ALBUM COLLECTION バックナンバー 2004

January Februaly March April May June July August September October Nobember December


  1. INVISIBLE CIRCLES/AFTER FOREVER
  2. FATE OF NORNS/AMON AMARTH
  3. TEMPLE OF SHADOWS/ANGRA
  4. ALL FOR YOU/ANNIHILATOR
  5. REFLECTIONS/APOCALYPTICA
  6. FUTURE WORLD/ARTENSION
  7. BLOOD & BELIEF/BLAZE
  8. IMAGINATIONS THROUGH THE LOOKING GLASS/BLIND GUARDIAN[DVD]
  9. BURNING IN HELL/BURNING IN HELL
  10. TRASHED,LOST & STRUNGOUT/CHILDREN OF BODOM
  11. NYMPHETAMINE/CRADLE OF FILTH
  12. FORGET-ME-NOT/DARK LUNACY
  13. THE ART OF DYING/DEATH ANGEL
  14. RIDERS OF THE APOCALYPSE/DEMONOID
  15. MISPLACED/DGM
  16. SCULPTURE OF STONE/DIES IRAE
  17. ANIMA MUNDI/DIONYSUS
  18. GLORY THY NAME/DIVINEFIRE
  19. SONIC FIRESTORM/DRAGONFORCE
  20. THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL
  21. ONE STEP BEYOND/DUNGEON
  22. SHINE/EDENBRIDGE
  23. KING OF FOOLS/EDGUY
  24. HELLFIRE CLUB/EDGUY
  25. THE FOREVER ENDEAVOR/ENFORSAKEN
  26. STARS RAIN DOWN/ERIK NORLANDER
  27. WE HAVE SEEN THE ENEMY... AND THE ENEMY IS US/ENEMY IS US
  28. IRON/ENSIFERUM
  29. DOOMSDAY FOR THE DECEIVER/FLOTSAM AND JETSAM
  30. WELCOME TO THE SHOW/EVIL MASQUERADE
  31. TRACES OF THE PAST/THE FORSAKEN
  32. INCORPORATED/GRIP INC.
  33. BALLET OF THE BRUTE/HATESPHERE
  34. rEVOLVEr/THE HAUNTED
  35. DUST TO DUST/HEAVENLY
  36. HARD AS IRON/HEIMDALL
  37. VOLUME ONE/HELLFUELED
  38. DEFYING THE RULES/HIBRIA
  39. MEDUSA'S COIL/HIGHLORD
  40. THE ARRIVAL/HYPOCRISY
  41. THE GLORIOUS BURDEN/ICED EARTH
  42. LONG LOST PRIDE/IMAGINERY
  43. PEDAL TO THE METAL/IMPELLITTERI
  44. SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE/IN FLAMES
  45. BATTERING RAM/IRON SAVIOR
  46. 'TAGE MAHAL/JON OLIVA'S PAIN
  47. THE END OF HEARTACHE/KILLSWITCH ENGAGE
  48. UNTIL THE END/KITTIE
  49. SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN
  50. D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
  51. 8 DEADLY SINS/MANTICORA
  52. UPON THE WORLD/MEDUZA
  53. THE SYSTEM HAS FAILED/MEGADETH
  54. PEACE SELLS ... BUT WHO'S BUYING?/MEGADETH [DVD-AUDIO]
  55. THE WEIGHT OF THE WORLD/METAL CHURCH
  56. ALL IN TIME/MISTER KITE
  57. AMONG THE GODS/MOB RULES
  58. ONCE/NIGHTWISH
  59. NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES
  60. DEATH UNLIMITED/NORTHER
  61. 夢幻泡影/陰陽座
  62. Be/PAIN OF SALVATION
  63. EVOLUTION PURGATORY/PERSUADER
  64. DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
  65. FROM THE CRADLE TO THE STAGE/RAGE
  66. FROM THE CRADLE TO THE STAGE [DVD]/RAGE
  67. THE DARK SECRET/RHAPSODY
  68. SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS II -THE DARK SECRET-/RHAPSODY
  69. IRRADIANT/SCARVE
  70. THE WAR WITHIN/SHADOWS FALL
  71. WORLDS APART/SILENT FORCE
  72. INFERNAL/SILENT VOICES
  73. A THOUGHT ON LIFE DURATION OF
    SPECIES AND HUMAN BEHAVIORS/SILVERBACK
  74. SPECTRAL/SKYFIRE
  75. WINGS/SKYLARK
  76. VOL.3:(THE SUBLIMINAL VERSES)/SLIPKNOT
  77. RECKONIG NIGHT/SONATA ARCTICA
  78. PROPHECY/SOULFLY
  79. INK COMPATIBLE/SPASTIC INK
  80. ENSLAVED/STEEL ATTACK
  81. MODUS VIVENDI/TAD MOROSE
  82. RETURN TO EVERMORE/TEN
  83. ANOTHER SUN/THALION
  84. LEMURIA/SIRIUS B/THERION
  85. ADVANCE AND VANQUISH/3 INCHES OF BLOOD
  86. THE BURNING/THUNDERSTONE
  87. THE INNNER CIRCLE OF REALITY/TIME REQUIEM
  88. LOSS ANGELS/TOC
  89. BATTLE METAL/TURISAS
  90. PLAGUE-HOUSE PUPPET SHOW/TWILIGHTNING
  91. THUNDERBALL/U.D.O.
  92. STORM SEASON/WHITE WILLOW
  93. THE BEAST/VADER
  94. MAJESTY & PASSION/VICTOR SMOLSKI
  95. FORWARD AND BEYOND/VITALIJ KUPRIJ
  96. WINTERSUN/WINTERSUN
  97. FORCE THE PACE/WITHERING SURFACE
  98. SHATTERED-MIND-THERAPY/WIZ
  99. FAR FROM THE MADDING CROWD/WUTHERING HEIGHTS

January

DARK LUNACY | ICED EARTH | MANIGANCE | THUNDERSTONE | TIME REQUIEM |

FORGET-ME-NOT/DARK LUNACY

フォーゲット・ミー・ノット/ダーク・ルナシー

VICTOR VICP-62550 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のバンドの2003年に発表されたセカンドアルバムです。

 ヴァイオリン含めた弦楽器の調べを大胆に取り入れた楽曲は、哀愁と幽玄さが醸し出される夢幻の空気を生み出しながら、醜悪な表情を露にする締め上げ系のデスヴォイスによる暴虐的な狂乱を導いていきます。弦楽四重奏やピアノ、女性ヴォーカルによる美旋律がもたらす扇情力とメロディックデスメタルのパートの破壊力が織り成す相克は時には接近し、時には遊離しつつ一塊となって緊迫感を持ったサウンドを紡ぎ出しており、優美な世界を眼前に現出させます。

 多くの楽器を使った重層的なサウンドを生み出しているアルバムですが、攻撃的なプレイはもっぱらバンドのメタル的な要素に頼っていて、アンサンブルや展開によって緊張感を生み出せるほどには効果的な楽器の配置はされていないように聴こえます。とは言え、物悲しさが全編を覆い尽くす叙情的な楽曲が芳醇な香りを放ちつつ琴線に触れるメランコリックでドラマティックな一枚です。
同系統アルバム
PRISTINE IN BONDAGE/AMARAN
BLACKWATER PARK/OPETH
PROJECTOR/DARK TRANQUILLITY

THE GLORIOUS BURDEN/ICED EARTH

ザ・グロリアス・バーデン/アイスド・アース

NIPPON CROWN CRCL-4823 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ヴォーカリストに元ジューダス・プリーストのティム“リッパー”オーウェンズが加入して製作された、アメリカンパワーメタルバンドの7枚目のアルバムです。更にギタリストとベーシストも脱退して、ゲストとしてミレニアムなどで活動するギタリスト、ラルフ・サントーラが参加しています。

 アメリカを二分した南北戦争という題材を中心に、人類の戦争の歴史を描き出していくアルバムは、その実力通りのパフォーマンスを見せるティム・オーウェンズの力強い歌唱と骨太のギターリフを軸にスケール感の大きなサウンドを作り出していきます。前任ヴォーカリストの持ち合わせていた叙情性や哀愁は、強靭な自信に裏付けられる金属的な質感に塗り替えられていますが、鉄壁のような密度と圧迫感が強い説得力を生み出します。
 重厚さと激情を併せ持ったミドルテンポの1から、凄まじいハイトーンシャウトとダークでウェットな質感のサウンドが展開され、ジム・モリスが扇情的なギターソロを聴かせるまるでアルバムのエンディングかと思わせる寂寥感と叙情性を持ったドラマティックなパワーバラードの2へと。そしてバンドの特徴であるスラッシーなリフで疾走する攻撃的な3でもハイトーンヴォイスが炸裂、もちろんブレイクしてリフみたいなギターソロも炸裂。フン族の王、アッティラをテーマにした重厚長大なイントロで始まる4はアイアン・メイデン風のギャロップするリフと畳み掛ける展開が印象的な劇的ナンバー、続く5は第一次大戦の撃墜王を描き出すフックのあるリフがダイナミックな一曲、アコースティックギターの調べが哀愁を誘うスローテンポの6でもラルフ・サントーラのテクニカルなギターソロも聴けます。哀愁帯びたメロディのリフが展開される7では迫真のヴォーカルが楽曲に説得力を与え、アコースティックパートとのコントラストが鮮やかな8へと進んでいきます。
  アルバムの主題に迫る南北戦争を題材にした三部作は、バグパイプの調べに乗ってアメリカ国歌が流れる中、ディキシーに戦場のSEが重なり合うイントロから始まる9はスケール感も大きく生オーケストラをバックにダイナミックで緻密な場面設計と楽曲構成が為された大曲、続く10はリリカルなイントロから、切り刻むようなリフが展開されるドラマティックなナンバー、そして三部作の最後を飾るのはサウンドトラックを思わせる展開で聴き手を圧倒していく大作。ボーナストラックの12はストレートなアグレッシヴなナンバーと2のアコースティックバージョンです。

 ティム・オーウェンズを迎えて多くの面でパワーアップしたアルバムはバンドの成熟を感じさせる凄まじいもので、これまでの楽曲を強化した前半部と、今までに無かった表現方法や新たな一面を見せる後半部、特に組曲三部作での構成と世界観が融合した聴き手への真剣な対峙を要求する正にストーリーアルバムと言った超大作を聴かせており、確かに前任者には荷が重いことを感じさせる密度の高いものになっています。個性的な前ヴォーカリストが持っていたメランコリックな要素は確かに減って多少の違和感は残っていますが、それを上回る硬質で微塵の揺らぎも無い強烈な存在感とバンドの新たな幕開けを提示した渾身の一枚です。
同系統アルバム
THE CHEMICAL WEDDING/BRUCE DICKINSON
A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN
EPICA/KAMELOT

D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE

ダン・オトゥル・サン〜聖なる血統〜/ マニガンス

MARQUEE MICP-10420 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フランス出身のバンドのセカンドアルバムです。

 スペーシーかつ壮大なイントロダクションのムードを受け継いだ疾走ナンバーで始まるアルバムは、全ての面においてパワーアップを遂げた強力なものです。アグレッシヴ寸前の躍動感を見せる力強いリズム隊に支えられて、多彩なリフを積み重ねていきながらテクニカルなプレイを見せるギターが飛翔する2は、湿ったメロディを確かに唄いあげる伸びやかなハイトーンヴォーカルが相まってパワーメタル的な質感を生み出していきます。フックのあるメロディで進むアップテンポの3は透明感あるキーボードとソリッドなギターで導くダイナミックな展開を持ち、フラッシーなギターソロでテンションを上げていきます。タイトなリフとキーボードの絡み合いがボーナストラックでカバーしているプリティ・メイズを彷彿とさせなくもない4は扇情的なメロディのコーラスにギターソロ、キーボードが劇的に交錯していきます。湿り気を帯びたメロディがメランコリックなムードを誘う5はダイナミックなコーラスにエモーショナルなギターソロで一気に盛り上げます。ラウドなイントロからヘヴィリフが展開される6は情念高まるヴォーカルがムードを高める中、ミステリアスなインストゥルメンタルが切れ込みます。リリカルなイントロからメタリックでスリリングなギターが繰り出される7はドラマティックに進む緊迫感とスピード感を持った曲です。再びプリティ・メイズ的な空気を孕んだパワーメタリックかつメロディアスな8、広がりを感じさせるパワーバラードの9へ。ドラマティックに疾走する10は飛翔するコーラスで一気に盛り上げます。ハードな質感の11はテクニカルな側面を前面に押し出したインストゥルメンタルが印象的。そしてボーナストラックはフューチャー・ワールド!

 フランス語の官能的な響きがメタリックな音像と融合する独特のサウンドは、ファーストアルバムからプロダクションを含めてグレードアップした強力なもので、自由自在に楽曲を駆け巡るギタープレイはプログレッシヴな感触を、ドラムは常にパワー全開、ヴォーカルも情感を高めたパフォーマンスを聴かせています。バンドの充実振りをうかがわせる自信と力強さに満ちたメロディックメタルの真骨頂を発揮した一枚です。
同系統アルバム
LABYRINTH/LABYRINTH
THE UNCROWNED/LAST TRIBE
DOMI<>NATION/MORIFADE

THE BURNING/THUNDERSTONE

ザ・バーニング/サンダーストーン

MARQUEE MICP-10423 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。

 PVまで激しくストラトヴァリウスしていた前作から心機一転、ダークな雰囲気を持ったオーセンティックな欧州メロディックメタルを作り出した今度のアルバムは、ハスキーな声質のハイトーンヴォーカルも情感豊かに唄いあげる起伏の激しいドラマティックなミドルテンポの1から、キラキラキーボードと細かいリフでスピードアップする2は厚いフックのある勇壮さを持ったコーラスが印象に残る一曲。哀愁のメロディで唄いあげるドラマティックなミドルテンポの3、緊張感を持ったギターリフが疾走感を生みだす4は尖った曲調に渾身のギターソロが攻撃性を生み出します。憂いを帯びたキャッチーなメロディとヘヴィリフが融合する5は開放感を持ったサビへと。美しいメロディが爪弾かれるパワーバラードの6、メタリックなリフが緊迫感を生みだす7はソリッドな質感と劇的な展開が融合したパワーメタルチューン、攻防一体のインストバトルも注目。アップテンポの8は古典的なスタイルの劇的メロディックメタルナンバー。ヘヴィでミステリアスな空気が支配する9はタイトなメロディがダイナミズムを作り出します。北欧風味の叙情的なイントロから火花散るインストゥルメンタルがネオクラシカルしながらクライマックスに向けて進む10で本編は終了します。

 かなりストラトヴァリウスな要素は消化されて自分達の音に昇華されつつある段階の成長ぶりが窺えるアルバムは、メタリカマノウォーのカバーと言う謎なような何となく分かるような曲も収めつつ多方面に触手を伸ばしたものになってます。どちらのカバーもそれなりに様になっているところが、バンドの底知れない可能性を感じさせたりするような気配、そしてボーナストラックも沢山。何はともあれ、自分達の足元を見つめなおして新たな一歩を踏み出そうとするパワフルな一枚です。
同系統アルバム
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
OCEAN'S HEART/DREAMTALE
ELEMENTS PT.2/STRATOVARIUS

THE INNNER CIRCLE OF REALITY/TIME REQUIEM

ジ・インナー・サークル・オヴ・リアリティー/タイム・レクイエム

MARQUEE MICP-10418 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 鍵盤魔人ことスウェーデン出身のリチャード・アンダーソンが中心のバンドのセカンドアルバムです。バンド名から個人名の冠が取れてバンド名義の作品になっています。ベーシストには元ミッドナイト・サンで最近だとパワーメタルなプロジェクト、オパス・アトランティカ、そして現在スウェーデンのプログレバンド、フラワーキングスで活躍中のヨナス・レインゴールド、ドラマーにはこれまたフラワーキングスのソルタン・ソルツが迎えられています。

 このバンドと言うかリチャード・アンダーソンにオリジナリティを求めることは、やっぱりダメなのですが、そのネオクラシカルでプログレ風味、さらに影を背負った雰囲気のメロディックメタルは、シンフォニー・エックスを土台に、イングヴェイ・マルムスティーンのスパイスを効かせて、隠し味にドリーム・シアターを加えてじっくり煮込んで一晩置いておいたら、あら焦げてるわよ奥さん!まあ大変!、みたいな。ネオクラシカルは究極のサウンドを追求する職人の道である、とこの人が言ってたかどうか忘れましたが、同じような素材を使って、同じような到達点に向って進めば、それはどこかしら経路が交錯する似通った代物が出来上がるのも無理の無い話です。

 しかし、このバンドにも先行するバンドには無い有利な点があります!他のバンド達が膠着状態を打破するために様々な方面へのアプローチを推し進めて、その姿を変化させつつある中、このバンドは周回遅れ、じゃなかった聴き手、特にネオクラ者の琴線に触れるサウンドをひたすら力強く迷い無くやっているところです!期待を決して裏切ることの無い様式美世界を堪能できる一枚です。
同系統アルバム
THE ODYSSEY/SYMPHONY X
UNDERWORLD/ADAGIO
HIDDEN PLACE/DGM





Februaly

DIONYSUS | EDGUY | EVIL MASQUERADE | THE FORSAKEN | GRIP INC. | MEDUZA | PRIMAL FEAR | SCARVE | TAD MOROSE | TOC | VITALIJ KUPRIJ | WUTHERING HEIGHTS |

ANIMA MUNDI/DIONYSUS

アニマ・ムンディ/ディオニソス

MARQUEE MICP-10422 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。

 ダイナミックなリフから軽やかなネオクラシカルなプレイを聴かせつつ、高揚感を高めるコーラスでドラマティックに盛り上げる1から、ヘヴィなリフが展開する情念を高める2、キラキラするキーボードに導かれるタイトルトラックは勇壮なコーラスが感情を高ぶらせるアップテンポの曲。荘厳な雰囲気のイントロからタイトなリズムでスピードを上げていく粘りのあるサビが耳を惹く4、テクニカルなパートが少し目新しいメロディックな5、少しマノウォー的な世界観を持った雄大な7、ハロウィンタイプのアップテンポのメロウな8、柔らかいフィーリングを持った9は朗々と唄いあげるヴォーカルが心地よい爽やかな曲。緊迫感が高まる10はネオクラフレーズがドラマを生みだす劇的ナンバーです。

 きわめて真面目にメロディックメタルをやっているアルバムですが、悪いところが無いと同時に突出したところも見つからない、クオリティは高いものの印象には残りにくいものになってしまってます。先行バンドのストラトヴァリウスの動向が注目される現在、ある程度の需要は見込まれるものの、その間隙を窺うバンドがひしめく中で抜け出すのは結構難しいような。
同系統アルバム
ELEMENTS PT.2/STRATOVARIUS
RABBIT DON'T COME EASY/HELLOWEEN
OCEAN'S HEART/DREAMTALE

KING OF FOOLS/EDGUY

キング・オヴ・フールズ/エドガイ

MARQUEE MICP-10419 [MINI] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの六枚目のアルバム発表に伴う先行ミニアルバムです。アルバム収録曲はエディットバージョンの一曲のみで、あとは新曲を贅沢な仕様です。

 ダイナミックなイントロからヘヴィなリフが展開されていくドラマティックなミドルテンポの1、オーケストラを導入した牧歌的なイントロから彼等らしい明るいメロディのハジけたアップテンポのハロウィンガンマ・レイの流れを受け継ぐジャーマンメタルらしいポップ感にあふれる2、ハードなエッジの効いた歌詞がちょっと汚いスピードナンバーの3、ミドルテンポの4はシリアスなムードが影を落とす劇的でエモーショナルな曲。そしてピアノをバックにボーナストラックの事を唄うボーナストラックはドイツのバンドの伝統みたいな歯に衣着せぬウィットに富んだ笑える一曲、 とヴォーカリストのトビアス・サメットのソロプロジェクトのフィードバックが形になってきたアルバム未収録なのが勿体無い気がしないでもない充実の楽曲が揃ってます。
 これでニューアルバムの曲はもっと凄いに違いない!
     または、
 やっぱり、このミニアルバムの曲いれときゃ良かった…。

 になるかは神のみぞ知る。
同系統アルバム
RABBIT DON'T COME EASY/HELLOWEEN
THE KINGDOM/WIZARDS
THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA

WELCOME TO THE SHOW/EVIL MASQUERADE

ウェルカム・トゥ・ザ・ショウ/イーヴル・マスカレード

MARQUEE MICP-10426 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元ロイヤル・ハントのヴォーカリスト、ヘンリック・ブロックマンが元モアニ・モアナワザリング・ハイツのギタリスト、ヘンリック・フライマンと結成したデンマークのバンドのデビューアルバムです。ベーシストにはワザリング・ハイツ〜マンティコラのカスパー・グラム、ドラマーにSINPHONIAのデニス・ブールが参加しています。

 「ワルキューレの騎行」からスピードメタルを経て「山の魔王の宮殿にて」に至る節操の無いクラシックからのフレーズの引用を見せるイントロナンバーに一抹の不安とヘンな期待を抱かせるアルバムは、ロイヤル・ハント時代を思い出させる湿り気を帯びたエモーショナルなヴォーカルを聴かせるシアトリカルな劇的な2へと続いていきます。モアニ・モアナでも片鱗を見せていた素っ頓狂じゃなくて、予想を裏切りつづける意表をついた急展開で引っ張りまわしながらクラシックの有名曲を盛り込んでみせるネオクラシカルなテイストをたっぷり盛り込んだ派手な楽曲が揃っており、タイム・レクイエムのリチャード・アンダーソンとロイヤル・ハントのアンドレ・アンダーソンが揃って参加する贅沢な叙情ネオクラな3や、フックのあるメロディと思い切った場面展開が印象に残るドラマティックな4、イングヴェイと一緒に活動していたマッツ・オラウソンが参加した5は「エリーゼのために」とか「運命」とか色々突っ込まれたクラシック風味全開のアップテンポのダークなネオクラナンバー。パートを積み重ねて劇的情景を演出する6、突然「喜びの歌」が挿入されるイングヴェイ系の7、扇情的なメロディで迫る8、バッハなインストの9、物悲しいダークな感じで迫る10はアルバムの中では毛色の変わった曲。そしてもうちょっと豪勢に終わってもいいんじゃない?なブレイクしながらクルクルするファニーな一面を持ったタイトルトラック、ちょっと狙いすぎな感もある「君が代」で終わります。

 モアニ・モアナのエキセントリックな感覚とロイヤル・ハントの叙情感が妙な感じで合体したら一大劇場型ネオクラ作品になってしまったアルバムですが、メンバーのシアトリカルなメイクからも意気込みが伝わる好感触の一枚です。
 でも、売る気が無いんじゃないかってーくらいジャケットの趣味は悪いんですが。
同系統アルバム
DARK MOOR/DARK MOOR
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
DAYS OF RISING DOOM - METAL OPERA/AINA

TRACES OF THE PAST/THE FORSAKEN

トレイセズ・オブ・ザ・パスト/フォーセイクン

KING RECORD KICP-984 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの2003年発表のサードアルバムです。専任ベーシストが加入して製作されています。

 唸りを上げる凶悪リフが炸裂する中、野獣のようなデスヴォイスが咆哮する攻撃性の高いデスメタルなアルバムは、妖しいムードと攻撃性が交錯する緩急の激しい1からその激烈なビートと美旋律と形容される流麗なギターソロが強いコントラストを生みだしていきます。テクニカルでタイトなリフが繰り出される2でも官能的なギターフレーズと威嚇的なヴォーカルが劇的さを作りだし、きしむようなリフが展開される3は圧迫感も強く暴虐性を露にします。ヘヴィリフが威圧感を醸し出す暗黒の世界が描き出される4は暴走ブラストビート含めた激しいリズムチェンジを繰り返しながら突き進みドラマティックなギターソロが切れ込んできます。キレのあるリフが詰め込まれるテクニカルな5、邪悪なリフがブラックメタル的な6でも妖しいギターソロが繰り出されます。超高速で繰り出されるリフで押しまくるツインリードも決まったスラッシャーな7、畳み掛けるリフの応酬が圧巻の8、9でもギターソロはフラッシーに。聴き手を叩き伏せるように繰り出される壮絶なリフの嵐が吹き荒れる10、11はメタリカのカバーで迫力たっぷりの凶悪な仕上がりです。

 ブルータルデスにメロディックデス以上の華麗なギターソロを詰め込んだ凄まじい温度差がドラマ性を作り出すアルバムは、スラッシュメタルの流れを汲み取りながらデスメタルの新しい潮流を生み出しそうな勢いを持つもので、鉄壁の構築性と濃密な音空間を作り出した完成度の高い嵐のような一枚です。
同系統アルバム
ANTHEMS OF REBELLION/ARCH ENEMY
MY PASSION // YOUR PAIN/CALLENISH CIRCLE
THE MORE YOU SUFFER/CARNAL FORGE

INCORPORATED/GRIP INC.

