ALBUM COLLECTION バックナンバー 2002

January Februaly March April May June July August September October Nobember December


  1. BLACK ON BLACK/ANDRE ANDERSEN
  2. II=I/ANDROMEDA
  3. WAKING THE FURY/ANNIHILATOR
  4. APOCALYPSE/ARACHNES
  5. SPACE METAL/ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE
  6. THREE/ARMAGEDDON
  7. NEW DISCOVERY/ARTENSION
  8. MEMORIES OF A DREAM/ARWEN
  9. ONLY HUMAN/AT VANCE
  10. PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR
  11. ...WHERE THE SHADOWS LIE/BATTLELORE
  12. BETO VAZQUEZ INFINITY/BETO VAZQUEZ INFINITY
  13. AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE
  14. A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN
  15. SILENCE OF NORTHEN HELL/BLOOD STAIN CHILD
  16. REIGN OF ELEMENTS/CELESTY
  17. SQUADROPHENIA/COSMOSQUAD
  18. CROWNED IN TERROR/THE CROWN
  19. EXPANDING SENSES/DARKANE
  20. THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR
  21. DAMAGE DONE/DARK TRANQUILLITY
  22. INWARDS/DEW-SCENTED
  23. SIGN OF TRUTH/DIONYSUS
  24. THE BITTER SELFCAGED MAN/DIVINE SOULS
  25. DRAGONSLAYER/DREAM EVIL
  26. BEYOND REALITY/DREAMTALE
  27. SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER
  28. PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
  29. HYPNOTICA/EMPIRE
  30. CHAPTERS FROM A VALE FORLORN/FALCONER
  31. BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND
  32. ARTS OF DESOLATION/THE FORSAKEN
  33. EMERGENT/GORDIAN KNOT
  34. CRUCIBLE/HALFORD
  35. CRIMSON THUNDER/HAMMERFALL
  36. BLOODRED HATRED/HATESPHERE
  37. THE ALMIGHTY/HEIMDALL
  38. BREATH OF ETERNITY/HIGHLORD
  39. GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
  40. PLANETUDE/HOLY SAGGA
  41. SYSTEM X/IMPELLITTERI
  42. REROUTE TO REMAIN/IN FLAMES
  43. CONDITION RED/IRON SAVIOR
  44. THEY WILL RETURN/KALMAH
  45. ABIGAIL II:THE REVENGE/KING DIAMOND
  46. PROJECT SHANGRI-LA/LANA LANE
  47. PROPHET OF THE LAST ECLIPSE/LUCA TURILLI
  48. MINDCRIMES/LYZANXIA
  49. ANGE OU DEMON/MANIGANCE
  50. WARRIORS OF THE WORLD/MANOWAR
  51. HYPERION/MANTICORA
  52. NOW AND FOREVER/MEDUZA
  53. KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!/MEGADETH
  54. RUDE AWAKENING/MEGADETH
  55. NOTHING/MESHUGGAH
  56. PRAYER FOR THE DYING/MESSIAH'S KISS
  57. HERO-NATION/METALIUM
  58. IMAGINARIUM/MORIFADE
  59. OVER THE HILLS AND FAR AWAY/NIGHTWISH
  60. CENTURY CHILD/NIGHTWISH
  61. IN THEIR DARKENED SHRINES/NILE
  62. SHADOWLAND/NOCTURNAL RITES
  63. DEUS DECEPTOR/NONEXIST
  64. DREAMS OF ENDLESS WAR/NORTHER
  65. OPUS ATLANTICA/OPUS ATLANTICA
  66. REMEDY LANE/PAIN OF SALVATION
  67. PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
  68. BLACK SUN/PRIMAL FEAR
  69. GETTING HEAVIER + SNOWBALL OF DOOM 2/RACER X
  70. UNITY/RAGE
  71. THUNDERBLAZE/REPTILIAN
  72. THE ARRIVAL/REQUIEM
  73. POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY
  74. TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM
  75. DREAMTOWER/RING OF FIRE
  76. THROUGH THE STORM/RIOT
  77. F.U.S.E./SABER TIGER
  78. THE COLD WHITE LIGHT/SENTENCED
  79. XILED TO INFINITY AND ONE/SEVEN WITCHES
  80. THE ART OF BALANCE/SHADOWS FALL
  81. SECOND FLOOR/SHADOWS OF STEEL
  82. RITUAL/SHAMAN
  83. SUICIDE BY MY SIDE/SINERGY
  84. M-16/SODOM
  85. NATURAL BORN CHAOS/SOILWORK
  86. TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY
  87. THE ODYSSEY/SYMPHONY X
  88. FASTER DISASTER/TERROR 2000
  89. FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT
  90. SECRET OF THE RUNES/THERION
  91. PERVERTIGO/THRONE OF CHAOS
  92. THUNDERSTONE/THUNDERSTONE
  93. HASTINGS 1066/THY MAJESTIE
  94. THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
  95. MAN AND MACHINE/U.D.O.
  96. FIGHT TO THE END/VHALDEMAR
  97. SECRET VISIONS/VIRTUOCITY
  98. BEYOND ABILITIES/WARMEN
  99. DYING FOR THE WORLD/W.A.S.P.
  100. VALLEY OF THE LOST/WINTERLONG
  101. THE KINGDOM/WIZARDS
  102. TO TRAVEL FOR EVERMORE/WUTHERING HEIGHTS
  103. DYING SUN/YYRKOON
  104. BURIED ALIVE/ZONATA
  105. 煌神羅刹/陰陽座
  106. A TRIBUTE TO THE BEAST/VARIOUS ARTIST

January

DREAM THEATER | LANA LANE | NIGHTWISH | PAIN OF SALVATION | SINERGY | THERION | WINTERLONG | 陰陽座 |

SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER

シックス・ディグリーズ・オブ・インナー・タービュランス/ドリーム・シアター

east west japan AMCY-7311-2 [☆☆☆☆]

アメリカのプログレッシブ・メタルバンドの6枚目のアルバムです。コンセプトアルバムの前作で高い完成度を見せつけた彼等の次の一手は、二枚組さらに42分を越える曲というものです。
より攻撃的、よりヘヴィにインストゥルメンタルのプレイを積み重ね、音を隙間無く詰めこんだ高密度のテクニックの応酬を味合わせる鬼気迫る1から幕を開く一枚目は、実験的もしくは進歩的な自身の可能性を追求したバラエティに富んだもので、ゆったりとした壮大な唄モノかと思わせつつ、やっぱりギターとキーボードが弾き倒してしまう2、しっとりとしたメロディを唄い上げるヴォーカルを前面に出したミステリアスなインストパートを絡めた哀愁漂うダイナミックな3、女性ナレーションから壮大な展開を迎えつつドラマティックに決着する4、実験的で神秘的かつ退廃的なムードを持った5と9分を越える楽曲を揃えています。
そして問題の二枚目は、すぎやまこういち風の壮大でファンタジックなシンフォニーをジョーダン・ルーデスがやってしまった1で幕を開きますが、リリカルな小品からスリリングな展開など物語性の強い起伏のある楽曲が有機的に結びつきながら進んでいきます。
拡散した印象を与える一枚目と整合性はあるものの長編である必然性はあまり感じられない二枚目と、どちらにしても十分な満足感を得るのは難しい、隔靴掻痒の感が強い、もどかしさの残る大作になってます。けれども能力の限界を探り続ける姿勢は彼等らしさに満ち溢れており、自己満足だけには留まらない娯楽性を兼ね備えた作品を産み出した様は圧巻ではあります。
同系統アルバム
LEGACY/SHADOW GALLERY
INTO THE ELECTRIC CASTLE [A SPACE OPERA]/AYREON
THE VISITOR/ARENA

PROJECT SHANGRI-LA/LANA LANE

プロジェクト・シャングリラ/ラナ・レーン

MARQUEE MICP-10280 [☆☆☆☆]

アメリカの女性シンガー、ラナ・レーンの6枚目のアルバムです。前作のメンバーはほとんど元に戻ってしまっており、さらにヴィニー・アピスが参加しています。
前作の硬質な感覚から一転してソフトでファンタジックな彼等に望まれるサウンドが展開されていきます。ゆったりと優雅に流れていくタイトルトラックからエモーショナルな歌声を聴かせる楽曲が揃っており、フェア・ウォーニング〜ドリームタイドのヘルゲ・エンゲルケの書いたロックな4やヴィニー・アピスのドラミングが冴えるハードロックナンバーの6、9など相変わらずのリリカルでドラマティックなものになってます。マーク・ボールズとの共演を果たした全編イタリア語のカバー曲は壮大な作品になっており、二人の伸びやかな歌声によって感動的なクライマックスを迎えます。
柔らかいタッチのラナ・レーンサウンドは期待に応えて充分に発揮されていて、良質のメロディック・ロックをいつも通りに作り出しています。でも、エリク・ノーランダー色が強まってる作風の方が好きです。
同系統アルバム
ARCANA/EDENBRIDGE
FAR BEYOND THE WORLD/TEN
AYREON THE DREAM SEQUENCER/ARJEN ANTHONY LUCASSEN

OVER THE HILLS AND FAR AWAY/NIGHTWISH

オーヴァー・ザ・ヒルズ・アンド・ファー・アウェイ/ナイトウィッシュ

TOY'S FACTORY TFCK-87277 [EXTRA]

フィンランドの女性ヴォーカリストをフィーチュアしたバンドの企画盤です。
ゲイリー・ムーアは最高だなあ、と感慨深くなるほどピッタリはまったカバー曲の1からミディアムテンポのヘヴィな2を含む新曲二曲にリメイク一曲、そして各アルバムからライブの模様がずらりと並んでいます。新曲は期待を裏切らないドラマティックで華麗なナンバーとリリカルな美しい曲でニューアルバムが待ち遠しくなります。ライブ収録の曲はスタジオバージョンと比較してもまったく遜色無いクリアーなサウンドと安定したパフォーマンスで、ライブ盤として発表した方が良かったのではなかろうかと思わせる仕上りです。ボーナストラックも満載でニューアルバムへの繋ぎにしておくには勿体無いアルバムになってます。
同系統アルバム
ARCANA/EDENBRIDGE
REBIRTH/ANGRA
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN

REMEDY LANE/PAIN OF SALVATION

レメディー・レーン/ペイン・オヴ・サルヴェイション

MARQUEE MICP-10282 [☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。三度コンセプトアルバムに挑んでいますが、テーマはいつも通り重く。
情念が迸る苦悩と悔恨、絶望と悲哀、負の感情に満ちる世界の深遠で足掻き続け、それでも希望と愛の存在を求めて精神の迷宮を放浪する情景を、現出させる多層的な音世界と重く心に澱む主題の共鳴が精神を切り刻みながら肉迫する、苦痛と快楽を併せ持つ物語を紡ぐ。

精神的に健康で無い人には劇薬となる可能性がありますのでお気を付け下さい。
同系統アルバム
DREAMNING NEON BLACK/NEVERMORE
METROPOLIS PT.2:SCENES FROM A MEMORY/DREAM THEATER
THE GOD THING/VANDEN PLAS

SUICIDE BY MY SIDE/SINERGY

スーサイド・バイ・マイ・サイド/シナジー

TOY'S FACTORY TFCK-87275 [☆☆☆☆☆]

スウェーデンを中心に活動を続けるメタルゴッデス、キンバリー・ゴスとチルドレン・オヴ・ボドムのギタリスト、アレキシ・ライホが中心となっているバンドのサードアルバムです。アルバム製作後にセカンドアルバムから参加していたトゥー・ダイ・フォーのドラマーが脱退したりしてますが、中身には全く影響ありません。
ちょっぴり下品な効果音から始まる今度のアルバムは、タロットのマルコ・ヒエタラとアレキシ・ライホのツインリードギターが狂気乱舞する誰もが待ってた展開が炸裂する正統派ヘヴィメタルの魅力を詰めこんだダイナミックなものになっています。更にパワーを増したキンバリー・ゴスのヴォーカルは男女云々の拘りを一瞬で捨てさせるタフでテンションの高いパフォーマンスを聴かせており、その攻撃的に突き進む様は二本のギターが奏でる流麗なメロディとの相乗効果によって、より強烈なカリスマ性を放っています。 チルドレン・オヴ・ボドムを上回るほどに存在を強く主張するツインギターは、インストゥルメンタルパートを曲を崩す寸前の限界まで叩きこんで、泣きのメロディを溢れさせています。ヘヴィメタル然とした強力なファストナンバー、ミディアムテンポで押しの強い曲、女性らしいしっとりとした面を垣間見せるバラード、さらにアレキシ・ライホがディストーション・ヴォイスを披露するメンバー3人が唄うオペラティックな8を経て、テロで喪われた命に捧げるインストゥルメンタルでしっとりと幕を閉じ…



…ないで、アイアン・メイデンの「魔力の刻印」!
このカバーでは遂にキンバリー・ゴスにブルース・ディッキンソンが降りた!!と思わせる唄いっぷりを披露しており、シックス!シックス!シックス!って感じです。

ギターソロが最近は少ないと嘆く生粋の正統派ヘヴィメタルファンのオアシス、いや魂の一杯となるであろう、微妙にバランスどーとか、唄メロがちょっと単調とか何とか細かいところなど、すぐに吹っ飛んでしまうハイパーなエナジーに満ちたオーバードライビンなアルバムになってます、キンバリーバンザイ。
同系統アルバム
CARNIVAL DIABLOS/ANNIHILATOR
AWAKENING THE WORLD/LOST HORIZON
METUS MORTIS/BRAINSTORM

SECRET OF THE RUNES/THERION

シークレット・オブ・ルーンズ/セリオン

TOY'S FACTORY TFCK-87276 [☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの2001年発表の8枚目のアルバムです。今作は北欧神話をテーマにした楽曲のコンセプトアルバムになってます。
クラシック色が強かった前作から、今作ではヘヴィメタリックな割合を増やしており、ヘヴィでグルーブ感のあるバックを従えて男女混声合唱団が朗々と唄いあげる、彼等の完成されたスタイルを展開しています。ダイナミックにゆったりと流れる楽曲は、古代の神秘と幻想の世界をオペラティックに豪華に紡ぎ出していき、壮大な情景をドラマティックに産み出していきます。特異で個性的、唯一無二とも思えるサウンドによる、荒々しい神々が待ちうける古代神話の旅に出かけよう…。





男性コーラスの唄メロって浄土真宗のお経に似てるんだよなあ…。
同系統アルバム
PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA/DIMMU BORGIR
ATLANTIS ASCENDANT/BAL-SAGOTH
RAIN OF A THOUSAND FLAMES/RHAPSODY

VALLEY OF THE LOST/WINTERLONG

ヴァレイ・オブ・ザ・ロスト/ウィンターロング

KING RECORD KICP-858 [☆☆☆]

スウェーデン出身の4人組の2001年発表のデビューアルバムです。北欧メタル界では有名なラーズ・エリック・マットソンのプロデュースで製作されています。
マノウォーのエリック・アダムスとブラインド・ガーディアンのハンズィ・キアシュを足して3で割ったようなダーティな声質のヴォーカルが唄いあげるメロディは北欧風味の叙情感に満ちたもので、ツインリードギターを軸にしたパワーメタルを作り出しています。キーボードにゲストで参加しているラーズ・エリック・マットソンのプレイは要所で華やかなフレーズを聴かせており、繊細さとメタリックな部分の力強さとのコントラストを産み出しています。シンガロングパートにもキャッチーなメロディを配しており、高揚感を高めていく手法はそれなりに成果をあげているようです。
それでもヴォーカルの力量不足はいかんともし難く、それに気付いているのか全体的な比重もインストゥルメンタル寄りでギタープレイに工夫を凝らそうとした結果、かなり一曲にフレーズを詰め込み過ぎの印象を与えており、全体的にも散漫として焦点が絞られていないようです。まだメンバーも若く、バンド名を冠した曲を作るなど心意気は買えますが、完成度を高めるためには数枚のアルバムを経なければならないでしょう。
同系統アルバム
SILENCE/SONATA ARCTICA
STORMBRINGER RULER(THE LEGEND OF THE POWER SUPREME)/DOMINE
WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD

煌神羅刹(こうじんらせつ)/陰陽座(おんみょうざ)

koujinrasetu/onmyo-za

KING RECORD KICS-927 [☆☆☆☆]

日本発の自らを妖怪ヘヴィメタルバンドと名乗る陰陽座の3枚目でメジャーデビューアルバムです。男女ツインヴォーカルにツインギターという構成になっています。
メタリカの“THE CALL OF KTULU”風のイントロから、メタリックで小刻みなギターリフで押し切りながら二人のハイトーンヴォーカルがドラマティックに盛り上げる1から、アップテンポで叙情的なメロディを紡ぐ ヴィジュアルロック系な陶酔感とキャッチーなメロディの3、一転してヘヴィリフに透明感ある女性ヴォーカルのコントラストによって幽玄と情念の世界を描き出す4、オーセンティックなヘヴィメタルナンバーながら、まるで人間椅子のような唄いまわしを聴かせる男性ヴォーカルとわらべ歌風コーラスをフィーチュアしたツインリードギターが心地良い5、突進力のあるリフと漢臭いコーラスが印象的な6、J-ロック風で分かりやすいメロディーで構成されたシングルカットされた7に、民話調暗黒童話が恐怖の語りで炸裂してツインリードが乱舞する組曲、そして方言をアピールしたハッピーな10までメロディアスでフックのある楽曲を揃えています。
日本原産のメロディックメタルの流れを確実に汲みながら、自分達のキャラクター性を前面に出した手法は聖飢魔IIに近いものがあり、日本の市場を考えれば効果的な戦略を打ち出していると言えます。しかし、男女ヴォーカルの声質が似ていることもあって、そのコントラストはあまり強くは出ていませんし、バンド名から連想されるほどにはダークな部分が表れていないのは残念ではありますが、全編日本語のみで歌詞を作り出している信念を保って飛躍して欲しいものです。
同系統アルバム
TO HELL AND BACK/SINERGY
DAVI/VOLCANO
METALIZATION/X.Y.Z.→A





Februaly

BETO VAZQUEZ INFINITY | BLIND GUARDIAN | DEW-SCENTED | FALCONER | HOLY KNIGHTS | METALIUM | SHADOWS OF STEEL | SODOM | WARMEN |

BETO VAZQUEZ INFINITY/BETO VAZQUEZ INFINITY

ベト・ヴァスケス・インフィニティ/ベト・ヴァスケス・インフィニティ

MARQUEE MICP-10289 [☆☆☆☆]

アルゼンチン出身のベーシスト、ベト・ヴァスケスの率いるプロジェクトのデビューアルバムです。ゲストヴォーカリストにナイトウィッシュのターヤ・トゥルネン、エデンブリッジのサビーネ・エデルスバッカー、ラプソディのファビオ・リオーネ、ブラックモアズ・ナイトのキャンディス・ナイトらメロディックロック〜ヘヴィメタル界では名の通った実力者を揃え、ファンタジックな世界を現出させています。
ナイトウィッシュのリリカルな面を強めたかのようなターヤが担当する透明感あふれる神秘的な曲を筆頭に、ターヤとサビーネが共演する神聖性をも産み出す2、4、ファビオの唄う力強い3、キャンディス・ナイトのために作られたかのような叙情的でトラディショナルなメロディを持った組曲を越え、3人が共演する11でクライマックスを迎えた、それぞれのヴォーカリストの特長を引き出したシンフォニックロックを作り出します。
凄いメンバーを集めて高品質のアルバムを作ってしまって今後の活動となるとかなり困難が予想されますが、とりあえず優れたヴォーカリストを見つけてもらいたいものです。
同系統アルバム
ARCANA/EDENBRIDGE
AYREON THE DREAM SEQUENCER/ARJEN ANTHONY LUCASSEN
CRYSTAL TEARS/ON THORNS I LAY

A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN

ナイト・アット・ジ・オペラ/ブラインド・ガーディアン

VICTOR VIP-61739 [☆☆☆☆]

ドイツ出身のバンドの7枚目のアルバムです。タイトルが有名バンドのアルバムと同じですが、内容はまったく違います。
一曲目からはっきりと彼等の刻印が印された、ヴォーカルとクワイヤ&コーラスが全体の要素の約7割を占める人の声に高い比重を置いた、音の塊が迫る重厚で壮大な奥行きの深いサウンドは「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」アルバムからの流れを汲んだ緻密に構成されており、ドラマティックな音楽を追求し続けている彼等の本領が発揮されたものになっています。その濃密なサウンドは、シンプルでストレートな展開で高揚感を産み出すヘヴィメタル的な感覚とは異なった物語的な面を強く押し出しており、攻撃的な要素の強いメタリックな2、9でも真似の出来ない独自の世界を作り出しています。キリストの試練を描いた1、トロイア戦争をテーマにした3、10、ドラゴンランス・サーガを取り上げた7など現実世界とは異なった視点から想像力の翼を広げた壮大で幻想的な曲を揃えたことによって、オペラの劇場空間によって作り出される非日常の情景にも似た、音世界による魅惑の幻想が紡ぎ出されていきます。
白昼夢の中で、一瞬だけしか聞えない混沌とした、それでいて懐かしさを感じるような、音楽とも雑音とも思える立体的で圧倒的な刺激をそのままアルバムに詰めこんでみた、そんなバンドのイマジネーションをダイレクトに聴き手に叩きつける魂の一枚です。

