダブルヴォーカルが絡み合いながら転がりあっていく起伏の激しい一曲。スクリームで混乱したサウンドを作り出していく6でもエモーショナルなコーラスは健在。突進パートとエモパートを行きつ戻りつする7、唸りを上げるリフのメタリックなパートがエモーショナルなサビへと悶え狂う8、パワーメタリックなギターリフでアジテイトしてみる9はメロディアスなバッキングとコーラスが一体になって迫る哀愁が高まる一曲で叙情メロデス風の中間部が印象的。のたうつようなヘヴィナンバーの10は叙情感と絶望感が重なり合うエモーショナルな曲、さらにそのムードを受け継ぐような11はスリリングな感覚が増したスピードナンバーで激情に任せて突っ走る破壊力と叙情感が心地良い曲になっています。ボーナストラックの12はヘヴィリフで畳み掛ける圧迫感の強い曲が収録されています。 ハードコア的な突進力とか爆発力みたいなものがかなり薄まっているメジャーなサウンドになっているアルバムですが、感情を露にしていくエモーショナルなところはチャートに長期間ランキングしそうな高品質さを保っています。一気にこのスタイルが広がってしまった影響で多くのバンドが独自性を追求してしまった所以か、このバンドに残された革新的な手法がほとんど使い尽くされてしまった先発組の不運な面もありますが、サウンド自体が安定感を重視したものになっているのは、コアなファンには物足りないこと間違いなし。このまま安定化して一般向けサウンドに転化していくか、再びエクストリームな世界を追求していくのか、大きな岐路に立たされている一枚です。 |
同系統アルバム COME CLARITY/IN FLAMES WORLD DOMINATION/NAILDOWN MIASMA/THE BLACK DAHLIA MURDER |
■ | DecemberBURNING POINT | DARK LUNACY | FALCONER | JON OLIVA'S PAIN | KAMELOT | |
BURNED DOWN THE ENEMY/BURNING POINT |
バーンド・ダウン・ジ・エネミー/バーニング・ポイント |
SOUNDHOLIC TKCS-85158 [☆☆☆] >>>>>BUY...?フィンランド出身のバンドの三枚目のアルバムです。バンド創始者のギタリストに加えベーシスト脱退の危機を乗り越えて製作されています。ギターリフが地道に刻んでいく中、濁った声質のパワーヴォーカルが漢臭くメロディを唄うアッパーな1から始まるアルバムは、伝統的なヘヴィメタルのフォーマットに忠実なサウンドを生み出していきます。ミドルテンポでエモーショナルな2、重厚に迫る3、スリリングなリフが疾走する4は感情がスピードに乗って迸るパワーメタリックな一曲。リリカルなメロディに導かれる5はパワーバラード風の哀感を見せ、続く6は暗いテーマを描き出すスローナンバー。ソリッドなリフで押していく叙情メタリックナンバーの7、ミドルテンポでダークなドラマを描き出す8、ザクザク切れ込むリフが心地良く疾走する9は漢臭いコーラスへと繋がる伝統的スピードナンバー。哀愁メロディで情感豊かに迫るミドルテンポの10、叙情的メロディを積み重ねるイントロからミステリアスに突進していく11はドラマティックなコーラスからのネオクラインストで決着する大作パワーメタルナンバー。ボーナストラックの12は湿ったメロディのミドルテンポのナンバー、13はハイトーンシャウトからオーセンティックな展開を見せるマイナーメロディと希望のあるコーラスが印象的な一曲。 実直にオーセンティックなスタイルを貫き通す彼らのサウンドは、メンバーチェンジによっても曲がることなく生み出されており、モチベーションが維持されているのが心強く感じられます。伝統的なスタイルに忠実なため意外性は皆無ですが、安心感を強く感じさせる楽曲と手堅い展開にヘヴィメタルの本流を汲み上げるバンドの意欲を伺わせる混じり気の無い一枚です。 |
同系統アルバム WHEN DREAM AND FATE COLLIDE/FREQUENCY ARMY OF ONE/RIOT THRESHOLD/HAMMERFALL |
THE DIARIST/DARK LUNACY |
ザ・ダイアリスト/ダーク・ルナシー |