インコーポレイティド/グリップ・インク

VICTOR VICP-62591 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スレイヤーに復帰したデイヴ・ロンバード率いるアメリカのバンドの5枚目のアルバムです。デイヴ・ロンバードが色々なところで活動しているうちに、すっかりどんなバンドだったか忘れそうですが、活動の不安定さとは裏腹の完成度を見せています。

 ダーティな声でメロディから咆哮までやってのけるヴォーカルと、激しく鮮やかなビートを刻むリズム隊、さらに鋭く切れ込むギターが一体となった波乱含みのアルバムは、呪術的な色彩を持ったグルーヴィなリズムとメロディから一転、スラッシーに疾走する爆発力を持った攻撃的な1から、浮遊感を感じさせるメロディのミステリアスなパートから圧迫感を持ったラウドなパートへと展開する2、デジタル感を持つグルーヴィなリフから熱気溢れるタイトなシンガロングなパートが印象的なライヴで盛り上がること必至の3、鋭いリフとビートが繰り出される4はブレイクとコーラスを絡めながらダイナミックに突き進む衝動直結系の曲です。ムードを一転してスパニッシュギターの華麗なフレーズを聴かせる5は吼えるように唄うヴォーカルが化学変化を起こす、うねりを帯びたメロディが生み出されていきます。エキゾチックなイントロから疾走に移る6は80年代スラッシュメタル的な爽快なスピード感を持った起伏の激しい曲、アポカリプティカのエイッカ・トッピネンがチェロで参加した7はメランコリックなメロディと威厳を持って唄うヴォーカルが暗い情動が噴出するドラマティックなナンバー、ダークな雰囲気から女性コーラスを絡めてダイナミックな空気を演出する8、トライバルなビートを刻む9は再びエイッカ・トッピネンにヴァイオリンも加わって色鮮やかにメロディが展開していくデヴィン・タウンゼンドを思い起こさせるクロスオーヴァーな感覚の曲。エスニックなフレーズからラウドなリフで突き進む10、ファニーなイントロからヘヴィリフ、ダイナミックに迫る多重的なサウンドを使って、魔空空間を作り出す11、と多彩な楽曲を揃えています。

 ドラマ性を作り出す強靭でアイディアにあふれるビートが縦横無尽に繰り出され、豊潤なメロディを持ったギターが楽曲に生命を与えていくアルバムは、破壊力と衝動性をも兼ね備える、ヘヴィメタルとワールドミュージックを重ね合わせたものになっています。聴き手の原初的衝動に訴えかけるダイナミズム漲るサウンドが詰め込まれた楽曲群が表す音楽面での充実ぶりは一目瞭然ですが、バンドの活動がそれに伴わないのはメタル界隈での大きな損失になるに違いない強力な一枚です。
同系統アルバム
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
THE GATHERING/TESTAMENT
ROORBACK/SEPULTURA

UPON THE WORLD/MEDUZA

アポン・ザ・ワールド/メドゥーサ

SOUNDHOLIC TKCS-85081 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。キーボードがツアーでサポートしていたプログレバンド出身のメンバーに替わって製作されています。

 タイム・レクイエムでも活動するアポロ・パパサナシオのハスキーで情熱的なヴォーカルを擁するアルバムは、丁寧に積み上げられるフレーズが興奮を呼ぶネオクラシカルの渦。アップテンポで哀愁たっぷりのメロディを聴かせる1に始まり、ダークでプログレッシヴな雰囲気も持つ情感豊かな唄メロに泣きのギターが炸裂する2、ダイナミックなイントロから緊迫感を持ったミステリアスな空気を生みだすグルーヴィな3、メタリックなリフで突き進むクラシカルなフレーズも盛り込んだ劇的なスピードナンバーの4、ミドルテンポの5は重いリフがネオクラシカルなギターと絡み合い濃密な空気を作り出し、続く6では加えて妖しさ増大。ソリッドなリフで重厚さを出す圧迫感の強い7、ドライヴ感のあるタイトなスピードナンバーの8、センチメンタルなバラードの9、ドラマティックに進む10は熱気を帯びるギタープレイが印象的なスローナンバー。ボーナストラックはスリリングなインストバトル。

 高いパフォーマンスで高品質のネオクラメタルなアルバムになってますが、やはり突出したものは少なめで決め手に欠ける通好みの一枚です。
同系統アルバム
THE EVIL IN YOU/AT VANCE
RISING SYMPHONY/STORMWIND
DREAMTOWER/RING OF FIRE

DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR

デヴィルズ・グラウンド/プライマル・フィア

VICTOR VICP-62616 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。ギタリストにトム・ナウマンが復帰、さらにドラマーに元アナイアレイターのランディ・ブラックを迎えて製作されています。

 ラルフ・シーパースの強力なハイトーン・ヴォーカルを前面に押し出したアルバムは、バンドの基本路線を堅持するジューダス・プリースト直系のパワフルなピュアメタルを更に強力にしています。メタル賛歌の押しの強い少し明るめのアップテンポの1から、ヘヴィリフが展開されメロディアスなサビを持ったツインリードギターも鮮やかなミドルテンポの2、4、緊迫感高まるリフの応酬からドラマティックに展開するシリアスな3、メロウなメロディで進む5は劇的なパワーバラード。スピード感あるリフで疾走する6は攻撃的で鋭角なナンバー。不穏な雰囲気のリフが展開されるヘヴィナンバーの7、再び戦闘的なリフから攻撃性と叙情性を融和させる劇的な8、アップテンポの9では勢いのあるリフがタイトなメロディと一体となって突き進みます。スケール感の大きいイントロで始まる10は哀愁のメロディで綴るヘヴィでダイナミックな曲、スラッシーなリフで始まる11はコーラスを絡めてメロディアスにテンションを上げていきます。語りのみのタイトルトラックで本編は終了し、そしてボーナストラックはディオにレッド・ツェッペリン。

 正統派メタルを実直にやってのけるアルバムは、勢いに任せたストレートな曲は減って、練りこまれ細部にまで気を使った楽曲が揃っており、印象的なギターソロも存在感を見せています。ボーナストラックの楽曲とも違和感の無いメタル然とした変わらぬ安定したパフォーマンスを見せる迷いの無い力作になっています。
同系統アルバム
THERE WILL BE EXECUTION/SINNER
ODIN/WIZARD
DIARY IN BLACK/RAWHEAD REXX

IRRADIANT/SCARVE

イレディアント/スカーヴ

SOUNDHOLIC TKCS-85086 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フランス出身のバンドのサードアルバムです。

 邪悪さたっぷりのソリッドなリフが嘔吐系デスヴォイスに咆哮クリーンヴォイスを伴って圧迫感の強い機械的な冷酷を生みだす楽曲は、テクニカルに狂気じみたメロディを紡ぎ出す1から、ダイナミズムにあふれるサウンドを構築していきます。警告を告げるサイレンのような不快感を保持するリフで脳髄に切れ込む2はミステリアスなメロディを繰り出すインストゥルメンタルパートとのコントラストが見物。高速ビートで突っ走るイントロからスペーシーな感覚も持った緩急変幻自在のサイケデリックな世界が現出するタイトルトラック、トリッキーなリズムで進む4はプログレ的な感覚の強いサイケデリックなナンバー、浮遊感あるメロディのイントロからアグレッシヴに変転する5はその空気を保ちながらツインヴォーカルと畳み掛けるビートが印象的な曲です。リリカルなイントロから怠惰な空気が生みだされる6は感情高まるヴォーカルの歌唱が絡み合い情念の奔流を作り出し、ブルータルに突進する7はソリッドな質感で聴き手を押し込める凶悪なナンバー、ノイジーなリフが怪しさ炸裂のムードを引き摺る8はエキゾチックな空気と予測不可能の鋭い展開を見せます。緊迫感が高まるドラミングの妙で圧倒し、ダイナモのような高圧のデスメタルパートからテクニカルに密度を高めながら回転数を上げていく9。

 予想できない奇奇怪怪な展開とデスメタルを本流に持った高密度の音のもたらす圧迫と開放を繰り返すサウンドは、白昼夢の幻視にも似た異様な感覚を聴き手に与えます。エキセントリックで、シュールな異形のヘヴィメタルが生み出されていくアルバムです。
同系統アルバム
HERETIC/MORBID ANGEL
SYL/STRAPPING YOUNG LAD
NOTHING/MESHUGGAH

MODUS VIVENDI/TAD MOROSE

モーダズ・ヴィヴェンディ/タッド・モローズ

NIPPON CROWN CRCL-4576 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの2003年発表の6枚目のアルバムです。

 骨太のリフが印象的な1から、アップテンポで唄メロがW.A.S.P.っぽい2、クイーンズライク的なシリアスな空気を生みだす哀愁たっぷりのミドルテンポの3、スピードアップしてソリッドなリフを繰り出す4は押しの強いパワーメタルナンバーでヴィシャス・ルーマーズ的な雰囲気もあります。グルーヴィーな5は暗い情念が噴出するメロウな曲、タイトなリフとフックのあるメロディで進む6は堂々としたヴォーカルが劇的さを生み出します。パワーメタリックなリフの7、8もコーラスワークと扇情的なギターソロがドラマティックな展開をもたらします。湿ったメロディがヘヴィなリフに乗る重量感たっぷりの9、刃のようなメロディとエキゾチックなムードが混ざり合うミドルテンポの10と軽いところが皆無の強靭な楽曲を揃えています。

 ダイナミックなリズム隊とヘヴィリフに導かれるダークな様相のヘヴィメタルは圧迫感の強い冷気を伴ったサウンドを生み出していき、パワフルなヴォーカルが唄う硬質なメロディは締め付けるような感覚で劇的世界を描き出します。即効性はあまり高くないボトムの方でうねるサウンドは欧州のダークサイドな面を飲み込んだもので、やっぱり日本では受けないわけですが、正統派メタルの様式を追求する好盤になってます。

 それにしても日本クラウンの帯タタキがかなり変なんですけど、担当者は大酒呑みか?
同系統アルバム
DYING FOR THE WORLD/W.A.S.P.
DOMI<>NATION/MORIFADE
SOUL TEMPTATION/BRAINSTORM

LOSS ANGELS/TOC

ロス・アンジェルス/TOC

MARQUEE MICP-10427 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スローン・オヴ・ケイオス改めTOCになったフィンランドのバンドの4枚目のアルバムです。専任ヴォーカリストを加入させたラインナップで製作されています。

 北欧メランコリックメタル風の1から始まるアルバムは、相変わらずの予想を覆す幅広い音楽性を見せるものになってます。さらにセンチメンタルに迫る2は繊細なバラード、ドライブ感のあるリフを持った3は細かい展開を繰り返すデスヴォイスも飛び出すハードロックナンバー、キング・クリムゾンを彷彿とさせる4はダークな感覚のプログレメタル。キーボードを前面に押し出した5はスペーシーな雰囲気の雄大な曲、情感溢れるメロディが印象的な6はドラマティックに迫ります。泣きのギターが琴線に触れるインストゥルメンタルの小品を挟んで、ヘヴィリフにデスヴォイスの咆哮が響く突進デスメタルナンバーの8へと。アヴァンギャルドな雰囲気を持った9は叙情的なメロディがドラマティックに紡がれていく大作です。そして仕上がりがまるでウィッチリーみたいな超高速のディープ・パープルの痛快なカバーからボーナストラックはメロディックスピードメタル!

 過去の作品との関連性を真っ向から否定してみるバラエティに富んだ楽曲群は、まさにハードロック/ヘヴィメタルのバトル・ロワイヤルか、はたまた独りコンピレーション。ルール無用の異種格闘技戦の様相を見せるハイブリッドな混沌の一枚です。
同系統アルバム
BEYOND ABILITIES/WARMEN
THREE/ARMAGEDDON
TRAIN OF THOUGHT/DREAM THEATER

FORWARD AND BEYOND/VITALIJ KUPRIJ

フォワード・アンド・ビヨンド/ヴィタリ・クープリ

YAMAHA MUSIC YCCY-00011 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アーテンションなどで活躍する、ウクライナ出身のクラシカルピアニスト兼メタルキーボーディストのロックアルバムでは四枚目、ソロキャリアとしては五枚目にあたるアルバムです。

 プログレ・スピードメタルを突っ走っていたこれまでのアルバムから、今作ではクラシックの有名フレーズをふんだんに盛り込んだネオクラシカルな面に注目したドラマティックな楽曲が取り揃えられています。幻想的な雰囲気を生みだすアルバムジャケットとは対照的にスリリングなプレイとダイナミックなビートが畳み掛けられる1のギタリストはリング・オヴ・ファイアで一緒にプレイしていたジョージ・ベラス。さらにシンフォニー・エックスのマイケル・ロメオが参加する2は“月光”のフレーズを奏でるピアノとギターが絡み合うスピード感あふれる劇的様式美が展開されていきます。アーテンション的な展開の3、エレクトリックなサウンドでネオクラシカルな展開を見せる6では感情豊かなプレイをARCH RIVALなどで活動していたマイケル・ハリスが見せています。再びクラシックのフレーズを組み合わせた4ではコズモスクワッドで活動するジェフ・コールマンがプレイ。エモーショナルな雰囲気を作り出す5はフェリーノ・リール・クープリでプレイするハヴィエル・リールが参加。キーボードのみの7を挟んで、ダイナミックに展開するネオクラメタルな8ではアーテンションのロジャー・スタフルバッハ、ソロで活動するボリスラヴ・ミティック、さらにフランチェスコ・ファレリがプレイ。

 ピアニストの本領発揮の華麗なプレイやテクニカルに決めるキーボードと、すっかり安心のブランドになったヴィタリ・クープリと言えども、流石にアルバムを重ねてくるとインパクトは薄れてしまいましたが、優雅さと緊張感が拮抗する高品質をキープした一枚になってます。
同系統アルバム
HIGH DEFINITION/VITALIJ KUPRIJ
EXTREME MEASURES/VITALIJ KUPRIJ
VK3/VITALIJ KUPRIJ

FAR FROM THE MADDING CROWD/WUTHERING HEIGHTS

狂乱からの旅路/ワザリング・ハイツ(邦盤名)

Sensory/Laser's Edge SR-3022 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 デンマークとスウェーデンからなるメンバーによるバンドの三枚目のアルバムです。ヴォーカリストにリチャード・アンダーソンズ・スペース・オデッセイにも参加しているNils Patrik Johanssonを迎えて製作されているアルバムは指輪物語あたりに影響を受けたであろうファンタジックなストーリーに基づいたコンセプトアルバムみたいです。

 バグパイプの寂寥感あふれる調べから始まるアルバムは、スケール感の大きなイントロダクションを経て、躍動感あふれるアイリッシュなメロディを含んだストリングスを絡めた哀愁のフレーズから緊迫感を高めながら展開を積み重ね疾走する密度の濃い2へと進んでいきます。力感たっぷりに唄うヴォーカルは超ディオタイプの粘りとコシのあるスタイルで、泣きのフレーズからテクニカルなパートまで決めていくギターの乱舞と共に幻想世界を鮮やかに描写していきます。ミドルテンポの3は扇情性の高いメロディを中心に組み立てられるヴァイキング・メタルに近い感触を与える勇壮さもあわせ持った二転三転していく劇的な曲で曲調を一変させるインストゥルメンタルが驚きを与える、多くの要素が詰め込まれています。哀愁帯びたメロディがスリリングな展開と絡み合って高みに上り詰めていく4はケルティックなムードの中盤から、狂乱のヴァイオリンなどのアコースティック楽器とエレクトリックなパートが積み重なって、その様はまるで森の奥での焚き火を囲んでの宴に月の魔力が加わってトランス状態に入った真夏の夜の夢のような。そして、この辺りから楽曲の境界が曖昧になったアルバム全体を舞台にする音世界が現出する夢幻の境地が繰り広げられていきます。常軌を逸した展開の狂乱インストの8に代表される、多種の盛り上がりが数多く配置された一筋縄ではいかない、様々なモチーフが有機的に構成されたサウンドが作り出されていきます。ほとんど全ての曲に3箇所以上の山場が用意されており、またその山場が高い位置で維持されている、オーケストラヒットもここぞとばかりに炸裂し、鐘の音が鳴り響く、スパークする音の嵐が吹き荒れる混乱とカタルシスが一緒にやってくる!

 ケルティックな雰囲気を持ったテクニカルなシンフォニックメタルというありそうで、あまり無かった方向に進んだアルバムは、プロダクションも向上してクリアーな音質になったことに加え、実力のあるヴォーカリストの変幻自在のパフォーマンスも素晴らしい、二段くらい一気にレベルアップした驚きの一枚です。
同系統アルバム
NIGHTFALL IN MIDDLE-EARTH/BLIND GUARDIAN
FOLKEMON/SKYCLAD
WELCOME TO THE SHOW/EVIL MASQUERADE





March

DRAGONFORCE | EDGUY | HEAVENLY | HYPOCRISY | IMPELLITTERI | IN FLAMES | MACHINE MEN | NOCTURNAL RITES | NORTHER | 陰陽座 | SOULFLY | WIZ |

SONIC FIRESTORM/DRAGONFORCE

ソニック・ファイアストーム/ドラゴンフォース

VICTOR VICP-62629 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イギリスを中心に活動する多国籍バンドのセカンドアルバムです。ドラマーにバル・サゴスのデイヴ・マッキントッシュを迎えて製作されています。

 デスメタル畑のドラマーのアグレッシヴなプレイに導かれるアルバムは、回転車を回し続けるハツカネズミみたいに速い。気になるところは幾つも見つけることができますが、多分、ハツカネズミと同じようにメンバーも聴き手もドーパミンとかアドレナリンが溢れ出ていてまともな判断が出来ないと思われる、スピードジャンキーな作品です。

 ヴォーカルがSTS8ミッションにちょっと似ている事を思い出した(年寄り向けネタ)。
同系統アルバム
SOMETHING WILD/CHILDREN OF BODOM
ECLIPTICA/SONATA ARCTICA
MIND WARS/HOLY TERROR

HELLFIRE CLUB/EDGUY

ヘルファイア・クラブ/エドガイ

MARQUEE MICP-10425 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの6枚目のアルバムです。

 シャープなリフが空気を切り裂くように畳み掛ける熱気あふれるダイナミックな1から益々強力になるハイトーンヴォーカルが炸裂するアルバムは、アクセプトからサヴァタージを経てアイアン・メイデンに至る密度の高い重量感と緻密な構成、さらに劇的な展開で圧倒する正統派メタルの結晶のような大作の2、思わずヴォリュームが上がるコーラスワークが興奮を誘う彼らの本領が発揮されたハロウィン直系のスピードメタルナンバーの3でテンションを高めつつ、湿ったメロディが躍動的に展開されるアップテンポの4、シングルカットされたヘヴィかつキャッチーな5で盛り上げた後は、ヴォーカルの感情移入度も高まったオーケストラも参加する壮大なパワーバラードで一段落。再びラウドなリフで押しまくる7は緩急が激しい、迫真のギターソロも聴かせるダイナミックな一曲。ドライヴ感のあるポップさも伴った底抜けパーティロックな8、物悲しいイントロから細かいリフで進む9はタイトなリズムが心地よい高揚感を高めるコーラスが印象的でギターソロも火花を散らします。インストゥルメンタルに続き、ヘヴィリフがタイトに迫る11は時折りクイーンズライクを彷彿とさせたりする熱気に満ちたものです。郷愁誘う繊細な感覚が支配する壮大かつドラマティックなバラードでもオーケストラが雰囲気を盛り上げてアルバムを締めくくります。
 ボーナストラックの13は唸るリフで圧倒するタフなスピードナンバー、14はクリエイターのミレ・ペトロッツァが参加した1の別バージョン,15は11のデモが収録されています。

 メンバーが影響を受けたであろう更に古い年代のバンドの息吹がそこかしこに息づくサウンドは、ヴォーカリストのプロジェクトの影響が大きくフィードバックされたダイナミズムとヘヴィメタルの醍醐味をたっぷり味あわせるもので、強烈な存在感を示すヴォーカルは勿論あらゆる面で大きく成長を遂げたメジャー感が強まったアルバムになっています。 新世代ヘヴィメタルの旗手として正統ジャーマンメタルの後継者を宣言する、自信と満足に満ちた充実の一枚です。
同系統アルバム
THE BURNING/THUNDERSTONE
THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
EPICA/KAMELOT

DUST TO DUST/HEAVENLY

ダスト・トゥ・ダスト/ヘヴンリー

KING RECORD KICP-989 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フランス出身のバンドの三枚目のアルバムです。ホラーストーリーを基にしたコンセプトアルバムになっています。

 オカルトホラー風の大仰でシアトリカルなイントロダクションから繰り出されるのは、煌びやかなキーボードと爆発的な突進力を持ったメロディック・スピードメタル。三部構成の一部は、ガンマ・レイをベースにした厚みのあるコーラスワークと豪華なサウンドで激烈疾走と劇的展開を繰り広げていく1ではヴォーカルはまるでカイ・ハンセンのようなダーティな歌声からクリアーなハイトーンまで聴かせていく器用さと物語性を持ったギターソロで盛り上げていきます。北欧メタル風の透明感あるイントロから始まるは、かなりストラトヴァリウスハロウィンに影響を受けているコーラスが美しいミドルテンポのパートから一気に疾走してみせる激しい展開で圧倒します。とてつもなくアングラしている4はクラシカルなイントロではヴォーカルはまるでアンドレ・マトスだったりしますが、やっぱりフックのある派手な展開で疾走したりしながらガンマ・レイが影響を受けたクイーン由来のシアトリカルな構成を見せていきます。
 第二部はスペーシーなイントロから分厚いコーラスワークを聴かせる大仰な5から、鐘の音も高らかに爆裂疾走するまるでマノウォーな歌唱を聴かせるパワーメタリックな音像と派手に盛り上がるコーラスが熱い高揚感も高まる飛翔する6へと。神秘的なインストゥルメンタルから、ネオクラシカルに疾走するイントロから開放感を与えるコーラスへとキラキラしながら突っ走る8、初期のドラマティックな大作をリ・レコーディングした9と。
 第三部は、スリリングに起伏も激しく劇的疾走する勇ましいコーラスも熱い10から、緊迫感を煽るSEとナレーション、さらにギターとキーボードが絡み合うインストゥルメンタルの11、怪しげなSEから荘厳かつ大仰なイントロへ移る12はクラシカルなテイストも孕みつつギャロップしていく二転三転するドラマティックな展開に目が回りそう。13は哀愁たっぷりのパワーバラードで、ボーナストラックは…。

 インスパイアされたバンドを枚挙するのが大変なくらいの、まるでメロディック・スピードメタルの見本市のようになっているアルバムですが、ここまでの開き直りと堂々とした姿勢はある意味すがすがしささえ感じさせます。中途半端でなく全部詰め込んでやる!みたいな意気込みがピュアなヘヴィメタルに結実する、がむしゃらな勢いと質量で聴き手を圧倒していく何だか凄い一枚になってます。
同系統アルバム
THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR
RITUAL/SHAMAN
SOMEWHERE OUT IN SPACE/GAMMA RAY

THE ARRIVAL/HYPOCRISY

ジ・アライヴァル/ヒポクリシー

MARQUEE MICP-10432 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のトリオバンドの9枚目のアルバムです。ドラマーはアルバム製作後に脱退した模様です。

 今にも嵐が巻き起こりそうな不穏なイントロから、ソリッドなリフが展開されるブルータルなパートへ翻る緩急の激しい1から始まるアルバムは、吐き捨て炸裂系のデスヴォイスを駆使したダークな色彩のサウンドが支配する怪奇世界。不安感をつのらせるイントロからの2は叙情的な黒いメロディに染め上げられるヘヴィナンバー、ダイナミックなヘヴィリフで追い込んでくる3は軋むような圧搾感と扇情的なメロディが印象に残ります。物憂げなグルーヴ感が情念混じりのメロディと一つになって進むヘヴィな4、ハンマーで叩きのめすようなソリッドなリフがテスタメントを思い起こさせる突進力と構成力を持った5、威圧的な呪詛的ヴォーカルが荘厳なコーラスと交錯するギターソロも豊潤なスローナンバーの6、暗いメロディを持ったリフが攻撃的なヴォーカルとシンクロするドラマティックなミドルテンポの7、グルーヴィなリフが熱気を帯びたメロディと一体になる情念系の8、クランチーなリフで威嚇する9はドロドロした妖気と暗い森の旋律が絡み合いもつれていきます。

 アルバムによって割と作風を変えてくるバンドですが、情念にじみ出るメロディを軸にした今度の作品は攻撃性や暴虐性よりも圧迫感や音の密度で押していくタイプの、ゴシックメタル寄りのメロディックデスメタルに近いスタイルになっています。演奏の安定度や楽曲の構成力はベテランらしいクオリティを保っており、叙情的なメロディなど魅力的なところも色々ありますが、どうもこのスタイルとしては周回遅れでやってきた、リリースのタイミングがあまり良くない一枚のような気がします。
同系統アルバム
SADISTIC SEX DAEMON/MISANTHROPE
SWEET VENGANCE/NIGHTRAGE
EMBER TO INFERNO/TRIVIUM

SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE/IN FLAMES

サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ/イン・フレイムス

TOY'S FACTORY TFCK-87346 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの7枚目のアルバムです。

 ブルータルなデスメタルをやってのける1で路線変更か!?と驚かせてみた後は、ギターソロを極力排しつつ叙情性を帯びたソリッドなギターリフを軸にしたグルーヴとアヴァンギャルドな浮遊感を持ったメロディアスかつアグレッシヴな前作からの流れを引き継ぐ楽曲を揃えているアルバムになってます。メロディの感じは少し以前の雰囲気に戻ったみたいですが、コーラスワークは露出を抑え目にしているようです。基本的な曲の構造が激しくアメリカナイズされている、コンパクトで展開が少なめのストレートなものが多いのも少し彩りが少なく感じさせる一因でしょうか。まとまりのあるサウンドはこれまでのキャリアを積み重ねただけのことはある高品質なものですが、しかしながら、最近のアルバムはバンドの構成要素が全て詰め込まれているとはいえないような気がして、妙に煮え切らない感じばかりを残します。

 とりあえず、俺は昔のアルバムを聴くぜ!まず「CLAYMAN」から。
同系統アルバム
WHORACLE/IN FLAMES
COLONY/IN FLAMES
CLAYMAN/IN FLAMES

PEDAL TO THE METAL/IMPELLITTERI

ペダル・トゥ・ザ・メタル/インペリテリ

VICTOR VICP-62631 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ出身のギタリスト、クリス・インペリテリ率いるバンドの8枚目のアルバムです。ヴォーカリストに、元スピーク・ノー・イーヴルのカーティス・スケルトンを迎えて製作されています。

 あきらかにヌーメタルに影響を受けたヘヴィなサウンドに包まれるアルバムは、この辺りで聴かれるメロディが満載のタイトなリズムと起伏の激しいドラマティックな1から、クリス・インペリテリの華麗なネオクラシカル・ギタープレイと新しいヴォーカリストの少しダーティなパワフルヴォイスを聴かせる、色々な意味でスリリングな楽曲が続いていきます。デスヴォイスが飛び出す2はクランチーなリフが威圧的に迫るソリッド感と開放的なコーラスのコントラストが鮮やかなコンパクトな曲、これまでの彼等のスタイルを踏襲するエッジの効いたリフとメロディが一体となって迫る3、シアトリカルでミステリアスなイントロからダイナミックに展開する4は物語性の強い演出で盛り上げるドラマティックな大作で、緊迫感漲るインストゥルメンタルが印象的です。ヘヴィなリフで始まる5は倦怠感のあるパートからグルーヴィなリフを発展させるラウドな曲で新しい一面を見せています。メタリックなリフとキーボードが一体になって進む劇的さも加味するスピードナンバーの6はアメリカン・パワーメタルとしてのバンドの一面を思い出させる一曲。メロディックデスメタルを彷彿とさせる圧迫感のあるリフで構成される7はエキセントリックなヴォーカルメロディと予断を許さない曲展開で圧倒します。ラップ調のヴォーカルを使ってみる8はファンキーさが皮肉っぽい歌詞と混ざり合わない、どうにもこうにもメタルな本性が現れる興味深い曲になっています。モダンな感覚が支配するダークな9は鬱屈系のメロディが中心に進み、10はアメリカン・ハードロックな感覚の強い、と言うかボン・ジョヴィとオジー・オズボーンを足したみたいな。ボーナストラックは、本人も認めるイン・フレイムスをクリーンヴォイスでやってみたぜ!な曲です。

 ワールドワイドな規模でのヘヴィメタル要素を取り込んで、自分達のスタイルでやってのけるアルバムは、あからさまなフレーズの借用とかが時々目立ったりしますが、総じて新しいスタイルに挑もうとするチャレンジ精神にあふれたものになっていて、バンドの意気込みを感じさせるものになっています。どんなに今までのスタイルと違う曲でも唄メロなどにバンドらしさが表れる辺りが、やっぱりインペリテリ、と納得する高品質の一枚です。

 クリーンヴォイスだとイン・フレイムスは攻撃性が足りなくなるのかあ…。
同系統アルバム
NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES
WAKING THE FURY/ANNIHILATOR
EVILIZED/DREAM EVIL

SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN

スカーズ・アンド・ウーンズ/マシーン・メン

MARQUEE MICP-10429 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フューネリス・ノクターナムのギタリストを含む、フィンランド出身のバンドの2003年発表のデビューアルバムです。

 少し渇いた音像のブリティッシュ風味たっぷりのサウンドから繰り出されるのは、アイアン・メイデンへの愛情を発散させる正統派ヘヴィメタル。ブルース・ディッキンソンを意識した唄いまわしを見せるマイルドなハイトーンヴォーカルに、ギターリフや曲展開、更にギターソロに至るまで端々から意気込みを感じさせるアップテンポの1から、メロウなメロディとメタリックなリフが切羽詰ったヴォーカルメロディからの感情豊かなコーラスへと繋がるミドルテンポの2でも泣きのギターソロで盛り上げます。ダークで底の辺りから持ち上げていく3は物悲しいコーラスとひねりの効いたバックの演奏が高みへと押し上げていく物語性の強さが聴き所、叙情的なメロディのギターリフのハーモニーがもたらす高揚感とツインリードのギターソロが印象的なドライヴ感の強いナンバー、ダイナミックなリフとタメの効いた起伏のある展開でドラマを生みだすミドルテンポの5、ヘヴィリフが熱を帯びながら劇的さを呼び込んでいく滑らかなギターソロもアクセントにした6、激しいシャウトで始まる7は攻撃的なリフが疾走感を生みだしています。アコースティックなイントロから寂寥感漂う哀愁のフレーズが重ねられていくタイトルトラックは、情感たっぷりのシアトリカルなヴォーカルにセンチメンタルなギターソロを詰め込んだスローナンバーの暗黒大作です。ボーナストラックはメタリックにドライヴするリフと熱気漲るギターソロがタッグを組んだメタルナンバーの9、細かいリフと扇情的なメロディを唄うヴォーカルが躍動的に表れるミドルテンポの10、さらに…。