でも、ヤツの名はレイストリン。
同系統アルバム
SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER
SECRET OF THE RUNES/THERION
RAIN OF A THOUSAND FLAMES/RHAPSODY

INWARDS/DEW-SCENTED

インワーズ/デュー・センテッド

SOUNDHOLIC TKCS-85034 [☆☆☆☆]

ドイツ出身のバンドの4枚目で日本デビューアルバムです。
吐き捨てなディストーションヴォーカルに攻撃的で鋭利なギターリフというデスメタルを経由したスラッシュメタルといった感じの激しいサウンドを展開しています。一音目から繰り出される唸りを上げるリフと、小気味いいテンポで疾走しリズムチェンジを繰り返すリズム隊に、スレイヤーを彷彿とさせる不協和音的なギターソロ、凶悪で迫力満点のアグレッシヴミュージックが炸裂します。フレーズの切り返しもスムーズで疾走ナンバーにありがちな無理矢理方向を変えて引っ掛かりを生んでしまうような事もほとんどなく、違和感無くビートの渦に没入する事ができます。時折現れるメロディアスなフレーズがアクセントになっており、どの曲も同じような印象を与えてしまいそうなところに変化をつけたりしています。スレイヤーのカバーはかなり忠実に再現しています。
休むことなく繰り出される音の奔流が産み出すスラッシーなサウンドは、リフが大好きなヘッドバンガーズには、涎で溺死しそうな破壊力を秘めており、とりあえず頭を振っといた方が良さそうです。
同系統アルバム
DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED
MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN
INFECTIOUS HAZARD/UNITED

CHAPTERS FROM A VALE FORLORN/FALCONER

チャプターズ・フロム・ア・ヴァイル・フォーローン/ファルコナー

SOUNDHOLIC TKCS-85036 [☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンド、ミソティンの元メンバーが中心となって結成されたバンドのセカンドアルバムです。 ディストーションヴォイスを導入し、ヴァイキングメタルを標榜していたミソティンとは異なり、このファルコナーでは憂いを帯びた中音域を中心に展開するヴォーカルが唄い上げるオーセンティックなヘヴィメタル・サウンドを作り出しています。
疾走感あふれるパワーメタリックな1はデビューアルバムからの方向性を強く受け継いだものですが、今作では彼等のもうひとつの特徴であるトラディショナルでフォークロアなメロディを前面に押し出した、ドラマティックで哀愁を帯びた楽曲が中心になっています。70年代プログレッシブロック的な浮遊感と微妙な距離感を持ったヴォーカルは扇情的なメロディを紡ぎ出し、情感豊かなギターは雄壮さを保ちつつ北欧独特の幽明な世界を描き出します。独特の空気を持った高揚感あふれる楽曲は荒々しい北欧戦士の勇猛さを感じさせ、ヴァイキングメタルを通過した経歴を思い出させます。
自分達の方向性と目標を完全に把握した迷いの無い楽曲は、前作にも増して説得力と求心力を高めており、新しいジャンルを築く可能性を持ったヘヴィメタルの一つの形を提示しています。
同系統アルバム
THE STORYTELLER/THE STORYTELLER
IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY
JAKTENS TID/FINNTROLL

GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS

ゲイト・スルー・ザ・パスト/ホーリー・ナイツ

SOUNDHOLIC TKCS-85033 [☆☆☆☆]

イタリア出身のバンドのデビューアルバムです。ハイトーンヴォーカルのメロディックメタルをやってます。
セリフ有りのスケール感の大きいシンフォニックなイントロダクションで始まるこのアルバムは、リリカルなフルートと女性コーラスに導かれるドラマティックな疾走ナンバーで幕を開きます。全編にわたって施されているオーケストレーションアレンジのキーボードがファンタジックでヒロイックな歌詞世界を強化しており、クラシック曲そのものをモチーフにしたり、クラシカルアレンジなコーラスなどを使って、壮大な雰囲気を演出していきます。ちょっと線が細いけれど情感豊かなヴォーカルに扇情的なメロディを刻むツインギターとキーボードの絡み合いが産み出すドラマ性は、ある意味メルヒェンチックな側面も備えており、優雅で優しい色彩をも作り出しています。また後半の組曲では高揚感を高めるスリリングなインストパートの応酬がダイナミックに展開されていきます。
アルバムの音自体はまだまだ安手で、ヴォーカルもファルセットの高音はかなり不安定ですが、叙情的なパートと劇的なパートのコントラストによって曲のダイナミズムを生み出す手法には、このスタイルのものとしては定石通りとは言え、かなり見るべきところがあり、今後の飛躍への期待料込みでも充分なクオリティを持っているでしょう。

ところで太っている人はギタリストではありませんでした。
同系統アルバム
THE HALL OF THE OLDEN DREAMS/DARK MOOR
CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL
DAWN OF VICTORY/RHAPSODY

HERO-NATION/METALIUM

ヒーロー・ネイション/メタリウム

MARQUEE MICP-10287 [☆☆☆]

ドイツ出身のメタリアン、メタリウムの3枚目のアルバムです。ギタリストが脱退していたり、ドラマーが交替していますが、やっぱり特に変化はありません。
歴史上とか物語上の英雄(ヒーロー)をテーマにメタル戦士の魂の遍歴を綴った、一応コンセプトアルバムになってますが、皇帝ネロとか怪僧ラスプーチンとか、オーディンって人間かよ!とか突っ込まずにはいられないラインナップはどうかと思いつつ、湿ったメロディで期待感を高めるイントロから、やっぱりちょっとシャウトでヨタヨタしているハイトーンヴォーカルが炸裂です、プライマル・フィアみたいな曲で。全体的にヘヴィでシリアス&ダークな展開が多く、叙情的かつ大仰に盛り上げるものの、前作までのハジけた爽快感やメタル馬鹿っぷりが大幅に減退してます。疾走している7も今までに比べるとちょっと地味。
雰囲気も意気込みも悪くないですけど、とりあえずあんまり皆はこれは望んでないような気がします。いや、本当に悪くはないんだけど。
同系統アルバム
NUCLEAR FIRE/PRIMAL FEAR
METUS MORTIS/BRAINSTORM
THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER

SECOND FLOOR/SHADOWS OF STEEL

セカンド・フロア/シャドウズ・オブ・スティール

SOUNDHOLIC TKCS-85035 [☆☆☆]

イタリア出身の銀の仮面を身に付けたヴォーカリストを擁するバンドのセカンドアルバム、のようです。
クラシカルなイントロダクションなナンバーから始まる、スピード全開のドラマティックでメロディアスなヘヴィメタルと、最近のイタリアンメタルのイメージ通りのサウンドを繰り広げていますが、猫の首を絞めてる最中みたいにニャーニャー言ってるラプソディをかなりパワーダウンさせたヴォーカルによって、かなり楽曲の魅力がスポイルされているなー、というのは否めないところです、って言うか前作から四年くらい経ってますがあんまり変わってないような。躁状態で突っ走るテンションの高い楽曲は、専任キーボードも加入したことで更に劇的さを高めて、魅力的なフレーズを連発します。
曲自体の構成とか山場の持って行き方などは、かなり向上していると思われるのですが、ふらふらしているギターソロとか、あまり素晴らしいとは言えないプロダクションとか、このヴォーカリストを受け入れられるだけの耐性を持ったXaMetaler以外の素人にはオススメできない、ってとこでしょうか。
同系統アルバム
WHEN THE AURORA FALLS.../HIGHLORD
A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE
SONS OF THUNDER/LABYRINTH

M-16/SODOM

M-16/ソドム

VICTOR VICP-61756 [☆☆☆☆]

ジャーマンスラッシュの重鎮、ソドムの10枚目のアルバムです。かなりの割合で“戦争”に拘った作品をリリースしてきた彼等ですが、今作では原点に戻ったかのようにベトナム戦争を中心にしています。
一曲目から攻撃的でヘヴィなスラッシュサウンドを展開しており、戦場が産み出す狂乱と恐怖の世界を描き出します。ヴォーカルも邪悪さたっぷりの吐き捨てっぷりを聴かせており、皮肉めいたネガティヴな衝動を発散し続けます。
世界の暗部にためらうことなく切りこむ様は、現実の残酷さと狂気をえぐり出し、それらの闇が強力なエネルギーを伴って彼等のサウンドに乗り移ったかのような壮絶さをもたらしており、彼等独自の世界を構築しています。
恒例のカバー曲はロカビリーですが、ベトナム戦争という文脈によってもたらされる感触は、ある意味悪意に満ちています。
同系統アルバム
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
SYMPHONY FOR THE DEVIL/WITCHERY
THE ANTICHRIST/DESTRUCTION

BEYOND ABILITIES/WARMEN

ビヨンド・アビリティーズ/ウォーメン

TOY'S FACTORY TFCK-87272 [☆☆☆☆]

フィンランド出身のチルドレン・オヴ・ボドムのキーボーディスト、ヤンネ・ウィルマンのソロ・セカンドアルバムです。
クラシカルでファンタジックなイントロから、ストラトヴァリウスのヴォーカリスト、ティモ・コティペルトが唄う2なわけですが、メロディーから曲の展開まで、すっかりまったくストラトヴァリウスなテイストを持った北欧メロディックメタルナンバーなわけで、このアルバムもそういう路線なのかと思いきや、3ではシナジーのキンバリー・ゴスが唄うオーセンティックなメタルナンバー(シナジーよりはギターがおとなしいけど)でちょっと手を広げつつあります。さらにネオクラシカルなインストゥルメンタルの4はギターのプレイの方が印象的だったりして何ですが、続く5はディストーションの効いたヴォーカルを導入した、ヘヴィでダークなリフからスペーシーなコーラス、ファンキーなインストに展開する新しい側面を見せる曲になってます。そして再びティモ・コティペルトの唄う6になるわけですが、サイレント・フォース風の硬質なメタルナンバーになってまして、ちょっとヴォーカルのパワー不足の感が強いのでD.C.クーパーが唄ったほうが良くなったような。で、キンバリー・ゴスのカバー曲を挟んで、ピアノ、クラシカル、ドラマティックなインスト5連発で幕を閉じます。
とりあえずヘヴィメタルのアルバムとしては品質も保たれていて、完成度も割と高いですが、ちっともオリジナリティとか個性とかが見出せないので、いまだにヤンネ・ウィルマンが凄いのかどうか判断しきれていない今日この頃です。
同系統アルバム
INFINITE/STRATOVARIUS
INFATUATOR/SILENT FORCE
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN





March

ANNIHILATOR | DARK MOOR | EMPIRE | IMPELLITTERI | MEGADETH | MEGADETH[LIVE] | NONEXIST | PRETTY MAIDS | RHAPSODY | SABER TIGER | SUPREME MAJESTY | TESTAMENT |

WAKING THE FURY/ANNIHILATOR

ウェイキング・ザ・フューリー/アナイアレイター

NIPPON CROWN CRCL-4800 [☆☆☆☆]

カナダのベテランヘヴィメタルバンド、アナイアレイターの9枚目のアルバムです。ドラマーに以前加入していたランデイ・ブラック、ギタリストに元ネヴァーモアのクーラン・マーフィーが参加しています。
一聴して気が付くのは今までとは違うギターのサウンドで、より生々しくノイジーでザラザラした質感のものに変わっており、ヴォーカリストのダーティな声質と歩調を合わせているようです。それに伴ってギターリフやリズムの組み立て方がニューメタル系に多少流れていて、モダンな雰囲気が強まっています。そんな中でもジェフ・ウォーターズの華麗なギタープレイは健在で、ギターソロの随所に印象的なフレーズを組みこんできます。突進力のある1、メロディアスでオーセンティックな展開を見せるメタルナンバーの2、激烈なヴォーカルパートと緻密な組立で圧倒する長編インストパートのコントラストが激しい3、また彼等にとっての“ACES HIGH”になるかと思わせる正統派疾走ナンバーの4では高揚感を一気に高めます。さらにAC/DC風のロックな雰囲気を持ちながらアナイアレイター流に消化されつくした5、8、手の込んだ展開を聴かせる9、やっぱり爆走ナンバーなラストの10などバラエティのある曲構成になってます。
前作の個々の曲が独自の色を出していた傾向から一転して、サウンド面、作曲面を通してアルバム全体の雰囲気が統一されているような空気を感じさせます。ヴォーカルを交替してからの方向性を完全に決定したようで、いったいこのバンドは何回仕切り直すんだ!とか聞えてきそうな今日この頃ですが、ダークでアグレッシヴなヘヴィメタルを貫き通し続けてくれる間は、期待せずにはいられないようです。
同系統アルバム
F.U.S.E./SABER TIGER
VIOLENT REVOLUTION/KREATOR
DEMOLITION/JUDAS PRIEST

THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR

ゲイツ・オブ・オブリヴィオン/ダーク・ムーア

VICTOR VICP-61796 [☆☆☆☆☆]

スペイン出身の女性ヴォーカリストを擁するメロディックメタルバンドのサードアルバムです。
一曲目から哀愁たっぷりのマイナーメロディを持ったリフが沸騰するドラマティックなファストナンバーが繰り出されるこのアルバムは、ハロウィン直系の高揚感を高めるキャッチーなメロディとクラシカルな起伏の大きい展開を併せ持った2、クラシカルで繊細なインストゥルメンタルを挟んで、エドガー・アラン・ポーに感化された歌詞の微妙な開放感と絶望感を持った4、泣きのメロディとスリリングな展開が炸裂する5、などのさほど長いとも思えない尺の中に二転三転しつつ劇的に感情を揺さぶるフレーズで畳みかける柔らかいタッチの曲群に、女性らしい細やかさを持つバラード、ヘヴィメタル的な勇ましい感覚を持つ11に、ネオクラシカルなフレーズが満載のモーツァルトをモチーフにした緻密な展開を聴かせる大曲の12が加わって、劇的空間が完成します。
女性らしい優しい雰囲気を少しづつ強く押し出して、華麗で軽やかな空気と哀感たっぷりの美しいメロディを重ね合わせつつ、センチメンタルながらシリアスな世界を描き出す手法は、前作から更に深みを増して聴き手に強い感銘を与えるだけの説得力を備えています。作曲、サウンド、演奏面のいずれにおいても着実な成長を遂げるバンドの存在感を強力に主張する一枚になってます。
同系統アルバム
OVER THE HILLS AND FAR AWAY/NIGHTWISH
REBIRTH/ANGRA
REALITY/ZONATA

HYPNOTICA/EMPIRE

ヒプノティカ/エンパイア

KING RECORD KICP-862 [☆☆☆]

ドイツ出身のギタリスト、ロルフ・マンケスのソロプロジェクトから発展したバンドのファーストアルバムです。ヴォーカリストはバランス・オブ・パワーのランス・キングにベーシストには大物ニール・マーレイ、キーボードにはドン・エイリー、さらにゲストにリング・オブ・ファイアなどで活躍するマーク・ボールズ、現在ハンマーフォールに在籍するアンダース・ヨハンソンらが参加した豪華メンバーによる作品になっています。
基本的にはランス・キングの伸びやかな歌声を中心にメロディアスなハードロックナンバーが展開されており、それを活かしたバラエティに富んだ曲作りがされています。マーク・ボールズ、アンダース・ヨハンソンが加わった3では疾走感のあるドラマティックな曲を聴かせ、4、6ではボン・ジョヴィかミスター・ビッグかと思わせるキャッチーでポップなロックナンバー、5では叙情的に静的なパートから壮大に移行するバラード、再びマーク・ボールズが唄う8は80年代風ハードロックなど様々な色彩を持った曲を揃えています。
メロディを大切にして普遍的な魅力を持った高品質なハードロックアルバムになってますが、強力な個性とか独自の雰囲気などは残念ながら希薄なので、いかにしてヒット曲を生み出すかが今後の活動の鍵になるでしょう。
同系統アルバム
BURN THE SUN/ARK
FAR BEYOND THE WORLD/TEN
SLIPPED INTO TOMORROW/JOHN NORUM

SYSTEM X/IMPELLITTERI

システムX/インペリテリ

VICTOR VICP-61794 [☆☆☆☆]

アメリカのオーセンティックなヘヴィメタルバンド、インペリテリの7枚目のアルバムです。ヴォーカリストにファーストアルバムに参加していたHR/HM界の横山やすしことオールバックの伊達男グラハム・ボネットを迎えて製作されています。
ザクザクしてソリッドな最近のインペリテリの質感のギターリフで始まるアルバムは、タフで骨太なグラハムの味のある声と結びついて、ハードロック系の空気とメタリックな攻撃性を兼ね備えた少し不思議な感じのもので、そこに更にテクニカルでネオクラシカルだったり速弾きだったりするギターソロが加わると、ますます新しいような古いような変わった雰囲気になってきます。とは言え、基本的には伝統的なヘヴィメタルのフォーマットからはほとんど外れていないドラマ性のあるシンプルなマイナーメロディを中心とした楽曲で構成されているので、インペリテリだということを意識してもしなくても、安定感のある奇をてらわないアルバムになっています。
大きく方向性を変えない代償に、マンネリ感をなかなか打ち消す事の出来なかった彼等に古くて新しい空気を持ちこんだグラハムのパフォーマンスが充分に味わえる、正統派ヘヴィメタルの好盤に仕上っており、またすぐにマンネリ化しそうな気配も濃厚ではありますが、あと二、三枚くらいはエキサイトできそうなアルバムを作ってはくれそうです。
同系統アルバム
SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS
DAVI/VOLCANO
EMBRACE THE MYSTERY/ARMAGEDDON

KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!/MEGADETH

キリング・イズ・マイ・ビジネス/メガデス

SONY RECORDS Int'l SICP-93 [EXTRA]

スラッシュメタルの創始者の一角であるメガデスの記念すべきデビューアルバムをデジタルリマスター&ボーナストラック入り、更にバンドが希望していた幻のオリジナルジャケットでの再リリースです。
ミステリアスなピアノのイントロからスタートするピーで頭の先までピーーーにドップリ漬かったピーーーーっぷりが炸裂するピーーーなラヴソングで始まるこのアルバムは、バンドの特異性と強烈な個性、そしてピーーーーなんかピーーーーーな社会に対する皮肉と悪意に満ちた世界観が作り出されており、それをジャズ畑のテクニカルで衝動的なテクニックとピーーーーーーでしか感じ取れないかもしれない、ある意味人をピーた感のあるピーーな作品、な事は今更言うまでもありませんが、それがかなりピーみたいなサウンドだった元アルバムの真価をより分かりやすくアピールするものになってます。
ヘヴィメタルシーンにメガデスが出現した時の衝撃を、聴いていない人には激しく、既に耳にしている人には再確認させる、皆が待ってるのはこれだ!と改めて思い出させてくれます。
そして元曲を完全にピーーーーたカバー曲はピーーーピーーーな作曲者の怒りをかったのか、かなりピーーーーーーーーーーー
同系統アルバム
ALICE IN HELL/ANNIHILATOR
SHOW NO MERCY/SLAYER
KILL'EM ALL/METALLICA

RUDE AWAKENING/MEGADETH

ルード・アウェイクニング/メガデス

VICTOR VICP-61754〜5 [LIVE]

2001年11月にアリゾナでのライブの模様を納めた二枚組のアルバムです。
やっぱり割と最近めの曲が中心になってます。でも「RISK」の曲は残念ながら(バンザイ)入ってません。“CRUSH'EM”くらいは入れても良かったように思いますが、シンガロングな曲は“PEACE SELLS”で沢山だって事でしょうか。まー皆が納得する選曲だと4枚組くらいになりそうですが。とりあえず“SHE-WOLF”のツインリードが炸裂する様でガッツポーズしたり直後のドラムソロでガックリしたり“WAKE UP DEAD”や“DEVIL'S ISLAND”はカッコイイなあと思ったり、ヨレヨレの曲があったり、HANGER 18 の連曲は期待したほどエキサイトしないなーとか、“HOOK IN MOUTH”は最高だったりでDISK 1は終了。
さて、すっかりマッタリな“ALMOST HONEST”“1000 TIMES GOODBYE”で始まるDISK 2は、“MECHANIX”からエッジのある硬質なナンバーが揃い始めて、“PEACE SELLS”で皆一つに!で、“HOLY WARS”で一応ジャケット記載の曲は消化されてるわけで。
そんなこんなで、とりあえず現在のラインナップはバンド的には充実しているようですが、聴く方にしてみると、どーなんだ!?って感じのライブ盤です。
同系統アルバム
TOKYO WARHEARTS - LIVE IN JAPAN 1999/CHILDREN OF BODOM
SCREAM FOR ME BRAZIL/BRUCE DICKINSON
ALIVE IN ATHENS/ICED EARTH

DEUS DECEPTOR/NONEXIST

デュース・ディセプター/ノンイグジスト

TOY'S FACTORY TFCK-87267 [☆☆☆☆]