SOUNDHOLIC TKCS-85159 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?イタリア出身のバンドの三枚目のアルバムです。第二次世界大戦においてロシアで繰り広げられた「レニングラード包囲戦」をテーマにしたコンセプトアルバムになっています。賛美歌のような荘厳なコーラスから、うねりながら突き進むギターリフと炸裂するデスヴォイスの咆哮が叙情的なメロディを重ねながら重厚に迫る1から、歴史の重みを感じさせる劇的な楽曲を繰り出していくアルバムは、ミドルテンポで哀愁を積み重ねていく2で感情を露に絶望的な状況を描き出し、ソリッドなリフで構築していく3では激情と攻撃性を高めて突進し、希望を求めていきます。ラジオ演説の加わったセンチメンタルなインストゥルメンタルの4を経て、女性ヴォーカルが物悲しく歌い上げる叙情的なパートとデスヴォイスの慟哭パートが絡み合う劇的な5へ。ムードを一転させる6は壮絶さが浮き彫りになる叙情メロデス。ロシア語ナレーションから劇的コーラスとデスヴォイスが激しく感情を揺さぶる7、泣きのギターリフが押し寄せる8は情念を吐き出しながら悲劇的に突き進むミドルテンポのナンバー。オーケストレーションのインストの9から、何だかフューチャーワールドみたいなリフで突き進んでみる荘厳さと勇壮さを兼ね備えた劇走ナンバーの10へと。悲哀が世界を染め上げる叙情的なメロディのドラマティックな11でアルバムは幕を閉じます。 特徴的だったストリングスはすっかり見当たりませんが、劇的演出と悲哀描写に更なる磨きが掛かった耽美主義なゴシック/メロディックデスメタルなサウンドが展開されていくアルバムは、題材であるロシアの冷気も伴って絶望的に物悲しい世界を描き出していきます。楽器の音色に左右されない曲展開とストーリーテリングによって暗黒世界を覗き込む一枚です。 |
同系統アルバム CHARACTER/DARK TRANQUILLITY BEFORE THE BLEEDING SUN/ETERNAL TEARS OF SORROW REMAGINE/AFTER FOREVER |
NORTHWIND/FALCONER |
ノースウィンド〜遥かなる大地〜/ファルコナー |
METALBLADE MBCY-1079 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。初代ヴォーカリストのマティアス・ブラードが復帰して製作されています。ヴォーカルを変えてパワーメタル路線を追求していたバンドですが、バンドのアイデンティティとも言える初代ヴォーカリストを迎えて、トラッドメタル路線に再び舵を切りなおしたアルバムは、物悲しいイントロから哀愁のメロディが炸裂していくパワーメタリックでスピーディーな1でファルコナー復活を宣言していきます。ミドルテンポの2では重厚さも加わって泣きのメロディがあふれ出し、鋭いギターリフとキャッチーなコーラスが連ねられていくアッパーなスピードナンバーの3、センチメンタルなイントロからタイトでヘヴィなリフを連ねる荘厳な4、パワーメタリックなリフで開放的なコーラスへと繋げるアップテンポのドラマティックな5、トラッドなメロディがパワフルに描き出されるミドルテンポの6、哀愁のバラードナンバーの7、起伏も激しく突進力を見せるダイナミックなパワーメタリックナンバーの8では彼らの本領発揮と言った感じです。アップテンポでトラッドなムードを維持していく9はリズムチェンジして爽快感を生み出します。重厚に迫る10は物悲しい空気が辺りを包み込む情緒的な楽曲、アップテンポで進む11は湿ったムードと哀感のあるコーラスが一体になって迫ります。ミドルテンポの12はエスニックな空気も孕みつつメロディアスに進み、ソリッドなリフで突き進む勇壮な13、インストゥルメンタルの14は哀愁のギタープレイが堪能できます。ボーナストラックの15は前作の楽曲のリメイクになっています。 独特の歌声によって導かれる北欧メロディ分は大幅に増強され、哀愁のサウンドが帰ってきた!と諸手を挙げて歓迎したいところではありますが、ヴォーカリストの脱退の理由もそのまま戻ってきた辺りは痛し痒し。それまでのパワーメタル路線の影響はサウンドに多少残っていますが、ヴォーカリストとの辻褄を合わせたため、割と馬力不足になっているは否めないところです。今後、ヴォーカリストの特性に合わせたフォーキーだったりトラッドだったりする曲作りをしていく模様なので、昔からのファンには安心材料の多い一枚です。 |
同系統アルバム THE WINTER WAKE/ELVENKING TURIS FRATYR/EQUILIBRIUM THRESHOLD/HAMMERFALL |
MANIACAL RENDERINGS/JON OLIVA'S PAIN |
マニアカル・レンダリングス/ジョン・オリヴァズ・ペイン |