 誰が聴いてもアイアン・メイデンへの憧憬がヒシヒシと伝わるサウンドは、北欧の繊細さと「PIECE OF MIND」あたりのスタイルを結びつけたドラマティックでオーセンティックなヘヴィメタルをやっているわけですが、その傾向は模倣と言うよりも自分達の受けた感覚を素直に表現してみたというアルバムになっています。スタンス的にはブルース・ディッキンソンのソロアルバムに近い、自分達の理想とするサウンドを追求したもので、伝統的なスタイルを受け継いだ好印象の一枚になってます。
同系統アルバム
DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN
ACCIDENT OF BIRTH/BRUCE DICKINSON
PREDATOR OF THE EMPIRE/STEEL ATTACK

NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES

ニュー・ワールド・メシア/ノクターナル・ライツ

VICTOR VICP-62619 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 瑞典出身の6枚目の音源です。鍵盤奏者が脱退していますが、音楽性への影響は無いようです。

 逞しさを感じさせる硬質の音世界を作り出している今度の作品は、多少初期の頃の叙情感に戻ったかのような旋律を響かせます。攻撃的に迫る1から重厚な雰囲気が荘厳さを呼び起こす2、鮮やかな幕開けを見せる3は疾走感と高揚感高まる劇的合唱、さらに哀愁の旋律で盛り上がります。緊迫感の高まる出だしから小気味良く駆け出す4は鋭い演奏と感情を映し出す歌唱で扇情的に盛り上げます。中近東的な旋律が全編を覆う5は壮大さと神秘性が交錯する密度の高い一曲で続く叙情感と重い旋律が混ざり合う6に雰囲気を繋いでいきます。劇的に盛り上がる開幕から緊張感を維持しつつ即効性の高い山場に導く7、情念が濃密な空間を生みだす8、爆発力のある出だしから軽快に進む9は起伏も大きな展開を見せる叙情感の強まった曲です。緊張感と叙情性を合わせて進む10は飛翔感のある劇的展開を見せます。日本盤特別収録曲は疾走感の強い突っ込み気味の11、重量感のある渦巻く旋律で構成される12と本編に見劣りしない曲を揃えています。

 前作までの方向性には変化は無い、安定した演奏と歌唱を聴かせている作品ですが、割と似たような感覚を与える楽曲が並んでしまっていて、全体としての印象が多少希薄になっている感があります。神秘性の強まった重厚な楽曲は存在感を発揮していますが、疾走曲は耳障りが良すぎるせいか、引っかからずにそのまま過ぎていくような。高品質な割には収録時間以上に長さを感じさせる一枚です。
同系統アルバム
D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
MODUS VIVENDI/TAD MOROSE

DEATH UNLIMITED/NORTHER

デス・アンリミテッド/ノーサー

UNIVERSAL MUSIC UICO-1059 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのメジャー移籍しての第一弾になる3枚目のアルバムです。

 叙情的なギターの調べが流れるイントロダクションから始まるアルバムは、キーボードと荒れ狂うギターが爆走状態のドラミングと一体になって突き進む2へと進んでいきます。破壊的なデスヴォイスと豪快なコーラスは聴き手を打ちのめすパンチの連打のように叩き込まれていき、メガデスを彷彿とさせる冷気漂うシャープなイントロダクションとのコントラストを生み出していきます。更に絞り込まれるリフの応酬と不思議感の残るキーボード、暴虐性を増していくヴォーカルで煽動力を高めていく緩急自在の突進ナンバーの3、暗いメロディで迫るミドルテンポの4は畳み掛ける塊のリフにクリアーなキーボードが絡みつく熱気あふれる一曲で崩れ落ちるようなコーラスとシアトリカルなインストゥルメンタルで盛り上げます。オーケストラヒットとヘヴィリフで始まる5は緊迫感を高める切り刻むギターリフとシンフォニックなキーボードが錯綜するダイナミックな曲で従来路線に近いスタイル、さらに続く6は5と連続性のあるもので、タイトなリフとクリーンなコーラス、更にリリカルなメロディを積み重ねてドラマティックな展開を増強させていきます。ダイナミックなギターリフが最近のチルドレン・オヴ・ボドムを彷彿とさせる7は緩急をつけながら密度の濃い世界を作り出します。ヘヴィリフで進む8はうねるメロディが力感を、優雅なメロディが耽美さを産みだしていきます。繊細なインストゥルメンタルを挟んで、メロディとパワーが一体となったリフで突き進む、合いの手も勇ましい疾走ナンバーの10、ミドルテンポで熱気あふれる衝動を吐き出す11、スリリングな疾走感とメロディが聴き手を煽る12は急展開で表情を変えていく密度の高いスピードナンバーです。ボーナストラックにはメガデスのかなり忠実なカバーが収められています。

 ヴォーカルの豪快な放り投げっぷりと強烈な疾走感を生みだすリズム隊は骨太なサウンドの核になっているアルバムは、以前にあった繊細な透明感を振り切る勢いで突っ走る爽快感を強めて、北欧のキラメキ感を減らしています。しかし、説得力と扇情力は一段と強化されて力強さを作り出し、それに伴うメジャー感とブルータルな側面が増したストロングスタイルなメロディックデスメタルとなっている一枚です。
同系統アルバム
HATEBLEEDER/CHILDREN OF BODOM
UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER
SWAMPSONG/KALMAH

夢幻泡影(むげんほうよう)/陰陽座(おんみょうざ)

MUGENHOUYOU/ONMYOUZA

KING RECORD KICS-1066 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 日本の妖怪メタルバンドの5枚目のアルバムです。メディアへの露出度も急上昇でメジャー化への道をひた走っているバンドですが、サウンドの方はストイックなほどにメタルな道を突き進んでいます。

 不穏で緊迫した空気を孕むギターが唸るヴォーカル入りのイントロダクションから繰り出される楽曲は、ドラマティックに展開するスピードナンバーの2へと進んでいきます。クリーントーンの男女ツインヴォーカルが唄いあげる扇情的なメロディと叙情感を伴うダイナミックな展開が、純日本語の歌詞世界を鮮やかに描き出し、ツインギターの官能的な絡み合いが曲に生命を吹き込んでいきます。アイアン・メイデン風のリフが積み重ねられる3は女性ヴォーカルをメインに哀感たっぷりのメロディがツインリードと共に溢れ出し、キャッチーなメロディがポップな感覚を生みだすドライヴ感のある4へ。デスヴォイスを導入した5はアルバム中もっともアグレッションが強化された一曲で、和的なメロディを隠し味に能の歌唱法をも見せるドラマティックな展開を見せます。どうでもいいですが、この曲でデスヴォイスはネイティヴな人は聞き取れているんだろーか?と言う素朴な疑問が解消されました。日本語で唄ってても分かりゃしないぜ!(笑)
 ヘヴィに迫る6は演歌風の節回しとメタリックな要素が絡み合う彼らの特徴が現れた一曲。柔らかいメロディで男性ヴォーカルが唄いあげるメロウな7、山田風太郎をリスペクトする大作の8ではツインリードギターが緊迫感を高めつつ演劇風パートなど場面を転換させていきながら進んでいきます。繊細なメロディが紡がれるバラードの9を経て、ブルー・オイスター・カルトあたりの70年代ロックを彷彿とさせるロールする10とバラエティのあるアルバムになってます。

 欧州色が強まりつつある正統派ヘヴィメタルの要素を詰め込んだメロディアスで捻りの効いたサウンドが全体を覆っており“和”の要素は大分控えめになったメジャー感の強いアルバムに聴こえます。多少好みの分かれそうなバンドの持っていた独特のドロドロした雰囲気の独自性と普通の人にも拒否感の少ない普遍性の間のバランスを上手くとっているサウンドが聴かれる、日本の歌謡界で大きく飛躍しそうな一枚です。それにしても難しい日本語はまるで外国語のように聞こえる。
同系統アルバム
THE BURNING/THUNDERSTONE
UPON THE WORLD/MEDUZA
EPICA/KAMELOT

PROPHECY/SOULFLY

プロフェシー/ソウルフライ

ROADRUNNER RRCY-21221 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元セパルトゥラのマックス・カヴァレラのバンドの4枚目のアルバムです。メンバーが大幅変更されて、ギタリストには元イル・ニーニョのマーク・リゾ、ベーシストにPRIMER55のボビー・バーンズ、更にゲストとして元メガデスのデイヴ・エルフソン、ドラマーは以前にも参加していたジョー・ヌネズが迎えられています。

 緊迫した空気を生みだすノイジーなイントロから、重量感たっぷりのラウドロックが展開されるヘヴィでグルーヴィな1から、マックス・カヴァレラの怒号デスヴォイスが炸裂していくアルバムは、これまでの路線を踏襲するワールドミュージックの要素を取り込んだサウンドを作り出していきます。唸りを上げるヘヴィリフで突撃していく2はアグレッシヴなコーラスも威圧的に迫るタイトな曲でエキゾチックなフレーズを絡めつつ盛り上げるアウトロとのコントラストが鮮やかです。緊張感漲るエッジの効いたリフで攻撃的に畳み掛ける3はフラッシーなギターソロで意表を付いてくるソリッドな曲、タイトなビートがドライヴ感を生みだす4はグルーヴ感を持ったコーラスと結びついて衝動性を発現していきます。躍動的なリフが唸る5は咆哮するサビで威嚇するアップテンポの曲でスパニッシュギターを使ったアウトロが扇情性を生み出していきます。エキゾチックなメロディを隠し味に豪快なヘヴィサウンドが展開される6は圧迫感の強いパートとクリーントーンのセンチメンタルなパートが交錯するドラマティックな曲、ホーンセクションの導入でレゲエとのコラボレーションを図る7はヘヴィロックとレゲエが混沌としながら進んでいく実験的な曲になっていて、緊迫感あふれるヘヴィパートとの間に不思議なムードを作り出していきます。凶悪なヘヴィリフで圧倒していくアグレッションの化身のような8は民族音楽的なインストゥルメンタルを埋め込んで進んでいきます。ボサノバなイントロで始まる9は猛烈な突進を見せるハードコアな本編を経て、サンバなアウトロへ、って言うかありえない構成だ。ヘルメットのカバーの10から、南国の森林の熱気うずまくパートからリリカルなパート、さらにフラメンコギターが導入されるインストゥルメンタルの11、女性ヴォーカルの情感豊かな歌唱で始まる二部構成の12は、ホーンセクションのビッグバンドな後半パートがマーチ風に仕上がっていて、更にアウトロはミステリアスに。ボーナストラックはライヴ音源が6曲収録されています。

 ヘヴィロックな曲はいつも通りの破壊力を見せ、さらにワールドミュージックな要素が詰め込まれた楽曲は、今までに無かったような感触を与える出色の仕上がりになっている、バラエティのあるアルバムになっています。マックス・カヴァレラのビジョンがサウンドに色濃く反映されている冒険心に満ち溢れた一枚です。
同系統アルバム
INCORPORATED/GRIP INC.
ROORBACK/SEPULTURA
THE IMPOSSIBILITY OF REASON/CHIMAIRA

SHATTERED-MIND-THERAPY/WIZ

シャッタード・マインド・セラピー/ウィズ

VICTOR VICP-62628 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのファーストアルバムです。同郷のノストラダムスのメンバーが関わっています。

 物悲しいオルガンが遠くで鳴っているイントロで始まるアルバムは、ギシギシしたメタリックなリフが哀感にまみれるハイトーンヴォーカルと共に聴き手を締め上げていく情念を吐き出していくミドルテンポの1から、暗い感情を露にしていく湿ったサウンドが展開されていきます。更に陰鬱なムードを漂わせながら進む2はメランコリックなメロディで感情を盛り上げながら静と動のコントラストを見せるスローナンバー、叙情的でソリッドなリフが怠惰な熱気を帯びるヴォーカルとシンクロしていく3、センチメンタルなメロディがアップテンポで展開されていく4は一瞬の開放感を感じさせるコーラスとギターソロが暗雲を切り裂いていきます。女性ヴォーカルを導入した懊悩するヴォーカルがもがきながら進むパワーバラードの5、ヘヴィなリフで進む6は衝動的にヴォーカルを破裂させながら圧迫感を強めていきます。アップテンポで躍動感のあるギターを聴かせる7、ウエスタンな雰囲気のイントロからドライヴするリフへと繋げる8は扇情的なコーラスとツインギターで盛り上げます。哀愁のメロディが爆発していくミドルテンポの9、エッジの効いたリフでメタリックな空気を作り出すダイナミックな10、さらにボーナストラックはアイアン・メイデン的な感触も持つフックのあるリフで進めていくドラマティックなミドルテンポの11、さらにメロディアスなリフが畳み掛けるキャッチーなコーラスもある12が収録されています。

 北欧の曇天の空が全編を覆い尽くす、鬱屈感と沈滞感が支配するサウンドは、オーセンティックなヘヴィメタルの暗いところを抽出したようなものになっていて、正直地味と言うかセールスポイントをアピールするのが難しいですが、サビで表れる感情を爆発させるメランコリックなコーラスが印象的、と言うか最大にして唯一の武器。それを際立たせるためにわざと曲の序盤は苦しげに進んでいる、に、違いない、きっと。スピードジャンキーな人には回りくど過ぎて、窓から投げ捨てろ!になると思われますが、個人的には嫌いではない、長く聴くのは精神衛生上辛いけど。ゴシックメタルにも通じるダークな色彩によって作り出されるのは、ナルシシズムが充満する苦悩と憤りが心の容れ物から溢れ出す、街に出て叫び出したくなるような一枚です。
同系統アルバム
SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN
EVILIZED/DREAM EVIL
DOMI<>NATION/MORIFADE





April

AFTER FOREVER | ANNIHILATOR | APOCALYPTICA | HEIMDALL | HELLFUELED | HIGHLORD | MEGADETH | MISTER KITE | SPASTIC INK | U.D.O. |

INVISIBLE CIRCLES/AFTER FOREVER

インヴィジブル・サークルズ/アフター・フォーエヴァー

MARQUEE MICP-10437 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 オランダ出身のバンドのサードアルバムです。オリジナルメンバーのギタリストが脱退しています。今回のアルバムは、現代社会の病巣を描き出すコンセプトアルバムみたいです。

 物語性を重視した演出を盛り込みつつ進むアルバムは、荘厳さと神秘性を持ち合わせる女性ソプラノと醜悪に迫る男性デスヴォイスによって形作られる緊迫感を持った楽曲を揃えています。ゴシックメタル的な構成だと攻撃性はデスヴォイスに任せて女性ヴォーカルは癒しとか安らぎを受け持ったりしますが、このバンドの作り出すサウンドは、ヴォーカルの双方供が聴き手に攻め入る鋭角さを持った破壊力のあるものになっています。開幕を告げる小芝居の1から女性ヴォーカルの鞭で叩いてデスヴォイスが蝋燭を垂らす、ゴシックホラー風味のけれんみもたっぷりの2からシアトリカルかつ劇的に突き進み、ムードを維持したままツインヴォーカルの畳み掛ける攻性がスリリングな威圧感も強まり唸りを上げていく3では演劇風パートの演出でストーリーを描き出します。続く4ではミステリアスなムードを強めつつ、やっぱり責め苛む女性ヴォーカルにパワーメタリックなリフが絡みつき威厳へと昇華していく展開で盛り上がります。ピアノをバックにしっとりと唄いあげる5は女性ヴォーカルの可憐さが出るようで、やっぱり何かちょっと責め気味な不安さを内包していく。不穏な空気が緊張感へと転化するイントロからの6はミドルテンポでダイナミックに進む力強さが感情の爆発を誘発していくナンバー、エキゾチックなフレーズから圧力を高めるリフワークをデスヴォイス&ソプラノが導いていく7は動的パートから静的パートへの移行も大きく進んでいきます。唸りを上げるメタルリフと華麗なキーボードの絡み合いからデスヴォイスが炸裂し、ソプラノヴォイスが騒乱を後押しするアグレッシヴな8、さらに修羅場の小芝居を挟んで、スピード感の強いキーボードとギターのイントロから不安感を抱えつつダイナミックな感情を吐き出していく9から連続して、鮮やかに緊迫する展開を見せるドラマティックな10へと突き進みます。女性ヴォーカルの柔らかさを前面に出したムーディなパートからデスヴォイスも絡めつつ起伏も激しく進む11、エンディングにふさわしい情念の高まりと曲のクライマックスがシンクロしていく12で幕を閉じます。

 サヴァタージマーシフル・フェイトに近い方法論のアルバムがもたらす感触はパーツ自体はゴシックにも関わらず、あまりにもメタリックでドラマティックな一枚になってます。
同系統アルバム
THE PHANTOM AGONY/EPICA
CENTURY CHILD/NIGHTWISH
SECRET OF THE RUNES/THERION

ALL FOR YOU/ANNIHILATOR

オール・フォー・ユー/アナイアレイター

MARQUEE MICP-10434 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 カナダ出身のベテランバンドの10枚目のアルバムです。ヴォーカル、ベース、ギターが脱退して、新ヴォーカリストに同郷の新人と、ドラマーにはサードアルバムで参加していたマイク・マンジーニを迎えて製作されています。足りないベースはジェフ・ウォーターズ自身が担当しています。

 デスヴォイスっぽいダーティな歌唱からマイルドなクリーントーンな歌唱まで無難にこなすヴォーカリストを引っさげてのアルバムはジェフ・ウォーターズの最近のモダン志向と初期のサイコホラー風味が混ざり合った代物になってます。スラッシーな曲からヌーメタル風のグルーヴィな曲、さらに美しいバラード、ついでにパートが次から次へと繰り出されるシアトリカル系な曲とバラエティに富んだ一枚でギターさらにベースも相変わらず凄みを見せてますが、ちょっとヴォーカルのパワー不足は否めないところで、成長するまでバンドにいるかな〜って感じが物足りなさを呼び起こします。
同系統アルバム
PEDAL TO THE METAL/IMPELLITTERI
LOSS ANGELS/TOC
STRANGE TO NUMBERS/SCARIOT

REFLECTIONS/APOCALYPTICA

リフレクションズ/アポカリプティカ

UNIVERSAL MUSIC UICO-1061 [☆☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のチェリスト三人組になってしまったバンドの2003年発表の4枚目のアルバムです。内容は以前書いたものを参照してもらうとして、この日本盤はCCCDじゃない!世界中で日本だけがCCCDではない!この時点でユニバーサル・ミュージック・ジャパンは神!いや日本の音楽の守護神だ!

 と、誉め過ぎると禍津神になるかもしれないし、例の法案で魔神になりそうなのでこの辺にしておくとして。ボーナストラックにヴォーカル入りの2曲、シングルに収録されていた3曲が入った構成は「REFLECTIONS REVISED」のCDと同じなわけですが、なんならついでにLIVE DVDも付けてくれれば良かったのに、と思うのは贅沢過ぎか。

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 フィンランド出身のバンドの四枚目のアルバムです。チェロ四重奏という異質なスタイルでヘヴィメタルをやってのける異彩を放つバンドでしたが、一人脱退して三重奏になってしまいました。それに伴って、ゲストに今のところスレイヤーのデイヴ・ロンバードをゲスト参加させたことに象徴されるように、今までリズムの中心で無かったドラムパートを全面的に導入Aさらにヴァイオリン、ピアノ、ベースなどの楽器も加えて総合的なインストゥルメンタル・サウンドを作り出す普遍的な音楽性を追及したスタイルになっています。さすがにギターはありませんが。

 デイヴ・ロンバードのソリッドなドラミングと低音の響きがディストーションギターを思わせるスリリングなリフ、そして流れるようなメロディを奏でるチェロの優雅さが一体となった、まるでスピードメタルなオープニングナンバー、続くミディアムテンポのタイトなリズムのコンパクトな2へと続いていくアルバムは、チェロですべてをまかなうと言う縛りから脱したことで、リード楽器としてのチェロの比重が増しており特異性と引き換えの取っ付き易さを得た印象の強いハードロック/ヘヴィメタル的な一般化が進められたサウンドが前面に出てきています。
 優雅で物悲しいメロディを紡ぐ3、7、ヘヴィなリフからメロディアスなパートを経てスリリングなパートへと移る4、タイトルが微妙に違うけどダンロップのCMでも知られる5、ダークな色彩の強い6、ソリッドなリフがメタル的な8、さらにそれに流麗なメロディが加わった9、アグレッシヴでヘヴィなリフが動き回るパートと静かなパートのコントラストが強い10、スタッカートなリズムにスリリングなプレイの11、ザワザワ感の強いパートからスパニッシュな雰囲気でスピードアップする12はトランペットも導入。そして物静かにエンディングを迎える13と全編オリジナル曲で構成されています。
 クラシックスタイルだった前作までのサウンドはドラムパートの導入でロック然としたものになっていて、制約を取り去った純粋に楽曲の音楽性を追求しています。イマジネーションの再現をチェロにとらわれることなく奔放に表したことによって、バンドの作曲能力と表現力の潜在能力の高さを感じさせるアルバムは今後のバンドの飛躍を伺わせる強力な一枚になってます。
同系統アルバム
VK3/VITALIJ KUPRIJ
PROMISED LAND/FERRIGNO LEAL KUPRIJ
S&M/METALLICA

HARD AS IRON/HEIMDALL

ハード・アズ・アイアン/ヘイムダール

SOUNDHOLIC TKCS-85091 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のバンドの四枚目のアルバムです。ドラマーが交替しています。

 緊迫感高まるハードなドラミングとソリッドなギターリフに導かれるアルバムは、さらに安定感を増すハイトーンヴォーカルと分厚いコーラス、さらに緻密なインストゥルメンタルで劇的な世界観を構築していくパワーメタルな1から、エピックファンタジーが展開されていきます。朗々と唄うヴォーカルとコーラスが壮大な世界を予感させていく2は重厚な男女混声コーラスに導かれながらメタリックさとメランコリックさが交錯する緩急の付いた展開で盛り上る大作、パワーメタリックなリフが泣きのギターと叙情的なキーボードと結びついて突き進む3は起伏の激しい展開を見せるドラマティックな一曲、アコースティックギターの調べから戦慄走るオーケストレーションの壮大なサウンド、さらにエモーショナルなギターワークで圧倒していく4は音の力で聴き手を圧倒する劇的ナンバー。ピアノをバックに情感豊かなヴォーカルが唄いあげるバラードの5はコーラスが加わって壮大さが倍増していきます。畳み掛けるソリッドなリフの応酬で圧倒していくドラマティックな豪腕ナンバーの6も二転三転する大作でバンドの渾身の一撃です。ヴォーカリストのポテンシャルの高さを実感させる7は劇的展開で進み逞しささえ感じさせます。アコースティックで進む8は郷愁を誘うセンチメンタルなメロディが美しい小品。再びドラマティックに勇壮なサウンドを発展させていき興奮を誘うコーラスが気持ちを高揚させていく9、ボーナストラックはメロディアスなフレーズが硬質な質感を保ちながら突き進むダイナミックな展開で打ちのめすミドルテンポの曲です。

 漢の哀愁をたっぷり備えたヴォーカルと大作ファンタジー映画を彷彿とさせるコーラスワークが結びついて、風格を感じさせる自信に満ちたサウンドの生みだす張り詰めた空気が漲る一大エピックメタル絵巻を作りだしているアルバムは、迫真性と説得力を兼ね備える楽曲を揃えた会心の作品で、彼らの目指すところへと着実に近づいていることを示すものになっています。着実に足場を固めていく彼等の前途を開いたことを確信させる構築性の高い一枚です。
同系統アルバム
ODIN/WIZARD
MODUS VIVENDI/TAD MOROSE
SOMETHING WICKED THIS WAY COMES/ICED EARTH

VOLUME ONE/HELLFUELED

ヴォリューム・ワン/ヘルフュエルド

SOUNDHOLIC TKCS-85090 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのファーストアルバムです。

 知っている人には衝撃的な歌声が響きわたる70年代ヘヴィロックを再解釈するダイナミックなサウンドと80年代なギターソロが結びついて生まれる躍動的でグルーヴィな楽曲は、まさしくどこからどう聴いてもヘヴィメタル界のカリスマ、オジー・オズボーンの全盛時を彷彿とさせるものです。オジーの霊(生きてるけど)が憑いてるとしか思えないヴォーカルの成りきりっぷりは、もういつオジーが居なくなってもいいかなあ、と不謹慎なことを考えさせるほどのそっくりさで、さらにギターがザック・ワイルド風とくれば何だこりゃ、ありえない!

 本家よりも生き生きとロックンロールしていく楽曲は、タフなメロディとガッツのあるサウンドでグイグイ引っ張りまわすパワフル感が心地よい、オリジナリティなんか知ったことか!好き勝手にやるぜ!なアルバムです。ヘヴィメタル物真似王座決定戦があれば決勝に残るのは間違いない。
同系統アルバム
NO REST FOR WICKED/OZZY OSBOURNE
CARAVAN BEYOND REDEMPTION/CATHEDRAL
AD ASTRA/SPIRITUAL BEGGARS

MEDUSA'S COIL/HIGHLORD

メドゥーサズ・コイル/ハイロード

SOUNDHOLIC TKCS-85092 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。

 ドラマティックにオーセンティックなヘヴィメタルの路線は前作から引き継がれており、安定したパフォーマンスを見せるアルバムは、最近のイタリアンメタル・バンドの傾向かどうかは分からないですが、普遍性を獲得すると同時に独自性が希薄になってきたような。以前はエクセントリックなドラマ性を追及したことで差別化が難しかったバンド群も最近ではピュアメタルな方向性で差別化が難しくなっているみたいです。誰でも考えることは同じなのか、皆考えすぎなのか。

 それはさておき、恒例の日本の曲のカバーはアニメ「北斗の拳2」の主題歌で、「ふられ気分でRock'nRoll」のヒットだけで有名なトムキャットの「TOUGH BOY」。えーと、記憶があんまり定かではないんですが、この曲ってこんな感じだったか?
同系統アルバム
MODUS VIVENDI/TAD MOROSE
NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES
HARD AS IRON/HEIMDALL

PEACE SELLS ... BUT WHO'S BUYING?/MEGADETH

 

CAPITOL RECORDS 69286-01106-9-4 [DVD-AUDIO] >>>>>BUY...?