アーク・エネミーのヨハン・リーヴァ、プログレッシブ・メタルバンドのANDOROMEDAに在籍していたヨハン・リーンホルツ、そしてブラックメタルバンド、ダーク・フュネラルのマッテ・モーディンの3人によるニューバンドのデビューアルバムです。
攻撃的でソリッド、鋭角なギターリフによる硬質なサウンドを軸に、ヨハン・リーヴァの個性的なディストーションヴォイス、そしてテクニカルなインストゥルメンタルというスタイルのヘヴィメタルをやってますが、とにかくヨハン・リーンホルツのギタープレイが全編に渡ってアルバム全体を支配するものになってます。叙情的でメロディアスなプレイから壮絶なデスメタル的なフレージング、さらにプログレッシブな展開を見せるギターソロと、過激な部分からメロウな部分まで容赦の無い多方面に触手を伸ばしたエクストリームなサウンドが広がっています。 独特のサウンドはかなり他との差別化を図れており魅力的な部分も多々ありますが、あまり奇をてらわない10以降のストレートな曲群が印象的ということで、まだその変則的な魅力は100%発揮されてはいないようです。
さらにアルバムを重ねれば、かなりインパクトを与えられる存在になれる可能性を充分に秘めた期待させてくれる一枚になってます。
同系統アルバム
DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED
HATESPHERE/HATESPHERE
FLESH ON YOUR BONES/SINS OF OMISSION

PLANET PANIC/PRETTY MAIDS

プラネット・パニック/プリティ・メイズ

VICTOR VICP-61795 [☆☆☆]

デンマーク出身のベテランバンド、プリティ・メイズの10枚目のアルバムです。
多少異色な感覚を持ったデジタルなエフェクトの掛け、ギターのチューニングを下げたサウンドに、彼等らしいコーラスを乗せた1から始まる今度のアルバムは全体的には、いつものキャッチーなメロディと実験的な要素が少し混ざったヘヴィでダークな印象を与えるものになってます。彼等の典型的なスタイルのスピードナンバーの2、ルーズな雰囲気のヘヴィナンバーの3、ミディアムテンポでジューダス・プリーストみたいなリフと展開の4やバラードの6、レインボーな7、グランジ風の8などバラエティはありますが、彼等の魅力全開には至っていないような。
モダンなサウンドの導入はマンネリ感が強まっていた最近のアルバムの印象を打ち消すほどではないですし、必殺のメロディでノックダウンというほど魅力的でもないですし、サミー・ヘイガーのカバー曲が一番しっくりくるような気がする、悪いところも良いところも見つけにくい妙に中途半端なところに落ちついたアルバムです。
同系統アルバム
PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER
MENERGY/HEAVENS GATE
WELCOME TO THE OTHER SIDE/RAGE

POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY

パワー・オブ・ザ・ドラゴンフレイム/ラプソディー

VICTOR VICP-61740 [☆☆☆☆]

イタリア出身のスーパー劇的メタルバンドの結局4枚目のフルレンスアルバムということになったみたいなアルバムです。で、遂に「エメラルドソード伝説」も幕を閉じる模様です。
コーラスにイタリア語を配した荘厳な合唱を聴かせるイントロダクションから、彼等らしい畳みかけるサビのスリリングなファストナンバーが炸裂し、待望のラプソディー・ワールドが開幕します。続く、更に攻撃的な3はドラゴン召喚で、こちらもイタリア語の一節によって神秘的なムードを高めるファストナンバーで、序盤からエンジン全開な感が強まってます。そしてリリカルでトラディショナルなイントロからマノウォーばりの大仰なコーラスを持ったミディアムテンポの4、ファビオ・リオーネがダーティな歌唱を見せるシンフォニックブラックメタルを彷彿とさせる邪悪さと冷気の漂う攻撃的で兇悪な疾走ナンバーの5を過ぎると、女性コーラスが印象的な十八番のスピードナンバーが再び。フルートの調べに導かれた物悲しい曲で幕間をつないで、緊張感と物語の終末を予感させていくドラマティックな8、9を過ぎ、遂に最後の大曲を迎えます。
このアルバムでの今までのラプソディーの定番的な楽曲には、かなりの閉塞感が感じられ、すでにそういう方向性の曲は頭打ちではないかと思わせたりもしますが、デスメタルばりの兇悪さやイタリア語の導入による荘厳さの強化は新たな局面を切り開くといった停滞ムードと革新ムードが微妙に混ざり合ったサウンドは次の一手にかなり苦しみそうな雰囲気になってます。さすがにこれだけアルバムを重ねると聴き慣れた手法、展開やバッサリ閉じる結末が耳に付く様になりますが、それでも他のバンドを寄せ付けない迫力に満ちたサウンドを作り出す手腕には、とりあえず脱帽。そしてエンディングには感慨深いものが。

でも、全アルバムリスニング大会は辛いかもしれない。
同系統アルバム
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
STORMBRINGER RULER(THE LEGEND OF THE POWER SUPREME)/DOMINE
SECRET OF THE RUNES/THERION

F.U.S.E./SABER TIGER

F.U.S.E./サーベル・タイガー

VAP INC., VPCC-81423 [☆☆☆☆]

北海道出身のバンドの多分10枚目のアルバムです。メンバー交替もレーベル変更もありません。
基本的なサウンドの方向性はそのままで、さらにヘヴィネス感が強調された作品ですが、曲単位での多様性は増しておりアルバム全体での起伏が産み出されています。ノイジーな声で叫び続ける押しの強いヴォーカルは時にメロディアスに唄い上げ、感情豊かな表現をし、ドラマティックに構築された隙の無いギターソロの美しさとメタリックなリフとのコントラストが作り出す世界は硬質ながら熱気に満ちたものになってます。
高圧的で圧倒的な空気を持った前作に比べると、サウンド面ではパワーアップしながら少し引いて余裕のあるパフォーマンスを見せていて、バンドの現在の状況の充実度を感じさせるものになっています。オーセンティックなスタイルのヘヴィメタルを貫く姿勢は確かな存在感を伴ってアルバムに刻み込まれています。

で、聴いている時にはサイコー!と思うのですが、きっとヴォーカルに耐えきれなくて放置してしまうので星を一つ消してみる。
同系統アルバム
SUICIDE BY MY SIDE/SINERGY
HERO-NATION/METALIUM
THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER

TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY

テイルズ・オブ・ア・トラジック・キングダム/スプリーム・マジェスティー

KING RECORD KICP-863 [☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの2001年に発表されたデビューアルバムです。前身はMORTUMと言うデスメタルバンドなようです。
ちょっと鼻にかかった甘い声質の伸びやかなヴォーカルを中心に北欧らしい叙情的なメロディを配したスピード感のあるヘヴィメタルをやってます。大仰なキーボードの響きで始まる湿ったメロディの1はヨーロッパを彷彿とさせたり、叙情的なメロディで疾走する2、さらに3のスピードナンバーに6はNWOBHM風なリフでドラマティックに盛り上げます。キャッチーでポップ、でも湿った空気が微妙に快晴とはいかない5は、まるでプレイング・マンティスのようだったりして。 プロデューサーのフレドリック・ノードストロムの影響があるかどうかは分かりませんが、ところどころに現れるイン・フレイムスにも通じるメロディアスなフレーズも手伝って、親しみやすい楽曲ながら芯の通った硬質な音像を作り出しています。
様々な表情を見せる楽曲は、バンドのポテンシャルの高さを強く感じさせており、今後の活躍がかなり期待できそうです。
同系統アルバム
SILENCE/SONATA ARCTICA
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
A CRY FOR THE NEW WORLD/PRAYING MANTIS

FIRST STRIKE STILL DEADLY/TESTAMENT

ファースト・ストライク・スティル・デッドリー/テスタメント

UNIVERSAL UICE-1021 [EXTRA]

ベイエリア・スラッシュの雄、テスタメントが初期アルバムの楽曲を新旧取り混ぜたメンバーでレコーディングし直した企画アルバムです。ギタリストに色々なバンドを転々としていたアレックス・スコルニック、ドラマーにホワイト・ゾンビなどに参加しているジョン・テンペスタ、ゲストヴォーカルにテスタメント改名以前のTHE LEGACY〜エクソダスのスティーヴ“ゼトロ”サウザが参加しています。
収録曲の方は1,6,7,9,10がファーストアルバム、2,3,4,5,8がセカンドアルバムで11がアルバム未収録になってます。久しぶりに戻ってきたアレックス・スコルニックのギタープレイは当時以上のスリリングなサウンドを聴かせており、彼のギターがバンドの独自性に強く影響していたことを思い出させます。また、収録時に既に病魔に侵されていたとは思えないチャック・ビリーのパワフルな歌声も現在のディストーションヴォイスを内包した強烈なものになってます。唸りを上げるギターリフは更に切れ味を増し、サウンド面ではアンディ・スニープがミックスに関わったことも加わって、タイトでメタリック、初期の楽曲を全く時間を感じさせない仕上りです。スティーヴ“ゼトロ”サウザが唄う10はチャック・ビリーとの激しい落差にクラクラしますが。
バンド初期から、そのドラマティック性と攻撃性で他のバンドとは一線を画していた、テスタメントの特異性と魅力を充分に詰め込んで、ヘヴィメタルのアイデンティティを満天下に知らしめる必殺の一撃です。

…もっと、こんなバンド増えないかなあ。
同系統アルバム
COLLISION COURSE/PARADOX
B.A.C.K./ARTILLERY
EDEN/LYZANXIA





April

THE CROWN | ELEGY | KING DIAMOND | PRIMAL FEAR | SOILWORK | TERROR 2000

CROWNED IN TERROR/THE CROWN

クラウンド・イン・テラー/ザ・クラウン

VICTOR VICP-61827 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。ヴォーカリストに元アット・ザ・ゲイツのトーマス・リンドバーグを迎えて製作されています。
 期待感を煽るスリリングなイントロナンバーから、暴風のように吹き上がるスピード全開のブルータルなリフの応酬にディストーションヴォイスの咆哮で聴き手を叩き伏せにかかる兇悪なタイトルトラックへと進んでいきます。ブラストビートやクランチーなリフを積み重ねながら、耳を惹く印象的な叙情的メロディを持ったフレーズを組みこんで、暴虐一辺倒ではない老獪な手練を見せる起伏のある展開に持っていくさまは、ヘヴィメタルの様式をも取り込んで圧倒的な質感を備えた楽曲へと仕立て上げられていきます。また、ミディアムテンポのナンバーではタメの効いたダイナミックな展開を見せ、メロディックメタルばりのインストパートによってドラマティックな曲にしています。彼等の本質的な部分である突進力のある楽曲はスリリングかつ圧迫感を持って迫り、有無を言わせぬ迫力で押しまくります。
 ブルータルなデスメタルの素材を用いながら、衝動性、攻撃性、疾走感、叙情性、俗悪性、さらにヘヴィメタルの王道的カタルシスを備えた、ヘヴィメタルとしての核心を突いた作品になっています。
 そして、そのロゴはヴェノムだ…。
同系統アルバム
DOMINATION COMMENCE/THE DEFACED
MANIFEST OF FATE/THE FORSAKEN
AND THEN YOU'LL BEG/CRYPTOPSY

PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY

プリンシプルズ・オヴ・ペイン/エレジー

MARQUEE MICP-10295 [☆☆☆☆]

 オランダ出身の今ではすっかり多国籍バンドになってしまったエレジーの7枚目のアルバムです。キーボードが脱退しているようで、その影響からかどうか前作から加入したギタリストのパトリック・ロンダットが大活躍しています。前任ギタリストのヘンク・ヴァン・ダー・ラーズの影響下にあった前作から、今作ではメンバーでの偏らない作曲ということで、新たにバンドの顔となったイアン・パリーを中心にシリアスな雰囲気の硬質なナンバーを積み重ねていきます。
 変拍子を多用するテクニカルな1からダークな空気と圧迫感のあるコシの強いヴォーカルをアピールする最近のエレジー節が炸裂しており、特に粘りのあるギタープレイは印象的です。アルバムは緊迫感のあるミディアムテンポの2、さらにテクニカルなギターインストで幕を開けるアップテンポのメタリックナンバーの3では元ヴォーカリストのエドワード・ホーヴィンガがコーラスで参加しており、分かりやすいメロディを紡ぐギターソロと共に初期の頃を彷彿とさせるストレートな高揚感を演出しています。またギターとヴォーカルの両面から感情の起伏を激しく表現するドラマティックな4、様式美な展開が印象的なオーセンティックなメタルナンバーの5、地の底を這うような重さと暗さを併せ持つタイトルトラックにヘヴィな7とフラッシーなギターソロとのコントラストが強い曲、ピアノの華麗な響きとエモーショナルなヴォーカルが堪能できるパワーバラードの8、キーボード主導のプログレッシヴな感触の9、エドワード・ホーヴィンガがヴォーカルパートを一部受け持つミステリアスでダイナミックな10、物悲しい雰囲気の中、荘厳な空気から生きることに悩める人々に希望に満ちたメッセージを告げる11と、ヘヴィメタリックな楽曲が揃っています。
 全編に渡ってギタープレイを中心に、よりテクニカルな面を強く押し出したアルバムになっており、まるでパトリック・ロンダットのソロプロジェクトかと思うほどのフィーチャー度だったりしますが、全体的には今のバンドの状態の好調さをアピールしたバランスのとれたものになっています。力強いヴォーカルにドラマティックでテクニカルな展開とエレジーの特徴を徹底的に追求した自信に満ちた作品です。
同系統アルバム
SACRED PATHWAYS/ARTENSION
PERFECT BALANCE/BALANCE OF POWER
SADISTIC SYMPHONY/VICIOUS RUMORS

ABIGAIL II:THE REVENGE/KING DIAMOND

アビゲイル II:ザ・リヴェンジ/キング・ダイアモンド

VICTOR VICP-61795 [☆☆☆☆]

デンマーク出身のエキセントリックなメイクでメタル界に影響力を与えるキング・ダイアモンドの10枚目のアルバムです。今作では1987年に発表されたホラーストーリーアルバム「ABIGEIL」の続編ということになっています。
彼等の特徴である冷気を伴った怪奇色の強いサウンドと正統派ヘヴィメタルとしてのアプローチ、キング・ダイアモンドのファルセットからダーティボイスまで様々な表情を見せるヴォーカルが、血脈の産み出す因縁と呪詛に満ちた暗黒面を描き出す様は、ここ最近の作品の中では最も効果的に仕上っており、テーマと意気込みが上手く噛み合ったものです。伝統的なスタイルながら堅実なプレイを聴かせるギターは、かなりフックのあるギターソロを産み出しており、スタイルとしてはかなり手詰まり感が漂う中でも気概を示しています。
基本路線はキング・ダイアモンドが始まった頃から全く変わりはないわけなので、彼等のコンセプトへの没入度と楽曲の充実度が総てなわけですが、とりあえず昔からのファンは割と納得で、未聴の方にも彼等の存在感を強くアピールするアルバムです。
同系統アルバム
IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY
POETS AND MADMEN/SAVATAGE
9/MERCYFUL FATE

BLACK SUN/PRIMAL FEAR

ブラック・サン/プライマル・フィア

VICTOR VICP-61590 [☆☆☆☆☆]

 ドイツの鋼鉄バンド、プライマル・フィアの4枚目のアルバムです。マット・シナーはすっかりこちらの方を主軸に決めたようで、活動もかなり活発になってきてます。今作はバンドのシンボルキャラクターの鋼鉄の鷲が宇宙への旅を行なうストーリーを中心としたアルバムで、メインテーマは戦争やテロへの反抗を謳ったものになっています。
 リリカルなオルゴールと壮大なイントロダクションで始まるアルバムは、メタリックで硬質なギターリフとパワフルなラルフ・シーパースのハイトーンヴォーカルが絶妙のコンビネーションで融合した正統派ヘヴィメタルナンバーへと繋がり、ミステリアスな空気を持ったミディアムテンポのテンションの高い3へと進んでいきます。シナーをパワーアップさせたかのようなメロディ、ハイトーンスクリームとマット・シナーのコーラス、さらに湿ったメロディで扇情的に盛り上げるギターソロが絡み合ってドラマティックに展開していく4、7に、パワフルで泣きのツインリードを聴かせるミディアムテンポの5、10、攻撃的に迫るファストチューンの6では意思に反する戦争に駆り出される兵士の恐怖を唄い、メロウなメロディアスナンバーの8、疾走感の強い9、13、ジューダス・プリースト直系の11などヘヴィメタルを体現した楽曲が目白押しです。
 ハイトーンスクリームは今まで以上のテンションを持ちながら、ツインリードの切れ味も独自の色彩を表現するようになっていて、バンドとしての完成度が更に高まりつつある迷いを微塵も感じさせないヘヴィメタルなアルバムです。
同系統アルバム
HERO-NATION/METALIUM
THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER
DARK ASSAULT/IRON SAVIOR

NATURAL BORN CHAOS/SOILWORK

ナチュラル・ボーン・ケイオス/ソイルワーク

SOUNDHOLIC TKCS-85037 [☆☆☆☆☆]

スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。今作ではプロデューサーにその特異な音楽性で名を馳せるデヴィン・タウンゼンドを迎えて、更なる自分達の音楽性の追求に乗り出しています。
デヴィン・タウンゼンドらしい塊のような感触を持ちながらクリアーな色合いのギターとリズム隊の繰り出す高圧力のサウンドで開幕するこのアルバムは、既にカテゴライズすることが困難な独自の世界を提示してきます。攻撃的、威圧的に襲いかかる轟音パートから透明感あふれる開放的な空間をイメージさせるクリーンパートへと変幻していく音世界は、感情の起伏をも取り込んで混沌とした情景を繰り広げていきます。ディストーションヴォイスからクリーントーンまで情念を迸らせる驚くべき成長を遂げたヴォーカルの鬼気迫るパフォーマンスはニューウェーヴ的な神秘性や叙情感を持ち、それらを強化するコーラスと共に激情のうねりを産み出しており、ヴォーカルを主軸にした楽曲に生命を吹き込んでいます。 さらに魅力的なフレーズを連発するギターソロや曲の印象を変転させるキーボードを含めた堅実なインストゥルメンタルパートの着実なレベルアップは楽曲の完成度を高めており、彼等の世界観への没入度を揺るぎ無いものにします。
多層に積み重ねられた音やキャッチーなコーラスなど、サウンド面でのデヴィン・タウンゼンドの影響はそこかしこに見受けられるものの、元来それらの要素はバンド自身が内包していたものです。それらとバンドのポテンシャルを一杯まで引き出す事に成功したプロデューサーとしての力量を高く評価されるもので、またそれに応えたバンドの音楽への飽くなき追求、その二つの才能が結びついて創り出された衝撃的なアルバムが誕生したようです。

アルバムジャケットの変遷と歩を同じくするバンドのサウンドの進歩はこの先どこへ向うのでしょうか。
同系統アルバム
PHYSICIST/DEVIN TOWNSEND
CLAYMAN/IN FLAMES
REMEDY LANE/PAIN OF SALVATION

FASTER DISASTER/TERROR 2000

ファスター・ディザスター/テラー2000

SOUNDHOLIC TKCS-85028 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のソイルワークのヴォーカリスト、ビョーン“スピード”ストリッドとダーケインのクラス・イーデバリーが中心となったプロジェクトのセカンドアルバムです。ドラマーが替わってますが、どうってことはありません。
アルバムの一音目からとにかく突っ走ります。とにかく走ってます。疾走することだけが目的かのように突っ走ってます。切れ味鋭いクランチーなギターリフに、スラッシュメタル的な緩急の付いたスリリングな展開はその速さをより際立たせており、シンガロング向きのコンパクトなコーラスも加わって狂乱の楽曲を秩序だったものにしており、サウンドの密度以上に聴き易いものになっています。フックを保ちながら破綻しないギターリフは楽曲の訴求力を維持しながらカタルシスを最高潮にまで高めていき、小気味いいドラミングと共にノンストップでアルバムを駈け抜けて行きます。
 グルーヴ重視だとかヘヴィネス偏重なサウンドはもうイヤだ!と感じられるスラッシャーの溜飲を下げるストレートのみの真っ向勝負を仕掛ける、ヘヴィメタルの真髄はリフにあり!と確信させるアルバムです。
同系統アルバム
INWARDS/DEW-SCENTED
DEAD, HOT AND READY/WITCHERY
SILENT NIGHT FEVER/DIMENSION ZERO





May

ANDRE ANDERSEN | AT VANCE | KALMAH | MANOWAR | NORTHER | RAGE | VIRTUOCITY | WIZARDS

BLACK ON BLACK/ANDRE ANDERSEN

ブラック・オン・ブラック/アンドレ・アンダーセン

MARQUEE MICP-10302 [☆☆☆☆]