AFM RECORDS XOAN-1027 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?サヴァタージの中心人物、ジョン・オリヴァのバンドの二枚目のアルバムです。ギタリストに新たにミレニアムなどで活動していたショーン・フレンチが加わっています。ヘヴィリフの邪悪な唸りから始まるアルバムは、あのサヴァタージの代表曲“HALL OF THE MOUNTAIN KING”を彷彿とさせるジョン・オリヴァのダーティヴォイスと怪鳥シャウトが炸裂する重厚な劇的ヘヴィナンバーで幕を開けます。ダークなギターリフに導かれる2はタメの効いたメロディからオペラティックなコーラスへと、シンフォニックブラックメタル的な落差を持ったフラッシーなギターソロも印象的に迫るダイナミックな一曲。リリカルなイントロからの3はピアノの響きもオペラ風のドラマティックな展開を堪能できる起伏の激しいナンバー。フックのあるソリッドなリフで進む4は邪悪なヴォーカルが叩きつけられるパワフルなヘヴィナンバー。ソフトな歌唱で優しいメロディを歌い上げる序盤から感情を高めていく劇的ナンバーの5、一転してアグレッシヴに突き進む6は突進リフが凶悪なハイテンションナンバー。緊迫したムードがオペラティックに展開されていく、コーラスワークも重厚な7、再び哀愁のメロディを紡ぎだす8は劇的なパワーバラードで、インスト後に急展開。ミドルテンポでグルーヴィなムードを作り出す9は情感を高める密度の高いナンバーで加速するインストがドラマティック。牧歌的なムードも漂う10は多彩な表情を見せるヴォーカルが怪しく迫る大作。カントリー風の空気を感じさせる11は優しいメロディの曲。ボーナストラックは叙情メロディが不穏なムードに侵食されていくダイナミックなインストナンバー。 中期サヴァタージを再現したかのような邪悪さと荘厳さが交錯する、まさに当時の空気を呼び戻したドラマティックなサウンドを作り出しているアルバムは、いかがわしさが満載のヘヴィメタル然としたヘヴィメタルを叩きつけています。サヴァタージやドクター・ブッチャーが開店休業もこれだけのクオリティのアルバムを作ることが出来るなら問題無し。最近の豪華なサヴァタージに食傷気味の人やイーヴルなヘヴィメタルが好きな人の溜飲を下げる会心の一枚です。 |
同系統アルバム HALL OF THE MOUNTAIN KING/SAVATAGE THORNOGRAPHY/CRADLE OF FILTH MISSION NO.X/U.D.O. |
ONE COLD WINTER'S NIGHT [DVD]/KAMELOT |
ワン・コールド・ウインターズ・ナイト/キャメロット |
KING RECORD KIBM-122-3 [DVD] >>>>>BUY...?アメリカ出身のバンドのライヴDVDです。2006年2月11日に、ヴォーカリストの出身地ノルウェーはオスロのロックフェラー・ミュージックホールで行われたスペシャルライヴの模様が収録されています。最新作の「THE BLACK HALO」でシアトリカルな側面を極限まで高めたバンドが満を持してリリースする映像作品は、その期待を裏切ることのない高品質のものでカメラを10台以上配した気合の入りようが伺えます。ディスク1はコンサートの模様を収録したもので、期待高めるイントロから最新作からのタイトルトラックで、カーンの艶かしい歌唱と安定感のあるプレイが炸裂していきます。巷では“エロカッコいい”とか流行っていますが、それは露出度が高くて下品なのを勘違いしてるだけだ!“エロカッコいい”とはこのパフォーマンスを指すのだ!ホストみたいにすぐしゃがんでしまって後ろの観客は見辛そうだなあというのはさておき!そりゃドラマーもスティックを回すっちゅうねん。そういえば、サークル・トゥ・サークルにも居た事のある新キーボーディストは結構ヘッドバンガー。 それはさておき、映像記録から映像作品へとクオリティを高めるためにゲストも参加しているわけですが、アルバムにも参加しているエピカの女性ヴォーカリスト、シモーネ・シモンズがヘッドバンギングとか大サービスで登場するかと思えば、プロデューサーでお馴染みのサシャ・ピートがギターで一曲だけ参加したり、<ってヘヴンズ・ゲイト再始動まだぁ? (・∀・ )っノシ凵 ⌒☆チンチン さらにドリーム・イーヴルを辞めてしまったスノーウィー・ショウがメフィスト役でコスプレ登場だ!つーか、そんなに暇なのか。というわけで、観客も一体のドラマティックでスペシャルな冬の一夜が詰め込まれた、アーティスティックなバンドの現在を集約した一家に一枚な代物です。 ディスク2はインタビューとかビデオクリップが収録されています。多分滅多に観られない気がするシモーネのインタビューとかレアなものもありますが、ビデオクリップとかライヴ映像を取り出したものが多いので、あまりお得感はありません。だが、パイロって良いよな! |
同系統アルバム IMAGINATIONS THROUGH THE LOOKING GLASS/ BLIND GUARDIAN[DVD] FROM THE CRADLE TO THE STAGE [DVD]/RAGE OPERATION:LIVECRIME [DVD]/QUEENSRYCHE |