 インテレクチュアル・スラッシュという孤高のジャンルを作り出したメガデスの1986年に発表されたセカンドアルバムのDVD-AUDIOフォーマットです。そもそも元々のアルバムのサウンドはお世辞にも良いとは言えない代物だったので、DVD-AUDIOの能力が充分発揮できない環境や再生できない状況でもリマスターくらいのサウンドの向上が見られる音声が収録されています。


 収録されているフォーマットは
  • DVD-A 5.1 SURROUND 96K 24BIT
  • DTS 5.1 SURROUND 96K 24BIT
  • PCM 2.0 STEREO 96K 24BIT
 で、一応分からない人がいるといけないので、少し説明すると5.1とか2.0の数字はチャンネルの数で対応アンプとスピーカーをその数だけ用意するとサラウンドが楽しめたりする、部屋に余裕があると幸せになれる形式。DTSはマルチチャンネルデジタル信号フォーマット、PCMはステレオ信号用フォーマット。96Kはサンプリングレートでアナログ信号からデジタル信号への変換(AD変換)を1秒間に何回行なうかを表す数値。単位は「Hz」。普通のCDは44.1kHz。24BITは量子化ビット数で信号を何段階の数値で表現するかを示す値。普通のCDは16ビット。
 で、このアルバムにはDVD-AUDIO非対応のプレイヤーでも再生できるDTSとPCMが収録されているので、CD以上の音質で聴くことが出来る…スペック上では。WAKE UP DEADとPEACE SELLSのビデオクリップやインタビューも収録されていて割とお得感がある…か?字幕は無いけど、英語歌詞は見られます。リージョンコードは設定されていないので、日本で売っているプレイヤーでもOK。

 そういえば、このアルバムについて何も書いたことが無いので書いておこう。
 うなり節のヴォーカルが飲んだくれの朝を迎える1は今まで聴いたことの無いような異様な構成を持った曲で、緊張感漲るインストゥルメンタルの応酬が度肝を抜いたメガデスの存在感を強烈にアピールしたものです。既存の型をほとんど無視した独自性が作り出す世界は、やっぱり少しばかり向こうの方に行ってるかも、な恐るべきものです。黒魔術な題材を取り上げる2は鋭いギターリフを繰り出しながらドラマ性を生み出していく起伏の激しい曲で、複雑さと異様なテンションが一体となって突き進みます。そして、バンドの代表曲になった3は皮肉めいた歌詞がキャッチーとも言えるメロディと規律正しいビートに乗って雪崩を打って畳み掛けるヘヴィメタル・アンセム。イラクには平和を売れるのか?オカルティックなムードが妙なテンションに転換されつつ疾走する4は切り返しの激しいギターソロで燃え上がります。アコースティックギターのセンチメンタルな調べから劇的に展開していく抑圧された衝動を孕んだイントロから狂気と開放された衝動が一気に爆発する激烈疾走展開へと突入する狂乱の5は、耽美と破滅を内包していくメガデスを象徴するかのよう。不安感を高めるイントロから緊迫感を高めつつエッジの立ったリフを積み重ねつつ返す刀で疾走する起伏の激しい6、さらにジェフ・ベックのカバーでムードを和らげつつ、ネオクラシカルなイントロで始まる8へと。ツインギターの絡みが濃厚な8は二転三転しながらスピード感を持った展開を見せていくダイナミックで劇的なエンディングを迎えます。

 現在ではミニアルバム扱いにされるような曲数の全8曲ですが、メガデスのメガデスたる所以を余すことなく詰め込んだ凄まじい密度のサウンドは、確かにヘヴィメタルに新しい息吹を与えたものです。冷気と熱気、理性と狂気が拮抗するヘヴィメタルの或る到達点を見せた歴史的な一枚です。
同系統アルバム
RUDE AWAKENING/MEGADETH[DVD]

ALL IN TIME/MISTER KITE

オール・イン・タイム/ミスターカイト

TOKUMA JAPAN TKCA-72669 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの2002年発表のデビューアルバムです。元シルバー・マウンテンのギタリスト、マグナス・クリステンセン、ドラマーのマッツ・ベルゲンツらによって結成されています。プロデューサーにはピート・サンドバーグやバッド・ハビットを手掛けたビヨッルン・ダールバングが迎えられています。

 ルーズなムードとメロウなメロディを持ちあわせる1から始まるアルバムは、微熱を帯びた情念がスパークしながらダークなメロディとヘヴィなサウンドの中で渦巻き行き場の無い迷路を行きつ戻りつする楽曲が全体を支配していく、テクニカルなプレイがエモーショナルなヴォーカルと交錯しながら焦燥感を募らせるムードが次々と生み出されていくものになっています。キャッチーなメロディとコーラスハーモニーでハードロックしている2はさておき、ミドル〜スローのヘヴィナンバーを中心にジワジワ押し込んでいくメランコリックだったりルーズだったりする暗いメロディは北欧の妖しさとアメリカのモダンのコラボレーションによって作り出されるハードロック〜ヘヴィメタルのボーダーラインを進み、聴き手に青い炎のような熱気を感じさせていくアルバムを作り出しており、キャリアのあるアーティストが見せる新たな展開の意欲的な作品になっています。
同系統アルバム
SHATTERED-MIND-THERAPY/WIZ
SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN
HEATHEN MACHINE/BALANCE OF POWER

INK COMPATIBLE/SPASTIC INK

インク・コンパーティブル/スパスティック・インク

MARQUEE MICP-10436 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 WATCHTOWERのロン・ジャーゾンベクがライオットハルフォードなどで活動していたドラマーである兄、ボビー・ジャーゾンベクと始めたプロジェクトのセカンドアルバムです。コンピュータ&ネットワークを題材にしたコンセプトアルバムのようです。

 モデムでの接続音のSEが音楽的な先鋭度と相反するアルバムは、80年代スラッシュメタル的な吐き捨て気味のヴォーカルが次から次へと繰り出される変則フレーズによって飲み込まれていく緊迫感の高いもので、テクニカルプレイを存分に見せ付けます。ペイン・オヴ・サルヴェイションのダニエル・キルデンロウが参加した楽曲はヴォーカルの個性とぶつかり合って火花を散らしたりする、全体としても聴き手の予想を覆しつつ、構築物が組み立てられたり壊されたりしながら突き進む音のパズルみたいな作品です。

 モデム音を使ってしまうのは、アメリカではまだアナログ電話回線が主流だから?
同系統アルバム
EMERGENT/GORDIAN KNOT
FOCUS/CYNIC
II=I/ANDROMEDA

THUNDERBALL/U.D.O.

サンダーボール/U.D.O.

KING RECORD KICP-991 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 独逸国出身楽隊的第九円盤非常鋼硬定了。
 老手歌手的完全不衰弱堅牢的聲音、最初的曲子非常快攻速的、有給予聴者衝撃的破壊力的曲子、相片簿全幅充満気魄。第二曲子的生出中間手拍子很尖地熱的聲音根硬的“吉他”、第三曲子跳拍子重層合唱有向心力、由於重低反復的旋律的第四曲子、哀愁的旋律由情及合唱隊遅的第五曲子、再次攻勢性高速快的第六曲子使得強的衝動、手風琴被演奏露西亜民謡旋律作為牧歌的曲子的七曲新的領域的熱情、再見重低反復的旋律的第八曲子、叙情旋律高密合唱隊打動心的第九曲子、螺旋的起伏有有熱気合唱的第十曲子獎、求心的旋律用“吉他”躍動的第十一曲子、叙情的旋律作為落涙心哀歌、終幕。
 “雄出皇”正是他是重金屬的守護神、是即達那個身姿的大的存在。“雷珠”確楽団史燦然宝的独逸重金属世界第一驚。
同系統アルバム
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
THERE WILL BE EXECUTION/SINNER
THE SCEPTER OF DECEPTION/FALCONER





May

DREAM EVIL | KILLSWITCH ENGAGE | SKYLARK | SLIPKNOT | THERION |

THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL

ザ・ブック・オブ・ヘヴィメタル/ドリーム・イーヴル

KING RECORD KICP-9996 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。

 ムゥエトゥァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!なシャウトが壮絶に熱い、何故か日本盤ボーナストラックな1から豪腕な鋼鉄音楽が繰り出されるアルバムは、ジューダス・プリーストの本流をジャーマンメタルへ流し込む正統派ヘヴィメタルを体現したものになってます。ストイックなメタルサウンドと北欧の哀感帯びたメロディが一体となって畳み掛ける様はまさしくヘヴィメタルの権化、文字通りのパワーメタル。テンションの高いテクニカルプレイで圧倒するギターソロは、伝統的なメタルを味あわせるツインリードなどを見せつつ切れ込みます。ヘヴィリフで迫る2は圧倒的な存在感を持ったサウンドが生みだす風格を感じさせるダイナミズムに溢れる一曲。さらにボーナストラックの3は緊迫感高まるイントロから、熱いメタリックリフを繰り出していく締め上げつつコーラスでハジける、マッツ・オラウソンのキーボードも聴けるダイナミックなパワーメタルチューン。ドライブ感のあるリフでスピードを上げていく4は二代目オジーことヘルフュエルドのヴォーカリストもゲストで参加してハイテンションで突っ走るロックナンバー。重厚に迫る5はエモーショナルなヴォーカルとギターソロが情感を揺さ振る、ちょっとライオットみたいな曲。アクセプトを彷彿とさせる重戦車の進攻をイメージさせるパワフルなヘヴィリフで聴き手を叩き伏せるタイトルトラックのヘヴィメタル・アンセム。タフなリフで押しまくる7はハンマーパンチな曲で正統派バンドは割と好きな伝統的なヘヴィメタルスタイル。ソリッドなリフに扇情的なメロディを乗せる8は泣きのギター炸裂で盛り上げます。天国の階段をちょっと思い出した哀愁のドラマティックバラードの9、ヘヴィリフでシンガロングなコーラスを乗せる逞しいジャーマンメタル的な10、ザクザクしたリフにミステリアスなメロディを乗せる一時期のガンマ・レイっぽい11、泣きのギターがイントロを飾る12は欧州的なマイナーメロディがドラマティックに展開されるフックのある曲、そして哀愁のメロディが荘厳なコーラスによって導かれる劇的さがピークに達する13がアルバムに幕を降ろします。

 硬派なサウンドが展開されていくアルバムは、ガス・Gの華麗なギタープレイもますます冴えて激しさと熱さが同居する強力なヘヴィメタルになっていて、バンドの充実ぶりが窺えるものです。女性コーラスやゲストの参加で新たな要素を加えつつ、メタリアンな自身の本質を見据えた地に足のついたサウンドが展開されていくドラマティックでマッチョな渾身の一枚です、以上。

 で、DVDの話をしよう。
 舞台裏の事情を見てから本編を聴いたりすると、評価というか判断にバイアスが掛かる事が多いですが、このDVDに収録されているメイキングを見たりするとバカ騒ぎをしているドラマーのスノーウィー・ショウとか心底メタル馬鹿だ!なフレドリックの楽しげな様子とかコンドーム帽子と言われたりするベースの人とかで、メタル以前にロックバンドな認識を新たにするわけですが、ガス・Gは酒とオパーイでギターソロを作っているのが分かった。
 それはさておき、日本公演の様子ですよ。思わず知ってる顔が無いか探してしまうのは当然として、バンドを愛する女性ファンの方々の熱気に色んな意味で圧倒される今日この頃です。
同系統アルバム
THUNDERBALL/U.D.O.
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
RHEINGOLD/GRAVE DIGGER

THE END OF HEARTACHE/KILLSWITCH ENGAGE

ジ・エンド・オヴ・ハートエイジ/キルスウィッチ・エンゲイジ

ROADRUNNER RRCY-21223 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ、マサチューセッツ出身のバンドの三枚目のアルバムです。

 不穏な雰囲気のイントロからダーティヴォイスとヘヴィリフで圧迫感を高めていくパート、哀愁のメロディを情感豊かに表現していくクリーンコーラスのパート、ドライブ感のあるアグレッシヴなパートが渾然一体となって迫る1から始まるアルバムは、ダイナミックな場面転換でドラマ性を強化していく新世代型ヘヴィメタルになっています。畳み掛ける破壊力のあるリフから北欧メロデスの洗礼を受けるメロディアスなリフ、さらに開放感のあるコーラスへと進む2、3でもデスヴォイスとクリーンヴォイスがもつれ合い絡み合いながらラウドに展開していきます。ドライヴ感の強いタフなリフで押していく4、リリカルなインストゥルメンタルの5を挟んで、アーク・エナミーを彷彿とさせるメロデス風の攻撃性を持ったタイトルトラックへと。ミドルテンポの7は情念渦巻くヴォーカルで感情を高めていくメロディアスなナンバー。ヘヴィリフでギシギシ迫るイントロからダブルヴォーカルが咆哮しつつ華麗に疾走していく8、窮屈なヘヴィリフで押し込む9はスリリングに叩き込まれる躍動感の強いビートとコーラスでムードを一変させ、リリカルで美しいアウトロの10へ。アジテイトしながらラウドなリフを繰り出す11は唸るリフから動的に変化していく展開で緊迫感を演出します。ヘヴィに迫る迫力満点の12、ボーナストラックは細かいリフで突進するアグレッションを前面に出した曲です。

 ヘヴィメタル以外の何物でもないサウンドが展開されていくアルバムは、ハードコア要素はパンテラスレイヤー等に、メロディアスな要素は北欧メロディックデスメタルに、メロウな要素はニューメタルへと還元され収束していく、ヴァイオレントとエモーションが交錯する一枚で、自分達のルーツを露にするものです。ギターソロをほぼ排する、攻撃性と叙情性をともにリフと唄で表現していくスタイルがもたらす扇情力と訴求力が全開の強力盤です。
同系統アルバム
SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE/IN FLAMES
THE ART OF BALANCE/SHADOWS FALL
MINDCRIMES/LYZANXIA

WINGS/SKYLARK

ウィングス/スカイラーク

SOUNDHOLIC TKCS-85094 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 メロディックメタル界のスーパーカリスマバンド、イタリア出身のスカイラーク待望の6枚目のアルバムです。

 ピアノの繊細な調べのイントロから始まるアルバムは、彼等の持つファンタジックな側面を強調したものになっていて、柔らかいメロディを軸にしたクラシカルなテイストが前面に押し出されたものです。語りかけるようなパフォーマンスから伸び伸びと唄いあげる男性ヴォーカルと交差する新加入の女性ヴォーカルの抜けるようなソプラノが結びつきながら、扇情的なメロディのコーラスの、はじけるようなドラマティックパートへと移っていく1から彼等らしさが溢れ出すシンプルでキャッチーなインストゥルメンタルが全開で突き進みます。ミドルテンポで始まる2は哀愁とポップさが同居するメロディを軸に開放感あふれるコーラスへと、さらに後半ではテンポアップしてスリリングに展開していきます。同郷のICYCOREのヴォーカルが唄うキャッチーなメロディが印象的なミドルテンポの3は今までに無かったタイプの曲。4〜5は、これまでの作品の延長線上にある二転三転する展開を見せるドラマティック路線のスピードチェンジも激しい曲で、アコースティックなアウトロへと繋がっていきます。さらに続く6もドラマティックにスカイラーク節を積み重ねていく起伏の激しいアップテンポのナンバーで、アコースティックなパートを行きつ戻りつしながらファルセットなシャウトも聴ける曲ですが、歌詞は何だかバンドに一つの区切りを付けるつもりみたいな!ピアノとヴォーカルで始まる7は、キーボード、ギターと楽器が加わっていきながら盛り上げていきます。デフ・レパードの曲をカバーしたボーナストラックは女性ヴォーカルが繊細に情熱的に唄っています。
 残りのボーナストラックはとりあえず聴かなかったことにしよう。

 中抜きしたサウンドと張り詰めた異様なテンションが異次元のカリスマ性を生み出していた、これまでの作品とは異なる触感を持つアルバムは、自分達のルーツに近いイタリアンな香り漂うポンプロック的な優雅さを備えており、華やかさや落ち着きが目立つものになっています。多彩な表現と引き換えに緊迫感や切迫感はかなり減じており、スピードメタル的なインパクトよりもドラマ性を重視した、濃密なメロディを聴かせる方向性に転じた一枚で、今後の方向性が大きく変化していきそうな予感がします。
同系統アルバム
APHELION/EDENBRIDGE
DARK MOOR/DARK MOOR
OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND

VOL.3:(THE SUBLIMINAL VERSES)/SLIPKNOT

VOL.3:(ザ・サブリミナル・ヴァーシズ)/スリップノット

ROADRUNNER RRCY-21222 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ出身の新世代型ヘヴィバンドの三枚目のアルバムです。メンバー間での不信とかが頂点に達してメンバーチェンジもあったみたいですが、音楽的には前作とは異なった様相を見せる新たな局面へと進んでいます。

 クリーントーンのヴォーカルの唄う気だるい空気が伴うメロディアスなナンバーの1から意表を付いたアルバムは、不穏な空気に満たされる暴虐的な2へと。スラッシーなリフにメロディアスなリフを重ねていく手法は前作までには無かったもので、咆哮するヴォーカルを一体となって新たな感覚を生み出していきます。威嚇するヘヴィリフで圧迫していく3はタイトなリズムやブラストビートを絡めながら聴き手を煽っていきます。無機質でダークなパートとエモーショナルなパートを行き来する4は起伏の激しい展開を見せ、オーセンティックなメタルリフから緩急を付けながらメロディアスなコーラスへと収束していく5は変拍子の多用が少しプログレメタル的な感覚をもたらしています。
 かなり、ありえない雰囲気で乾いた空気の叙情感を生み出していくバラードの6、さらにアコースティックギターの物悲しい調べでストリングスも盛り込んで扇情的に進むバラードの11、どこの70年代バンドだ?という14は意外性があり過ぎと言うか、あのマスクで唄うつもりなのかよ!と言う色々な意味で衝撃的な曲になってます。ストンプなビートで憎悪と憤怒をアジテイトしていく警戒心が増幅される7はテクニカル系のギターソロをほんの少々。不協和音的なリフが展開されていく8はウィスパーヴォイスから州クリームへと感情を波立たせながら進んでいき、劇的な哀愁のサビへと。躍動的に突き進むリフがスクリームを伴って進む9はスレイヤーばりの奇怪なギターソロを加えて威圧的に迫ります。タイトなヘヴィリフが荒々しいメロディを唄うヴォーカルと供に破裂していく10でもムーディなギターソロからのソフトなパートがアクセントを加えます。鋭角なリフが重さを増して切れ込んでくる12はヴォーカルとギターが一体となった唸りを上げるパートとアコースティックな繊細な調べが交錯しながら密度を高めていきます。パーカッションを中心に呪詛めいたヴォイスを聴かせていく13、モービッド・エンジェルみたいなイントロからアンスラックスしてみるキャッチーなサビを持ったボーナストラックの15が収録されています。

 オーセンティックなヘヴィメタルのフォーマットとメロディがかなり前面に押し出されつつあるサウンドは、これまでの怨・憎・怒・暴を生みだすサイコパスなバンドイメージに一石を投じるものです。地獄の釜で腐ったはらわたを煮ているようなドス黒い情念の世界は、血塗られた大地に折り伏す白い骨の山に変わったような乾いた情念に覆われて、所々に凄惨な痕跡を残したもので、楽曲が内包する物語性が強調される結果になっています。サウンド的には9人のメンバーの必要性が疑問に思われなくも無い仕上がりですが、曲自体はメロディ重視のかなり聴きやすいスタイルが増えたため取っ付きの良さが際立っています。バンドの個性だった異質な感触が大幅に後退していることは確かですが、音楽的な手札が増えたことによる味の或る噛み応えが充分な一枚です。
同系統アルバム
PROPHECY/SOULFLY
WE'VE COME FOR YOU ALL/ANTHRAX
SYL/STRAPPING YOUNG LAD

LEMURIA/SIRIUS B/THERION

レムリア&シリウスB/セリオン

TOY'S FACTORY TFCK-87352 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身の異彩を放つシンフォニックメタルバンドの9枚目の同時リリース二枚組アルバムです。

 オーセンティックなヘヴィメタルを演奏するバンドサウンドを中心に、男女合唱団を配した構成は、ここ最近のバンドの傾向を継承するものですが、このアルバムでは更にロック/ヘヴィメタル色を強めた楽曲が増えています。
 9thアルバムに当たる「レムリア」はオカルト好きには垂涎の大ネタ、失われたレムリア大陸をタイトルに世界の神話や歴史を題材にした楽曲を以って、ソリッドなギターリフに女性ソプラノ&男性テノールに合唱団を加えた重厚さと久しぶりのデスヴォイスの邪悪さを加味するメロディックメタルな1から、迫力ある重厚なヘヴィリフと合唱隊を軸にマッツ・レヴィンが妖しげなムードの中を唄うドラマティックな構成を持った2ではスピードアップしたパートでメタル然としたパフォーマンスを聴かせます。クラシックの要素が色濃い3〜4はマーチ風の微妙な明るさをも持ったメロディが生みだす躁状態とデスヴォイスが渾然一体となって突き進む組曲になっていて、今までのバンドのムードとは違った面を見せていきます。ストリングスによるセンチメンタルなメロディが印象的なドラマティックなバラードの5、合唱団がメタルなバックを引き連れて進む叙情的なミドルテンポの6、ハスキーヴォーカルによる7は哀愁のメロディを軸に物悲しく描かれつつ、フラッシーなギターソロで盛り上げます。厳かなイントロから進むダークな8はオペラティックな男性バスと女性ソプラノのコントラストが印象的です。タイトなリフとドラムがエキゾチックなムードを生みだす9は女性ソプラノを軸にしたコーラス隊の掛け合いがスリリング。ザクザクしたリフが切れ込むヘヴィナンバーの10はハスキーヴォーカルがコーラスを連れてフェードアウトしていきます。
 そして、10thアルバムの「シリウスB」は、おおいぬ座の伴星でアフリカのドゴン族に伝わるシリウス神話から宇宙人飛来説が唱えられるという、やっぱりオカルトなタイトルですが、メタル度を更に増しつつ、壮大なイントロからパワーメタリックなリフが展開されていくスピードナンバーの1からドラマティック度も急上昇。叙情メロディのリフから女性ソプラノが情感たっぷりに唄いあげるメロディックメタルな2、男性アルトにリードされるコーラスのファンタジックなイントロから一転メタリックな様相を見せる3はハスキーヴォーカルとオペラヴォーカルが交錯しながら華麗なギターソロを経てダイナミックに迫ります。ギリシャ神話の冥王ハデスの妻ペルセポネーの悲哀を合唱隊が唄いあげる叙情ナンバーの4、エキゾチックでミステリアスなムードが支配する5〜6は現在のカーリー神のサイクルを切望する祈りの儀式〜感情が激発するカーリー神降臨の歓喜の宴。荘厳なイントロからリリカルに進み、スリリングな劇的展開を見せていく7、ナイトウィッシュを彷彿とさせる北欧的な哀愁メロディと女性ソプラノが印象的なパートから怪しげになる8、ダゴン神キターーーー!な畏怖と神秘性が絡み合う荘厳な9、物悲しく深遠なインストゥルメンタルの10、オペラティックなイントロから栄光の道をくぐり抜け男女合唱隊を引っさげて疾走するメロディックスピードメタルしてみせた飛翔する11で超大作は終わりを告げます。

 高密度の音による壮大な世界観を作り出してきたバンドですが、ここにきてライヴ活動も視野に入れたヘヴィメタルバンドとしてのパフォーマンスに重点を置き、サウンドが一周して原点をも取り込んだ楽曲で組み立てられたアルバムを作っています。オカルト主義を貫き通す歌詞世界と一体になって繰り広げられるオーケストラとヘヴィメタルがタッグを組んだ濃密なサウンドが織り成す神秘の真髄へと飛翔する一枚です。
同系統アルバム
INVISIBLE CIRCLES/AFTER FOREVER
DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH
THE PHANTOM AGONY/EPICA





June

BURNING IN HELL | DEATH ANGEL | ENSIFERUM | RHAPSODY | SILENT VOICES | SKYFIRE | TEN |

BURNING IN HELL/BURNING IN HELL

バーニング・イン・ヘル/バーニング・イン・ヘル

SOUNDHOLIC TKCS-85096 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ブラジル出身のバンドのファーストアルバムです。バンドの結成は1995年あたりで、初期ブラインド・ガーディアンに影響を受けたパワーメタルなサウンドを作ってます。

 熱気溢れるハイトーン・ヴォーカルを軸に作り出されるアルバムは、超高速ナンバーの逞しい1からドラマティックな展開を持った起伏の激しい楽曲を揃えています。ポジティヴなメロディが印象的なポップな雰囲気の2も疾走ナンバー、ヘヴィなリフから切迫感を保ちながら疾走するフックのあるメロディでドライヴする3、哀愁メロディがコーラスと一体になって迫る劇的なギターソロが印象的な4、ピアノをバックにした荘厳なイントロから、タイトなリフで迫り壮大な起伏の激しい展開を見せる5、畳み掛けるメタリックなリフが躍動する6は漢らしいコーラス、さらにドラマを生みだすインストゥルメンタルが交錯しつつ勇壮さを作り出し、テンションを上げながら疾走していくメロディアスな7はキャッチーで明朗なコーラスがムードを一変させます。哀愁あふれる壮大なイントロから激烈に疾走してのける8はメロディとパワーが起伏も大きく融合していきながらクライマックスへ向けて収束していくアウトロも決めてみせる、アルバムのハイライトとも言える楽曲になっておりバンドの代表曲にもなりそうな勢いです。
 ヴァイキング風のコーラスとミドルテンポなリフのインストゥルメンタルの9に続いて何から何まで超高速の10で聴き手を振り切る勢いを見せつつ、アイリッシュなメロディを持ったドラマティックなアウトロの11で本編は終了します。ボーナストラックはデモ音源に収録されていたダイナミックな高速ナンバー。

 スピードメタルとしてはドラゴンフォースなどと比較されそうなバンドですが、ヘヴィメタル的な物語性を持った展開やフレーズの仕立ては、キャリアを重ねたこちらの方に分がありそうです。まだまだ、プレイには不安定なところも多く、ヴォーカルの無理なパフォーマンスが気になるところもしばしばですが、それを補って余りある作曲センスとスピードに拘る勢いは魅力を充分備えており、デビューアルバムにして今後に大きな期待を抱かせる代物になっています。パワーメタルを正に体現してみせるバンドには、これからのヘヴィメタルを支えて欲しいものです。
同系統アルバム
SONIC FIRESTORM/DRAGONFORCE
GOLDEN DAWN/ARTHEMIS
I MADE MY OWN HELL/VHALDEMAR

THE ART OF DYING/DEATH ANGEL

ザ・アート・オブ・ダイイング/デス・エンジェル

KING RECORD KICP-1006 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ベイエリア・スラッシュの伝説バンド、デス・エンジェルの復活4THアルバムです。オリジナルメンバーがほぼ揃ったラインナップで製作されています。

 アコースティックギターのイントロから繰り出されるのは、血液の温度を一気に上げるクランチーなギターリフさらに締め上げるような吐き捨てヴォーカル!80年代スラッシュメタルの息吹もそのままに鋭角に切れ込むソリッドかつ起伏の激しいオープニングナンバーで期待は一気に高まりますが、当時からミクスチャー的な展開を見せていたサウンドがこれで収まるはずも無く、ヘヴィロックンロールしながらギターソロではメガデス風な2へと雪崩れ込むアルバムは、キレのあるリフでスラッシーに突っ走る3、細かいリフの刻みと気だるいメロディを唄うヴォーカルがグルーヴ感を生みだす4、弾むリズムとダークなリフが怪しげなムードを醸し出す5、さらにダイナミックな展開を見せるスラッシャーな6、バイカーロック的なグルーヴを見せる漢臭い7、9、スラッシーなバックにクリーンヴォイスの扇情性の強いメロディが乗ってパワーメタリックな感触を生みだす8、ダイナミックに展開していく11は荒涼感を生みだすメランコリックなメロディが印象的な一曲です。

 復活なったアルバムは、熱気と爽快さが一体となって突き進むダイナミックなサウンドを生み出しているスラッシュメタルに留まらない、まさしくヘヴィメタルな一枚になっており、バンドの停滞期間を微塵も感じさせない代物です。って、そういえばデス・エンジェルは持っていないような…。
同系統アルバム
METAL DISCHARGE/DESTRUCTION
ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL
FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT

IRON/ENSIFERUM

アイアン/エンシフェルム

UNIVERSAL MUSIC UICO-1063 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。

 リリシズムと哀愁あふれるケルティックなメロディのイントロダクションから始まるアルバムは、ドラマティックに勇ましくギターとキーボードが一体になって疾走していきデスヴォイスもパワフルなメロディを唄う2へと進んでいく北欧ヴァイキングメタルを作り出します。アコースティックギターの軽やかな調べからケルティックなメロディを引き継いでヘヴィに展開していく3はキラキラキーボードが彩りを添える中、ダミ声ヴォーカルとデスヴォイスで掛け合いながら突進していくアップテンポのナンバーで焚き火を囲んで踊りなパートもあり。リリカルなメロディのインストゥルメンタルを挟んで、ミドルテンポから展開する5はデスヴォイスで進むセンチメンタルなメロディ全開の曲でオペラティックなヴォーカルも見せながらドラマティックに突き進みます。哀愁メロディで劇的に迫る6はノーマルヴォイスが切々と唄いあげ、間髪いれずに始まる勇猛な狂戦士のような怒涛の疾走ナンバーの7で圧倒します。タイトなビートを刻む8は小気味良いメロディを全編に配して突っ走ります。暖炉の前で吟遊詩人が奏でるアコースティックな調べからドラマティックなパートへと進む9は哀愁帯びたヴォーカルが加わり、さらにスピードアップして勇ましく盛り上がっていきます。女性ヴォーカルが癒しメロディを唄いあげる10、さらにボーナストラックはレコード会社の都合でメタリカの代表曲、って出来は普通です。

 メロディもふんだんで勇壮なヴァイキングメタルとしては合格点なアルバムで、特筆するところが無いところも何ですが、普通に楽しめる一枚です。
同系統アルバム
SWORD'S SONG/BATTLELORE
EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA
GATHERED AROUND THE OAKEN TABLE/MITHOTYN