 デンマーク出身のバンド、ロイヤルハントのキーボーディスト、アンドレ・アンダーセンの二枚目のソロアルバムです。ヴォーカルにはエレジーのイアン・パリーを起用しています。音楽性はロイヤルハントです、おしまい。
 ではなくて。
 バンドのメインソングライターであるアンドレ・アンダーソンが個人的に作ったアルバムとは言え、音楽的に殊更変わったことをしようとか、別の一面を見せる!と意気込んでいるわけではないので、基本的なフォーマットがロイヤルハントと同じ叙情的なメロディをふんだんに盛り込んだメロディアスハードなのは当然で、いったい何が聴き所かと言えば、曲を自分の色に染め上げる実力派ヴォーカリスト、イアン・パリーの圧倒的な歌唱に尽きるわけです。ロイヤルハント色がたっぷりの楽曲を、その表現力で時にはエレジーのような空気を感じさせる新たな側面を生み出して、バンドとは一味違う求心力を発揮します。
 とりあえず、イアン・パリーの実力を再認識できる、イアン・パリーのためのアルバムになってます。でもロイヤルハントに引き抜きは困る。
同系統アルバム
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
THE MISSION/ROYAL HUNT
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS

ONLY HUMAN/AT VANCE

オンリー・ヒューマン/アット・ヴァンス

MARQUEE MICP-10301 [☆☆☆☆☆]

 ドイツ出身のネオクラシカルメタル・バンドの4枚目のアルバムです。
 一曲目から哀愁たっぷりの泣きメロ炸裂なドラマティックナンバーで幕を開けると、湿ったメロディにキャッチーなサビ、さらに華麗に舞うギターソロのタイトルトラックでノックアウト気味です。ミディアムテンポでヴォーカルの唄いっぷりを堪能できる3、スピード感の強いメタリックなナンバーではヴォーカル、ギターともに感情の激しい起伏を表現し最高潮に楽曲を盛り上げます。エモーショナルな5を経てヴィヴァルディの「四季」から“春”を取り上げた後は再び、疾走ナンバーのスリリングな7と続きます。ヘヴィなギターリフで圧迫感の強いダークな8は苦悩と迷走感を産み出します。さらにネオクラシカルなインストゥルメンタルナンバーを挟んで、クセのあるメロディに導かれる物悲しいコーラスを中心としたドラマティックな10、軽快なリズムに乗って走るフォーク風のメロディを持った11、バラードの12とクオリティの高いドラマティックワールドが展開されていきます。
 既にオリジナリティを出す事が困難なこのスタイルにおいて曲の完成度が即アルバムの評価に直結してしまうという状況の中で、高い表現力を持ったヴォーカルと優れた演奏陣による底力を見せるアルバムを創り出したことは高く評価されるべきだと思われます。
 そしてレインボーのカバーは限りなくホンモノに近くて。
同系統アルバム
SANCTUS IGNIS/ADAGIO
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
THE ORACLE/RING OF FIRE

THEY WILL RETURN/KALMAH

ゼイ・ウィル・リターン/カルマー

KING RECORD KICP-866 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。ドラマーとベーシストが替わってます。
 ドロドロしたイントロから、派手なキーボードとツインギターのアンサンブルが展開されるこのアルバムは、ディストーションヴォーカルが咆哮する狂乱のメロディックデスメタルを展開していきます。北欧系の透明感に満ちたメロディとスリリングな疾走感にあふれるインストゥルメンタルパートは、衝撃的にドラマティックな展開を聴かせており、楽曲に異様な説得力を与えています。休むことなく繰り出される印象的なテクニカルなギタープレイと繊細なキーボードの調べが産み出すダイナミズムは、アルバムを通じて緊張感を維持しており、テンションの高い曲が揃えられています。
 クオリティの高い楽曲が織り成す美しい旋律は、強烈な疾走感と共に求心力の強い魅力を放っていますが、疾走ナンバーの展開のバリエーションはあまり豊富では無いような。細かいところはさて置き、気分良く疾走する様を堪能できる良質のアルバムになっています。そしてメガデスのカバーはとりあえずヴォーカルを何とかしてください。
同系統アルバム
WITHIN/EMBRACED
IMMORTAL MISANTHROPE/MISANTHROPE
MEGALOMANIA/ENSLAVEMENT OF BEAUTY

WARRIORS OF THE WORLD/MANOWAR

ウォーリアーズ・オブ・ザ・ワールド/マノウォー

ZAIN RECORDS ZACB-1058 [☆☆☆☆]

 メタルサムライ、ジョーイ・ディマイオ閣下率いるギネス認定大音量のアメリカン・トゥルーメタルバンドの待望の9枚目のアルバムです。メンバーチェンジは今回はありません。逞しさと雄壮さを兼ね備えるマノウォーの刻印が強烈に刻まれたミディアムテンポのエピックナンバーで幕を開けるこのアルバムは、前作からの空白期間を埋め合わせた上に溢れ出しそうなほどのメタル魂に満ちたものになっています。
 シンプルな作りながら強靭な意志と決意を漲らせる1から、ピアノの繊細な調べから始まる、希望と勇気を与えるメロディアスで力強い雄壮な2では高揚感を高め、最近ではマーク・ボールズも唄ったオペラ“ネッスン・ドルマ”ではオペラ的歌唱法とは違う、エリック・アダムスの歌唱力を再確認させられる朗々としたパフォーマンスが聴かれます。神秘的で物悲しいインストゥルメンタルを挟んで、叙情感あふれるメロディを積み重ねるドラマティックなパワーバラードの5、エルビス・プレスリーも唄ったミッキー・ニューベリーの曲でも誇りと信念に満ちた彼らの世界観に沿った劇的な展開を見せ、マイルドで唄を聴かせる説得力の強い前半が終わります。そして後半は、スケール感の大きいインストゥルメンタルを経て、メタリックなマノウォー節炸裂、観客合唱必至のミディアムテンポのタイトルトラックへと続きます。フラッシーなギタープレイが印象的な9、ヘイル・マノウォー!な突進力全開の強力な鋼鉄ナンバーの10、攻撃的で迫力満点の11と前半とはムードを一変した曲が並びます。
 待たされた甲斐のあった完成度の高い楽曲が揃えられているこのアルバムは、演奏の安定度はもちろんのこと、実力派として名高いエリック・アダムスのヴォーカルが更に高いレベルに達しているという、まるで新人アーティストのような貪欲な向上心の発露を見出せる衝撃を与えます。孤高の存在として独自の音楽性を止むことなく追求し続ける彼等の信念と自信を伺わせる、円熟味と気概が最高潮に達したアルバムです。
同系統アルバム
マノウォー全部

DREAMS OF ENDLESS WAR/NORTHER

ドリームズ・オブ・エンドレス・ウォー/ノーサー

MARQUEE MICP-10300 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。前身はREQUIEMというバンドだったようです。同郷のチルドレン・オヴ・ボドムとは親しい関係のようで、音楽性もソレ寄りです。
 キーボードと叙情風味たっぷりのギターフレーズが高速で突っ走る中、ヒステリックなディストーションヴォイスが叫びまくるという、チルドレン・オヴ・ボドムが開拓してしまった様式美メロディックデスメタルというスタイルをやってます。昔のビデオゲームみたいな音のキーボードと特別なことはしないながらもフックのあるギターリフを次々と繰り出して行く様は、ストレートに高揚感と爽快感をもたらしており、北欧ならではの哀愁帯びたメロディが重なって分かりやすい展開のあまり小細工をしない楽曲が揃えられています。暗さとか邪悪さはあまり無く、オーセンティックな形のメロディックメタルという印象の強いサウンドです。
 ものすごくテクニカルというわけでもなく、二転三転して聴き手を圧倒するというわけでもなく、随分シンプルなスタイルになっていますが、扇情性の高いメロディの応酬と取っ付きやすい疾走感が産み出すドラマ性が魅力的なアルバムに仕上げています。
 ところでヨーロッパとスキッド・ロウのカバーはネタですか。ネタなんですか。
同系統アルバム
THEY WILL RETURN/KALMAH
JAKTENS TID/FINNTROLL
TORTURA INSOMNIAE/EBONY TEARS

UNITY/RAGE

ユニティ/レイジ

NIPPON CROWN CRCL-4805 [☆☆☆☆☆]

 ジャーマンメタルの雄、レイジの数えた限りでは13枚目のアルバムです。
 帝国軍の侵攻みたいな不安感と緊張感を煽るイントロから、弾むリズムのヘヴィリフに哀愁たっぷりのキャッチーなコーラスで現在の彼等らしいナンバーで始まるこのアルバムは、三人編成だった「SECRETS IN A WEIRD WORLD」あたりの奇妙なフックとメタリックな要素が結びついた独特のサウンドに少し近くなっています。テーマは真っ暗なのに妙に明るいピーヴィー節が炸裂の攻撃的な2、ヘヴィでドライヴ感のあるリフにライヴ映えしそうなサビの3にアップテンポで厚めのコーラスパートが印象的な4、派手なクワイヤのサビが中近東風の変な曲、でもその辺がレイジらしい5、叙情的なメロディ全開のAパートからメタリックな曲調に転じてインプロヴァイゼーション気味のギターソロに進む6、そして小品のインストゥルメンタルを挟んで、ダークでルーズな空気に支配されるミディアムテンポの8、攻撃的に突き進むダークな9、“FIRESTORM”の別バージョンみたいなリフと展開にネオクラシカルなギターソロが炸裂する10、そしてドリーム・シアターに挑む!?という長編のテクニカルなインストゥルメンタルナンバーと、メタリックさとメロウなところが絡み合ったフックのある楽曲が揃えられています。
 この編成になっての二枚目のアルバムということで、メンバー間の意思の疎通やコンビネーションなども良好になっているようで、統一された意識を感じさせる曲からはバンド内の雰囲気がクリエイティヴになっていると思わせます。熱い衝動が減りっぱなしだとか、疾走感は完全に復活していないとか、ギタリストのヴィクター・スモールスキのカラーとピーヴィーのカラーが完全にレイジとしての融合を果たした、とはまだ言えませんが、新しい感覚を取り込んで更に進み続けているバンドの姿勢が如実に伝わるパワーのある一枚になってます。
同系統アルバム
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
SUICIDE BY MY SIDE/SINERGY
F.U.S.E./SABER TIGER

SECRET VISIONS/VIRTUOCITY

シークレット・ヴィジョンズ/ヴァーチュオシティ

KING RECORD KICP-865 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドの2001年発表のファーストアルバムです。中心人物のギタリストであるヤーロン・セバスチャン・レイヴンは以前はケンジナーでプレイしていて、その時は別名を名乗ったりしてました。と言うかヤノ・キスケネンです(果たしてケンジナーは存在しているのか?)。そしてヴォーカリストにはCONQUESTで唄っていたピーター・ジェイムズ・グッドマンにゲストヴォーカリストに同じ北欧のベテランバンド、タロットのマルコ・ヒエタラ、キーボードは同じくタロットのヤンネ・トルサ、さらにドラマーにチルドレン・オヴ・ボドムのヤスカ・ラーティカイネンと、フィンランド出身アーティストの一部愛好家には豪華なメンバーになってます。
 ジャケットはすっかりアイアンメイデン系のコテコテした代物ですが、のっけからドラマティックで派手さ炸裂のイントロから始まるこのアルバムは、パワフルで粘りのある中音域の中心にハイトーンシャウトもたまに出すヴォーカルとキラキラしたキーボード、ネオクラシカルなギタープレイで押しまくる北欧美旋律満載の劇的様式美メタルをやってます。心地よい疾走感のある1から、アタック感の強いミディアムテンポの2、8、エキゾチックなギターソロを聴かせるスリリングな展開の3、荘厳な空気を保ちながらゆったりと流れる4、細かいフレージングにキーボードとギターの激しいバトルで攻める疾走ナンバーの5、叙情的なメロディをじっくり聴かせる6、7、スリリングなインストゥルメンタルとクラシカルな展開が印象的な9、ネオクラシカル展開をこれでもか!と聴かせる渾身のインストゥルメンタルの10など、アーティストの美意識を体現する華麗な楽曲が勢ぞろいです。
 高品質なネオクラシカルメタルを経験値の高いアーティスト達の良好なパフォーマンスで聴かせる、ドラマティックメタル万歳な人達の魂を揺さぶる強力な仕上りの完成度の高いアルバムになっていて、フィンランドにおけるネオクラシカルの血は絶えずって感じです。
同系統アルバム
SACRED PATHWAYS/ARTENSION
DRAGONCHASER/AT VANCE
THE MISSION/ROYAL HUNT

THE KINGDOM/WIZARDS

ザ・キングダム/ウィザーズ

SOUNDHOLIC TKCS-8539 [☆☆☆☆]

 既にアルバムを持ってたことすら忘れていたブラジル出身のバンドの久しぶり、4枚目のアルバムです。本国では2001年の発表です。バンドはサードアルバム発表の後、活動休止だったようですがその時点でのオリジナルメンバーが全員揃っています。
 暗いギターリフでミステリアスかつドラマティックなミディアムテンポの曲で幕を開けるこのアルバムは、低音から高音まで唄いあげる伸びのあるヴォーカルに導かれるファンタジックな世界を作り出しています。アップテンポのキャッチーなメロディで明朗で快活なイメージを作り出す2、厚いコーラスが印象に残る劇的な3、哀愁あるメロディで盛り上げる4、7、ピアノの調べが美しいキーボード多用のスケール感の大きい5、9、躁状態で疾走する6、11、キーボードとギターの絡みが心地良い軽快なテンポの8、ポップなメロディのファストナンバーの10と軽やかなメロディをふんだんに盛り込んだ楽曲が揃っています。
 確かな実力を感じさせるギタープレイと安定感を増したヴォーカルが繰り広げる華やかなドラマは、気分を高揚させるもので好感度が高そうです。アングラに続け、と期待を背負って登場したデビュー当時を裏切らないクオリティの高いアルバムを作ってきた彼らには、約4年のブランクは彼らの希望と勇気に満ちた楽曲を作りつづけるサウンドを高めるのに充分な雌伏の時だったようです。
同系統アルバム
CRYSTAL EMPIRE/FREEDOM CALL
TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY
SILENCE/SONATA ARCTICA





June

ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE| ARMAGEDDON| COSMOSQUAD| DREAMTALE| FIREWIND| HALFORD| IRON SAVIOR| MORIFADE| NIGHTWISH| REQUIEM| SENTENCED| SHAMAN| THUNDERSTONE| A TRIBUTE TO THE BEAST|

SPACE METAL/ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE

スペース・メタル/アルイエン・アンソニー・ルカッセンズ・スターワン

MARQUEE MICP-90007 [☆☆☆☆]

 オランダ出身のアルイエン・アンソニー・ルカッセンの新プロジェクトのファーストアルバムです。ヴォーカルにはシンフォニー・エックスのラッセル・アレン、元スレッショルドのディミアン・ウィルソン、アフター・フォーエヴァーのフローラ・ヤンセン、元エッジ・オヴ・サニティのダン・スウォノ、WICKED SENSATIONのロバート・スーターブック、ホークウィンドのデイヴ・ブロック。ギターにはシャドウ・ギャラリーのゲイリー・ワーカンプ、ドラムにはGOREFESTのエド・ワービー、キーボードソロのゲストにはラナ・レーンエリク・ノーランダーストラトヴァリウスのイェンス・ヨハンソンといった豪華な顔ぶれになってます。
 SF映画をモチーフにしたスペーシーなロックを作り出しているアルバムは、イントロダクションからハードなサウンドが特徴の2で一気にテンションを高めます。続く「アウトランド」をテーマにした3ではへヴィなサウンドがサスペンスフルな空気を生み出します。神秘的な女性コーラスで壮大なドラマを描き出す「スタートレック4故郷への長い道」がテーマの4、「スターウォーズ」がテーマだと思われる5は二部構成でドラマティックな展開を見せます。「スターゲイト」がテーマの6は中近東風メロディで重厚に展開します。ダイナミックなドラミングでドラマティックに進む「デューン 砂の惑星」がテーマの7はへヴィな空気に包まれています。 グルーヴィな雰囲気の「エイリアン」がテーマの8、オーセンティックなハードロック風のイギリスのTVシリーズがテーマの「Blake's 7」って何だ?のミディアムテンポの9、 ゆったりと流れる宇宙的な時間を表現する「2001年宇宙の旅」がテーマの10が揃ったディスク1。
 そしてディスク2ではスリリングなプログレッシヴロックが炸裂するホークウィンドのカバーメドレー(元曲は知らないけれど)を筆頭に、「ダークスター」がテーマらしいディープ・パープル風のハモンドオルガンが目立つハードロックナンバーの2、「第五惑星」がテーマの3はルーズな雰囲気でジリジリ進んでいきます。デヴィッド・ボウイのカバーの4、DISK1-10とDISK2-2の別バージョンが収録されています。
 サウンド的にはスペースメタルの名前通りのクールな側面が強調されたものになっており、ファンタジックな要素が強かったこれまでのプロジェクトよりも多少距離感のある客観的な視点に立っているようです。いつも通りの安定した楽曲が楽しめるプログレッシヴハードの作品になっています。
同系統アルバム
LEGACY/SHADOW GALLERY
AYREON FLIGHT OF THE MIGRATOR/ARJEN ANTHONY LUCASSEN
INTO THE SUNSET/ERIK NORLANDER

THREE/ARMAGEDDON

スリー/アルマゲドン

TOY'S FACTORY TFCK-87286 [☆☆☆☆]

 アーク・エネミーで活躍中のスウェーデン出身のギタリスト、クリストファー・アモットの三枚目のソロアルバムです。今回は彼自身がヴォーカルを担当した三人編成のユニットになっています。
 ギターの荒々しいフレーズのイントロダクションで始まるこのアルバムは、アーク・エネミーを彷彿とさせる攻撃的なギターリフに突進力のある展開の大きな2で、そのクリーントーンの哀愁帯びた角の無いヴォーカルを披露します。そして3では70年代へヴィロックの雰囲気を持ったグルーヴ感の強いビートに湿ったメロディを乗せてきます。80年代LAメタル風の4、情感豊かに唄いあげるバラードの5、ドライブ感の強い伝統的な正統派へヴィメタルナンバーを巧妙にやってのける6、泣きのメロディが炸裂するミディアムテンポの7、アップテンポのキャッチーな8、アコースティックなインストゥルメンタルの9を挟んでムーディな雰囲気にテクニカルなギターソロの10で幕を閉じます。
 メロディの組み立て方や浮遊感のあるヴォーカルの唄いまわしは初期ライオットを思わせるもので、滑らかでフラッシーなギターソロを伴ったバラエティに富む楽曲群は少しライオットの歴史を辿っているかのような感触を伝えたりします。音楽的なバックグラウンドを包み隠さず、敬意を込めて作り出された良質のメロディックメタルになっています。さらにヴォーカルの歌唱力が向上すれば強力な存在になりそうな予感を秘めたアルバムです。
同系統アルバム
SONS OF SOCIETY/RIOT
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY

SQUADROPHENIA/COSMOSQUAD

スクアッドロフェニア/コズモスクアッド

ZAIN RECORDS ZACB-1059 [☆☆]

 アメリカ出身の三人組インストゥルメンタルバンドのセカンドアルバムです。
 アダルトな雰囲気のゆったりとしたフュージョンサウンドが展開されていきます。若者のように血沸き肉踊るような展開は技巧派集団ではありますけれど、ほとんど無くて癒し系と言うか和み系の淡々とした楽曲が並べられています。気だるいムードのバー辺りで流れると心地よく酔えそうな空気です。
 テクニカルなインストゥルメンタルながら、とても落ち着いたサウンドに、自分の好みが奈辺にあるかをとてもよく理解させられる今日この頃です。
同系統アルバム
BURN THE SUN/ARK
VIRGO/VIRGO
CULT/APOCALYPTICA

BEYOND REALITY/DREAMTALE

ビヨンド・リアリティー/ドリームテイル

MARQUEE MICP-10306 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのフルレンス・デビューアルバムです。 ストラトヴァリウスガンマ・レイを足して割ったようなサウンドのメロディックメタルをやっていて、ヴォーカルがカイ・ハンセンを微妙に上手くしたようなタイプです。
 ピアノの繊細な調べから哀愁のギターサウンドへとドラマティックに繋がるイントロダクションから、そのまま泣きのギターフレーズを保ったスピード感のある華麗な2へと進んでいきます。スリリングなリフで緊張感を保ちながら開放的なコーラスを聴かせる劇的な3、アップテンポの4では女性ヴォーカルとの競演、 長編の5では現在ナイトウィッシュにいるマルコ・ヒエタラがゲストで唄ってますが、思わず加入して欲しい感じです。ミディアムテンポの6は哀愁帯びたメロディ全開で、ガンマ・レイ風のキャッチーさ炸裂のアップテンポの7では再びマルコ・ヒエタラが唄ってます。ドラマティックで叙情メロディ満載の8は女性ヴォーカルが加わったコーラスでまとめます。扇情的なメロディで盛り上げる疾走感の強い9、哀愁のメロディで飛翔感のある10、バラードの11、女性ヴォーカルがリードヴォーカルをとる大作の12は壮大な世界観を提示するものです。
 まだオリジナリティが完全には確立されていないサウンドではありますが、デビューアルバムということを考えると十分に許容範囲の高品質のものになってます。スリリングなドラマを作り出す才能は確かなものなので、とりあえずカイ・ハンセン症候群になっているギタリストがギターに専念するか、すごく唄が上手くならないとマイナー感が抜けないような気がします。えっ、もう替わったって?
同系統アルバム
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
REALITY/ZONATA
POWERPLANT/GAMMA RAY

BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND

ビトゥイーン・ヘヴン・アンド・ヘル/ファイアーウィンド

TOSHIBA EMI TOCP-66039 [☆☆☆☆☆]

 ギリシャ出身のギタリスト、ガス・Gが中心となって結成されたバンドのデビューアルバムです。ヴォーカルとドラマーは元ケンジナー組です。ミックスはフレドリック・ノルドストロームが担当しています。
 ザクザクと切り込むようなギターリフのイントロから、ダーティな声質のパワフルなヴォーカルが唄いあげるアップテンポの強力なメタルナンバーで始まるこのアルバムは、キャッチーなメロディにネオクラシカル風味のテクニカルなギター、そしてへヴィメタルらしい劇的な展開を聴かせる曲満載になってます。叩き付けるようなドラミングに導かれて起伏のある展開を見せる叙情的なメロディの2、ヴァイキング風のメロディで勇ましいミディアムテンポの3、泣きのギター炸裂で突っ走る攻撃的なスピードナンバーの4、叙情的なインストゥルメンタルナンバーを挟んで、ヴォーカルが情感豊かに唄いあげるミディアムテンポの6、鋼鉄仕様のスコーピオンズのカバーの7を経て再び疾走感の強い攻撃的な8では壮絶なギタープレイを聴かせ、硬質ながらドラマティックなミディアムテンポの9、リリカルなイントロから劇的な展開に移る叙情メロディたっぷりのインストゥルメンタルの10からへヴィメタリックなリフとマイナーメロディが結びついた11、そして感動的なパワーバラードと続きます。
 フレドリック・ノードストロムが関わったおかげか、叙情メロディックデスメタルに近い硬質なサウンドと正統派ヴォーカルの合体という、現在のへヴィメタルの状況としては理想的な形を見出すことが出来ています。魅力的なプレイを聴かせるギターに安定した演奏陣と強力なパフォーマンスのヴォーカル、ウリ・ジョン・ロートのアルバムから名前を取ったバンド名にふさわしい精神性とスタイルを兼ね備えた正統派へヴィメタルバンドの誕生です。
同系統アルバム
INFATUATOR/SILENT FORCE
F.U.S.E./SABER TIGER
ONLY HUMAN/AT VANCE

CRUCIBLE/HALFORD

クルーシブル/ハルフォード

VICTOR VICP-61852 [☆☆☆☆]

 元ジューダス・プリースト、ロブ・ハルフォードのバンドのセカンドアルバムです。
 邪悪な空気のイントロダクションからミディアムテンポの無機質なヘヴィナンバーで始まるこのアルバムは、リハビリ気味で手探り状態だった前作とは異なった様々な可能性を追求したものになっています。エモーショナルなギターで小気味良いテンポを刻む、鮮やかなコーラスを持った伝統的なメタルナンバーの3では攻撃的なヴォーカルを聴かせ、続くアグレッシヴな4ではテンションの高いハイトーンシャウトで押しまくり、中間部ではツインギターの構成美を見せ付けます。
 ソリッドなリフで高圧力の5、ミディアムテンポでミステリアスな6ではテクニカルなインストゥルメンタルパートが新たな要素として加えられており、他のメンバーのインプットを感じさせます。ダークでグルーヴィーな7、マシーナリーなリズムで進む8、へヴィで這い進むようなリフから一転して疾走感あるパートへ展開するドラマティックな9、切り刻むようなリフで圧倒する攻撃的な10、ミステリアスなフレーズで繋ぐ12、エモーショナルなヴォーカルを聴かせる物悲しく劇的な13と今までのスタイルの枠に捕われないサウンドを提示しています。
 現状に甘んじることの無い求道的な姿勢が如実に表し、現在を生きるヘヴィメタルアーティストとしての信念をサウンドで表現してのけるロブ・ハルフォードが詰め込まれた力強いアルバムに仕上がっています。ジューダス・プリーストと道は違えたとは言え、同じように新しいヘヴィメタルを生み出そうとする意識を強く感じさせるものになっています。
同系統アルバム
THE BEST OF BRUCE DICKINSON/BRUCE DICKINSON
BLACK SUN/PRIMAL FEAR
WAKING THE FURY/ANNIHILATOR

CONDITION RED/IRON SAVIOR

コンディション・レッド/アイアン・セイヴィアー

VICTOR VICP-61897 [☆☆☆☆]

 ガンマ・レイのカイ・ハンセンとタッグで活動を続けてきたピート・シールク率いるジャーマンメタルバンドの四枚目のアルバムです。このアルバムからカイ・ハンセンは抜けてしまいましたが、その確信的なサウンドは微塵の揺らぎもありません。
 前振りもなく、強力なギターリフとツーバスの激しいドラミングの疾走ナンバーで鋼鉄世界はいきなり引き込んでいくこのアルバムは、有無を言わせぬ勢いを保ったままで最後の一曲まで突っ走る、血沸き肉踊る爽快なものになってます。気持ちを高揚させるキャッチーなメロディとアドレナリン沸騰の1からギターソロが印象的な硬派でソリッドな2、切れ味鋭いリフで結構キツイ音程を唄うテンションの高いファストナンバーの3、少し引いてじっくりメロディを聴かせるタイトルトラック、ミディアムテンポでタフな5、底の方からじりじり持ち上げていくへヴィメタリックな6、パワーコードで押しの強い7、わき目も振らずに疾走する彼等の真骨頂の8、ゆったりとしたペースで流れる9、アップテンポでキャッチーなメロディの10、11と言ったメタルナンバーがズラリと並んでいます。
 メンバーもほぼ固定されて、まったく迷いの無いジャーマンパワーメタルサウンドを生み出した彼らはピート・シールク以下バンドのインプットも強まって、より強固な楽曲を作り出しています。メタリックなリフにタイトなリズム、そしてキャッチーなコーラスといった基本的な要素を磨き上げて魅力的な曲を作り上げる才能はまだまだ尽きそうにありません。

ジューダス・プリーストのカバーはヤケ気味のドラムが(笑)。
同系統アルバム
NO WORLD ORDER/GAMMA RAY
SUICIDE BY MY SIDE/SINERGY
BLACK SUN/PRIMAL FEAR

IMAGINARIUM/MORIFADE

イマジナリウム/モリフェイド

KING RECORD KICP-871 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。プロデューサーはキング・ダイアモンドのギタリスト、アンディ・ラ・ロックが務めています。キーボードは元タッド・モローズです。
 クセの無いクリーンなハイトーンヴォーカル&キャッチーなコーラスに北欧風味の透明感あるキーボード主導の華麗なメロディを次々と展開していくメロディックメタルなアルバムは、暗い夜を切り裂く希望と光に満ちた夜明けの一瞬のようなテンションの高いファストナンバーと、憂いに満ちたメロディ全開の癒し系救済ミディアムナンバー、さらに高揚感を高めるファンタジックな曲と色々揃っていますが、コンパクトにまとめられているものが多く、あまり気構えずに聴ける取っ付きの良いものになってます。スリリングで壮大な展開の11もドラマティックに盛り上がっていきます。
 充分に及第点と言える魅力あるサウンドの高品質メロディックメタルを作りだしており高いポテンシャルを持っていることは確かですが、どうしてもこのバンドでなければならない!という強い求心力や抜きん出た特徴はまだ生み出されていません。既にこのタイプのバンドが飽和状態になっている状況はバンドには障害になりそうですが、良いアルバムを作って息の長い活動をしてもらいたいものです。
同系統アルバム
THE KINGDOM/WIZARDS
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
SIGN OF THE WINNER/HEAVENLY

CENTURY CHILD/NIGHTWISH

センチュリー・チャイルド/ナイトウィッシュ

TOY'S FACTORY TFCK-87287 [☆☆☆☆☆]

 フィンランド出身の女性ヴォーカルを擁するバンドの4枚目のアルバムです。ベーシストにタロットシナジーのマルコ・ヒエタラが加入して、その喉も披露しています。
 清廉なコーラスの響きからダイナミックなドラムと神秘的なナレーションで始まるこのアルバムは、彼らの特徴であるオーケストレーションを大胆に取り入れたダイナミズムが更に強化されたものになっています。オペラティックなヴォーカルと華麗なキーボードとは対照的な、メタリックなギターリフ、タイトなリズム隊の“黒い”質感を持ったバックの演奏陣が生み出すコントラストが新しい空気を作り出すミディアムテンポのへヴィな1から、間髪いれずに繋がるドラマティックで躍動的な2と今までとは切り口の異なる魅力を生み出す楽曲に続き、マルコ・ヒエタラの芯の通った哀愁たっぷりのヴォーカルをフィーチュアした叙情的なメロディと煌めくキーボードが乱舞する華麗かつ劇的な3、ピアノの繊細な響きに導かれて壮麗に展開する4、ノイジーなギターリフで組み立てるミディアムテンポのへヴィナンバーの5ではオカルティックでミステリアスな空気を生み出しており、後半パートの邪悪さはこれまでで最高のものとなっています。
 それから一転して柔らかい歌声をしっとりと聴かせるバラードの6を経て、ゆったりとした空気が流れる7、ベースリフからキーボードに繋いで起伏ある展開を見せながら“黒い”サウンドとキーボードが融合するドラマティックな8では再びマルコ・ヒエタラの力強いヴォーカルが聴かれます。ミュージカル“オペラ座の怪人”からの楽曲を二人で熱唱した後は、組曲仕立ての劇的な10で確かな構成力を見せ付けます。ボーナストラックはギターとキーボードの派手なフレージングが耳を惹く劇的ナンバーです。
 微妙に手詰まり感も出てきていた前作を分析して、新たな要素を加えて新鮮味を取り戻している印象を強く与えるこのアルバムは、様々な手法によるダイナミズムの強化と表現力の向上というバンドの自然な前進を感じさせます。奥行と更に説得力を増したサウンドと重層的な展開による彼等の幻想世界の旅路はまだまだ続きそうです。
同系統アルバム
ARCANA/EDENBRIDGE
THE GATES OF OBLIVION/DARK MOOR
KARMA/KAMELOT

THE ARRIVAL/REQUIEM

ジ・アライヴァル/レクイエム

SOUNDHOLIC TKCS-85040 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。
 壮大でドラマティックなイントロダクションからキーボードとギターのユニゾンリフが炸裂するスピードナンバーの2へと繋がっていきます。この曲ではヴォーカルはデスメタルもかくやと思わせるダーティな歌唱からオペラティックなハイトーンへと展開する表現力の広さを見せており、インストゥルメンタルの起伏の激しい展開も伴って劇的な曲になっています。続く3ではキーボードの繊細な調べからのハイトーンシャウト、そして透明感のある華麗な展開を見せています。ミディアムテンポの4は哀愁あるヴォーカルの歌声とクラシカルなキーボードとテクニカルなギターソロを聴かせ、叙情感あふれるメロディで疾走する扇情力満点の5、ゆったりとしたリズムで流れる長いインストゥルメンタルパートからミステリアスに展開する6、テクニカルなフレーズからドラマティックに盛り上げていく7、ミステリアスな雰囲気のネオクラシカルな8、リリカルなスローの展開から終盤に山場を作っていく9、そしてボーナストラックの10はキャッチーなメロディの疾走ナンバーです。
 新人離れした曲の構成力に演奏力、幅広く声質を使い分けるヴォーカルのもたらすスリリングかつドラマティックなサウンドは今後に大きな期待を持たせるものになっています。まだまだ力のあるアーティストが出てくる、フィンランドの底力を感じさせる一枚になっています。
同系統アルバム
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
SECOND FLOOR/SHADOWS OF STEEL
A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE

THE COLD WHITE LIGHT/SENTENCED

ザ・コールド・ホワイト・ライト/センテンスト

VICTOR VICP-61898 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドの七枚目のアルバムです。元メロディックデスメタルという冠もすっかり必要なくなった哀愁メロディックメタルの実力者になった彼らの新作は、情念あふれるメランコリックなムードはそのままに、躍動感の強い曲を増やして激情の側面を増やしてきています。
 ギターの奏でるフィンランド民謡と海洋生物系の声を合わせたインストゥルメンタルから始まり、既に彼等の象徴的な楽曲とも言える緩やかな痛みを伴うリリカルなメロディと慟哭のヴォーカルが結びつくミディアムテンポの2、続く3でも繰り広げられる哀愁の劇的空間では、ヴォーカリストの表現力、歌唱力が更に向上していることを感じさせるパフォーマンスを聴かせます。ダイナミックなリズムにドライブ感の強いギターリフの久しぶりのエネルギッシュな曲の4でも、そのメロディは変わることなく魅力を発揮しており泣きのギターソロの登場でドラマティックに集約されていきます。ドラスティックに曲調を変化させて、絶望的な悲哀に満ちた空間を演出する5、再び躍動感ある6では世界に対する憤りを噴出させるような叫びを聴かせるヴォーカルが印象的です。少し気だるいムードながらヴォーカルは熱い7、暗闇の中で希望の光にすがろうとする苦悩を描き出す美しいメロディの8、スローテンポで絶望的な状況を描き出す9、厭世観の漂う刺々しいアップテンポの10、不毛の荒野を一人彷徨うような空気を生み出す11、そしてオープニングのSEが再びでアルバムは幕を閉じます。
 アルバムを重ねるごとにそのメロディと情感を高めていく演奏陣と、少しずつ経験を重ねて力を増していくヴォーカルの相乗効果によって北欧の黄昏の世界から生み出される扇情性の高いサウンドは、更に完成度を高めています。痛みと哀しみに満ちる壮絶な楽曲がもたらす嘆きの森の探索は心が健康の時がお勧めです。
同系統アルバム
EPILOGUE/TO/DIE/FOR
IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY
GIVE ME LIGHT/DARKSEED

RITUAL/SHAMAN

リチュアル/シャーマン

VICTOR VICP-61893 [☆☆☆☆]

 元アングラのアンドレ・マトス、ルイス・マリウッティ、リカルド・コンフェッソーリが結成したニューバンドのデビューアルバムです。ギタリストはルイス・マリウッティの弟であるヒューゴ・マリウッティが務めています。
 大自然の大いなる息吹を感じさせる壮大なイントロダクションから、一転して攻撃的なパワーメタルサウンドが展開されていく2へと続くアルバムは、アンドレ・マトスのこだわりを強く感じさせるサウンドになっています。予想を上回るほどのメタリックなサウンドは独特の唄い回しも健在なヴォーカルメロディと相まってドラマティックな世界を作り出していきます。アングラの特徴であったワールドミュージックの要素も継承されており、特に4では中南米風の雰囲気を色濃くアピールしています。ピアノのリリカルな調べで始まるハードアタック感の強い5でも中間部では伝統音楽風の音色を加えて一味違う劇的な曲に仕上げています。元ドリーム・シアターで現在プラネット・Xのデレク・シェリニアンが参加する6ではミステリアスな曲調に凝った展開の複雑な楽曲を聴かせ、女性コーラスの美しいイントロからのリリカルなヴォーカルから一転しての壮大な展開を聴かせる7は鮮烈な印象を植え付けます。明るい曲調でキャッチーな8は陰りのあるテクニカルなインストゥルメンタルとのコントラストで開放的です。ミディアムテンポでエモーショナルなヴォーカルを軸に進む9は二転三転しながら劇的に進行していきます。
 繊細に積み重ねられるオーケストレーションのデコレーションは華麗なサウンドに奥行きと厚みを加えており、神秘的な世界に多彩な彩りをもたらしています。歌唱法を変えたヴォーカルは多少ざらついた感がありますが表現力を増して説得力のある唄声を聴かせており、アルバム全体を覆い尽くす情感豊かなギタープレイとの調和によって生み出されるサウンドは力強さを増しており、 ワールドミュージックとへヴィメタルの融合という理想を追求する彼等の姿勢はバンドの処をかえても一切妥協することなく貫かれています。
 最後の曲は成長著しいエドガイのトビアス・サメットとのツインヴォーカルを聴かせるファストナンバーですが、とりあえず若いっていいなあと思わせる爽快な仕上がりでした。
同系統アルバム
HOLY LAND/ANGRA
A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN
V/SYMPHONY X

THUNDERSTONE/THUNDERSTONE

サンダーストーン/サンダーストーン

MARQUEE MICP-10310 [☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。ゲストにストラトヴァリウスのティモ・トルキが参加しているところから分かるとおり、北欧系のメロディックメタルをやってます。
 ストラトヴァリウスのティモ・コティペルトとエリック・マーティンを足して3で割ったくらいの中音域に強いヴォーカリストが唄いあげる楽曲は、キーボードのキラキラ感で味付けされたストラトヴァリウスの影響下にある1、2からドラマティックなミディアムテンポのロイヤル・ハント風の3、ギターとキーボードの派手なフレージングで疾走感のある4、スペーシーな雰囲気の多彩な展開を見せる長編の5、ピアノの調べが美しいバラードの6、かなりな勢いでストラトヴァリウスな7、ティモ・トルキと一緒に速弾きしまくってしまう激走ナンバーの8、へヴィリフの9、スケール感の大きい壮大なイメージを想起させる10とメロディアスな曲が揃っています。
 とてもオリジナリティがあるとは言えませんが、同郷の先輩バンドのエキスを充分に取り込んでより良いものを作り出そうとする姿勢は感じられます。早く独自性を確立できるか、本家を上回る良質の楽曲をつくりだせるか、その辺りが今後のポイントみたいです。
同系統アルバム
SECRET VISIONS/VIRTUOCITY
ONLY HUMAN/AT VANCE
INFINITE/STRATOVARIUS

A TRIBUTE TO THE BEAST/VARIOUS ARTIST

ア・トリビュート・トゥ・ザ・ビースト〜アイアン・メイデンに捧ぐ

KING RECORD KICP-872 [EXTRA]

 ドイツのレーベル、ニュークリア・ブラストが編纂したアイアン・メイデンのトリビュート・アルバムです。スティーヴ・ハリスが怒るのでいつもの通り、タイトルにアイアン・メイデンは使えません。
1.THE IDES OF MARCH - PURGATORY/STEEL PROPHET
 アメリカのパワーメタルバンドです。「KILLERS」アルバムからのオープニング曲から何故かPURGATORYです。既出なカバーですが出来はまあまあです。
2.ACES HIGH/CHILDREN OF BODOM
 フィンランド出身のメロディックデスメタルバンドです。予想したよりは速くも無くブラストビートも無くヴォーカル以外は無難なカバーになってます。キーボードソロをいれるあたりは彼ららしいでしょうか。
3.THE TROOPER/ONMYO-ZA
 日本の妖怪バンド、陰陽座です。出だしのヴォーカルでやっちまった…と思ったりしましたが、曲が進むにしたがって馴染んでいって最後には納得させる和風アレンジも取り入れたものになってます。
4.HALLOWED BEE THY NAME/CRADLE OF FILTH
 イギリスのブラックメタルバンドです。同郷ということで、エキセントリックなヴォーカル以外は忠実なカバーになってます。既出。
5.RUNNING FREE/GRAVE DIGGER
ドイツ出身のパワーメタルバンドです。ゴリゴリしたヴォーカルがポール・ディアノ時代の楽曲にマッチしています。既出。
6.PROWLER/BURDEN OF GRIEF
ドイツ出身のデスメタルバンドです。デス声以外は普通なカバーです。既出。
7.DIE WITH YOUR BOOTS ON/SONATA ARCTICA
フィンランド出身のメロディックスピードメタルバンドです。キーボードとコーラスの導入ですっかりサワヤカに。既出。
8.CHILDREN OF THE DAMNED/THERION
スウェーデン出身のオーケストラメタルです。このカバーでは派手な合唱団もいないため、めっきり地味なものになってます。既出。
9.TRANSYLVANIA/ICED EARTH
アメリカ出身のパワーメタルバンドです。忠実再現ぶりが心地よいカバーです。既出。
10.REMEMBER TOMORROW/OPETH
スウェーデン出身のゴシックメタルバンドです。湿った空気たっぷりのカバーになってます。既出。
11.THE NUMBER OF THE BEAST/SINERGY
スウェーデン出身の正統派メタルバンドです。鬼気迫るヴォーカルが聴き所です。既出。
12.STRANGER IN A STRANGE LAND/DISBELIEF
ドイツ出身のデスメタルバンドです。メロディ無視してデスってます。
13.FLIGHT OF ICARUS/TIERRA SANTA
スペイン出身のクサメタルバンドです。叙情的な歌唱からドラマティックな展開と、かなり原曲と異なったアレンジを施してます。
14.22 ACACIA AVENUE/DARK TRANQUILLITY
スウェーデン出身のメロディックデスメタルバンドです。やっぱりヴォーカル以外は普通です。既出。
15.WRATHCHILD/SIX FEET UNDER
アメリカ出身のデスメタルバンドです。邪悪さ増強の凶悪バージョンになってます。既出。
16.POWERSLAVE/DARKANE
スウェーデン出身のメロディックデスメタルバンドです。攻撃的なドラムが特徴のバンドですが、期待したほどではない無難な出来です。

 ということで、どのバンドもそんなに原曲をいじらないカバーが揃ってしまったのは完成度が高いアイアン・メイデンの楽曲を称えるべきでしょうか。真面目なバンドが揃ってしまったせいでしょうか。でもトリビュートアルバムとして演奏力のあるバンドが揃ったので、安心して聴けるものになってます。
同系統アルバム
MADE IN TRIBUTE
〜 A TRIBUTE TO THE BEST BAND IN A WHOLE GODDAMN WORLD!





July

ARACHNES | BLOOD STAIN CHILD | DARK TRANQUILLITY | DREAM EVIL | HEIMDALL | MEDUZA | THRONE OF CHAOS | U.D.O. | W.A.S.P. | WUTHERING HEIGHTS |

APOCALYPSE/ARACHNES

アポカリプス/アラクネス

MARQUEE MICP-10313 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドのサードアルバムです。  スリリングなインストゥルメンタルの応酬で始まるアルバムは、テクニカルなプレイを随所に聴かせるギターに繊細な調べを奏でるキーボードが緻密に構成される複雑な楽曲を作り出しており、それらが生み出す世界はイタリアという事を強く意識させるプログレッシヴな空気を持った濃密なものになっています。キーボードをプレイするハイトーンヴォーカルはラプソディーのファビオ・リオーネを小粒にしたような雰囲気で楽曲をドラマティックに彩っており、緊張感のあるインストゥルメンタルとの間に強いコントラストを作り出します。煌びやかな雰囲気のシンフォニックメタルナンバーのタイトルトラックに、シンフォニー・エックス風のダークな色調の6、ネオクラシカルなギタープレイがスリリングに展開するインストゥルメンタルの9、哀愁のメロディが印象的な劇的ナンバーの10はネオクラシカルにプログレと様々な技巧がつぎ込まれています。キーボードサウンドが前面に押し出された緊張感を持った12、徐々に曲調が盛り上がっていくドラマティックな13、ハイテンションのパワーメタリックなスピードナンバーの14と、作りこまれた楽曲が揃っています。
 多少苦しげで余裕が無さそうなヴォーカルにパワーがあれば、もっと素晴らしくなるような気がしますが、サードアルバムと言うことで安定したプレイによって綿密に組み立てられたサウンドは完成度の高いもので、幻想的な世界がたっぷりと詰め込まれた充実のアルバムになってます。
同系統アルバム
A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE
THE ARRIVAL/REQUIEM
SANCTUS IGNIS/ADAGIO

SILENCE OF NORTHEN HELL/BLOOD STAIN CHILD

サイレンス・オブ・ノーザン・ヘル/ブラッド・ステイン・チャイルド

M&I COMPANY MYCP-30146 [☆☆☆☆]

 大阪出身のバンドのデビューアルバムです。ちなみに和田“キャプテン”誠氏が立ち上げた「CAPTAIN-ROCK」レーベルの第一弾アーティストでもあります。
 炸裂系のディストーションヴォイスに北欧風味の叙情的なメロディがたっぷり詰め込まれた、ヴォーカルの質感が似ていることもあって、チルドレン・オヴ・ボドムに近い印象を与えるドラマティックなメロディックデスメタルをやってます。スケール感のあるドラマティックなイントロダクションに、密度の高いメロディアスなギターリフ、シンフォニックなキーボードが絶え間なく紡ぎだされる1から、ダイナミックでシンフォニックブラックメタル風味な大仰な展開を見せる劇的な2、扇情性の強いメロディに導かれる3ではリリカルなキーボードとタイトなドラミングが哀愁のギターと共にドラマを積み重ねていきます。要所要所で派手なオーケストラヒットが差し込まれる4では、かなりな勢いでチルドレン・オヴ・ボドムばりの小気味いいリズムの楽曲を聴かせています。
 ゆったりとした物悲しいメロディを紡ぐイントロから一転、疾走に移る5では楽器、ヴォーカルが一体となって突き進む突進力全開のパワフルな面が味わえます。6では北欧メロディックメタル色が強烈に前面に出た哀愁のメロディを中心に、女性コーラス、クワイア、オーケストレーションされたキーボードと言った要素が絡み合って、鐘が鳴り響く絢爛豪華なサウンドが展開されていきます。7はキーボードとギターが構築する繊細なドラマを味わえるインストゥルメンタルパートが印象的なミディアムテンポのナンバーになってます。
 スタイル的には、ほとんどチルドレン・オヴ・ボドムのフォロワーなわけですが、ギターやキーボードの奏でるフレーズの質感がシンフォニックな面とかが強まっていて、与える印象は結構違ってます。オリジナリティはまだ確立されてはいませんが、魅力的な楽曲を作れる能力と未開の才能を感じさせるアルバムです。
同系統アルバム
THEY WILL RETURN/KALMAH
DREAMS OF ENDLESS WAR/NORTHER
IMMORTAL MISANTHROPE/MISANTHROPE

DAMAGE DONE/DARK TRANQUILLITY

ダメージ・ダン/ダーク・トランキュリティ

TOY'S FACTORY TFCK-87288 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの6枚目のアルバムです。雑誌のインタビューなどでリスナーを煙に巻いてきた彼らですが、今度のアルバムは初期の衝動性を取り戻したような鮮やかなものに仕上げています。
 躍動感のあるギターリフに復活したディストーションヴォーカルを乗せた攻撃的な1で始まるアルバムは、ゴシック風のムードを底辺に持ちながら暴虐性を見せる混沌とした空気が生み出されており、ミステリアスなイントロからのミディアムテンポの2ではダイナミックなギターリフとヴォーカルで激情渦巻く世界を描き出します。扇情性の高いメロディと緩急を効かせた激烈なパートとのコントラストも鮮やかな衝動と情念がシンクロするドラマティックな展開の3、メロウな空気ながらメタリックなリフを刻む4は正統派メタル風のクリーンなギターソロを聴かせます。疾走感あふれる5は攻撃的なヴォーカルと叙情メロディが絡み合う展開の大きなスピードナンバー、ゆったりとした雰囲気から切迫感の強いヴォーカルで哀愁のメロディを刻む6、さらに突進力の強いリフを持った7は初期のムードを彷彿とさせながらもドラマティックな展開を聴かせます。
 扇情的なメロディとスケール感を持ちながらも緻密な8、ゴシック風の叙情感の強い泣きのナンバーの9、ボーナストラックの10は繊細なメロディを持った緩急の強い曲です。ダークなリフに緊張感のあるリズムの11、長編のインストゥルメンタルナンバーの12はミステリアスな空気を作っています。
 全体が躍動感を感じさせるエネルギーを持ちながらも、完成度の高い整合性を持った緻密な仕上がりを聴かせる楽曲が揃ったこのアルバムは、初期の衝動と最近のストーリー性が融合されたものになっています。聴き手の感情をコントロールするかのように生み出されるメロディと展開は、経験値の高いバンドの能力を見せつけるもので、後進バンドの躍進の激しいこのスタイルにあっても、その存在感を強くアピールしています。
同系統アルバム
A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK
CLAYMAN/IN FLAMES
MEGALOMANIA/ENSLAVEMENT OF BEAUTY

DRAGONSLAYER/DREAM EVIL

ドラゴンスレイヤー/ドリーム・イーヴル

KING RECORD KICP-878 [☆☆☆☆]

 スウェーデンのメタルシーンでその名を知られる有名プロデューサーのフレドリック・ノルドストロームがファイアーウィンドのギタリスト、ガス・Gとタッグを組んだニューバンドのデビューアルバムです。ヴォーカリストにはハンマーフォールなどのバックコーラスに参加していた時から目を付けていたニクラス・イスフェルド、ベーシストにはニクラスの友人であるピーター・スタルフォース、さらにドラマーにキング・ダイアモンドマーシフル・フェイトなどで活躍していた、スノーウィー・ショウを迎えた強力な布陣でアルバムを製作しています。
 日本独自仕様の曲順でストーリー的な流れがはっきりしたアルバムは、フレドリック・ノルドストローム色が全開のサウンドを持った、叙情的なメロディを刻むメタリックなリフを軸にした演奏に力強いヴォーカルが乗るミディアムテンポのパワーメタルナンバーで始まります。ちょっと鼻にかかった伸びやかな声を聴かせるヴォーカルは中音域で抜群の安定感を持った歌唱を披露しています。続く2はグルーヴィなへヴィリフのタフな雰囲気からキャッチーなコーラスを聴かせる動的な楽曲、そしてイン・フレイムスのイェスパー・ストロムブラッドが作曲に絡んだボーナストラックである3はノクターナル・ライツ風の北欧的なメロディを持ったスピード感のあるメロディックナンバーで華麗なギターソロが聴かれます。リリカルなバラードの4はどことなくロイヤル・ハント風だったり。明るめの曲調でメタリックなリフを刻む5は少しアメリカン、キッスみたいなシンプルなリフの6はテンションの高いシンガロングなコーラスと本領発揮のガス・Gのギターソロが印象的です。
 誰もが待ってたシリアスな雰囲気で疾走するピュアメタルナンバーの7は叙情的なサビで盛り上げます。へヴィにシャッフルしてしまう8はかなりアメリカン。叙情的なメロディを持ったパワフルなメタルナンバーの9、パワーメタリックな10、11、オーケストラのハーモニーで盛り上げるリリカルでドラマティックな12と続いていきます。
 ヘヴィメタルを曲名につかってしまったり、マノウォーばりのヒロイックな熱い歌詞の曲ばかりという、フレドリック・ノルドストロームのメタル溺愛っぷりが如実にあらわれていることは間違いないアルバムですが、楽曲の方はバリエーションに富んだもので彼の音楽遍歴を伺わせるものになってます。惜しむらくはガス・Gの派手なギタープレイと作曲が少ないことでしょうか。 多分本職が忙しくてバンド活動はままならないとは思われますが、とりあえず頑張って創作活動に励んで欲しいものです。

ちなみに欧州盤の曲順はこんな感じです。
  1. Chasin The Dragon
  2. In Flames You Burn
  3. Save Us
  4. Kingdom Of The Damned
  5. The ProphecyThe Chosen Ones
  6. Losing You
  7. The 7th Day
  8. Heavy Metal In The Night
  9. H.M.J
  10. Hail To The King
  11. Outro
同系統アルバム
INFATUATOR/SILENT FORCE
THE SACRED TALISMAN/NOCTURNAL RITES
TALES OF A TRAGIC KINGDOM/SUPREME MAJESTY

THE ALMIGHTY/HEIMDALL

ジ・オールマイティ/ヘイムダール

SOUNDHOLIC TKCS-85042 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドのサードアルバムです。今ひとつ評判の良くなかったヴォーカリストを代えて製作されています。
 叙情的なメロディに導かれるスケール感のある1から発揮される中音域に伸びのある声を聴かせるヴォーカルは少しファルコナーに近い湿った質感で、朗々とドラマティックな世界を歌い上げます。ヴォーカルの傾向もあって、はじけたところが多いイタリアンメタル群の中では、割と落ち着いてしまった感の強いじっくりと曲を聴かせるタイプに移行したような感じがします。情感豊かにじわじわ盛り上げていく楽曲は、浮ついたところの少ない重厚な雰囲気を醸し出します。 今までの作風と比べると、かなりおとなしい印象が強まった今度のアルバムですが、パフォーマンスやプロダクションは着実に向上しており、バンドの成長は確実に進んでいます。着地したところは微妙に聴き手の期待したところとは違うみたいですが、マイナー色はかなり払拭されて一流バンドに少し近づいたようです。
同系統アルバム
CHAPTERS FROM A VALE FORLORN/FALCONER
KARMA/KAMELOT
IN SEARCH OF TRUTH/EVERGREY

NOW AND FOREVER/MEDUZA

永遠―それは旋律の調/メドゥーザ

TOSHIBA EMI TOCP-66076 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。ギタリストのステファン・ペリを中心としたバンドは、ワザリング・ハイツのヴォーカリストを招いてデモCDを発表したことによって契約に漕ぎ着けて、正式なヴォーカルとしてマジェスティックのアポロ・パパナサシオを加入させて製作されています。
 テクニカルなギタリストが中心人物ということで、サウンドの方もイングヴェイ・マルムスティーンの流れを汲んだネオクラシカルなプレイにドラマティックな展開、そして哀愁帯びたメロディと、北欧メタルの形式を踏襲するものになってます。安定したプレイとフラッシーなフレーズを聴かせるギターは、かなりの実力を感じさせるもので、ちょっと荒れた声質のエモーショナルなヴォーカルが唄いあげて作り出される高品質の楽曲が揃えられています。意外性はほとんど無いですが、このスタイルのサウンドでは安心して聴けるものになってます。
 Z-レーベルの伝統かどうかは分かりませんが、欧州盤と曲順が違ってたりします。
  1. Now And Forever
  2. Holy Ground
  3. Hounds Of Hell
  4. Sleep
  5. Touch The Sky
  6. I Will Rise
  7. Twilight Of My Mind
  8. Shed No Tears
  9. Curse Of Pharao
  10. Land Of Forgotten Dreams
  11. Burn In Hell
同系統アルバム
WAR TO END OALL WARS/YNGWIE J MALMSTEEN'S RISING FORCE
CASTLE OF YESTERDAY/REPTILIAN
REFLECTIONS/STORMWIND

PERVERTIGO/THRONE OF CHAOS

パーヴァーティゴ/スローン・オヴ・ケイオス

MARQUEE MICP-10316 [☆☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのセカンドアルバムです。徴兵から帰ってきてのアルバムで何があったのか分かりませんが、そこらへんにいたディストーションヴォイスのヴォーカルと、ドリーム・イーヴルのニクラス・イスフェルドがゲストに参加して制作されています。
 タイトなギターリフの激しく緩急の付いた突進型でソイルワーク風のクリーントーンの優雅なサビを持ったメロディックデスメタルな1で始まるアルバムは、有機的に絡み合うギタープレイとキーボードの生み出すメロディを武器に進んでいきます。叙情的なメロディとハイトーンヴォーカルを中心にディストーションヴォイスなコーラスを導入する扇情性の高い2、ディストーションヴォイスで瞬間沸騰する突進ナンバーの3、ミステリアスなイントロからタイトなギターリフを刻んでハイトーンヴォーカルがストラトヴァリウス風の叙情メロディを唄いインスト陣はプログレッシヴな展開を見せる4、フックのある刻みリフにディスト−ションヴォイスとクリーンヴォーカルが交錯する複雑な展開の5、ドラマティックなイントロからメロディアスなフレーズを重ねるハイトーンヴォーカルの哀切な捻り気味の6、ダイナミックなギターリフからバンドのヴォーカルが吼える突進力のあるテクニカルな7、クリーンヴォーカルがしっとりと唄いあげるパワーバラードな8、妖しい雰囲気を作り出す大作の9にジューダス・プリーストの普通なカバーと様々な楽曲が収録されています。
 クリーンヴォーカルの導入によるオーセンティックなメロディックメタルに急接近の方針の変化が衝撃的なアルバムで、今後の方向性や目標とかがサッパリ分からなくなった謎のバンドになってしまった彼らですが、変な感じを追求していけば凄く変な存在になれるかも知れません。
同系統アルバム
NATURAL BORN CHAOS/SOILWORK
DEUS DECEPTOR/NONEXIST
PROJECTOR/DARK TRANQUILLITY

MAN AND MACHINE/U.D.O.

マン・アンド・マシーン/U.D.O.

NIPPON CROWN CRCL-4806 [☆☆☆]

 ドイツが誇るヘヴィメタル魂、ウド・ダークシュナイダー率いるU.D.O.の8枚目のアルバムです。前作は日本盤が出ませんでしたが、捨てる神あれば拾う神あり、正式ドラマーも決まって万歳な感じです。
 アクセプト時代を彷彿とさせる力強さとアーティスティックな要素を兼ね備えたジャケット(でもウルフ・ホフマンほどのセンスはないけど)が導くサウンドは、いつもと変わらぬ鋼鉄の心意気を感じさせるタフなものです。「METAL HEART」アルバムを思い起こさせる地を突き進む存在を感じさせる1、攻撃的に迫るメタリックな2でテンションを上げると、叙情的なイントロから内に秘めた爆発寸前の衝動を感じさせるヴォーカルとそれに付き従う力強いコーラスのミディアムテンポの泣きのナンバーの3へと進んでいきます。“PROTECTORS OF TERROR”タイプの曲展開に開放的なコーラスのメタル万歳な4でも扇情性の高いギターソロがツボです。ドロ・ペッシュが参加したデュエットな5はリリカルなメロディのバラードで、あまりアピールしていなかった側面を出したものになってます。
 湿ったメロディに厚いキャッチーなコーラスが乗る哀愁の6、ダイナミックな展開を見せてスピード感に泣きのメロディにツインリードソロもある盛り沢山な正統派メタルナンバーの7、ツインリードギターが奏でる哀愁メロディが炸裂する9、“LONDON LEATHERBOYS”みたいなサビの湿っぽい11、どこかの公演のライヴ二曲がボーナストラックでついてます。
 いつまでも不変のメタル像を作りつづけてくれる姿勢には、すっかり頭が下がったりはしますし、多少はツボに入ったりするのですけど、やはりフラッシーでインスピレーションが感じられる最強に魅力的なギタープレイをやってくれるギタリストが欲しいところです、ってマティアス・ディートのことなんですが。さらに叙情性重視のこのアルバムには爆発力が大幅に足りないと思われます。
 “METAL EATER”はいつ聴いても熱いなあ…。
同系統アルバム
BLACK SUN/PRIMAL FEAR
HERO-NATION/METALIUM
CONDITION RED/IRON SAVIOR

DYING FOR THE WORLD/W.A.S.P.

ダイイング・フォー・ザ・ワールド/W.A.S.P.

VICTOR VICP-61939 [☆☆☆☆]

 アメリカのベテランバンドの10枚目のアルバムです。オリジナルメンバーのギタリスト、クリス・ホームズは別の音楽がやりたいと脱退しており、ドラマーにはクワイエット・ライオットのフランキー・バネリが参加しています。
 湾岸戦争に参加した兵隊からの手紙と2001年9月11日に起こったニューヨークでのテロ事件に強い影響を受けて製作されたこのアルバムは、前作からのシリアスなヘヴィメタルの流れを汲んだものになってます。ブリティッシュな薫りが漂う湿ったメロディを持った楽曲が揃えられており、「怒り」を中心とする強い感情を剥き出しにしたヴォーカルが作り出す世界は混沌とした社会情勢を映し出すものになっています。きっちりと作りこまれたギターソロに堅実な曲調、さらに扇情力の強いキャッチーな唄メロも手伝って、理性的にコントロールされた衝動を感じさせるサウンドが展開されていきます。
 楽曲の質は高いですが、今まで彼らが作ってきたアルバムに比べると一歩も二歩も譲りますし、曲の展開やメロディも結構定型化されて新しい要素も少なくなってます。同じ曲のアコースティックバージョンが収録されていたり、ボーナストラックでは別バージョンにカラオケと水増し感の強いアルバム構成はどんなもんだって感じの微妙な地点なので、バンドの暴れん坊なイメージで敬遠してた人、もしくはバンドに忠誠を誓う人以外は、正直「THE CRIMSON IDOL」アルバムから聞いたほうが良いかもしれません。
同系統アルバム
SYSTEM X/IMPELLITTERI
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
BRAVE NEW WORLD/IRON MAIDEN

TO TRAVEL FOR EVERMORE/WUTHERING HEIGHTS

永遠[とわ]の旅路/ワザリング・ハイツ

TOSHIBA EMI TOCP-66072 [☆☆☆☆]

 アングラがカバーしたケイト・ブッシュの「嵐が丘」から名前を取った、デンマーク出身のバンドのセカンドアルバムです。中心メンバーはデンマークですが、ヴォーカリストのクリスチャン・アンドレンは元タッド・モローズミメント・モーライ、ギタリストのヘンリック・フライマンは元モアニ・モアナとスウェーデン出身、ゲストで参加したベーシストはイタリアのバンド、タイム・マシンのロレンツォ・デホと三カ国で構成されています。
 幻想絵物語風大作映画のサウンドトラックのようなシンフォニックで華麗かつ劇的なイントロダクションで豪華に始まるこのアルバム、東芝EMI入魂の日本語曲名が表すとおりの劇的音楽が詰め込まれています。  細かいフレーズを紡いでドラマティックに二転三転する場面展開を持った2は目くるめく神秘的な世界を作り出しており、息詰まる切迫感のあるパワーヴォーカルを伴って絢爛豪華に扇情的なメロディを休むことなく繰り出していきます。テクニカルで攻撃的なフレーズで展開する3ではダークで歪ませたヴォーカルから複雑な構成で予想のつかないものです。リリカルなメロディからゆっくりと始まる4では情感豊かにヴォーカルが盛り上げていき、フォーク風の叙情的なメロディさらに疾走するギターソロへと移っていきます。ネオクラシカルなフレーズを叩き込みプログレッシヴな雰囲気を持った緊張感を途切れさせることのない長編のインストゥルメンタルの5、さらに妖しい空気を持った奇妙な世界観のボーナストラックの6は激しく緩急のついた曲になってます。場面転換がはっきりした大作の7は強烈な疾走感を持ったイントロから曲調を変化させつつドラマティックにスリリングに展開していきます。派手なギタープレイから叙情的なメロディを持ったドラマティックな様式美ナンバーの8、ミディアムテンポで哀愁帯びたメロディを繋ぎつつ激しく曲調を変化させるやっぱりドラマティックな9、物悲しいギターの調べに導かれ大仰な展開を見せる10で幕を閉じます。
 躁状態の気分でマイナーメロディを余すところ無く詰め込んだビックリ箱にも似たアルバムは、一曲の中に様々な要素を詰め込めるだけ詰め込んだ、思いもかけないものが飛び出してくる混乱と狂騒の渦の中での新たな世界の発見と言うような、スリリングで聴き手をちっとも休ませないものになってます。隙間無く音が詰め込まれた密度の高い空間が作り出される様は何か凄いです。
同系統アルバム
WELCOME TO THE MOONLIGHT CIRCUS/BLACK JESTER
POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY
V/SYMPHONY X