THE DARK SECRET/RHAPSODY

ザ・ダーク・シークレット/ラプソディー

VICTOR VICP-62730 [MINI] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のシンフォニックメタル・バンドの秋に発表予定の5枚目のアルバム「SYMPHONY OF THE ENCHANTED LAND PART.2 - THE DARK SECRET」からの先行ミニアルバムです。

 ジャケット写真にどこかで見たような顔を使ってきたなあ、と思ったらクリストファー・リー本人かよ!と年の食ったホラーマニアとか菊地秀行ファンは「吸血鬼ドラキュラ」でお馴染み、最近のSFとかファンタジー映画をチェックしている人は「指輪物語」や「スター・ウォーズ EP.2」あたりで知られる、イギリス出身の有名俳優をナレーションにも使ったアルバムは、フル・オーケストラに合唱隊を導入して、これまでのサウンドをさらにパワーアップさせていくものになっています。起伏も激しく劇的に突き進むスケール感もアップしたシンフォニックパワーメタルな1、緊迫感を高めつつ進むイントロからの2は、ダーティな唱法も使いつつオペラティックに展開する張り詰めた空気が全編を覆い、クラシックのフレーズも使ったギターソロも印象的なプレイを見せます。フォーキッシュなメロディで切々と迫る3は壮大なパートを絡めつつファンタジックなムードを高めていきます。再びナレーションから攻撃的に突っ込む4は扇情的に絶唱するヴォーカルが演奏と一体となって聴き手を圧倒していく、クラシックとヘヴィメタルが融合していくインストゥルメンタルパートも圧巻の凶悪な曲です。5は同郷のプログレバンド、ゴブリンの曲ですが手持ちのアルバムには収録されていなかったので、出来は良くわかりませんでしたが、多分原曲はもっと怖いはずだ。

 このミニアルバムを聴く限りでは、彼等の音楽的方向性はこれまでと全く変わりなく、デッドエンドまで突き進むことが確定気味ですが、偉大なるマンネリズムと有無を言わせぬ迫力が拮抗するであろうニューアルバムの行方はどっちだ。
同系統アルバム
DAMNATION AND A DAY/CRADLE OF FILTH
DEATH CULT ARMAGEDDON/DIMMU BORGIR
LEMURIA/SIRIUS B/THERION

INFERNAL/SILENT VOICES

インファーナル/サイレント・ヴォイシズ

MARQUEE MICP-10447 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 キーボードがソナタ・アークティカに参加したことで注目を浴びたフィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。

 テクニカルなプレイに支えられるソリッドな音像とパワフルなハイトーンヴォーカルを擁したアルバムは、シャープなリフが空気を切り裂きながら、ダークなメロディで覆い尽くしていく攻撃性と叙情性を併せ持った1から、シンフォニー・エックスドリーム・シアターのヘヴィメタル的な側面を強調したサウンドが展開されていきます。ヘヴィなリフと緊迫感を高めるキーボードが一体になって押し寄せる2はラウドロック的な圧迫感のあるリズム隊と浮遊感のあるコーラスが交差しながらドラマティックに集約されていきます。邪悪なムードで突進するイントロからミステリアスに展開していく3、緊張感高まるイントロからダイナミックに重厚なリフを広げていく4はコーラスに至るまで息をつかせない圧迫感が支配するミドルテンポの曲、エッジの効いたリフで疾走するヘヴィなパワーメタルナンバーの5は畳み掛けるインストゥルメンタルの応酬がスリルを生み出していきます。さらにスピーディーなイントロからの6は起伏の激しいダイナミックな展開が緊張感を作り出し、ダーティなコーラスが迫力満点に迫ります。ピアノの華麗な調べと朗々と唄いあげるヴォーカルで始まる三部作の呼び水となる7から、ヘヴィでソリッドなリフが叩きつけながらメロディを足していくダイナミックな第一部、さらにエモーショナルなギタープレイで迫るインストゥルメンタルの第二部、そして大団円を迎えるドラマティックな第三部と大作を聴かせます。ボーナストラックはソリッドに襲い掛かるリフで激しく迫るアップテンポの曲です。

 ダークな雰囲気とメタリックなサウンドが安定したパフォーマンスで表現されていくクオリティの高いものになっているアルバムは、どの要素も過分にならないバランスを保ったヘヴィメタルらしいものになっており、テクニカルなプレイをアクセントにシリアスな楽曲を積み上げていきます。ドラマ性と技術性が一体になって盛り上げる、様々なパーツが組み合わさって結果的にパワーメタルとしての様相を濃くした力作です。
同系統アルバム
MODUS VIVENDI/TAD MOROSE
D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
THE ODYSSEY/SYMPHONY X

SPECTRAL/SKYFIRE

スペクトラル/スカイファイヤー

KING RECORD KICP-1008 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。プロデュースにキング・ダイアモンドのギタリストであるアンディ・ラロックを迎えて製作されています。

 ダーティなデスヴォイスと透明感のあるキーボードサウンドを前面に押し出した疾走感の強いメロディックデスメタルのスタイルを維持するアルバムは、前作辺りでフレーズの繰り返しが単調だ、と言われたかどうかは定かではありませんが、執拗なリズムチェンジを徹底して畳み掛けてくるテクニカルな面が強まったサウンドを作り出しています。デスラッシュな突進力を見せるかと思えば優雅にメロディを飛翔させたり、スラッシーに刻みつつ叙情的なパートへ移行したりと、忙しくパートを行きつ戻りつする音の密度の高い楽曲が揃えられており、ストレートなサウンドに移るバンドが多い中、繊細さと華やかさを併せ持ったサウンドを追求する姿勢を見せています。
 フックのあるメロディがスリリングな展開に乗って疾走していく彼等の持ち味が充分に発揮された、アルバムタイトルのような目くるめく美空間を創出する虹色の一枚です。
同系統アルバム
MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD
INHUMANITY/MORS PRINCIPIUM EST
MIRROR OF MADNESS/NORTHER

RETURN TO EVERMORE/TEN

リターン・トゥ・エヴァーモア/テン

MARQUEE MICP-10444 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ブリティッシュ・ハードロックを体現するテンの7枚目のアルバムです。バンドの創設者であるギタリストのヴィニー・バーンズの脱退を乗り越えて製作されています。新たなギタリストには無名の新人が迎えられています。

 グレゴリオ聖歌を彷彿とさせるイントロからの1はミステリアスなムードとドラマティックな湿ったメロディ満載のアップテンポの大作ハードロックナンバー、といつも通りの安定した楽曲を聴かせるアルバムは、ギタリストの交替劇を感じさせない彼等らしい期待を裏切らないものになってます。ダークな色合いの緊張感高まるミドルテンポの2、アイリッシュなメロディ全開の3、切々と唄われるラヴソングの4、キャッチーなコーラスが何だかボン・ジョヴィっぽいミドルテンポの5ではギターソロが元気。題材は泣いているが曲調は妙にポップな6、物悲しい雰囲気が全編を覆うドラマティックなバラードの7、ストレートなハードロックナンバーの8、トーキング・モジュレーターと言う誰が使ってもボン・ジョヴィっぽく聴こえるアイテムを使った9はギターが大活躍。ゲイリー・ヒューズの歌声が心に染みるセンチメンタルな11、モダンなサウンドを導入した少し新機軸な12は一時期のメタリカっぽいダークな雰囲気が、アルバムの中では異質な感触を与えます。ストリングスに乗せてヴォーカルが唄いあげる13はエンディングにふさわしい哀感に満ちたナンバーです。

 今更プレイやパフォーマンスを云々するところに無い、このバンドに求められるのは、結局のところ満足できる楽曲がどのくらい揃えてあるか、とか泣きメロ?に尽きるわけかもしれませんが、全十三曲なので興味深い曲は半分くらいでしょうか、曲数が多いのか?
同系統アルバム
ALL IN TIME/MISTER KITE
ONCE AND FUTURE KING - PART 1/GARY HUGHES
HYPNOTICA/EMPIRE





July

ARTENSION | HATESPHERE | METAL CHURCH | NIGHTWISH | PERSUADER |

FUTURE WORLD/ARTENSION

フューチャー・ワールド/アーテンション

MARQUEE MICP-10450 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ウクライナ出身のキーボーディスト、ヴィタリ・クープリが率いる多国籍バンドの7枚目のアルバムです。今作ではベーシストにデスメタル畑で活動していたスティーヴ・ディジョルジオを迎えて製作されています。レコーディング直前にヴォーカリストのジョン・ウェストが喉のトラブルを抱えたためスケジュールが延期されたようですが、さて。

 いつにも増して緊張感を孕んだイントロから繰り出される、アグレッシヴに展開される楽器陣に意表を突かれつつ、そこに切れ込んでくるヴォーカルは!

 …えーと、誰ですか、これは?

 いつの間にゲストヴォーカルを入れたんだろうと、じっくり聴くと、ああっ!ジョン・ウェストなんだ…。と、どう聴いてもアナタ喉のトラブルから回復してませんから!切腹!みたいな不安を滲ませながら、それでもテクニカルかつ強固なリズム隊に支えられる異様なハイテンションを保ちながら突っ込んでいくギターとキーボードの乱舞に圧倒される1から、攻撃性が高まったサウンドが展開されていきます。圧迫感の強い畳み掛けるギターとキーボードの応酬が押し寄せる2は互いのソロパートでは相手を威嚇するかのような緊迫感を保ちつつ突き進み、さらに鋭角さが際立つギターが凶悪さを生む3はダイナミックに展開しながら、鋭く切れ込むインストゥルメンタル陣が塊となって迫ります。ピアノの哀愁帯びたイントロからの4は華麗ながら力強いパートとヴォーカルの入った静的パートで強いコントラストを生み出しながら、ドラマティックに飛翔していく壮大な曲です。バッハの曲をモチーフにしたピアノソロを挟んで、ダークな空気を持ちながら、多重的に繰り広げられるフレーズの波がドラマを次々生み出していく6、柔らかいキャッチーなメロディを提示する7でもインストゥルメンタル陣のテンションの高さは変わらず、今までとは一味違う感触を与えます。壮大なバラードの8はヴォーカルの艶やかさが堪能できる…と良かったのですが、コンディションが万全ではないのが影響する少し辛いものに。疾走ナンバーの9は彼等の定番の一曲ですが、やはり密度の濃いインストで一回りパワーアップ。スリリングなピアノの高速インストナンバーの10、そしてミドル〜アップテンポに進むドラマティックな11のボーナストラックが収録されています。

 中音域からの艶がかなり失われているヴォーカルのダメージはさておき、新たなベーシストやバンドの体制強化などの様々な要因が重なり合って、楽曲を壊す寸前まで追い込む怒りに満ちた激しいサウンドが展開されていくアルバムは、バンドのこれまでのイメージをかなり変貌させるもので、今後に掛けるバンドの気概をまざまざと感じさせるものになっています。まるで風に吹かれてゆったりと回る風車が火花を散らしながら暴れまわるチェインソーになったような劇的な変化が、バンドの今後にどのような影響を与えるかは未知数ですが、これまで待望されていたバンドのポテンシャルを見せつけた一枚です。

 それはともかく、ジョン・ウェストがこんな調子だとロイヤル・ハントにも影響が出そうだなって活動休止だったっけ?
同系統アルバム
WELCOME TO THE SHOW/EVIL MASQUERADE
THE INNNER CIRCLE OF REALITY/TIME REQUIEM
INFERNAL/SILENT VOICES

BALLET OF THE BRUTE/HATESPHERE

バレエ・オブ・ザ・ブルート/ヘイトスフィア

SOUNDHOLIC TKCS-85098 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 デンマーク出身のバンドのサードアルバムです。

 重戦車のように迫る高圧力のインストゥルメンタルナンバーで幕を開けるアルバムは、重火器の速射のようなドラミングと凶悪なギターが唸る中、野獣の雄叫びをあげるデスヴォイスが叫ぶ怒涛の疾走ナンバーの2へと駆け抜けていきます。さらに迫力を増した塊のようなリフを押し込むヘヴィナンバーの3では衝動的なコーラスが熱気を増幅させつつ、狂気のギターソロと供にスピードを上げていきます。再び激烈突進する4は中盤で起伏を付けながら攻撃性を全開にし、グルーヴィなムードを持ったヘヴィナンバーの5はテンポチェンジを見せながら狂戦士が辺りを睥睨するように威圧感たっぷりに迫ります。畳み掛けるドラムとキレのあるリフが一体になって驀進する疾走ナンバーの6ではエモーショナルなギターソロを使い、不協和音的なリフで襲い掛かるミドルテンポの7ではメロディアスとも言えるコーラスとメロディアスなギターソロで雰囲気を変え、歌唱法に変化をつけながら圧倒的な破壊力で突進する衝動爆走ナンバーの8、ソリッドなリフを詰め込みながら畳み掛ける緩急を付けながら突進する9、ダークなムードがヘヴィなリフと融合するイントロから起伏も激しく展開していくダイナミックな10で本編は終了。ボーナストラックは威圧的に迫る突進ナンバーの11、更に すっかり原型を留めていない凶悪な“BARK AT THE MOON”と元曲をヒートアップさせる“CAUGHT IN A MOSH ”が収録されています。

 前作ではバラエティのある楽曲をそろえてきた彼らですが、今作は攻撃性と衝動性に重点を置いた直線的なサウンドを作ってきています。装飾を剥ぎ取ったストレートなアルバムは衝動音楽としての凶悪スラッシュメタルの魅力をたっぷり備えたものになってます。
同系統アルバム
TRACES OF THE PAST/THE FORSAKEN
MY PASSION // YOUR PAIN/CALLENISH CIRCLE
IMPACT/DEW-SCENTED

THE WEIGHT OF THE WORLD/METAL CHURCH

ザ・ウェイト・オブ・ザ・ワールド/メタル・チャーチ

NIPPON CROWN CRCL-4826 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ出身のベテランバンドがバンドを再編成して製作した7枚目のアルバムです。ギタリストには元MALICEのジェイ・レイノルズ、ドラマーはバンドの中心人物であるカート・ヴァンダーフーフのソロアルバムで活動を供にするカーク・アーリントン、残りのメンバーは無名のアーティストがそろえられています。

 元アイアン・メイデンのブレイズ・ベイリーにスタイルが似ている、ハスキーヴォイスながらメロディをしっかりと唄いあげる好感触のヴォーカルを中心としたアルバムは、メロディを内包するメタリックなリフで支えられるアップテンポの1から、曲の組み立て、ツインギターの使い方からしてあからさまにオーセンティックなヘヴィメタルのスタイルを貫いたものになっています。ヘヴィなムードで進む2は叙情的なメロディで感情に訴えかけ、続くシャープなギターリフがスピード感を倍増させるファストナンバーの3はフックのあるコーラスでドラマティックに仕上げます。陰鬱なイントロからダイナミックに展開していく4はサヴァタージ的な世界観を提示し、メロディアスに迫るパワーバラードの5は劇的に展開で盛り上げ、リフ回しからツインリードまで、まるでアイアン・メイデンなアップテンポの6、湿ったメロディがタイトなリフに導かれる7、リリシズムあふれるパートとヘヴィリフと哀メロヴォーカルのコントラストが盛り上げる8、キャッチーなメロディでロックする9、パワーメタリックなリフが炸裂する攻撃的な10で、ようやくエンジンが掛かった感じですが残念この曲が最後です。

 極めて真面目に普通のヘヴィメタルを作ってしまっているアルバムですが、既に別物とは言え初期のバンドが持っていた鋭角なイメージが完全に影を潜め、よく言えば迷いの無い、悪く言えば停滞気味のサウンドが作り出されています。ベテランバンドだけに、曲の盛り上げ方や組み立て、細かいフレーズの妙は惹き付けるものがありますが、エキサイトメントが最近のバンドから見ると相当足りないので、NWOBHMを通過したオールドスタイルのヘヴィメタルファン限定で強力に作用しそうな一枚になってます。
同系統アルバム
SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN
DANCE OF DEATH/IRON MAIDEN
TENTH DIMENSION/BLAZE

ONCE/NIGHTWISH

ワンス/ナイトウィッシュ

UNIVERSAL UICO-1067 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドの5枚目のアルバムです。
 3曲目の“NEMO”をラジオで聴いてやってきた人も今日は。このバンドは、女性ヴォーカルということで注目を集めたエヴァネッセンスのような突然現れた新人バンドとは訳が違います。長いキャリアを持ったバンドは母国フィンランドはもちろん、ヨーロッパ全域で絶大な人気を誇るメロディックメタルバンドなのです。

 さて、ラジオでオンエアされている楽曲からイメージされるサウンドを一気に覆す、ヘヴィかつアグレッシヴなギターリフとオーケストラが一体となって迫り来る1から物語性の強い豪華な装飾が為された、天空を舞うオペラティックなソプラノヴォイスが誘うドラマティックナンバーが展開されていくアルバムは、ヘヴィメタルバンドとしての存在感(これがヒットするフィンランドは何て素晴らしい国なんだ!まさにメタル先進国)を強固にアピールしつつ彼らの特徴であるスケール感の大きいオーケストレーションパートも強化した全ての面をパワーアップしたものです。
 畳み掛けるメタリックなリフとソプラノヴォイスが織り成すストーリーを力強い男性ヴォーカルが支えるツインヴォーカルで盛り上げるミドルテンポの2、シングルカットされている彼らのリリカルな側面を強調した柔らかさと優しさで包み込む強い母性を描き出す壮麗な3、合唱隊の緊迫感あるコーラスに導かれるアップテンポの4は躍動的なギターと華麗なキーボードが交錯していく中、ツインヴォーカルの掛け合いが物語を築くダイナミックな一曲。センチメンタルな女性ヴォーカルの歌唱から始まる5は荒野をイメージさせるインストゥルメンタルから一転ドラマティックに盛り上げる大作です。エキゾチックなフレーズを刻むギターと供に扇情的なコーラスが渾然となって進むミステリアスなナンバーの6、パワーメタル的なヘヴィネスを維持しながら進む7は透明感のある女性ヴォーカルとのコントラストが強いメタリックな一曲、続く8もメタリックな雰囲気の強まる劇的さと攻撃性が拮抗するデスヴォイスまで飛び出す激しい展開を見せていきます。生オーケストラと完全に融合していく9は、一篇の物語のように叙情性とドラマティックさが幾重にも重なり合う渾身の超大作になっており、圧倒的な存在感のオーケストラをバックに堂々と唄いあげるヴォーカルは圧巻です。フィンランド語で唄われる美しく物悲しい10、ムードを保ったまま劇的にエンディングを迎える11、そしてボーナストラックの12は叙情的なメロディが全開で滂沱の涙が途切れることの無いメロディアスな一曲、13は透明感のあるメロディがメタリックに描き出されるポップな感覚を持った曲です。

 メジャー級のスケール感を保ったサウンドを作りだしているアルバムは、ドラマティックさを演出する全てのパートが底上げされたため、相対的に叙情感や繊細さが少なくなっていますが、サウンドトラックを思わせる臨場感と説得力を持った楽曲を構築するための止むを得ない代償と言えるかもしれません。既に一流バンドとしての風格を感じさせる高い完成度を誇る壮大な一枚になっている、全世界へ飛翔しようとするアルバムです。
同系統アルバム
LEMURIA/SIRIUS B/THERION
INVISIBLE CIRCLES/AFTER FOREVER
THE PHANTOM AGONY/EPICA

EVOLUTION PURGATORY/PERSUADER

エヴォリューション・パーガトリー/パースエーダー

KING RECORD KICP-1016 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。新たなメタルバンド発掘を目指すSANCTUARYグループが開催した“YOUNG METAL GODS”イベントで勝ち残り、メジャーデビューへの道を手にしたという実力派です。

 パワーメタリックに厚いサウンドのギターリフが唸る中、ブラインド・ガーディアンを彷彿とさせるダミ声全力投球ヴォーカル&要所を押さえたコーラスワークが展開される1から、パワーとメロディが一体となって迫り来るアルバムはジャーマンパワーメタルの熱気と北欧メロディックデスメタル叙情性及び鋭角さを備えたサウンドを作り出していきます。ソリッドなギターリフを叩きつけながら突進する2は緩急も激しく勇壮さを持ったコーラスと供に激情的に突き進み、北欧的な叙情感を持った3でも起伏も激しくメロディが積み重ねられていきます。ダークなヘヴィリフで圧迫感を生み出す4はエモーショナルなギターソロとアグレッシヴなコーラスで盛り上げます。ドラマ性の強いイントロからスラッシーに刻む5はコーラスも威圧的に迫るテスタメントもちょっと入った激しいヘッドバンガーな劇的ナンバー。メロデス的なリフワークを見せる6は情念系のコーラスと扇情系のギターが絡むミドルテンポの曲。ザクザクしたリフで押す7は感情を露にしながらメロディが増していくダイナミックなナンバー。緊迫感を高めながらパワフルなリフが展開される劇的突進ナンバーの8、更に緩急を付けながらスピード感のあるリフとダイナミックな展開で進む9、扇情的なコーラスとタイトなリフがダークでメランコリックな雰囲気を作り出すパワーメタリックな10、ボーナストラックは何だか音が悪いが勢いのあるパンテラのカバーです。

 初期ブラインド・ガーディアンと最近のブラインド・ガーディアンのスタイルを抽出してみるサウンドは、衝動性が前面に押し出された若さに任せて突っ走る爆発力と、求心力のある展開を組み合わせながらヘヴィメタルらしいパンチ力を生み出します。影響下にあるバンドのイメージが強力なので、バンド自体のカラーがなかなか現れにくくはなっていますが、メロディセンスや作曲能力を含めた完成度の高いサウンドは今後の活躍を充分に期待させるものになってます。
同系統アルバム
DARKNESS WITH TALES TO TELL/MANTICORA
CONDITION RED/IRON SAVIOR
TALES FROM THE TWILIGHT WORLD/BLIND GUARDIAN





August

BLAZE | DEMONOID | ENEMY IS US | MOB RULES | KITTIE | TURISAS | WHITE WILLOW | WINTERSUN | WITHERING SURFACE |

BLOOD & BELIEF/BLAZE

ブラッド・アンド・ビリーフ/ブレイズ

NIPPON CROWN CRCL-4828 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元アイアン・メイデンのブレイズ・ベイリー率いるバンドのサードアルバムです。元SABBATのウェイン・バンクスとPITCHSHIFTERのジェイソン・ボウルドが参加して制作されています。ネヴァーモアアーク・エネミーなどの強面のサウンドクリエイトで知られるプロデューサーのアンディ・スニープとのタッグも既に三枚目ですが、今作では更にアメリカン・パワーメタル寄りの硬質なサウンドが生み出されています。

 乾いた空気を持ったメロディとダークな雰囲気がヘヴィな音像と一体となって迫る1から、先進と伝統の融合を推し進めるこれまでの路線を更に強化した楽曲となっており、エッジの効いたリフが鋭いメロディと供に突き刺さるソリッドな2、攻撃的なリフで押し切るヘヴィメタル然とした3ではキャッチーなコーラスが魅力的です。 北欧メロディックデスメタルを彷彿とさせる強い叙情感を持ったパワーバラードの4など新しい要素を取り込みながら、自然体でのヘヴィメタルを作り出していく様は、アイアン・メイデンでの抑圧された?才能が開花していくようで、あの不遇の時期を思い返すと涙が浮かんできます。底の方を這いずり回る重量感がダークなメロディと一体となって迫る5、殺傷力の高いリフで押し込むミドルテンポの6、逞しいメロディで突進するファストナンバーの7は泣きのギターソロを強く印象付けます。熱を帯びたメロディでドラマティックな展開を見せるミドルテンポの8、畳み掛けるギターリフから空虚なムードを生み出しながら動的な展開を見せる9、物悲しいメロディのイントロから鮮やかに場面転換して湿ったメロディを積み重ねていく10、さらにボーナストラックはライヴ音源ですが、これは日本発売が無かった前作からのものです。

 様々なヘヴィメタルの要素を取り込みつつ進化していくアルバムは、ブリティッシュメタルの呪縛から解き放たれたブレイズ・ベイリーが正しく評価される事が期待される好盤です。
同系統アルバム
THE WEIGHT OF THE WORLD/METAL CHURCH
ACCIDENT OF BIRTH/BRUCE DICKINSON
SCARS & WOUNDS/MACHINE MEN

RIDERS OF THE APOCALYPSE/DEMONOID

ライダース・オブ・ジ・アポカリプス/デモノイド

TOY'S FACTORY TFCK-87364 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ほぼセリオンなメンバーによって構成されるニューバンドのデビューアルバムです。バンドのサウンドの核はギタリストのクリスティアン・ニエマンと、ベースのヨハン・ニエマン、元エボニー・ティアーズソイルワーク、現キマイラのドラマー、リチャード・エヴァンサンドが担っています。

 切れ味鋭いギターリフにアグレッシヴに打ち鳴らされるドラムがスピード感のあるスラッシーなナンバーを作り出していく緩急自在の1から、邪悪なデスヴォイスが炸裂するダイナミックなデスラッシュなサウンドが繰り出されるアルバムは、エクストリームなヘヴィメタルを軸にメロディアスなインストゥルメンタルを絡めたもので、セリオンの初期とも違う表情を見せています。邪で禍々しい空気を生み出しながらブルータルに突進していく2、暗いメロディを絡めながらソリッドなギターリフを叩きつける3はダイナミックに展開しながらエモーショナルなギターソロへと繋いでいきます。ミステリアスな雰囲気の4は呪詛的なヴォーカルがヘヴィリフと供に進み、スラッシーなリフで押しまくる緩急激しい突進ナンバーの5へと。ミドルテンポでダークなムードを紡いでいく6は荘厳なコーラスとデスヴォイスが交錯しミステリアスなインストゥルメンタルで盛り上げていきます。不穏な空気が高まる大仰なイントロから重厚に圧迫感を強めながら進む7は一転、攻撃的なリフを繰り出すパワーメタリックな展開を見せるドラマティックな曲です。スラッシーに突撃する8ではテスタメントを彷彿とさせるリフ回しに叙情的なギターソロが加わる爽快ささえ味あわせる一曲。畳み掛ける高圧のギターリフとドラムが密度を上げながら破壊的なサウンドを作り出していく9はドラマティックなギターソロを加えながら絶望的な世界を描き出し、アルバムを締めくくります。

 北欧デスメタルをベースに、スラッシュメタル、パワーメタルの要素を絡めた攻撃性や威圧感と言ったヘヴィメタル然としたサウンドに拘った、ダイナミックなデスメタルを作りだしているアルバムは、個々の楽曲だけでなくアルバム全体でも緩急を付けた構成を持っており、ヨハネ黙示録をコンセプトとした邪悪で破滅的なイメージを現出させます。セリオンでは、あまり打ち出されなくなってしまったストレートなデスメタルを自然体で生み出した好感触の一枚です。
同系統アルバム
THE ARRIVAL/HYPOCRISY
POSSESSED 13/THE CROWN
MY PASSION // YOUR PAIN/CALLENISH CIRCLE

WE HAVE SEEN THE ENEMY... AND THE ENEMY IS US/
ENEMY IS US

ウィ・ハヴ・シーン・ジ・エネミー…アンド・ジ・エネミー・イズ・アス/エネミー・イズ・アス

SOUNDHOLIC TKCS-85102 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドのファーストアルバムです。メンバーに元ダーケインのヴォーカリスト、ローレンス・マックローリーがベーシストとして参加しています。

 激走するスラッシーなギターリフで縦横無尽に切り刻みながら突進していく1から、デスヴォイスの咆哮を響かせながら衝動性と攻撃性を露にしたサウンドを生み出していくアルバムは、畳みかけながら突っ走る2、捻りを効かせたヘヴィリフでグルーヴ感を生みだすミドルテンポの3、初期のメタリカあたりの黎明期スラッシュメタルを彷彿とさせる突き刺さるようなエッジの立ったリフを突きつける緩急を効かせた疾走ナンバーの4、衝動的に頭を振りたくなるやっぱり疾走する5は扇情性の強いギターソロでアクセントをつけます。オルゴールのイントロから激走してみる6は緩急を付けながらダイナミックに進行していきます。メランコリックなメロディを絡ませながら突っ込んでいく7は哀愁帯びたメロディアスなバックが印象的です。ソリッドなリフで疾走する8、ダークなインストゥルメンタルの9を経て、さらに突進する10、暗いムードで威嚇的に迫る11、ボーナストラックの12もやっぱり突進します。

 とりあえず、ほとんど突進している印象が残る思い切りの良いアルバムです。
同系統アルバム
METAL DISCHARGE/DESTRUCTION
THIS IS HELL/DIMENSION ZERO
IMPACT/DEW-SCENTED

UNTIL THE END/KITTIE

アンティル・ジ・エンド/キティ

COLUMBIA MUSIC COCB-53244 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 カナダ出身のガールズバンドのサードアルバムです。

 超重量級のギターリフが唸りを上げるヘヴィネス追求型のブルータルサウンドは、尖った声質のデスヴォイスを駆使する女性ヴォーカルの狂気の叫びによって導かれるアグレッシヴなものです。アルバム製作前のレコード会社のトラブルが要因となったか、怒りと怨念が渦巻くデスヴォイスとノイジーでソリッドな演奏に加えて、諦念が支配するクリアーヴォーカルが浮遊感のあるメロディを唄いあげていく混沌とした雰囲気は時折、3、4などで噛み付くような凶暴性とゴシックメタル的な暗黒をも生み出していく負の感情を露にしていき、またデスメタル並みの邪悪さを持ったドスの効いた楽曲の5、8、情感豊かに迫る6、7なども揃えられており、その突き抜けた感覚の内での幅の広さを見せるアルバムになっています。

 女性バンドということを忘れさせる凶暴性と、それを思い出させる繊細さを同時に発揮する存在感と圧迫感の強い一枚です。
同系統アルバム
PROPHECY/SOULFLY
ENEMIES OF REALITY/NEVERMORE
ROORBACK/SEPULTURA

AMONG THE GODS/MOB RULES

アマング・ザ・ゴッズ/モブ・ルールズ

CROWN RECORD CRCL-4827 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの4枚目のアルバムです。

 荘厳なコーラスから始まるダークな空気に支配されるミドルテンポで進むシリアスな1をオープニングに持ってくるアルバムは、2のハロウィンの系譜に連なるキャッチーなメロディを持ったメタルナンバーで今までのイメージを取り戻します。シンフォニックなアレンジのキーボードがリードする3はキャッチーなメロディが弾む躍動感のあるポップな曲でポジティヴな感覚たっぷり、泣きのメロディを絡めつつ情感豊かに迫るドラマティックな4、大仰なイントロから始まるタイトルトラックは壮大な展開を見せていく長編でエキゾチックなフレーズからサヴァタージ的ピアノも飛び出す力作です。幻想的なイントロから叙情的なメロディが炸裂するバラードの6、オーセンティックなギタープレイとキーボードを聴かせるスタンダードなメロディックメタルナンバーの7、朗々としたメロディとソリッドなリフを合わせる8はドラマティックなコーラスが印象的。ハロウィン的なポップなリフがアップテンポに跳ねる9、エキゾチックな雰囲気全開で進む哀愁のメロディが迫る10、ボーナストラックにはハードロックする11が収録されています。

 一曲目が多少異質な感じを与えるアルバムですが、それ以外は豊潤なメロディが溢れ出すキャッチーなメロディックメタルになっている、普通に良質な一枚です。
同系統アルバム
ANIMA MUNDI/DIONYSUS
MASTERPLAN/MASTERPLAN
OCEAN'S HEART/DREAMTALE

BATTLE METAL/TURISAS

バトル・メタル/チュリサス

SOUNDHOLIC TKCS-85101 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のヴァイキング系コスプレバンドのファーストアルバムです。

 今まさに戦いに赴かんとする勇壮なイントロダクションから繰り出されるのは、シンフォニックなアレンジで盛り上げる高揚感も高まるドラマティックなウォーメタル。デスヴォイスを響かせながら大仰で芝居がかったアレンジで繰り広げられる幻想絵巻は、厚みを感じさせないキーボードサウンドとフォークロアなメロディが相乗効果を起こしながら突き進みます。さらに厚いクワイアとホーンが高らかに鳴り響く中、進行する闘いの賛歌の3、フォーキッシュな要素とエピックな要素が混ざり合う4は荘厳なコーラスで盛り上げ、ストリングスのスリリングなイントロからホーンが元気良く飛び出すアップテンポの5、センチメンタルなヴァイオリンの調べから繊細に迫る6はオーケストラを伴った熱いコーラスで一気に盛り上げる大きな展開を見せ、皆が待ってたライライライ。緊迫感高まるイントロから攻撃的に突進する7では女性コーラスも導入して劇的に、さらにアコーディオン。ムードを一変させる静寂としたイントロから一転トランペットも爽快な勇壮に突き進む8、酒場で宴会!宴会!歌えや踊れやのフォーキッシュでハイテンションな9、不安感が高まるナレーションの10から場面転換も鮮やかに緊張感を保ったエピックメタルを作り出す11、リコーダーの物悲しいメロディから導かれる大仰な展開がエンディングを実感させる12、ボーナストラックはデモ音源から二曲、さらにライヴ一曲が収録されています。

 民族音楽的なメロディに闘争心を奮い起こさせる勇壮さを一体にしたアルバムはオーケストレーションパートやアコースティック楽器もふんだんに盛り込まれた彩り豊かなサウンドを作り出しており、ヴァイキングな面よりもファンタジックな面が際立ったものになっており、激しくヒロイックファンタジーものが読みたくなったり、剣を片手に魔物と闘いたくなる一枚です。
同系統アルバム
IRON/ENSIFERUM
SWORD'S SONG/BATTLELORE
ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH

STORM SEASON/WHITE WILLOW

ストーム・シーズン/ホワイト・ウィロー

MARQUEE MICP-10459 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ノルウェー出身のプログレッシヴ・ロックバンドの4枚目のアルバムです。元々サイケデリック・フォークロックをやっていたバンドは女性ヴォーカルを入れて現在のような形になったようです。

 フルートとストリングスの物悲しい調べで始まるアルバムは、扇情的なメロディを唄いあげるソプラノヴォーカルが情感に突き刺さりながら、泣きメロを溢れ出させるギターとキーボードも加わって秋風が吹きすさぶ荒涼とした世界を描き出します。チェロの響きと不安感の残るメロディで情景を紡ぎ出すプログレ色の強いインストゥルメンタルが印象的な2、北欧的な可憐なメロディがムードを一変させるメロディアスナンバーの3では感情豊かなヴォーカルが印象に残ります。ミステリアスなムードがヘヴィリフに導かれる4は男性ヴォーカルがダークに唄い、躍動的な女性ヴォーカルが加わってダイナミックに展開する静と動のコントラストの激しい曲、愁いを帯びたポップなメロディが70年代プログレ風のバックのサウンドと融合していき、さらに緊迫するインストゥルメンタルを聴かせる5、荘厳なムードとインダストリアルなサウンドが一体となったドラマティックでクラシカルなタイトルトラック、メタリックな色彩の強まる7は暗く不安な空気を演出しながらゴシカルに進んでいきます。ボーナストラックは躍動的な雰囲気のメタリックかつスペーシーに進むイントロからリリカルなパート、さらにメタリックと変転しつつ女性ヴォーカルを迎えて終わります。

 オリジナルストーリーに基づいた世界観を提示する物悲しいアルバムは、北欧の暗い森を歩む幻想的なサウンドを作り出すエモーショナルな一枚になってます。
同系統アルバム
REMEDY LANE/PAIN OF SALVATION
II=I/ANDROMEDA
UNLEASHED MEMORIES/LACUNA COIL

WINTERSUN/WINTERSUN

ウインターサン/ウインターサン

KING RECORD KICP-1018 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。元エンシフェルムのヤリ・マーエンパーが独自のサウンドを追求するために結成された、ほぼ独りユニットです。

 爆発的なスピード感を武器に突っ走る1からキラキラしたキーボードとギターが奏でる叙情的なメロディに乗せてヒステリックなデスヴォイスを炸裂させていくアルバムは、ブラストビートも壮絶に叙情メロディ全開で突っ走る激烈高速ナンバーの2では雄々しいコーラスを絡めつつネオクラ色の強いギターソロを挟みつつ凶悪に盛り上げていきます。雄大でスケール感を感じさせる3はリリシズムたっぷりのメロディを重ねつつ優雅な展開を見せ、さらに優雅さを受け継ぎながら勇壮さを加えていく4は、緊迫感を高めながら激烈に爆発する劇的疾走パートへと進んでいきます。積み重ねられる哀愁のメロディがノーマルヴォイスで唄われる5は北欧の美意識を受け継ぎ、ゴシックな雰囲気も生み出します。パワーメタリックに突き進む6はブラインド・ガーディアンのメロディックデスメタル解釈と言った様相の民族音楽的なメロディと疾走感に起伏の激しい展開、さらにキャッチーなクワイアを持ったドラマティックなヘヴィメタルで、アルバムのハイライトになっています。ヘヴィなリフを刻む7は咆哮するヴォーカルが暗いメロディと一体となって進みながら激しさを高めていきます。扇情力の高いメロディが繰り出される8はダイナミックなリフと哀切さが同居するドラマティックな一曲で、エンディングにふさわしい壮大さを感じさせます。 ボーナストラックには収録曲のデモヴァージョンが三曲収められています。

 劇的さと激烈さを融合させるメロディ満載のアルバムは、なるほど、ヴァイキングメタルにカテゴライズされるエンシフェルムから異なる方向性に進みたいという意欲が伝わるもので、自己の世界観を追求した完成度の高いものです。壮絶な求心力を持ったメロディと濃密な曲展開で聴き手を圧倒していく衝撃の一枚です。
同系統アルバム
EMPRISE TO AVALON/SUIDAKRA
MYSTIC YOUR HEART/BLOOD STAIN CHILD
IN DEFIANCE OF EXISTENCE/OLD MAN'S CHILD

FORCE THE PACE/WITHERING SURFACE

フォース・ザ・ペイス/ウィザリング・サーフェイス

KING RECORD KICP-1021 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 デンマーク出身のバンドの4枚目のアルバムです。

 アグレッシヴなリズム隊と浮遊感のあるメロディに支配される中、炸裂するデスヴォイスが叫ぶダイナミックな1から始まるアルバムは、叙情感の強いキャッチーなメロディとヘヴィリフが一体になって迫るギターソロも流麗なイン・フレイムスに近い感触の2、扇情的なメロディで突進するタイトなリズムが二転三転する緩急の激しい3、捻った明るさを持ったメロディを展開させながらドライヴしていくラウドに迫るコーラスが印象的な4、畳み掛けるヘヴィリフが暗いメロディを伴って進む5は情念を感じさせるギターソロも炸裂するメロディ重視の黒いナンバー。 スラッシーに切り刻むリフから威圧的に迫る6はコーラスでムードを変えながらメロウに発展していきます。暗い熱気に満ちるメロディが溢れ出しながら突き進んでいくアップテンポの7、サイレンのSEからダーク&ヘヴィに迫るイントロを経てリフの壁で圧倒していくフックのあるメロディも盛り込んだ8は雰囲気を大きく変貌させながら進みます。グルーヴィに進むリフと泣きのメロディにヒステリックなヴォーカルが融合していくダイナミックな9、激烈なビートで始まる10は展開も激しく扇情性の強いインストゥルメンタルを絡めて進む物語性の強い曲です。メロディアスなイントロから正統派ヘヴィメタルな感覚さえ覚える展開で哀愁たっぷり泣きメロ全開のパワフルな11、そしてプリティ・メイズのカバーはヘヴィかつ攻撃的に迫るダークな様相を呈するものになってます。

 叙情的なメロディと攻撃的なビートが拮抗していく展開の激しい曲が揃ったアルバムは、メロディックデスメタルの代表的なバンドの特徴をすり抜ける、もしくは全部咀嚼して進んでいくバランス能力に優れたもので、文字通りのメロディックデスメタルを作り出しています。あらゆる要素を強化しながら独自性を創造していくサウンドにバンドの充実ぶりを感じさせる一枚です。
同系統アルバム
DEATH UNLIMITED/NORTHER
UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER
FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK





September

ANGRA | CHILDREN OF BODOM | CRADLE OF FILTH | ENFORSAKEN | ERIK NORLANDER | IRON SAVIOR | RHAPSODY | SHADOWS FALL | VADER |

TEMPLE OF SHADOWS/ANGRA

テンプル・オブ・シャドウズ/ANGRA

VICTOR VICP-62717 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ブラジル出身のバンドの5枚目のアルバムです。中世十字軍をテーマにしたオリジナルストーリーを基に構成されるコンセプトアルバムの形を取っており、ゲストアーティストも多数参加しています。

 ミステリアスなイントロダクションの1を引き継いで爆発的な瞬発力を持って迫る2はオーケストレーションと荘厳なコーラスを効果的に使いながらダイナミックに組み立てられる攻撃性とドラマ性が融合していくスピードナンバーとなっており、これまでに無い自由度を与えられたギターが躍動的にプレイされ、更に力強さを増したハイトーンヴォーカルもエンジン全開。トリッキーなギターリフと変拍子によるイントロから始まる3はタイトなビートとポップなメロディのコントラストが鮮やかなアップテンポのナンバー、ウェットな質感のイントロからテクニカルなリフを発展させながらメロウなメロディに帰結させる4はインストゥルメンタルパートも凝った構成に。牧歌的なメロディを持った5は彼等らしい広がりのあるコーラスを聴かせる優しいナンバー。ガンマ・レイのカイ・ハンセンを担ぎ出した6はストリングスをバックに従えて疾走する攻撃的な曲で、エキセントリックなカイ・ハンセンのヴォーカルが緊張感を高めていきます。スパニッシュギターの響きがラテンの風を運ぶ7は物語性の強い展開によって感情を誘導していく情念系の長編。物悲しいメロディがアコースティックギターに導かれる8はエデンブリッジのサビーネ・エルデスバッカーを迎えて感情を爆発させながら美しくドラマティックに展開します。緊迫感を持ったヘヴィリフで始まる9はブラインド・ガーディアンのハンズィ・キアシュを迎えて不安感を高めながら突き進んでいく起伏も緩急も大きく展開するドラマティックなナンバーでスリリングなギターソロが更なる興奮を呼びます。ナチュラルな感覚で包み込む10は夜明け前の空気を感じさせる清涼感に満ちたボサ・ノヴァ風なパートも飛び出す一曲、さらに続く11はムードを受け継ぎながらダイナミックかつハードに展開していきます。ブラジルの有名アーティスト、ミルトン・ナシメントを迎えた12は叙情的なメロディを積み重ねながらドラマティックに感情を高めていくヴォーカルとギターソロにオーケストラがシンクロしていくスケール感の大きな曲です。オーケストラによって描き出される13はアルバム全体を俯瞰するように、各曲のモチーフを展開させながら壮大にアルバムを締めくくります。

 高い完成度のサウンドで仕上がったアルバムは、彼等独自の手法であるラテンとクラシック、ヘヴィメタルの融合を果たしたものですが、緻密な調査に基づく歌詞世界はともかく楽曲単位としては、自らが確立したとは言え既に新たな要素を加えるのが難しいオープニングからドラマティックな2への流れや、きっと次のガンマ・レイのアルバムに類似曲が収録されるであろうスピードナンバーの6などに見られる―多くのメロディックスピードメタル系バンドが到達したいと望む領域に足を踏み入れている―パワーメタリックなスタイルがこの作品に本当に必要かどうかは疑問が残るところで、彼等の特徴的なサウンドが聴かれる民族音楽を取り入れた楽曲との温度差も激しいため、13で体裁を整えているとは言えコンセプトアルバムとしての関連性は希薄に感じられます。また、ゲストヴォーカリストの加わった楽曲は押しなべてゲストの存在感に圧倒される場面が多く、独自性を打ち出すに至って力みの目立つヴォーカルのパフォーマンスにも多少の不満が残ります。
 今後の方向性に大きく影響を与えそうな様々な要素を詰め込んだ事がどう転ぶかは不明ですが、プレイやプロダクションを高品質でまとめているバラエティに富んだ楽曲を集めた良質なメロディックメタルを作りだしているアルバムになっています。
同系統アルバム
D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
DUST TO DUST/HEAVENLY
FAR FROM THE MADDING CROWD/WUTHERING HEIGHTS

TRASHED,LOST & STRUNGOUT/CHILDREN OF BODOM

トラッシュド、ロスト&ストラング・アウト/チルドレン・オブ・ボドム

UNIVERSAL MUSIC UICO-10173 [EP] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドの5枚目のフルレンスアルバムからの先行EPです。ギタリストに同郷で元STONEのローペ・ラトヴァラを迎えて製作されています。

 アメリカでのツアーの経験をサウンドに反映させた楽曲は、ストレートでライヴ感の強いアグレッシヴで鋭角な1にヘヴィネスを前面に押し出したミドルテンポの2と、彼等らしいメロディと骨太のヘヴィサウンドが融合していく、最近のアルバムからも予想されるサウンドが展開されていくわけですが、キラキラハイパーネオクラメロデスは後進のバンドに道を譲ったみたいです。さらに独自のアレンジがハマったアリス・クーパーのカバーに、意外過ぎてクラクラする、って言うよりこういう曲は自分で書けばいいんじゃないの?、な選曲のアンドリューW.K.のカバー、それにパソコンで観られるビデオクリップが収録されています。
同系統アルバム
SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE/IN FLAMES
THE END OF HEARTACHE/KILLSWITCH ENGAGE
FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK

NYMPHETAMINE/CRADLE OF FILTH

ニンフェタミン/クレイドル・オヴ・フィルス

ROADRUNNER RRCY-21226 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イギリス出身のバンドの6枚目のアルバムです。配給会社をSONYからROADRUNNNERに移しての第一弾となります。

 怪奇色全開の壮大さを持った豪華なイントロダクションから繰り出されるのは、初期衝動性を取り戻したかのようなスラッシーなギターリフと疾走感を持った緩急自在の攻撃的な2で、ヒステリックヴォイスの早口ヴォーカルも全開に息つく暇も与えずに音を畳み掛けてきます。壮大さを持ったイントロから威嚇的な呪詛ヴォーカルを中心にグルーヴィなリフで迫る3は叙情メロディを引っさげた疾走パートとのコントラストを付けながら突き進む振り幅の大きい曲、さらにシンガロングパートあり。リリカルなイントロからラッシュする4もパートごとの表情を変化させつつ激しく展開していきます。ピアノの物悲しいフレーズからの5は、のたうつようなヴォーカルパートとピアノが絡み合って劇的に暗黒の空気を生み出していき、続く這いずるムードを保ちつつ始まる6は疾走パートに移っても冷気漂う感覚を味あわせながら、女性ヴォーカルも絡めて懊悩に満ちた世界を演出していきます。オカルティックに荘厳さを演出するインストゥルメンタルから、マーシフル・フェイトの流れを受け継ぐ起伏の激しいオカルトホラーなヘヴィメタルを叩きつける8、ブラストビートからテンポを目まぐるしく変えながら、少し緩いメロディで緩急をつけていく9、美しいメロディを軸に邪悪なヴォーカルとヘヴィなリフで迫る10は緊迫感を高めていきます。メタリックなリフで疾走してみる11は展開もギターソロも普通にパワーメタル、再び繊細なピアノの調べが響く12は激烈疾走パートへ突入しながら混乱を越えてゴシックな旋律へ。
 そして、その筋の人には
 キタ━━━━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━━━ !!
 な、クトゥルー召喚の詠唱から突っ走る狂乱の13は転調して凶悪さ全開。ボーナストラックはタイトルトラックの別バージョンと、バソリーのカバーが収録されています。

 比較的コンパクト(このバンドにしては)な楽曲を揃えて、少しだけ大作主義を離れてみるアルバムは、メロディやリフワークにスラッシュ/パワーメタル色の影響が強く見られるもので、荘厳さとパワフルさが渾然としたものになっています。オーケストラの導入も控えめにバンドとしてのアンサンブルが強調されるヘヴィメタルなサウンドは初期のスタイルに近いものですが、危険な匂いのする怪奇色がかなり薄まっているのがバンドイメージとの違和感に繋がっているような気がしないでもない、ロードランナーに移籍したのにかなり聴きやすくなっている一枚です。
同系統アルバム
INVISIBLE CIRCLES/AFTER FOREVER
PRISTINE IN BONDAGE/AMARAN
ABIGAIL II:THE REVENGE/KING DIAMOND

THE FOREVER ENDEAVOR/ENFORSAKEN

ザ・フォーエヴァー・エンデヴァー/エンフォーセイクン

SOUNDHOLIC TKCS-85103 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 1998年に結成されたシカゴ出身のバンドのデビューアルバムです。

 叙情感たっぷりの泣きメロが炸裂しながら突き進むアルバムは、咆哮する野獣系デスヴォイスと雄々しいコーラスを交えた、北欧メロディックデスメタルに多大な影響を受けたことを感じさせるものです。キャッチーささえ感じさせるコーラスに正統派ヘヴィメタル色を色濃く表すギターソロが生みだすドラマ性が思い出したように切り込むブラストビートと交錯しながら次々とエモーショナルな波を作り出す1から、さらに叙情リフで押し込みながらセンチメンタルなクリーンパートを経て情感あふれるギターソロへと繋ぐミドルテンポの2、アップテンポでメロディアスなリフを刻みつつ突進パートを行き来する緩急の激しい3、ひねりのあるギターリフで進む4は切返しの鋭い疾走感、更に展開の細かいギターソロが印象的です。少し和風テイストのあるメロディが繰り出される5はブラストビートの突進も交えつつ、ドラマティックに展開させていきます。正統派風ギターリフで進むパワフルな6、キャッチーなリフがアップテンポで展開される7はシンガロングなコーラスまで加わる躍動感の強い曲で後半に掛けて印象の異なるパートを紡いでいきます。ブルータルな側面が強化された8は突進力のあるリフが鋭角に組み合わされていき、ドラマティックなギターソロへ。ブラストで始まる9は突進力を保ちながら起伏激しく突き進みます。キレのあるリフからメロディアスに発展していく10は熱いコーラスとフックのあるギターソロで盛り上げます。ボーナストラックにはカーカスのカバーとデモ音源が3曲収録されています。

 北欧バンドに全く引けを取らない強烈な叙情性が全編を覆うメロディ全開のサウンドはアメリカ出身のバンドとは思えない徹底されたものです。サウンドプロダクションや演奏に荒削りなところも見られますが、メロディを中心に据えた曲展開の妙が今後も大きく期待できそうな魅力を放っている新人離れした一枚です。
同系統アルバム
PITCH-BLACK BLUES/CRYHAVOC
WHORACLE/IN FLAMES
DAMAGE DONE/DARK TRANQUILLITY

STARS RAIN DOWN/ERIK NORLANDER

スターズ・レイン・ダウン/エリク・ノーランダー

MARQUEE MICP-10467 [LIVE] >>>>>BUY...?

 ラナ・レーンなどで活動するキーボーディスト、エリク・ノーランダーのソロツアーの模様を収めたライヴアルバムです。2001年から2003年にかけて行われたヨーロッパツアーを編集しています。

 ライヴなので、さすがにスタジオアルバムのような豪華ゲストで構成するわけにはいきませんが、最新作「ミュージック・マシーン」を中心にしたセットリストはメインヴォーカルを担当していたケリー・キーリングと重要なパートナーであるラナ・レーンで唄は充分以上にカバーしています。実力のあるプレイヤーを揃えた楽器陣とのライヴ感が生みだす新たなフィーリングもスタジオアルバムに勝るとも劣らない魅力を発散しています。収録期間が長かったことが影響したのか、観客との一体感を生みだすライヴの醍醐味は薄いですし、何だか客層もアダルトな感じもして記録としてのライヴアルバムとしては疑問符が残ります。まあ、そんなに暴れまわるような音楽でもないので、エキサイトするよりもじっくりと鑑賞させる一枚になっています、映像があればもっと楽しいんでしょうが。
同系統アルバム
RETURN TO EVERMORE/TEN
SPACE METAL/ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE
HYPNOTICA/EMPIRE

BATTERING RAM/IRON SAVIOR

バタリング・ラム/アイアン・セイヴィアー

KING RECORD KICP-1023 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ドイツ出身のバンドの5枚目のアルバムです。キーボーディストが脱退、さらにベーシストを交替して製作されています。

 キーボードを除いたギターオリエンテッドなサウンドに終始したアルバムは、これまでの音楽性を微塵も変えることなく、硬質なギターリフと野太いパワフルヴォーカルが勇壮で高揚感を高めるメロディを駆使するストレートなパワーメタルを作り出しています。畳み掛ける怒涛のリフとコーラスで一気にテンションを上げていく1から絶妙なフックを持ったメロディを繰り出し、緊迫感を持ったイントロから鋭角なリフを連ねていくダイナミックな2、湿り気を帯びるメロディアスなリフを軸に起伏激しく展開する3、ソリッドな押しの強いリフが印象的な突進力のある4は開放感を持つ壮大なコーラス、さらに攻め込むパートに滑らかなギターソロを加えて強いコントラストを生み出します。哀感たっぷりのギターからの5はミステリアスなパートを挟みつつアップテンポで突き進みます。ロックするドライブ感の強い6、再び突進力を上げた7はメロディ全開のファストナンバーで劇的なギターソロが圧巻。メタリックな刻みリフで押しまくる8はキャッチーなコーラスで盛り上げ、哀感たっぷりのメロディで迫るドラマティックで重厚な9、さらにヘヴィメタル賛歌でフットワークも軽くノリが良いのに熱気ムンムンの10、ボーナストラックは哀愁の旋律が切々と歌い上げられる力強すぎるパワーバラード。

 不変の姿勢とサウンドが生み出す文字通りのジャーマンメタルは、安定と停滞の間を紙一重で行き来するもので、既に完成されているスタイルを逸脱しない自信にあふれるものです。安定した演奏に魅力的なフレーズを随所に盛り込んだ楽曲が生みだすカタルシスはヘヴィメタル歴を問わず聴き手にメタル魂を強烈に訴えかけます、が、特に新機軸も無く、これだけ同じスタイルを追求されるのは―聴いているときは楽しいけれど―ここまで何枚もアルバムをチェックしている人には辛い、かもしれません。
 ジャケットの出来は多分過去最高なんだけど。
同系統アルバム
THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
THUNDERBALL/U.D.O.

SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS II -THE DARK SECRET-/
RHAPSODY

シンフォニー・オブ・エンチャンテッド・ランズ II 〜ザ・ダーク・シークレット〜/ラプソディー

VICTOR VICP-62819 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のバンドの5枚目のアルバムです、そして新たなる伝説へ。

 イギリスの名優、クリストファー・リィを担ぎ出したアルバムは、オーケストラと豪勢なコーラスをバックにヒロイックファンタジーな物語が展開されていくもので、これまでの路線を継承し強化しています。重厚長大なイントロダクションから、ムードを維持したまま華麗に疾走していく2への流れは彼らの独壇場と言った雰囲気すら感じさせます。叙情感を湛えたメロディを携えて表現力を増したヴォーカルが力強い歌声を聴かせる威厳を持った堂々たる3、のどかな風景を伝える牧歌的な4、哀愁メロディを切々と唄いあげる5、オーケストラを絡めてドラマティックに突き進む大作の6は描き出される物語性も合いまった緊迫感のある仕上がりです。コーラス隊を引き連れて優雅に進む7、小芝居からのリリカルでファンタジックな小品の8、再び重厚なナレーションから繰り広げられる緊張感高まる鋭いリフとクラシカルなフレーズの乱舞、壮大なコーラスが一体となって迫るスリリングな展開を見せるアルバムのハイライトの9、全編ラテン語で唄われる叙情性と荘厳さが交錯するバラード風の10、オーケストラのイントロから情念高めるヴォーカルが炸裂してインストゥルメンタルが次々に振り幅の大きい起伏を生みだす11、緊迫したムードが導く大仰なイントロから、あのバンドを彷彿とさせる鋼鉄魂が堂々と掲げられる重厚壮大な12でエンジェル・イヤー5096年は終わりを告げます。

  血沸き肉踊る幻想活劇が眼前に繰り広げられていく彼等独自の世界は、揺らぐことなくその更に強化されたサウンドへと昇華されていきます。物語性が強まったアルバムは個々の楽曲が全体を構成する一要素としての側面を強く打ち出しており、すべてが融合してより効果を発揮するようになっており、ストーリーアルバムとしての完成度を高めています。エグゼクティヴ・プロデューサーとして参加したマノウォーのジョーイ・ディマイオの薫陶が迷いを断ち切らせたか、これまでの方向性を貫く決意を感じさせる孤高の一枚になっています。
同系統アルバム
LEMURIA/SIRIUS B/THERION
DAYS OF RISING DOOM - METAL OPERA/AINA
OF WARS IN OSYRHIA/FAIRYLAND

THE WAR WITHIN/SHADOWS FALL

ザ・ウォー・ウィズイン/シャドウズ・フォール

TOY'S FACTORY TFCK-87371 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 アメリカ出身のバンドの4枚目のアルバムです。アメリカ産ニューウェーブなヘヴィメタルを作りだしているアルバムは、初めてメンバー交代無しで製作されています。

 正統派ヘヴィメタルに更に接近したサウンドは、豪腕から繰り出される攻撃的なギターリフ&硬質なドラミングと、泣きメロから早弾き、テクニカルまで出し惜しみをしない多彩なメロディ満載のエネルギッシュなギターソロが渾然一体となったものです。抑えきれない衝動が炸裂するダーティヴォイスと叙情性を生みだすクリーントーンヴォイスの強いコントラストに刺激される強烈な吸引力を持ったスラッシーなサウンドが、ヘヴィメタルの硬軟取り混ぜた醍醐味を味あわせていきます。

 ジャンル無用の多様性を見せるメロディアスなパートに比べるとブルータルなパートのバリエーションが少なめなのと、まだ伸びしろがありそうなヴォーカルのパフォーマンスが少し気になりますが、有無を言わせぬ迫力と魅力たっぷりの扇情力を併せ持った強力なサウンドが展開されていく会心の一枚です。
同系統アルバム
UNHALLOWED/THE BLACK DAHLIA MURDER
FIGURE NUMBER FIVE/SOILWORK
THROUGH THE FLESH TO THE SOUL/INVOCATOR

THE BEAST/VADER

ザ・ビースト/ヴェイダー

MARQUEE MICP-10441 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ポーランド出身のバンドの6枚目のアルバムです。リズム隊がケガなどですっかり入れ替わって製作されています。ドラマーには同郷のブラックメタルバンド、VASANIAのDARAY、ベーシストにはツアーから元BEHEMOTHのNOVYが参加しています。

 風雲急を告げる不穏なイントロダクションから繰り出される2は、スラッシーなツービートとブラストビートで突進していく唸りを上げるギターリフに乗って邪悪さたっぷりのデスヴォイスが吼え、ヒステリックなギターソロが叫ぶスレイヤー直系の凶悪なサウンドが展開されていきます。ダークな雰囲気のイントロからグルーヴィなヘヴィリフを繰り出していく3は威圧感たっぷりに進むダイナミックなミドルテンポの曲、切れ味鋭いソリッドなリフで激走する突進ナンバーの4、クリーンヴォイスも使いながら乱高下する妖しいムードを演出していくヘヴィナンバーの5、ボーナストラックの6は畳み掛けるリフの奔流で押し切るスピードナンバーでスペーシーな中間部で緩急を付けていきます。タイトなリフで小気味良く迫る突撃ナンバーの7はエモーショナルなギターソロで盛り上げます。押しの強いヘヴィリフで進む8は扇情的なギターソロとの掛け合いからスピードを変化させていきます。凶悪な突撃疾走ナンバーの9、冷酷な空気を湛えるリズム隊に熱気を帯びたギターソロが絡むミドルテンポの10はテクニカルな一面をアピールしていきます。アルペジオを奏でるクリーンギターのイントロから暴力的なギターリフ&ギターソロが爆発する高圧力の11で聴き手を驚愕させつつアルバムを締めくくります。

 コンパクトな楽曲を揃えて密度を高めたアルバムは、起伏の大きな展開とヘヴィメタル然としたリフワークやメロディも垣間見せながら、凶暴性を高めつつスリリングに進んでいきます。揺ぎ無い確立されたサウンドとオカルティックな歌詞が作り出す信念の一枚は安心のヴェイダー印がはっきりと刻印されている安定感のある作品です。
同系統アルバム
TRACES OF THE PAST/THE FORSAKEN
BALLET OF THE BRUTE/HATESPHERE
THE ARRIVAL/HYPOCRISY





October

BLIND GUARDIAN | DIES IRAE | THE HAUNTED | MANTICORA | MEGADETH | PAIN OF SALVATION | SONATA ARCTICA | 3 INCHES OF BLOOD | TWILIGHTNING |

IMAGINATIONS THROUGH THE LOOKING GLASS/
BLIND GUARDIAN[DVD]

イマジネーションズ・スルー・ザ・ルッキング・グラス/ブラインド・ガーディアン

VICTOR VIBP-31〜32 [DVD] >>>>>BUY...?

 ドイツを代表するパワーメタルバンドが2003年6月13,14日に行われた自らの名前を冠にした「BLIND GUARDIAN OPEN AIR」の模様を収めた二枚組DVDです。

 わざわざ、DVD収録を前提にしたフェスティバルを計画するほどの力の入れ込み様が分かる作品は、野外ステージの利点を最大限に活かすパイロや篝火による視覚効果と力強い楽曲が観客と一体化していく幻想的な世界を生み出していきます。アートワークの隅々にまで神経を行き届かせ、ファン投票による選曲も代表曲が揃えられており満足度の高いステージが堪能できます。まあ、ベテランバンドの活動的なパフォーマンスと比べると、ヴォーカルのハンズィはちっとも動かねえなあ(笑)とか、あまり広いステージに慣れていないような雰囲気が出てるのは経験値の差を感じさせますが、臨場感と場の楽しそうな空気が伝わってくる熱い映像になってます。
同系統アルバム
ROCK IN RIO/IRON MAIDEN
NO BULL [LIVE PLAZA DE TOROS.NADRID]/AC/DC

SCULPTURE OF STONE/DIES IRAE

スカルプチャー・オヴ・ストーン/ディエズ・イラエ

MARQUEE MICP-10473 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ポーランド出身のバンドのサードアルバムです。メンバー交代を繰り返すうちに中心人物が同郷のヴェイダーのギタリストとドラマーになっています。

 不安感を煽る鐘の音のSEから始まるアルバムは、ガテラルだったりヒステリックだったりするデスヴォイスが破壊的なギターリフで進むミドルテンポの1から、邪悪さとテクニカルなプレイが炸裂するデスメタルが展開されていきます。続く2も圧迫感の強いリフの応酬で圧倒していく重量感たっぷりの曲、整合感の強いギターリフが整然と繰り出される3は不協和音系のテクニカルなギターが冷酷さを強調していきます。スピードアップして小気味良いリフの展開を見せる4は予想のつかない変化を見せるインストゥルメンタルが印象に残ります。暴虐性を高めて進む5は凶悪さが際立ちブラストビートも飛び出すヘヴィナンバー、ミドルテンポの重厚な6、デスメタリックなパートとメロディアスなパートのコントラストも激しい7、スローな曲調の8はうねりを生み出しながらヘヴィに微かにメロディを絡ませながら進みます。あらゆるものを叩き伏せるような楽器陣の猛襲と一体になった咆哮が炸裂する破壊的な9は津波のようにサウンドが猛り狂う一曲で鐘の音のSEで幕を閉じます。

 ヴォーカルは純正デスメタルながら、曲の組み立てやギターソロに正統派メタル的な要素が多く見られるサウンドは、初期のモービッド・エンジェルに近い感触も受ける、デスメタルとしては聴き所が少し違う感じがするものです。それほど疾走していたり、混乱していたりすることが少ない整然とした構築美を見せつけるサウンドを聴かせる一枚です。
同系統アルバム
HERETIC/MORBID ANGEL
IRRADIANT/SCARVE
RIDERS OF THE APOCALYPSE/DEMONOID

rEVOLVEr/THE HAUNTED

リヴォルヴァー/ザ・ホーンテッド

TOY'S FACTORY TFCK-87374 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。ヴォーカリストが脱退したため、元MARY BEATS JANEのヴォーカリストでファーストアルバムでも唄っていたピーター・ドルヴィングが加入して製作されています。

 鋭いスラッシーなギターリフと絶叫するヴォーカルでダイナミックに爆走する1から、問答無用の破壊力を見せるサウンドが繰り広げられていくアルバムは、ソリッドなリフで固められるタイトな2、スローにグルーヴを生み出していく3はメロディアスなギターソロと供にミステリアスなムードを作り出し、再び激烈疾走する4は緩急も自在に破壊力抜群。キャッチーなリフでメロデス風味が強まる5は叙情感の少ないMAメタルな雰囲気。アット・ザ・ゲイツを彷彿とさせる突進ナンバーの6、ルーズなムードを生みだす7、ボーナストラックの9は押さえ込めない情感が溢れ出すエモーショナルな一曲。起伏の激しい爆走ナンバーの8、ミドルテンポで迫る10は噛み付くような攻撃性を露にしながら進み、スローなイントロからの11は激烈疾走ナンバー、ボーナストラック二曲目の12はミドルテンポで暴れるヴォーカルが印象的。エンディングを飾る13は不気味な感覚が強まるダークな曲で、エモーショナルなヴォーカルがこれまでにない感触を与えています。

 ファーストアルバムのヴォーカリストが戻ったことで、テンションの高いデスラッシュな一枚になっているアルバムは、多様な方向性も取り戻してバラエティのあるものになっています。方向性の拡散が利点だったり欠点だったり微妙な感じですが、クオリティは高い一枚です。
同系統アルバム
SEASONS IN THE ABYSS/SLAYER
TRACES OF THE PAST/THE FORSAKEN
BALLET OF THE BRUTE/HATESPHERE

8 DEADLY SINS/MANTICORA

エイト・デッドリー・シンズ/マンティコラ

KING RECORD KICP-1032 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 デンマーク出身のバンドの四枚目のアルバムです。ギタリストとキーボーディストが脱退していますが、前ギタリストとプロデューサーのトミー・ハンセンがキーボードで参加して製作されています。

 8つの大罪をコンセプトにしたアルバムは、手術室のSEから物悲しいメロディが紡がれるメランコリックな1から劇的さと表現力を強化したサウンドが展開されていきます。より硬質に逞しさを増したダイナミックなギターリフとキーボードが交錯する劇的なイントロからの2は、存在感を示すヘヴィリフに導かれながら朗々と唄いあげるパワーヴォーカルが暗く熱気を帯びる世界観を作り出すパワーメタルな一曲で、濃密なサウンドがこれまで以上の説得力を与えます。シャープでソリッドなリフが叩きつけられる3は攻撃性全開で哀愁のメロディを繰り出すスピードナンバーで厚いコーラスも劇的さにアクセントを添えていきます。ナレーションから圧搾感を増したリフを詰め込んでいく4はスリリングな展開と荘厳なコーラスが融合するダイナミックなナンバー、叙情的なキーボードがヘヴィリフと一体となって始まる5はダークな空気を持ったコーラスが生みだす黒い感情がインストゥルメンタルを経てドラマティックに転換されるのが印象的です。哀感たっぷりのメロディを奏でるギターからの6はスラッシーなリフで切れ込みながらエモーショナルなヴォーカルへと繋げていき、大仰なコーラスで劇的に開放するミドルテンポの曲、ダイナミックな展開のリフがメロウなメロディと繰り出される7はドラマティックなギターソロで盛り上げます。メランコリックなバラードの8は暗い感情を押し込めながら進んでいき、一転して激しく突き進むスラッシーな劇的スピードナンバーの9へと。そして、オープニングのモチーフが現れる、ダイナミックなアウトロの10で物語は終わりを告げます。ボーナストラックの11はストレートなメロディックスピードチューンです。

 統一されたトーンで彩られるダークな世界観を提示しているアルバムは、情感とサウンドがコンセプトと融合して彼等独自の冷気と熱気がカタルシスへと昇華されていきます。活躍著しいエモーショナルなギターソロと優雅なキーボードが脱退したメンバーとプロデューサーの手によるものなのは、今後の進路に一抹の不安を感じさせなくも無いですが、ドラマティック・パワーメタルの本流を行く強力な一枚です。
同系統アルバム
IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE/BLIND GUARDIAN
THE GLORIOUS BURDEN/ICED EARTH
DEAD HEART, IN A DEAD WORLD/NEVERMORE

THE SYSTEM HAS FAILED/MEGADETH

ザ・システム・ハズ・フェイルド/メガデス

MARQUEE MICP-10475 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 引退宣言で今後の去就が注目されていた、デイヴ・ムステイン率いるメガデスの復活10枚目のアルバムです。ギタリストに初期アルバムで才能を発揮していたクリス・ポーランド、ベーシストにジミー・スロース、ドラマーにフランク・ザッパ・バンド出身のマルチラウンダー、ヴィニー・カリウタを迎えて製作されています。

 SEからフィメールヴォイスが畳み掛けるドラムに乗って始まる1は、ムステインの恨み節と怪しいメロディが炸裂する展開の激しいナンバーでスリリングなツインリードからのギターソロも初期を彷彿とさせる仕上がりの、バンド復活を告げる力強い曲になってます。扇情的なメロディがストリングスと供に流れるイントロから、哀愁帯びたヴォーカルメロディがコンパクトなリフで紡がれる2でも捻りを効かせる展開がメガデスらしさを保持しています。アグレッシヴなリフが叩きつけられる3はインテレクチュアル・スラッシュと称された彼等の捩れたギターリフが躍動し、テクニカルなギターソロが飛翔する反骨精神剥き出しの曲、ミステリアスなイントロからダークな雰囲気を生み出していくアンニュイなメロディを持った4も後半にかけて熱気を帯びていきます。泣きメロがメタリックなリフに乗せて展開されていく5はBパートからのスピード感ある切返しでヒートアップ。アイアン・メイデン風のツインリードのインストゥルメンタルから、コーラスも熱いジューダス・プリーストを彷彿とさせる正統派メタルナンバーの7へと。唸り節からヘヴィロック的に進む8、9はパワーバラード風の序盤から攻撃性を高めながら緊張感高まるインストゥルメンタルからスラッシーな疾走パートへと移行していきます。湿り気のあるキャッチーなメロディから唸り節へ展開していく10、ヘヴィなマーチ風テーマを経て様式美な展開を見せるインストゥルメンタルから、捩れたヘヴィリフからインプロヴァイゼーション風のギターソロを繋いで唸り節でエンディングを迎えます。

 初期のテイストを取り戻そうと苦心する姿が垣間見えたりするアルバムは、それでもなお進もうとするムステインの気概を感じさせるものです。クリス・ポーランドを迎えたことで戻った一癖ある展開にメロディを大切にするヴォーカルが合わさった現在のメガデスの姿をそのまま表す、復活ののろしを上げるにふさわしい一枚です。

 日本盤のボーナスは2のビデオクリップ。これに価格分の価値を見出すかどうかは…まあ人それぞれ。
同系統アルバム
DOUBLE LIVE ANNIHILATION/ANNIHILATOR
SOUNDCHASER/RAGE
INCORPORATED/GRIP INC.

Be/PAIN OF SALVATION

Be/ペイン・オヴ・サルヴェイション

MARQUEE MICP-10472 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 「存在」をテーマに永遠に生きること切望する主人公と人類存在の意味を神話時代から現代、さらには未来までの時間軸を用いて描き出す、哲学的な問題に真正面から向き合ったアルバムは、ナレーションのみで構成される1、スリリングな展開の2から、音楽的な要素以上に歌詞世界が生み出していく情景を描き出すことに比重が置かれています。民族的なサウンドが展開されていく3ではエモーショナルなヴォーカルとネイチャーな感覚が一体になった楽曲、美しいピアノのインストゥルメンタルの4、リリカルなメロディがソリッドなギターと交錯していく5では変幻自在なヴォーカルに加え、幾重にも積み重ねられる音の感覚が彼等らしさを生み出していきます。乾いた大地の匂いを感じさせるアコースティックの6、小芝居から舞台を現代に移しての7はブルージーだったりゴスペルだったりな雰囲気も漂う女性コーラスも大量投下の芝居がかったセクシーな曲、様々な人の神を否定するナレーションから展開されるリリカルなインストゥルメンタルの8、ダイナミックに情念を叩きつけるヴォーカルがへヴィサウンドと共に抑揚の激しい展開をドラマティックに描き出す9、静かなパートから徐々にへヴィに展開していく10はオーケストレーションも加わって怒涛の盛り上がりを見せる一曲です。センチメンタルなメロディと劇的な展開を持ったインストゥルメンタルを挟んで、荘厳な空気を生み出すパイプオルガンの響きが美しい12、ヴァイオリンによる繊細なメロディを持ったパワーバラード風の13、そして雰囲気を一転させる14〜15はアルバムのエンディングを締めくくる壮大さとリリシズムが繰り出される自然との一体感を味あわせます。

 一部のパートによってはプログレッシヴな感覚を与えるものもありますが、全体としては情景描写を主眼とした楽曲が多く、個々の楽曲よりも全体の流れの中で意味が見出されていくようなアルバムになっています。曲を楽しむというよりは、音によって生み出され、物語られ、形作られていく世界を感じる一枚です。
同系統アルバム
DARKTOWN/STEVE HACKETT
DISCONNECTED/FATES WARNING
PROMISED LAND/QUEENSRYCHE

RECKONIG NIGHT/SONATA ARCTICA

レコニング・ナイト/ソナタ・アークティカ

MARQUEE MICP-10466 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドの4枚目のアルバムです。サイレント・ヴォイシズにも参加するキーボーディスト、ヘンリク・クリンゲンベリが前作リリース後から参加して制作されています。

 ドラマティックに突然始まるイントロが急停止して、聴き手をちょっと不安にさせつつメランコリックなメロディ全開の緩急激しい展開ながら当たりが柔らかいスピードナンバーで始まるアルバムは、中音域に力点を置くハイトーンヴォーカリストの表現力アップを如実に感じさせつつ、今までとは少し異なった質感を与えながら進んでいき、明るいのか暗いのかはっきりしない微妙なメロディで感情を吐き出していくミドルテンポの2、テンションをコントロールしながら疾走する3、センチメンタリズムが溢れ出すピアノから不安感を覚えるパートへと進むインストゥルメンタルから、ダイナミックにビートを刻むソリッドな前半からコーラスワークが印象的なシアトリカルに展開していく後半へと進むスピードナンバーの5へ。哀愁を湛えるピアノの調べに乗ってアップテンポで軽やかに進む6は叙情メロディを高めながらクイーン的な手法を用いてドラマを生み出します。再び叙情感全開の7はスピード感とキャッチーさを保ちながら泣きメロのコーラスへと収束しつつテクニカルなインストゥルメンタルパートに。緊迫感を増していくナレーションから、ヘヴィなリフが展開されていく8は攻撃性を上げて疾走していくヒステリックなヴォーカルとオペラティックなコーラスがテンションを高める一曲。柔らかいコーラスに導かれる9はダークなギターリフと耽美なメロディが優雅に交差し、スピードを増しつつクライマックスに向けて展開を重ねていく厚みのあるコーラスも劇的な大作、ピアノの響きからアコースティックギターへと繋がる10はリリカルな劇的バラード、ボーナストラックの11は荘厳なキーボードサウンドから疾走していくストラトヴァリウス風の曲です。

 表現手法がプログレハードに近づいてきたアルバムは、いわゆる蒼い衝動が若さに任せて迸る感覚が、高い視点から観て一歩引いた立場にたったような閉塞感に近い感触に移っている、これまでのようなストレートな表現が展開の細かい楽曲にせき止められた俯瞰的にサウンドを捉えている印象を与えています。初期の異様な高揚感は得られませんが、楽曲はメロディや方向性も多彩になっており、個々のプレイヤーの表現力も高まっており完成度自体は上がっていますが全体的に穏やかな雰囲気の一枚です。
同系統アルバム
LEGACY/SHADOW GALLERY
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
DELIRIUM VEIL/TWILIGHTNING

ADVANCE AND VANQUISH/3 INCHES OF BLOOD

アドヴァンス・アンド・ヴァンキッシュ/3インチズ・オヴ・ブラッド

ROADRUNNER RRCY-21233 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 カナダ出身の六人組メタル・ウォリアー達のセカンドアルバムです。アルバム製作前にギタリストが変わっていますが、アルバム完成後にもギタリストが二人ともいなくなってしまい、現在では新しいメンバーも加わって活動している模様です。

 ロブ・ハルフォードに挑むような超音波系ハイトーン・スクリーマーと高音デスヴォイス・シャウターがタッグを組んだハイテンションのヴォーカル陣が、アイアン・メイデンジューダス・プリーストの流れを汲んだ正統派ヘヴィメタルのテイストをふんだんに盛り込んだ直球勝負のパワフルなサウンドに乗せて突き進むアルバムは、哀愁帯びたギターリフを武器にした血沸き肉踊る強烈なものです。割と芸の細かいデスヴォーカルとハイトーンヴォーカルの絡み合いは、聖騎士と狂戦士が火花を散らしながら悪の軍勢に挑むような緊迫感を生み出し、絡みつくようなツインリードギターも伝統の味わいを醸し出しつつドラマティックに、ファイティングに、ヒロイックに展開していく、ヘヴィメタルで良かった楽曲が並んでいます。

 二人のヴォーカルが荒々しいパートでは割とかぶってしまうのが、少し勿体無い気もするアルバムは、気を緩めるところが一切無い徹頭徹尾漢メタルを追求する潔いもので、愛すべきメタルウォーリアーに思わず頭が下がる、じゃなかった頭が振れる一枚です。
同系統アルバム
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
EMPEROR OF THE BLACK RUNES/DOMINE
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR

PLAGUE-HOUSE PUPPET SHOW/TWILIGHTNING

プレイグ・ハウス、パペット・ショー/トワイライトニング

UNIVERSAL MUSIC UICO-1068 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。

 パワフルなハイトーンヴォーカルを前面に押し出したアルバムは、80年代アメリカンハードロック的な絢爛さを持ったアップテンポの1からキャッチーなメロディとコーラスが印象的なドライヴ感のある楽曲が揃えられています。ミドルテンポの2は粘りのある歌唱を聞かせるヴォーカルとフラッシーなプレイで存在感を示すギターが印象的です。グルーヴ感が強まる3はダークな歌詞に伴われるダイナミックな展開で進み、まるで連曲のように始まりムードを一転させてスピードアップする煌びやかなキーボードも活躍のフックの強い4へと繋がっていきます。情感豊かに唄いあげるバラードの5、センチメンタルなメロディで進むミドルテンポの6、キラキラキーボードとシャープなリフで始まるスピードナンバーの7もキャッチーなコーラス全開でテンションを上げていきます。哀愁のメロディからダイナミックなリフが展開されていくパワーバラード調の8はドラマティックなコーラスと劇的なソロワークが扇情的に迫る感情の込められた一曲。浮遊感のあるキーボードとメタリックなリフがドライブ感を生み出していく9はシリアスな雰囲気を持ったスピードナンバー。ヘヴィなリフで迫る10はエモーショナルなヴォーカルがダイナミックに曲を引っ張るミドルテンポの劇的ナンバー。 ボーナストラックの11はやっぱり待ってる人が少なくないような気がするドラマティックなキラキラスピードナンバーで、12にはアリス・クーパーのカバーを収録しています。

 あふれるほどのキャッチーなメロディと、楽曲に溶け込みながら印象的なプレイを聴かせるインストゥルメンタル陣が結びついて作り出すサウンドは、北欧的な叙情感を薄めながらも洗練された絢爛さを感じさせるメジャー感を持ったものになっています。速い曲はほとんど日本向けということで、本来の目指した方向性よりは少し緩和されたものになったかもしれませんが、ベテランバンドのような余裕さえ感じさせる良質のメロディックメタルな一枚になっています。
同系統アルバム
D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
AMONG THE GODS/MOB RULES
THE EVIL IN YOU/AT VANCE





Nobember

AMON AMARTH | DUNGEON | FLOTSAM AND JETSAM | HIBRIA | IMAGINERY | RAGE | SILENT FORCE | STEEL ATTACK | THALION | VICTOR SMOLSKI |

FATE OF NORNS/AMON AMARTH

フェイト・オブ・ノーンズ/アモン・アマース

METALBLADE MBCY-1011 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 呪詛めいたデスヴォイスが重量級のギターリフを伴って進む、重厚長大の圧倒的な存在感を放つサウンドは、壁のように立ちはだかるツーバスの響きが強い圧迫感を生み出していきます。ミドルテンポの楽曲を中心に、勇壮さと哀愁を醸し出す全体を覆うメロディと情念を吐き出すヴォーカルが作り出していく慟哭のドラマはヴァイキングメタルにも通じる北欧神話的な背景を持った闘争の歴史を伝えるもので、アルバム全体で徹頭徹尾その姿勢が貫かれています。

 これまでと同様に彼等のサウンドと世界観を追求している、すっかり日本デビューが遅れてしまった強力盤です。
同系統アルバム
SCULPTURE OF STONE/DIES IRAE
MERCENARY/BOLT THROWER
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR

ONE STEP BEYOND/DUNGEON

ワン・ステップ・ビヨンド/ダンジョン

SOUNDHOLIC TKCS-85106 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 2003年の来日コンサートで、その存在を強くアピールしたオーストラリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。レコーディング後に来日したメンバーであるベースとドラムが脱退しています。

 ドライヴ感のあるメタリックなギターリフが叩き込まれるアグレッシヴな1からパワー全開のハイトーンヴォーカルが絶唱するダイナミックな楽曲が揃ったアルバムは、メロディとパワーが上手くブレンドされたドラマティックなものです。哀愁帯びたメロディがソリッドなリフに乗って進むキャッチーなコーラスに泣きのギターソロも印象的な2、銅鑼の音から始まる3はミステリアスなムードを持った劇的なイントロから一転、疾走に移るデスヴォイスもアクセントに取り入れた鮮やかなギターソロも活躍するスラッシーなスピードナンバー、連続して始まる4はメロウなムードが哀愁を加速させていく劇的パワーバラード、ダークなムードで突っ走る5はスラッシーなリフに邪悪なコーラスが加わった攻撃的な一曲。哀感あふれるアコースティックギターの調べから骨太に展開するミドルテンポの6は漢らしさが前面に出た勇壮な曲、ザクザクしたギターリフとタイトなリズムで押しまくる突進ナンバーの7、ドラマティックなイントロからソリッドなリフを繰り出す8はメロディとパワーが一丸となって迫る堂々とした一曲で、大仰なエンディングの9へと繋がっていきます。ボーナストラックはカバーが三曲収録されています。

 日本公演で見せたスラッシーな雰囲気ばかりではないメロディを大切にドラマティックなヘヴィメタルを作り出しているアルバムは、バンドの揺ぎ無い信念を強くアピールするものになっています。ボーナストラックのカバー曲の選択は面白いけどアルバムにはイマイチあっていないかと思われますが、熱気あふれるドラマティックパワーメタルの真髄を感じさせる一枚です。
同系統アルバム
DEVIL'S GROUND/PRIMAL FEAR
THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL
NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES

DOOMSDAY FOR THE DECEIVER/FLOTSAM AND JETSAM

ドゥームスデイ・フォー・ザ・ディシーヴァー/フロットサム・アンド・ジェットサム

METALBLADE MBCY-1010 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元メタリカのジェイソン・ニューステッドが在籍した事で知られる80年代アメリカンスラッシャーの1986年に発表されたファーストアルバムです。

 当時としてはスラッシュメタルに大胆にメロディを導入したと話題になったバンドでしたが、曖昧な記憶だとその辺りにはこんなスタイルのバンドが沢山現れていたような。デストラクションとかホーリー・テラーとかメタル・チャーチとかエージェント・スティールとか。ハイトーンヴォーカルが歌メロをきちんと歌ってギターリフが刻みまくる激しくメタリカ及びメガデスアンスラックスの洗礼を受けたような、サウンドスタイルは、ちょっと懐かしさを覚えるもので、ツインギターソロも入るあたりはキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
って感じのドラマティックな感覚を覚えます。

 持っていなかったのを思い出して手に入れてみましたが、スラッシュメタルがアイアン・メイデンの影響下にどっぷり漬かっていたのを再認識する一枚でした。
同系統アルバム
THE ART OF DYING/DEATH ANGEL
METAL DISCHARGE/DESTRUCTION
THROUGH THE FLESH TO THE SOUL/INVOCATOR

DEFYING THE RULES/HIBRIA

ディファイング・ザ・ルールズ/ヒブリア

SPIRITUAL BEAST SBCD-1019 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 80年代を思い出させるヴィオレンスな感覚を持ったジャケットに衝撃を覚える、ブラジル出身のバンドのデビューアルバムです。

 ドラマを予感させるダークなイントロダクションから始まるアルバムは、テンションの高いパワフルハイトーンヴォーカルにメタリックに叩きつけられるギターリフの熱血系パワーメタルサウンドが展開されていきます。スティールロードと言う名前から既にヘヴィメタルな世界観が炸裂している突進力のある2から、キャッチーなコーラスにツインギターが炸裂するスピードナンバーの3、メタリックに刻むリフで押し切る4はアイアン・メイデンあたりのスタイルを思わせるダイナミックな曲でドラマティックなギターソロが印象的です。高揚感を高める小気味良いビートを持ったアップテンポの5はキャッチーなコーラスとテクニカルなギターソロも相まって劇的に展開していきます。叙情的なメロディでヴォーカルが歌い上げるダイナミックなスローナンバーの6、強烈に失踪するタイトルトラックは勇壮さを持ったコーラスと速弾きギターソロで一気にヒートアップ。シリアスなムードでメタリックなリフを繰り出す8は緩急と展開の激しいテクニカルな一曲。哀愁帯びたメロディとトリッキーなリフが交錯するミドルテンポの9は何だか開放感あふれるサビで盛り上がります。緊張感高まるイントロからドラマティックに二転三転していく渾身の大作の10でアルバムは幕を閉じます。

 ハイトーンヴォーカルを前面に押し出したパワーメタルを作り出しているアルバムは、オーセンティックなバンドの影響下にあるツインギターに存在感をアピールするリズム隊が加わって、若さあふれる押しの強いサウンドを生み出しています。楽曲の幅があまり広くないのでアルバムの前半と後半で既視感を覚えるところや、詰め込みすぎで蛇足気味なパートが少なくないとかは今後の課題ですが、勢いに任せて突っ走る爽快感を味わえる期待の一枚です。
同系統アルバム
A FLAME TO THE GROUND BENEATH/LOST HORIZON
THE BOOK OF HEAVY METAL/DREAM EVIL
NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES

LONG LOST PRIDE/IMAGINERY

ロング・ロスト・プライド/イマジナリー

MARQUEE MICP-10483 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ファイヤーウィンドなどでも活動するギリシャ出身のキーボーディスト、ボブ・カティオニス率いるバンドのセカンドアルバムです。ボブ・カティオニスはここではギターもプレイしており、ヴォーカリストにはTEARS OF ANGERのビョルン・ヤンソン、SYSTEM SHOCKのリズム隊がメンバーとして名を連ねています。

 ブルージーな感触も持ったハスキーなパワフルヴォイスを中心にメロディをダイナミックに展開させるパワーメタルが繰り広げられるアルバムは、アップテンポで湿ったメロディとソリッドなギターリフが緊迫感を持って展開されていく1から安定感あるプレイを聴かせていきます。叙情性の強いメロディアスなリフが北欧メロディックデスメタルを彷彿とさせ、テクニカルなプレイとエモーショナルなメロディが融合していくソロパートまでスピード感あふれるドラマティックな突進ナンバーの2、さらにミドルテンポの3はセンチメンタルなイントロから情感豊かに歌い上げるヴォーカルとシンフォニックなアレンジのキーボードがダイナミックに交錯しつつ、泣きのギターソロが炸裂する劇的ナンバー。へヴィリフが叩きつけられる4はタイトなビートが煽情性の強いコーラスへと昇華されていくシャープな曲でテクニカルなインストゥルメンタルが更に鋭い雰囲気を強めていきます。泣きのメロディが暴発する5はソリッドなリフと熱いヴォーカルが融合していくミドルテンポのナンバー。大仰でスケール感の大きいイントロからダイナミックに展開するスローテンポの6は緊張感を保ちながら芝居がかった空気を演出していきます。メロディを内包するソリッドなギターリフが再び北欧メロディックデスメタルを思わせる劇的ナンバーのメタリックな7、ファイヤーウィンドのギタリスト、ガス・Gが参加した8はミステリアスなムードが支配するミドルテンポの曲で、中盤の様式美な展開が少し面白いです。プログレハード的な緊張感を孕んだ9はタメを効かせたブリッジからスピードを上げるコーラスで一気に盛り上げるダイナミックなナンバー。ボーナストラックの10はドラマティックなイントロからフックのあるギターリフでダークな雰囲気に包まれるミドルテンポの曲で劇的にアルバムを締めくくります。

 感情を込めて歌い上げるヴォーカルとテクニックとエモーションが融合するギター、さらに躍動的なリズム隊にそれらを彩るキーボードが一体となってドラマティックなヘヴィメタルを作り出しているアルバムは、伝統的なものから最新のものまでヘヴィメタルな要素を包括しつつ隙の無い完成度を見せるもので各プレイヤーの経験を感じさせます。特にボブ・カティオニスはギタリストを名乗った方がいいんじゃないかと思うほどのプレイを見せています。ボーナストラックまで聴き手を意図するところへと誘導していく術を随所に見せるアルバムは安心感をもたらす説得力の強いもので、プロジェクト扱いにしておくのは勿体無さ過ぎる強力な一枚です。
同系統アルバム
BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND
EPICA/KAMELOT
SOUNDCHASER/RAGE

FROM THE CRADLE TO THE STAGE
20TH ANNIVERSARY/RAGE

フロム・ザ・クレイドル・トゥ・ザ・ステージ/RAGE

NIPPON CROWN CRCL-4831/32 [LIVE] >>>>>BUY...?

 ドイツが誇るパワーメタルバンド、RAGEのバンド20周年を記念して発表された二枚組ライブアルバムです。収録は彼らの地元であるドイツ、ボーフムで2004年1月に行われています。

 バンド史上、最強メンバーで構成されているライヴだけにどの時代の楽曲も自在に弾きこなすヴィクター・スモールスキ、パワー全開のマイク・テラーナ、結構高音が辛い(笑)ピーヴィーら三人のパフォーマンスも最高レベル。収録されている楽曲にはどう選んでも不満が残るのは仕方の無いところですが、定番の曲は押さえているのでRAGE初心者にも優しい内容になっています。

 とりあえずインヴィジブル・ホライズンのサビには(´・ω・`)ショボーン
同系統アルバム
LIVE/BLIND GUARDIAN
RUDE AWAKENING/MEGADETH
ALIVE IN ATHENS/ICED EARTH

WORLDS APART/SILENT FORCE

ワールズ・アパート/サイレント・フォース

KING RECORD KICP-1041 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元ロイヤル・ハントのDC クーパーと元シナーのアレックス・バイロットのバンドの三枚目のアルバムです。

 衝撃の童謡「たのしい雛祭り」をメタリックにアレンジしたイントロから始まるアルバムは、DC クーパーの伸びやかな歌唱を最大限に活用したメロディックメタルを作り出しています。華麗なヴォーカルメロディと滑らかなコーラスワークが印象的な劇的美旋律スピードナンバーの1から、躍動的なビートがこだまするハードロッキンでキャッチーなメロディ満載の2、ムードを変えてへヴィなリフを繰り出す3は中近東風味を加えつつミステリアスかつ壮大に進みます。ドライヴするギターが弾むビートで飛翔する4は湿り気を帯びるコーラスでテンションも最高潮。緊迫感のあるリフが扇情的なメロディのコーラスと調和していくミドルテンポの5、シリアスな空気に包まれる6はメタリックな要素が強まるアップテンポのナンバーで様式美で劇的な展開を見せます。ジューダス・プリースト的な攻め方を見せる7はドラマティックなコーラスと泣きのギターソロでネオクラシカルに喜びの歌。インプロヴァイズされたギターイントロからジャジーなプレイを炸裂させるテクニカルなナンバーの8、DC クーパーの息子を担ぎ出したバラードの9、低いところから盛り上げていくオーセンティックなメタルナンバーの10、激しさを増して突っ走る11はパワーメタリックに華麗なギターが乱舞するクラシックのフレーズも満載。センチメンタルなメロディが変転し飛翔していくタイトルトラック、ボーナストラックは懊悩する雰囲気が包み込むミドルテンポの泣きのナンバーです。

 バンド内の雰囲気も良い状態なのか、すっかりリラックスした楽しそうな空気が伝わってきそうなアルバムで、童謡とかクラシックのフレーズの導入とかは少しはじけ過ぎな気もしますが、怒涛のメロディの応酬には爽快さを覚えます。安定したパフォーマンスと高い感情表現を見せる求心力の強い一枚です。
同系統アルバム
TEMPLE OF SHADOWS/ANGRA
NEW WORLD MESSIAH/NOCTURNAL RITES
RECKONIG NIGHT/SONATA ARCTICA

ENSLAVED/STEEL ATTACK

エンスレイヴド/スティール・アタック

KING RECORD KICP-1043 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。ギター、ドラム以外のメンバーを交替して製作されています。

 スピード感たっぷりの鋭角なギターリフに乗せて感情を爆発させていく粘りのあるハイトーンヴォーカルがシリアスなメロディを唄う硬質で攻撃的なパワーメタルを作り出しているアルバムは、情念を迸らせる煽情性の強いコーラスを持ったソリッドな1から高速ギタープレイで襲い掛かります。トリッキーなギターリフから重量感たっぷりに展開していく2は飛翔感のあるコーラスでムードを一変させていきダークなギターソロで盛り上げます。躍動的なギターリフで突き進む緩急自在の3、高速イントロから哀愁帯びたメロディを孕んだ起伏の激しいダイナミックな歌唱を聴かせていくミドルテンポの4、ダイナモのようなギターリフが繰り出されていく5は湿り気を帯びた勇壮なコーラスをデスヴォイスのアクセントを加えるパワフルナンバー。タイトなリフに開放感のあるメロディを乗せた6はデスヴォイスが加わった重厚なコーラスとのコントラストが強烈、叙情的なメロディで迫るタイトルトラックは情感とメロディがシンクロしていくアップテンポのナンバー。エスニックなメロディが飛び出す8は攻撃性と神秘性が交錯するミドルテンポの曲、高速ギタープレイでメロディを連ねていく9はドライヴ感も強く妖しげなコーラスでドラマティックに突き進んでいきます。威嚇的なリフで突進する10はリズムチェンジも激しく大きく曲を動かしていきます。ボーナストラックは荒涼とした空気が漂う刻みリフから粘り腰のヴォーカルが情感込めて唄うアップテンポの曲です。

 壁のようなリフの応酬に鮮やかな高速ギターソロが加わり、フラット気味のヴォーカルが全体の安定感を少し損なっていますが、そこはテンションの高さでカバーしていく塊のようなパワーメタルサウンドを生み出したアルバムは、大幅なメンバーチェンジによって心機一転、硬派なヘヴィメタルを徹頭徹尾貫き通した揺ぎ無い一枚になっています。
同系統アルバム
SOUL TEMPTATION/BRAINSTORM
ORDER OF THE ILLUMINATI/AGENT STEEL
THE GLORIOUS BURDEN/ICED EARTH

ANOTHER SUN/THALION

アナザー・サン/タリオン

VICTOR VICP-62904 [☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ブラジル出身の女性ヴォーカルを擁するバンドのデビューアルバムです。ヴォーカルには同郷のアングラシャーマンのアンドレ・マトスや元ハロウィンのマイケル・キスクがゲストとして参加しています。

 荘厳なイントロダクションから始まるアルバムは、透明感のある女性ヴォーカルが唄う優しいメロディがシャープなギターリフと共に進み、ドラマティックかつプログレッシヴに展開されていくインストゥルメンタル陣からムードを一変させるアップテンポの2へと。叙情的なアコースティックギターの調べの静かなパートから一転激しさを増したダイナミックなパートへと展開していく3、ミステリアスなSEからの4はへヴィ&テクニカルに展開しセンチメンタルなメロディをヴォーカルが唄い上げます。緩急をつけながらテクニカルに展開していく6は緊迫感を持続させながら進みます。透き通ったメロディで繊細に迫る叙情性たっぷりの7、へヴィに迫る8は物悲しいメロディとダークな雰囲気が相乗効果を発揮する一曲。メタリックに突き進む劇的スピードナンバーの9、久々に伸びやかな歌声を聴かせるマイケル・キスクとのデュエットで盛り上がるバラードの10、アンドレ・マトスの加わった2の別バージョンのボーナストラックの11が収録されています。

 初期のアングラを彷彿とさせるプログレッシヴとも言える展開の切り替えの多用で不思議なムードを演出しているアルバムは、新人離れした完成度を見せています。一筋縄でいかない展開の複雑さが女性ヴォーカルを活かす方向で進んでいないのが結構気になるところで、ボーナストラックのアンドレ・マトスの加わったバージョンの方がこのサウンドには適しているような。ともあれ、この先どんどん伸びていきそうな予感を感じさせる一枚です。
同系統アルバム
APHELION/EDENBRIDGE
MEMORIES OF A DREAM/ARWEN
RITUAL/SHAMAN

MAJESTY & PASSION/VICTOR SMOLSKI

マジェスティ・アンド・パッション/ヴィクター・スモールスキ

NIPPON CROWN CRCL-4598 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 ロシア出身で、マインド・オデッセイRAGEで活動するギタリストの二枚目のソロアルバムです。

 バッハの楽曲をモチーフに、ブルージーだったりネオクラシカルだったりメタリックだったりしながら、ウリ・ジョン・ロートらの豪華ゲストと共に優雅で典雅な空間を生み出すアルバムは、ヴィクター・スモールスキの自由度の高い発想に導かれる奔放なサウンドを作り出します。クラシックの包み込むような懐の深さと、ロックの鋭角さを融合させるアーティストの才能を感じさせる一枚です。
同系統アルバム
SKY OF AVALON/ULI JON ROTH
FORWARD AND BEYOND/VITALIJ KUPRIJ





December

DGM | DIVINEFIRE | EDENBRIDGE | JON OLIVA'S PAIN | RAGE | SILVERBACK |

MISPLACED/DGM

ミスプレイスド/DGM

MARQUEE MICP-10486 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 イタリア出身のバンドの5枚目のアルバムです。

 キャッチーなメロディを持ったイントロからのアップテンポのスリリングな展開を見せる1から、これまでとは少し異なった表情を見せていくアルバムはパワーメタル的な側面が強まったものです。キーボードとギターが絡み合うシャープなリフからの2はダイナミックに突き進むパワーメタリックなスタイル、哀感をはらんだメロディが情熱的な歌唱と一体化する3ミドルテンポの3、センチメンタルなメロディを前面に押し出した4は多層のコーラスワークによって盛り上げていく、リリカルな情景描写パートも心地よいドラマティックなナンバー。メタリックなリフで迫る5は繊細なコーラスとダイナミックな曲調が劇的に飛翔していくアップテンポの曲、緊迫するムードがソリッドなギターリフで誘導される6は複雑な展開を見せていくプログレッシヴなナンバー。物悲しいメロディが全体を覆う7は力強い歌唱を見せる煽情性の高いナンバー、キャッチーなメロディで突っ走る8はパワーメタリックな疾走系ナンバーでテンションを上げるコーラスで一気に盛り上げます。 ボーナストラックはイタリアで大人気の日本製アニメ「北斗の拳」の主題歌をハイトーンヴォーカルはやたらと上手い日本語で唄っています。

 ハスキーなハイトーンヴォーカルとテクニカルなギタープレイを中心に華麗なキーボードが彩りを添えるスタイルには変化はありませんが、楽曲の与える印象はポジティヴで弾けた感じになっているアルバムは、バンドの心境の変化は伺えます。かなり分かりやすくなったスタイルで構成されたアルバムは、自分たちの核を見失うことも無く、バンドの音楽性と一般性を上手くアピールしている一枚です。
同系統アルバム
D'UN AUTRE SANG/MANIGANCE
LONG LOST PRIDE/IMAGINERY
THE ODYSSEY/SYMPHONY X

GLORY THY NAME/DIVINEFIRE

グローリー・ザイ・ネーム/ディヴァインファイア

KING RECORD KICP-1040 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 元AM I BLOOD、シンズ・オヴ・オミッションで活動していたヤニ・ステファノヴィック、ナーニアのヴォーカリスト、クリスチャン・リヴェル、ストームウィンドナーニアのベーシスト、アンドレアス・オルソンのスウェーデン出身のメンバーによって構成されるバンドのファーストアルバムです。

 多くのメタルシーンのアーティストをゲストに迎えたアルバムは、SAVIOUR MACHINEのヴォーカル、エリック・クレイトンのディープヴォイスのナレーションからの壮大なイントロダクションで幕を開けます。ドラマティックでシンフォニックなイントロからのスピードナンバーの2はブラックメタル的な冷気を伴ったバックのサウンドとパワフルなハイトーンヴォーカルが合わさって、シリアスなムードを持った様式美展開を見せるダイナミックな曲で、デスヴォイスのコーラスも加わって盲点だった組み合わせを見せていきます。荘厳さを持った厚みのあるギターリフと華麗な展開で盛り上げる3は整然とした重厚なコーラスが峻烈な感覚を味合わせるネオクラシカルな大作で圧倒的な存在感を生み出します。不穏な空気が高まるイントロから緊張感高まるキーボードと叙情的なメロディが繰り出されるオペラティックな展開を見せる劇的ナンバーの4、泣きのギターからダークな雰囲気で突き進む5はスリリングなインストゥルメンタルパートでテクニカルな側面を強めていきます。センチメンタルなメロディが情感豊かに唄われる6は起伏も大きく盛り上がります。扇情的なメロディと畳み掛ける叙情リフが哀愁を誘うドラマティックな7はキャッチーなコーラスにエモーショナルなギターソロも加わっても吸引力を強化しつつ盛り上がるミドルテンポのナンバー、8のボーナストラックは同郷のTALK OF THE TOWNのカバーで北欧ハードポップな楽曲をスリリングに仕上げています。邪悪なムードが高まる9は二転三転する緩急を使った緊迫感ある展開で圧倒していく超大作、そしてアウトロの10でアルバムは幕を閉じます。

 ネオクラシカルなギタープレイと暗黒風味のキーボードサウンドが交錯するアグレッシヴなメタルサウンドに正統派然とした力強い歌唱を聴かせていくアルバムは、緊迫感と構成美が一体化したもので経験を積んだアーティストたちのコラボレーションが生み出す品膣の高いものになっています。スタイルを特化している関係で、楽曲のアレンジの幅が多少狭くなっているところはありますが、各々のメンバーのバックグラウンドを活かした劇的で鮮烈なヘヴィメタルを作り出している一枚になっています。
同系統アルバム
SYMPHONY OF ENCHANTED LANDS II -THE DARK SECRET-/ RHAPSODY
NYMPHETAMINE/CRADLE OF FILTH
THE ODYSSEY/SYMPHONY X

SHINE/EDENBRIDGE

シャイン/エデンブリッジ

KING RECORD KICP-1042 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 オーストリア出身のバンドの4枚目のアルバムです。

 エンジェリックヴォイスの女性ヴォーカルを中心に幻想絵巻を現出するアルバムは、メタリックなギターリフとリリカルなメロディが絡み合うドラマティックな1から、シタールのエキゾティックな響きで始まるダイナミックな展開の爽快な2、センチメンタルで清涼感の残るバラードの3、中華風なメロディを持った4は軽快なヴァイオリンを掻き鳴らしつつ壮大に進んでいきます。へヴィリフで始まる5は再びエキゾチックなムードを湛えつつ、しなやかに包み込んでいきます。美しいメロディが繊細に哀切に唄われる劇的バラードの6、ピアノの調べにのって優しい歌声が響く小品の7、スリリングなギターがメタリックに展開していく8は開放感を感じさせる劇的スピードナンバー、続く関連性の高い9、10は透明感のあるメロディの9からアイリッシュなムードが漂う10へと繋がっていく大作です。ボーナストラックの11はゆったりとしたメロディが流れるインストゥルメンタルです。

 癒し系ヴォーカルが可憐なメロディで抑揚の強い展開を持つ楽曲を唄いあげるサウンドは、これまで通りの北欧の煽情性の強い美旋律を軸にした安定感と存在感を備えている一枚に結実しています。
同系統アルバム
ONCE/NIGHTWISH
ANOTHER SUN/THALION
PROJECT SHANGRI-LA/LANA LANE

'TAGE MAHAL/JON OLIVA'S PAIN

タージ・マハール/ジョン・オリヴァズ・ペイン

NIPPON CROWN CRCL-4833 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

 サヴァタージのヴォーカルであり中心人物でもあるジョン・オリヴァのソロプロジェクトのファーストアルバムです。残りのメンバーはザック・スティーヴンスに全員解雇されてしまった元サークル・トゥ・サークル組で、結果的にはサークル・トゥ・サークルのヴォーカリストが変わったみたいな。

 ジョン・オリヴァの音楽的背景がサヴァタージ時代よりも強く押し出されているアルバムは、十八番のピアノとオペラティックなコーラスの組み立ても劇的な1からダークさと構成美が同居する楽曲が繰り出されていきます。過去のサヴァタージの曲名を散りばめた2はちょっと“STREETS A ROCK OPERA”風のダイナミックさを持ったへヴィな曲、重厚さが劇的に昇華されていくエモーショナルなギターソロも加わった3、キャッチーなコーラスが開放感を高めるミドルテンポの4、静と動のコントラストが激しいダイナミックな叙情ナンバーの5、6、メタリックなリフがへヴィに展開されていくアグレッションが際立つ7は定番ファルセットシャウトあり。起伏の激しいフレーズが次々展開されていく9、ミステリアスなムードを持ったダークなメタルナンバーの10、邪悪なムードたっぷりで迫る11は刺々しいメタルナンバー、シンプルなリフでブラック・サバス的なところもある12、アコースティックギターで奏でられるリリカルなメロディが心を癒す劇的バラードの13が収録されています。

 サヴァタージのソングライターとサヴァタージっぽいサウンドをやっていたバンドが合体してサヴァタージにならない方が不思議なわけでして、大方の予想を裏切らないドラマティックなヘヴィメタルが展開されています。年季の入ったファンほど、ああサヴァタージだなあと実感させられるアルバムは、あんまりタージ・マハルとは関係ない、完成度の高い一枚でした。
同系統アルバム
POETS AND MADMEN/SAVATAGE
WATCHING IN SILENCE/CIRCLE II CIRCLE
SHATTERED-MIND-THERAPY/WIZ

FROM THE CRADLE TO THE STAGE [DVD]/RAGE

フロム・ザ・クレイドル・トゥ・ザ・ステージ/RAGE

NIPPON CROWN CRBL-10013/14 [DVD] >>>>>BUY...?

 ジャーマンパワーメタルの雄、RAGEのバンド結成20周年を記念して発表された二枚組ライヴDVDです。ディスク1は先行して発表されたライヴCDの模様の映像で、CDに収められた楽曲から“ENOUGH IS ENOUGH”を除いたものになっています。ディスク2はバンドの歴史をピーヴィーが、それぞれの音楽遍歴をメンバーが語っているインタビューや、初期のレアなビデオクリップやライヴ映像が収められています。

 中の人が増えたに違いない、ピーター“ピーヴィー”ワグナーの巨体に圧倒されるライヴ映像は音だけでも凄さの分かったヴィクター・スモールスキの超絶プレイや、音だけではなぜ盛り上がっていたのか分からなかったマイク・テラーナのドラムソロは、

 ジャグラー━━━━━━━(゜Д゜;)━━━━━━!!!!!!!!

 と、映像で驚愕させられることや“UNITY”でギター二本使ってたとか、色々興味深いことが分かります。もちろん観ているだけでヒートアップ。

 さらにディスク2は、このためだけに日本盤を買ったよ!な字幕付インタビューがかなり面白いわけで、“STRAIGHT TO HELL”が映画で使われていたとか頭蓋骨とかヴィクター父とかレアすぎるマインド・オデッセイの映像とか満載。さらにどこの倉庫から引っ張り出してきたんだっていう初期のビデオクリップやライヴ映像ではヨルグ・マイケルとか、細いピーヴィーとか、“INVISIBLE HORIZONS”ってすげえ高音だよ!とかファンなら必見の映像が詰め込まれています。正直ディスク2だけでも売れそうな。まあ、とにかくファンならずとも充分満足な二枚組DVDでした、日本盤はちょっと高いけどな!
同系統アルバム
IMAGINATIONS THROUGH THE LOOKING GLASS/ BLIND GUARDIAN[DVD]
RUDE AWAKENING/MEGADETH[DVD]
ROCK IN RIO/IRON MAIDEN[DVD]

A THOUGHT ON LIFE DURATION OF
SPECIES AND HUMAN BEHAVIORS/SILVERBACK

種の寿命と人間の行動についての考察/シルバーバック

REALLIFE RECORDINGS RLCA-1067 [☆☆☆☆] >>>>>BUY...?

B0009A6N6Q  北海道出身のバンドの2004年に発表された三枚目のアルバムです。メンバー変更があって三人編成になって製作されています。

 不穏な空気が流れるイントロから繰り出されていくのは、分厚い鉈を振り下ろすようなギターリフ。スラッシュメタルの流れを汲んだ緊迫感たっぷりに迫るリフの猛襲によって築かれていく音の壁が凄まじい1はアグレッション全開のパートと、それまでのプレイからは想像もできないエモーショナルなギターパートのコントラスト、さらに切り返してのファストパートも激しく暗い感情を醸造していき、続く2は緊張感と不安感を高めていくコーラスワークが印象的で楽器のアンサンブルがそれらを加速していくコンパクトな楽曲。ヘヴィリフが躍動していく3はタイトな感覚とフリーなムードのギターソロが交錯していきます。唸りを上げるスピード感あるリフで突進する4、フリージャズのようなフィーリングの混沌としたタイトルトラックのパート1はアコースティックなパートまで飛び出す変転ぶりが鮮やか。物語性の強いインストゥルメンタルの6は猛々しさを描写していくドラマティックな楽曲で、多分ベルセルク関連。ヘヴィロックな感覚が高まる7は劇的に花開くコーラスもエモーショナルなギターソロも輝きを増しています。センチメンタルな空気が漂う8は哀感あふれ出すパワーバラードと言った風。タイトルトラックのパート2はAC/DCあたりを彷彿とさせる乾いた感覚の哀愁ロックナンバーで終盤のフラッシーなギターソロからアコースティックへの変転、さらにエンディングとも言えるインストゥルメンタルが楽曲を盛り上げます。アコースティックのインストゥルメンタルの10はアルバムを落ち着かせる静かな一曲となっています。

 哲学的なテーマを持ったコンセプトアルバムとなった本作では、三人編成になったことによってより密度を上げ構築度の高まった楽曲構成、結果的に初期スラッシュメタルで見られたヴォーカルに依存しない楽器のアンサンブルの可能性が見られ、歌詞だけには頼らない曲自体によってテーマを鮮明にしていく姿勢が顕著になっています。重厚なコンセプトに真っ向から対峙するサウンドの激しさ、存在感はバンドの意気込みと決意を明確に表すものとなっており、自分たちに今出切る事を全てやってのけた爽快感さえ感じさせる完成度の高まった一枚です。
同系統アルバム
BURNT OFFERINGS/ICED EARTH
NEVER,NEVERLAND/ANNIHILATOR
8 DEADLY SINS/MANTICORA