August

BATTLELORE | THE FORSAKEN | HATESPHERE | HIGHLORD | MANIGANCE | MESHUGGAH | MESSIAH'S KISS | NOCTURNAL RITES | SEVEN WITCHES | TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA | VHALDEMAR |

...WHERE THE SHADOWS LIE/BATTLELORE

・・・ホエア・ザ・シャドウズ・ライ/バトルロー

M&I COMPANY MYCP-30154 [☆☆☆]

 フィンランド出身のバンドのデビューアルバムです。ファンタジー小説の始祖トールキンが創造した種族に扮したメンバー達が、剣や戦斧や杖や小刀を持って、やっぱり中つ国を描き出します。
 リリカルなキーボードから一転、猛々しいギターリフに朗々と唄いあげる堂々とした男性ヴォーカルに続いて、狂戦士めいたディストーションヴォーカルで闘いの雄叫びを上げつつ、キーボードはやっぱり叙情的に流れる女性ヴォーカルも入った1から、続いて獣声と女性ヴォーカルがリードする荘厳な空気の2、ヘヴィなリフが炸裂するミディアムテンポの3は邪悪な雰囲気たっぷりに、女性ヴォーカルが主導の4は幻想的に哀愁を帯びたサウンドから起伏も激しく展開していきます。微妙にデジタルでメタリックな5は獣声でスローテンポなアヴァンギャルドで女性ヴォーカルが加わって更に加速、続く6もゆったりとした大河が流れるようなスケール感を感じさせるスローナンバー。リリカルな女性ヴォーカルで始まる7はまるで癒し系。ちょっとスピードアップして大仰かつ神秘的に展開し始める8はスピードの緩急もついてドラマティック。やっとかよ!と思わせるテンションの高い9でもヴォーカル勢ぞろいでクライマックスを実感させます。さらにボーナストラックではブラックモアズ・ナイトか?エンヤか?!
 はじけたコスプレで予想されるほどは、はじけていないサウンドはかなり生真面目で、映画「コナン・ザ・バーバリアン」風な脳みそ筋肉状態で暴れまわるセックス!ヴァイオレンス!マサカー!といった展開には全然ならない正統派なファンタジーワールドが描き出されるアルバムになってますが、ゴシック風な雰囲気も強いこのサウンドはどうも高揚感を煽るとか興奮がピークに!とか言う感じも少なくて、どうも肩透かし。ロールプレイで力を使い果たしたかどうかは分かりませんが、この格好なら皆が望んでいるのは“HAIL AND KILL !”って感じではないでしょうか。それはともかく、安定した演奏とリリカルな空気が伝える北欧の息吹は限りなく幻想的なものになってます。
同系統アルバム
SECRET OF THE RUNES/THERION
CENTURY CHILD/NIGHTWISH
A VIRGIN AND A WHORE/ETERNAL TEARS OF SORROW

ARTS OF DESOLATION/THE FORSAKEN

アーツ・オブ・デソレーション/フォーセイクン

KING RECORD KICP-886 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のデスメタルバンドのセカンドアルバムです。ベーシストが脱退しています。
 磨き上げられて鈍い光を放つ鉄鋼製の存在感と重量感を持った大型プラントが、休み無く動きつづけるように叩きつけられるサウンドの応酬が生み出すアルバムは、爆発的な突進力を持った攻撃的な1から禍々しい空気を保った楽曲が続いていきます。ブラストビートと圧迫感の強いリフが強烈な破壊力を生み出す高密度の2、疾走感の強いテクニカルな高速ナンバーの3、呪術めいた暗さと重さを作りだす邪悪な4、嵐のようにギターが乱舞しヴォーカルが叫ぶ疾走ナンバーの5、暗いメロディを前面に押し出したインストゥルメンタルナンバーの6、再び邪悪で豪腕ぶりを発揮する凶悪な7、スピードを上げることに全身全霊を傾けるかのような疾走感の強まった鋭いギターリフが畳み掛けてくる緩急の強いダイナミックな8、それに加えて高い構築感を味合わせる9、崩れ落ちるような破壊的なギターリフで構成される暗いドラマを生み出す10と、どこを取っても危険度の高い高圧の音に満ち溢れています。
 機械のように精確で冷酷なギターリフと轟音のヴォーカルが導く狂乱の空間に飛び込む、哀愁帯びたメロディアスなギターソロがもたらす落差は、狂気めいたカタルシスを作り出しており、衝動性と暴虐性に加えたほの暗い情念を露にするサウンドがアルバム全編を支配しています。多くの面でレベルアップしたバンドの確かな手応えを感じさせる会心の一枚になってます。
そして邪悪さ急上昇のメタリカのカバーは既に本家が失った熱気とエネルギーが漲っています。
同系統アルバム
FASTER DISASTER/TERROR 2000
CROWNED IN TERROR/THE CROWN
INWARDS/DEW-SCENTED

BLOODRED HATRED/HATESPHERE

ブラッドレッド・ヘイトリッド/ヘイトスフィア

SOUNDHOLIC TKCS-85045 [☆☆☆☆]

 デンマーク出身のバンドのセカンドアルバムです。プロデュースはジャーマンメタルの重鎮、トミー・ハンセンが務めています。
 リリカルなイントロの1を経て、激烈に弾け飛ぶような攻撃的な高速ギターリフで始まる2はミディアムテンポに変化しながら凶悪なディストーションヴォイスを聴かせ、サビでクリーントーンのコーラスを登場させつつマイナーメロディが美しいギターソロもあるという展開の激しいものになってます。続く3は容赦の無い高速ドラミングが小気味良い疾走感の強いナンバーながら中間部のインストゥルメンタルでは起伏の激しいドラマティックな展開を見せます。4でも攻撃性を全く緩めることなく圧迫感の強いリフで突進していき、ギターソロからのコーラスパートのメロディで強いコントラストを生み出します。グルーヴィでヘヴィなリフが展開されるミディアムテンポの5ではトミー・ハンセンが演奏するキーボードが飛び出して、楽曲に浮遊感を加えています。再び攻撃的な空気に戻っての6では緩急を効かせた緊張感の強いスピーディな展開が印象的です。キーボードサウンドが登場の7ではダークな色彩が強まったスローなイントロパートから一転、攻撃的な激烈リフを叩きつけ、続く8でもミステリアスなイントロからフックのある切れ味鋭いギターリフを叩きつけ叙情感の強いメロディアスなパートと組み合わせながら劇的に展開して激しいコントラストを作り出していきます。スピードナンバーの9では熱気あふれる衝動性が印象に残ります。
 攻撃性を維持しながらドラマティックに展開していく楽曲は、未だに弱まることの無い怒りを伴ったサウンドに満ち溢れており、多様に変化する先達のバンドが失いつつある衝動とあるべき姿に近いものがあり、着実なレベルアップを感じさせるアルバムになってます。
同系統アルバム
CROWNED IN TERROR/THE CROWN
INWARDS/DEW-SCENTED
FASTER DISASTER/TERROR 2000

BREATH OF ETERNITY/HIGHLORD

ブレス・オブ・エタニティ/ハイロード

SOUNDHOLIC TKCS-85044 [☆☆☆☆]

 イタリアのバンドの三枚目になるアルバムです。ヴォーカリストに新たにDESDEMONAのアンドレア・マルチシオが加入して製作されています。
 ネオクラシカルな要素の強い様式美なサウンドが特徴的だった前作を経てのこのアルバムは、テクニカルなキーボードとギターを更に前面に押し出したドラマティックなものです。神秘的なフレーズから密度の濃いインストゥルメンタルが展開されるイントロダクションの1から、イタリアンメタルの面目躍如といった派手な展開のスリリングなギター&キーボードのリフが炸裂するオープニングで始まるミディアムテンポの劇的な2に繋がる組曲で幕を開けます。オペラティックな歌唱を聴かせるハイトーンヴォーカルはまだクセが強いもののそれなりに安定しており、キーボードとギターが交錯する激しいインストゥルメンタルパートに負けない存在感を持っています。正統派メタル風のリフで展開する3は開放的なサビに予想外に進行していくインストが印象的です。キャメロットアーテンションを彷彿とさせる劇的なイントロで始まる4では扇情的なメロディをふんだんに取り込んだ様式美な展開でドラマティックに盛り上がります。洗練された雰囲気のポップな5はまるでヨーロッパのような。キラキラキーボードが先導するストラトヴァリウス系でミディアムテンポのキャッチーな6、一転して攻撃的なギターで疾走するイントロで始まる7は緊張感を高めつつ、ヴァンデン・プラスもかくや、というテクニカルなパートを挟んで壮大に展開していきます。キーボードが大活躍のスリリングで長尺なイントロから大きな起伏で大仰かつ豪華に進んでいくタイトルトラックを経て、オペラティックかつミステリアスな雰囲気で、ディストーションヴォイスまで導入した緻密な構成の長編9ではシンフォニー・エックスを思い出させます。そして女性ヴォーカルをフィーチュアするピアノとサックスの絡みが官能的なバラードでアルバムの本編が終了します。
 プログレッシヴメタル色の強いソロパートと普遍的な魅力を持ったヘヴィメタルのパートが組み合わされたドラマティックな楽曲が満載のアルバムは、先行するバンドとの差別化を図るためか、一筋縄で行かないかなり捻った展開が目に付く力技でねじ伏せにかかるものなっていて、聴いていて辛いところも少なくないです。ヴォーカルは英語の発音とかがかなり微妙ですし、ギターもテクニカルな個所になると苦しくなるとか、こなれていない楽曲はまだまだ改善の余地も沢山ありそうですが、着実なレベルアップを続けるバンドの新しい領域に踏み込んだ一歩を感じさせる一枚になってます。

元曲を知らないMAKE-UPのカバー、というかアニメ「聖闘士星矢」の主題歌はどーなんだ。
同系統アルバム
A TIME NEVERCOME/SECRET SPHERE
THE ARRIVAL/REQUIEM
THE FOURTH LEGACY/KAMELOT

ANGE OU DEMON/MANIGANCE

アンジュ・ウ・デイモン〜天使か悪魔か〜/マニガンス

MARQUEE MICP-10318 [☆☆☆☆]

 フランス出身のバンドのファーストアルバムです。メンバーはフランスでは結構キャリアを積んでいるアーティストのようです。
 キーボードの繊細な調べからメタリックなギターリフに導かれる、透明感のあるメロディでテクニカルな空気も持ったプログレハード風のドラマティックな1で始まるアルバムは全編フランス語で唄われています。フランス語のアクセントも特に違和感も無く、この抜けるようなクリアーなサウンドには適しているようです。続く2は攻撃性を増したテクニカルなギターリフに、伸びのあるハイトーンヴォーカルが唄いあげるスリリングな曲調に情感あふれるコーラス、更に密度の高いインストゥルメンタルが加わった起伏のあるダイナミックな曲です。落ち着いたペースで進んでいく3は一転扇情的なギターソロでドラマティックに盛り上がっていきます。叙情感あふれる泣きのインストゥルメンタルを挟んで、疾走感あふれるドラマティックな5に進んでいきます。マイナーメロディが炸裂し攻撃性をも失わないギターリフに緊張感あふれる圧巻のインストゥルメンタルでクライマックスに達する5はこのアルバムのハイライトと言えるでしょう。
 透明感あるメロディで静かに展開して劇的に盛り上げるバラードの6、アップテンポでシリアスな雰囲気ながらキャッチーなメロディを展開する7、ヘヴィでタイトなギターリフから扇情的なメロディのコーラスで劇的に進む8、ポップなイントロからミステリアスに展開して情感豊かなギターソロに繋いでいく9、メロディアスで開放的なハードロックナンバーの10、グルーヴ感のあるフレーズで異なった表情を見せるダイナミックな11と多彩な印象を持った楽曲を揃えています。更にボーナストラックの12は80年代に活躍したSORTILEGEのカバー、唯一英詞で唄う13はパワーメタルな疾走感の強い曲です。
 キャリアを積んだアーティスト達が贈る、確かなテクニックを聴かせるギター&キーボードにそれを支えるリズム隊、安定感のあるヴォーカルと、あまりヘヴィメタルが盛んでないフランス出身とは感じさせない高品質のアルバムは、技術と表現が高いところで交錯するファーストアルバムとは思えない驚愕の作品になっています。スリリングな展開とパワーメタリックな音像がもたらすカタルシスはテクニカル系のヘヴィメタルとして高いレベルに達しており、フランスのヘヴィメタルシーンの底力を感じさせる強力なアルバムです。
同系統アルバム
BEYOND DAYLIGHT
DREAMLAND/DGM
LOST/ELEGY

NOTHING/MESHUGGAH

ナッシング/メシュガー

MARQUEE MICP-10309 [☆☆☆☆]

 エクストリームミュージックではその名を馳せるスウェーデン出身のフレドリック・トーデンタル率いるバンドの4枚目のアルバムです。8弦ギターを導入したツインギターで製作されているようです。
 突き刺さるような鋭い音像のアルバムは、整然と居並ぶ機械群が精密な作業をこなしながら緻密な同じく機械を生産しつづけるような非人間的で冷酷さを伴った楽曲が揃っています。ノイズすれすれのディストーションヴォイスに、奇怪な戦慄を生み出す硬質なギターが作り出す空気は冷徹ながら、底の方で揺らめく異様な熱気を感じさせるもので、既に音楽としての形態の限界に迫りつつあるようです。
 何のクレジットも無い聴き手を突き放すかのようなジャケットが表すように、混沌としたイメージを叩きつける異端のサウンドは圧倒的な存在感で、ヘヴィメタルの極北を行く孤高の道を歩んでいるようです。
同系統アルバム
IOWA/SLIPKNOT
UNDECEIVED/EXTOL
A SCEPTIC'S UNIVERSE/SPIRAL ARCHITECT

PRAYER FOR THE DYING/MESSIAH'S KISS

プレイヤー・フォー・ザ・ダイング/メサイア・キッス

NIPPON CROWN CRCL-4808 [☆☆☆☆]

 ドイツ出身のバンドのデビューアルバムです。REPRESSIONという1980年代から活動していたバンドが前身で、4枚のスタジオアルバムを発表しています。ヴォーカリストの脱退によって活動が停止状態だったところに、HOLY MOTHERのマイク・ティレリが加わって現在のラインナップになっています。
 大仰で劇的な展開の期待感を高めるイントロダクションから、テンションを全く落とさずに切れ込むヘヴィメタリックで重厚なギターリフで始まるダイナミックな2に繋がるアルバムは、ダミ声のロニー・ジェイムス・ディオな熱気あふれるパワフルヴォーカルが血沸き肉踊るフックのあるメロディを唄いあげる、伝統的で確信に満ちたヘヴィメタルを余すところ無く見せつけるものになっています。さらにキャッチーなサビを持った3ではシンプルながら魅力的なツインギターの絡み合いが堪能でき、ベテランアーティストの余裕を感じさせたりします。ミステリアスなメロディと雰囲気のヘヴィ&ダークな4、オーセンティック過ぎて今時珍しくなってしまったリフのアクセプト風のパワーメタルな5、刻みリフにマイナーメロディで繋ぐ漢臭いクワイアが炸裂する海賊的な6、押しの強い勢いで攻めまくるタイトルトラックはグレイヴ・ディガー風。情感豊かでメロディアスな8ではロニー・ジェイムス・ディオの姿を思い起こさせるパフォーマンスを見せ、続くファストチューンの9では一転して攻撃的で噛み付くようなヴォーカルとフラッシーな長尺のギターソロを聴かせます。ブルージーで哀愁漂う雰囲気の情念渦巻く10、ヘヴィでダークながらサビからの展開で一気に盛り上げる11、そしてマノウォーばりに激しく熱く攻撃的に迫り、二転三転するインストゥルメンタルを絡めながら興奮を最高潮に盛り上げるコーラスで喝采をあげる長編の12で幕を閉じます。
 全編に渡ってタフでストロングな声で楽曲を引っ張るヴォーカルに、派手さは少ないものの安定した演奏を聴かせる楽器陣が合わさって生み出されるサウンドは、これぞヘヴィメタルと言う明快なもので、10年以上のキャリアがあるアーティストだけに完熟の境地に達しているようです。どこを切っても火傷しそうな熱気に満ち溢れるこの強靭なアルバムは、己のメタル魂を図る試金石ともいえる一枚です。
同系統アルバム
CONDITION RED/IRON SAVIOR
BETWEEN HEAVEN AND HELL/FIREWIND
THE GRAVE DIGGER/GRAVE DIGGER

SHADOWLAND/NOCTURNAL RITES

シャドウランド/ノクターナル・ライツ

VICTOR VICP-61936 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの5枚目のアルバムです。メンバーチェンジも無く順調に製作されたようです。前作「AFTERLIFE」の延長線上にあるパワーメタリックなサウンドはそのままに、初期のサウンドで顕著だった起伏の激しいメロディラインを取り戻して、華麗なギタープレイに伸びやかな声を聴かせるハスキーなヴォーカルが唄いあげるドラマティックでシリアスな空気を持った世界を作り出しています。
 迫力のあるリズム隊にメタリックなギターリフが乗り、コーラスワークも鮮やかにウェットな質感を持つ扇情的なメロディを聴かせる1から、ダイナミックなイントロダクションの雰囲気を維持しながらスケール感の大きな空気を生み出すドラマティックなタイトルナンバーの2、ダークな雰囲気で情感豊かなコーラス&ヴォーカルを聴かせるミディアムテンポの3、ヒロイックファンタジー風の世界観を持ったパワーメタルナンバーの4では、叙情的なメロディ全開の劇的なコーラスが気分を嫌が応にも盛り上げます。一転してアップテンポで押しの強い5ではパワフルなヴォーカルが主導権を握り、マイナーメロディのドラマティックなイントロで始まるダークな色彩の6に繋がっていきます。爆発力のある疾走曲の7は文句無く高揚感が高まる熱いパフォーマンスに聴き手のテンションもヒートアップ。邪悪さ漂うヘヴィナンバーの8、フラットなヴォーカルで攻撃的に進む9は後半にかけてドラマティックに盛り上がります。ミステリアスなメロディのイントロからストロングスタイルのリフに起伏の激しいインストゥルメンタルパートを挟んでダイナミックな展開を見せる10、そして新しいヴォーカルで再収録の11でアルバムは幕を閉じます。
 サードアルバムのイメージを払拭した4thアルバムではソリッドな質感に徹していたサウンドを提示していたバンドですが、この最新作では自分達の以前の魅力を反芻するかのように、芳醇なメロディを前面に押し出した作風を取り戻していて、メタリックな部分とメロディアスな部分のバランスが上手く取れた作品に仕上げています。バンドのパフォーマンス、プロダクションとも高品質で、正統派ヘヴィメタルを標榜する欧州のバンド群からは一歩抜きん出たレベルに達したと感じさせるパワフルなアルバムは、彼らに一層の栄光を与えるものになるでしょう。
同系統アルバム
DRAGONSLAYER/DREAM EVIL
THE ALMIGHTY/HEIMDALL
INFATUATOR/SILENT FORCE

XILED TO INFINITY AND ONE/SEVEN WITCHES

エクサイルド・トゥ・インフィニティ・アンド・ワン/セヴン・ウィッチズ

VICTOR VICP-61950 [☆☆☆]

 サヴァタージメタリウムで活躍していたギタリストのジャック・フロストが少し前からやっているバンドの三枚目のアルバムです。ヴォーカルにはクリムゾン・グローリーのウェイド・ブラック、ドラマーにDESTNY'S ENDのブライアン・クレイグを迎えて製作されています。ゲストにサヴァタージのジョン・オリヴァとアナイアレイターのジョー・コミュが参加しています。
 アメリカ出身者が多い中、活動の拠点はヨーロッパという現在のメタルシーンを象徴するようなオーセンティックなヘヴィメタルサウンドを作ってます。ソリッドで切れ味のいいギターリフで始まる1は伸びのあるハイトーンヴォーカルが力強く唄うパワーメタルなナンバーで、ギターソロはインプロヴァイゼーション気味のラフな感じのプレイを聴かせます。続く2は重みを増したギターがダークな雰囲気を作り出す圧力の高い曲で、ロブ・ハルフォードばりのスクリーミングが印象的です。バラード風のパートからドラマティックに展開するタイトルトラック、ヘヴィでグルーヴィな5、ミディアムテンポのタイトな6、湿ったメロディが80年代メタル風な7、中期サヴァタージを思い出させる歌唱を聴かせるジョン・オリヴァが熱い攻撃的な9と色々バリエーションに富んでいます。
 伝統的なヘヴィメタルのフォーマットに沿って、暗く重いメロディを駆使しつつパワー全開でプレイする姿は、そのサウンドと共にかなり好感触ですが、明快でないメロディラインにルーズなスタイルのギターソロとクライマックスに向けて今ひとつカタルシスがもたらされない楽曲は、80年代から90年代スタイルに移行しようとして苦しんでいた他のバンドの姿を彷彿とさせたりでアルバムとしては決め手に欠ける出来になってます。
同系統アルバム
DRAGONSLAYER/DREAM EVIL
HERO-NATION/METALIUM
METUS MORTIS/BRAINSTORM

THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA

アヴァンタジア―ザ・メタル・オペラ・パートII/トビアス・サメット

VICTOR VICP-61983 [☆☆☆]

 ドイツのバンド、エドガイのヴォーカリストであるトビアス・サメットのメタル界隈の豪華メンバーを集めたプロジェクトの第二弾アルバムです。前作のメンバーに加えて、近作ではボブ・カトレイとエリック・シンガーが参加しています。そして謎のヴォーカリストは今回はちゃんとクレジットされています。
 一曲目からオールスターキャストの大作で幕を開けるアルバムは、より起伏の強い構成と前作よりはオペラ的になった楽曲でいきなりのクライマックスを迎えたりします。大部分のアーティストが揃って現れるのが一曲のみということで、このアルバムのかなりの部分が集約されていたりしますが、それはさておき。2では匿名希望を止めたマイケル・キスク、シャーマンのアンドレ・マトス、そしてトビアス・サメットのメロスピ系ハイトーンヴォーカル組三人による軽快な疾走ナンバーで何とも贅沢というか夢のような組み合わせを実現します。ボブ・カトレイが喉を披露するミディアムテンポの渋い3、続いて壮大ながら優しい雰囲気の4とゆったりとアルバムは進んでいきます。前作でボーナストラックとして収録されていた、ヴァージン・スティールのデヴィッド・デファイスの攻撃的なヴォーカルが聴けるパワーメタルナンバーの5は何度聴いても熱いです。ロブ・ロックのクリーントーンな声が映えるアップテンポでキャッチーなメロディを持った6、劇的なバラードの7を挟んで、攻撃的に疾走するハードな8ではアンドレ・マトス&カイ・ハンセンの登場で割と盛り上がります。少しメランコリックな雰囲気のメロディアスかつメタリックな9、壮大な雰囲気ですがあっさり風味の10と、メロディックメタルの基本を押さえたアルバムになってます。
 アルバムの構成上、後半に行くにしたがって段々盛り上がってしまうアルバムになってしまいましたが、活動休止中でなかなか聴けないあの人とかあの人とかの様子が分かるのは便利かもしれない、と思いつつ流石に二枚目になるとインパクトも薄れてしまうものだなあ、とつくづく感じさせます。
同系統アルバム
A NIGHT AT THE OPERA/BLIND GUARDIAN
RITUAL/SHAMAN
CENTURY CHILD/NIGHTWISH

FIGHT TO THE END/VHÄLDEMAR

ファイト・トゥ・ジ・エンド/ヴァルデマール

KING RECORD KICP-885 [☆☆☆☆]

 スペイン出身のバンドのデビューアルバムです。結成は90年代後半のようですが、スペイン語が良く分からないので確かではありません。
 ナレーション付きの静かなイントロダクションから始まるアルバムは、自然に唄うとガンマ・レイのカイ・ハンセン風の線の細いハイトーン、力むとマノウォーのエリック・アダムス張りのスクリームになる変わったタイプの、実はエリック・アダムスになりたいけど、ついカイ・ハンセンの地が出てしまってるんじゃないのか?と思わせたりもするヴォーカルで意表をつく、攻撃的で疾走感の強いガンマ・レイ風のメロディを持った、手加減無しの全力投球のプレイが印象的なサウンドの1で幕を開けます。アップテンポのほとんどガンマ・レイのキャッチーな2、シンプルながらキャッチーなリフで押しまくるメロディアスな3もかなりガンマ・レイの影響下にありますが、ギターソロになるとイングヴェイ・マルムスティーンが好きなんだ!とアピールするかのようなプレイを聴かせたりして油断なりません。静かなイントロからハロウィンばりのツインリード、分厚いクワイア、ハイトーンシャウトでマノウォー風の勇壮な仕上がりのダイナミックな4、物悲しい雰囲気の重めの5まで進んでいくと、勢いは感じられますが印象には残りにくい平均的なバンドかと思わせます。

 しかし!ヴァージン・スティールを彷彿とさせる寸劇風の6を境にアルバムのテンションが一気にヒートアップします。爆発的な破壊力を持った強力な7はパワーリフが本家マノウォーをも凌駕するほどの突進力で突き進みます。ヴォーカルも遂にエリック・アダムスの魂を受け継いだかのように狂ったようなハイトーンスクリーム炸裂の上、ブレーキが壊れた暴走列車のようにギターが音を出しまくります。テクニカルなプレイも見せるツインリードギターの絡みが官能的なネオクラシカルでドラマティックなインストゥルメンタルの8に続いて、ドラマティックなイントロから、タイトなリフと血管切れそうなヴォーカルで押しまくるパワーメタリックでウォーリアーなコーラスも熱いタイトルトラックの9、そして更にスピードアップするか?というアドレナリン沸騰の爆走ナンバー10では完全にエリック・アダムスと一体化してます。バンド名を冠する11では、それまでのテンションを高めながらドラマティックに畳み掛けるような疾走感あふれるパートから、ミステリアスなミディアムテンポのパートでメロディを聴かせつつ、ギターソロが狂乱のスピードプレイを展開し、勇壮なエンディングを迎えます。

 ジャケットの与えるイメージを少しも損ねることの無い、このスペインから現れた問答無用のヘヴィメタル真剣勝負なサウンドは正しくメタルバカ一代の称号を授かるにふさわしい凄まじい暴れっぷりは、影響を受けたであろうバンドを上回るほどのエネルギーに満ち溢れています。ああ、このメタルウォーリアー達の前途に幸あれ。
同系統アルバム
CONDITION RED/IRON SAVIOR
WARRIORS OF THE WORLD/MANOWAR
NO WORLD ORDER/GAMMA RAY





September

BEYOND THE EMBRACE | DARKANE | IN FLAMES | RIOT | THY MAJESTIE | YYRKOON

AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE

アゲインスト・ジ・エレメンツ/ビヨンド・ジ・エンブレイス

SOUNDHOLIC TKCS-85047 [☆☆☆☆]

 アメリカはマサチューセッツ州出身のバンドのデビューアルバムです。北欧メロディックデスメタルから影響を受けたとされるアメリカ東海岸のニュースクール系バンドを称してマサチューセッツ・メタル〜MAメタルと呼ぶ…と言うのをライナーノーツを読んで分かりました。それはさておき、バンド構成がトリプルギターと言うことでアイアン・メイデンと同じなわけですが、音楽のスタイルもその影響下にあるようです。
 躍動感のあるギターリフで始まる1は叙情的なメロディを伴ないディストーションヴォイスとメタリカのジェイムズ・ヘットフィールド風の野卑なヴォーカルスタイルを組み合わせて、緩急を付けながらダイナミックな展開で進んでいきます。三本のギターが織り成すアンサンブルは哀愁に満ちたドラマティックなもので、楽曲に強い印象を与えます。 続く2は叙情的なメロディラインで引っ張るミディアムテンポのナンバーで、キャッチーなコーラスに劇的な展開を見せるギターソロのハーモニーが特徴的です。攻撃的な突進力を見せるイントロから哀愁を帯びた展開に移る3では疾走感の強いパートを挟みながら、叙情的なギターソロを聴かせます。ダーク・トランキュリティー風の叙情的でダークな色彩を持ったゆったりとした4でも泣きのギターソロで盛り上げます。
 アコースティックギターによるリリカルで物悲しいインストゥルメンタルを挟んで、ハードなリフによるスピードを小刻みに変えながらドラマティックに展開する疾走感の強いタイトルトラックに進んでいきます。アップテンポでコーラスが印象的な7ではイン・フレイムス風のアコースティックパートでドラマティックに演出していきます。切り刻むような鋭いギターリフから攻撃的に展開する8は情感豊かなコーラスを伴なってアイアン・メイデン風のギターが炸裂します。キャッチーなメロディのイントロで始まる9はディストーションヴォイスで荒々しく進みながら劇的に展開していきます。そしてスリリングに二転三転するメロディもたっぷりの強力なインストゥルメンタルでアルバムは幕を閉じます。
 トリプルギターを活かしたメロディ満載の展開は、先達のバンドにも引けを取らない強力なもので、叙情感が強調されたドラマティックなそのヘヴィメタルはメロディックデスメタルを経由した正統派への回帰を示すように思われる、新世代の潮流の一つになってくれることが期待されるアルバムです。
同系統アルバム
COLONY/IN FLAMES
THE MIND'S I/DARK TRANQUILLITY
BRAVE NEW WORLD/IRON MAIDEN

EXPANDING SENSES/DARKANE

エクスパンディング・センシーズ/ダーケイン

TOY'S FACTORY TFCK-87290 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。メンバーチェンジも無く順調に製作されたみたいです。
 ヘヴィでラウド、強力な存在感を備えたギターリフに前作同様の乾いたメロディラインを浮遊するダーティなヴォーカルが重なりあう密度の高い音空間を作り出すミディアムテンポの1で始まるアルバムは、スペーシーな雰囲気を作り出すキーボードにメロウなギターソロが加わって壮大に展開していきます。複雑に積み重ねられるリズムを苦も無くプレイするドラムが先導して、まるでモービッド・エンジェルな破壊力を持ったデスメタリックな2へと進んでいき、もちろん一筋縄で済まない楽曲はクリーントーンの神々しいコーラスを加えつつドラスティックに予想を覆しつつ展開していきます。連射される弾丸のような攻撃的なリフの3では壮絶なギャップを持ったメロディアスなコーラスとディストーションヴォイスとの絡みで緩急の効いた展開を見せ、小刻みなギターリフで突進してみせる4でもコーラスを挿入しつつ、テクニカルなギターソロを見せ付けます。激烈な爆発力を持ったリフにキャッチーとも言える扇情的なコーラスを加えて疾走するし、悲しみに満ちる物静かなアウトロに導かれる5、続く6は邪悪さにとりつかれる凶悪なリフで突進していきます。ヘヴィリフでスローに進む7はキーボードサウンドを伴なってミステリアスな空気を孕みつつ、クライマックスに向けてフレーズを積み重ねます。緻密なリフで疾走する8はテクニカルなプレイで舵を取りながら、ダイナミックな楽曲を作り出します。更に疾走するボーナストラックの9では複雑なドラミングで攻撃性を前面に押し出した邪悪なムードを生み出し、叙情的なメロディで始まる10はエモーショナルなヴォーカルのパートを経てブラックメタル風のスリリングなフレーズと重ねられる神聖なコーラスを交えて予想もできない展開になだれ込みます。
 すべての曲に数多くのアイディアと音楽的なエッセンスが詰め込まれたアルバムは曲数以上の満足感を与えています。更にクリアーになったサウンドも相まってエネルギーとテクニックを併せ持つ楽曲が高い次元で構築されていき、多様な色彩に彩られた暴虐かつ緻密な世界観を提示している驚愕のアルバムになってます。
同系統アルバム
DEUS DECEPTOR/NONEXIST
PHYSICIST/DEVIN TOWNSEND
UNDECEIVED/EXTOL

REROUTE TO REMAIN/IN FLAMES

リルート・トゥ・リメイン/イン・フレイムス

TOY'S FACTORY TFCK-87289 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの六枚目のアルバムです。アメリカツアーを経てワールドワイドな展開を狙うバンドが作った今回のアルバムは、かなりコマーシャルな仕上がりになってます。ほとんどの曲がラジオ・エディット版に聴こえるくらいに。
 メロディとアグレッションが合わさった彼ららしいギターリフにディストーションヴォイスの邪悪さと、それを払拭するクリーンヴォイスが加わったコーラスが生み出すコントラストが美しいミディアムテンポの曲で始まるアルバムは、間髪入れずに始まる突進力のある破壊的なパートからニューウェーブ風の気だるいメロディパートを交えてドラマティックに展開する2、スラッシーなリフで押しまくるストレートな3はクリーントーンのコーラスを絡めて疾走します。泣きメロのリフで始まる4はダイナミックに展開して叙情的で劇的なコーラスでまとめます。デジタル的なSEからヘヴィリフへ繋いで、ゴシックメタル風の倦怠感を感じさせる5、邪悪なギターリフから繰り出される圧迫感を感じさせるヴォーカル、そしてエフェクトの効いたサビへと進むダウンチューンの6はオーセンティックなギターソロが少し聴かれます。叙情的で耽美的なムードで迫るアコースティックギターを使ったソフトな7では情念の高まりを感じさせ、一転激烈で破壊的なリフが叩きつけられる疾走曲の8は問答無用の力強さを見せます。
 フックのあるリフで進むアップテンポの9は物悲しいムードに彩られており、情動的なサビと叙情的なギターソロを持っています。ダイナミックなリフに扇情的なギター、情念を浮き出させるヴォーカルによって荒涼とした世界を映し出す10、スローテンポで邪悪なヴォーカルとキャッチーなコーラスの対比を見せつけるリリカルな11、アップテンポの攻撃的なリフから壮大なコーラスを聴かせるダイナミックな12、再びリリカルなムードの13では欧州的なメロディを伴った繊細な調べを聴かせ、ラウドなギターにスペーシーなヴォーカルで浮遊感を生み出す14はキャッチーなメロディのコーラスで今風な感じで締めくくります。
 アメリカでのツアー経験がかなりの影響だったことを感じさせるアルバムは、サウンドプロダクションではリズム面を強調するタイトな音作り、作曲面においては、よりヴォーカルメロディを重視したものになっていて、今までとは異なった感触を与えるものになっています。広い層の聴き手にアピールできそうなキャッチーなメロディと分かりやすいコンパクトな展開はバンドのこれからの活動の大きな力になりそうですが、彼等の魅力の一つであった情感豊かなギターソロはかなり減って、それに伴って欧州の闇を感じさせる部分も相当な部分が失われているようです。彼らがこれからマーケティングとアーティスティックな面のどちらに比重を置いて活動を続けるのかは分かりませんが、自分達のアイデンティティーを見失うことが無ければ、世界的な存在になる日も近いかもしれません。個人的に重要なバンドになっているかどうかは別だけど。
同系統アルバム
IOWA/SLIPKNOT
NATURAL BORN CHAOS/SOILWORK
DIGIMORTAL/FEAR FACTORY

THROUGH THE STORM/RIOT

スルー・ザ・ストーム/ライオット

TOSHIBA EMI TOCP-67017 [☆☆☆☆]

 不遇を絵に描いたようながら、それでも活動を続けてきたアメリカ出身のバンドの12枚目のアルバムです。ドラマーがハルフォードに取られてしまったので、元レインボー/ブラック・サバスで1999年にブルー・オイスター・カルトで来日したりしていたすっかりベテランのボビー・ロンディネリが加入しています。もちろん元ドラマーのような鋭いプレイを期待してはダメだ。
 ツインリードギターが濃密に絡み合う、湿った泣きのメロディ全開のオーセンティックながら疾走感のあるスピードナンバーで始まるアルバムは、今のヴォーカルだとやっぱり無理のあったパワーメタルな路線を遂にあきらめて、ハードロック色の強いメロディを中心に構成されたものになってます。エモーショナルなヴォーカルと哀愁たっぷりのコーラスが印象的なミディアムテンポの2、隙間の多いヘヴィなリフにスケール感の大きいヴォーカルメロディを持ったタイトな3、ナポレオンを題材にした落ち着いたメロディを持つダイナミックな展開の4、叙情的でドラマティックなバラードの5を挟んで、アップテンポでキャッチーなコーラスを持ったハードロッキンな6ではマーク・リールらしいフックのあるギターソロを聴かせます。ミディアムテンポの8では扇情的なヴォーカルと間を持ったギターソロで盛り上げ、ヴォーカルにエフェクトを効かせた9はキーボードも導入してミステリアスに進んでいき、ボーナストラックの9ではブルージーなフィーリングのメロディを聴かせます。
 そしてUFOのカバーの10にアイリッシュなメロディを持った泣きのインストゥルメンタルナンバーの11、そしてジョージ・ハリスンのカバーの12と結構バラエティに富んだ曲を揃えています。
 「THUNDERSTEEL」アルバムの呪縛から解き放たれたサウンドは初期の彼等が目指したブリティッシュ風味のハードロックに近いものになっていて、攻撃的で異様な緊張感を持っていたパワーメタルなサウンドを求める人には、すっかり肩透かしでしょう。が、バンドの成り立ちと現在のヴォーカルの特性を考えれば、多分これがベストな選択肢であり、ライオットらしいサウンドが充分にあふれた魅力的なアルバムです。


 ということで、ヴォーカルの交代はまだかなあ、と首を長くして待つ今日この頃です。
同系統アルバム
HEAVEN FORBID/BLUE OYSTER CULT
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
HYPNOTICA/EMPIRE

HASTINGS 1066/THY MAJESTIE

ヘイスティングス 1066/ザイ・マジェスティ

SOUNDHOLIC TKCS-85046 [☆☆☆☆]

 イタリア出身のバンドのセカンドアルバムです。ハイトーンヴォーカルを擁するメロディアスなアルバムは、イングランドで1066年に起こった「ヘイスティングスの戦い」をテーマにしたコンセプトアルバムになってます。
 映画音楽を彷彿とさせる壮大で大仰なイントロダクションは、混声コーラスの緊迫感を煽る合唱で強く情景を想起させ期待感を高めながらアルバムの幕を開けます。そして、続くドラマティックなスピードナンバーの2は扇情性の強いコーラスメロディと共にテクニカルなギターとキーボードが有機的に絡み合いながら、あくまでもメロディアスに突き進みます。バグパイプの調べに彩られる3に導かれる4は、透明感の強い女性コーラス、オペラティックな混声コーラスを伴なって、リズムチェンジを繰り返すスリリングな展開を見せながら、やはり劇的に構築されています。中世音楽調のイントロから一転疾走感の強いギターリフで押しまくる5は中間部で再び中世音楽調のブレイクを挟みながらオペラティックなコーラスでカタルシスに向って一直線です。コーラスが主導の小品6では緊迫感を生み出し、続くインストゥルメンタルの7では闘いの始まりを告げる緊張感を高めていきます。中世音楽のエッセンスを取り込んだ8では起伏の激しい展開で二転三転しつつ戦乱の模様をスリリングに描き出します。10では哀愁に満ちたメロディで悲哀と苦悩を情念的に唄いあげます。再びコーラスが主体の12はミディアムテンポでじっくりと情景を描写し、華麗なギター、キーボードソロで盛り上げます。そして、哀愁あるメロディを持つドラマティックなスピードメタルに戻っての13は感情を抑えたシリアスな雰囲気を作り出し、そして14では全ての要素が重層的に組み込まれた劇的でダイナミックな展開によって大団円を迎えます。
 オペラティックかつドラマティックな曲の構成に、イタリアンロックの血が脈打つプログレッシヴなプレイを加味したメロディックメタルは、劇場性の強い起承転結のはっきりしたもので、ストーリーとサウンドが一体化して迫るスリリングなものです。バックの豪華なサウンドを支えるには少しヴォーカルが力量不足に感じられますが、緻密に作り上げられた楽曲は多少の齟齬を打ち消すのに充分以上のクオリティを保っており、安定したバックのプレイも手伝って世界観を確立させています。製作に充分な資金と時間を掛けたことが作品の質に如実に現れた、バンドの自信作であり代表作になるだろうアルバムです。
同系統アルバム
POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY
NIGHTFALL IN MIDDLE-EARTH/BLIND GUARDIAN
V/SYMPHONY X

DYING SUN/YYRKOON

ダイイング・サン/イイルクーン

KING RECORD KICP-892 [☆☆☆☆]

 フランス出身のバンドのセカンドアルバムです。1996年に結成されたバンドは、そのバンド名をイギリスの作家マイクル・ムアコックが描く「エルリック・サーガ」の登場人物の一人から取っており、そのイイルクーンは主人公エルリックの従弟であり、帝国の玉座を狙うためにエルリックを罠にかけ、それに失敗するとエルリックの妃になる予定の自分の妹のサイモリルを妃にしようとしたところ帰ってきたエルリックに阻止されて、逆上したイイルクーンは妹を奪い取り、その逃避行の過程で入手した黒い魔剣同士の闘いでエルリックに敗北して、それでも尚且つエルリックの慈悲を受けて旅に出た彼の代わりに玉座についていたけれども、結局エルリックの怒りに満ちた行動によって帝国もろとも灰燼に帰したという、誰がどう読んでも悪役まっしぐらというキャラクター設定がされているものですが、とくに音楽性には関係無く。
 怪奇色の強いイントロダクションの1から、疾走感の強いダークで攻撃的な色調の2へとアルバムは進んでいきます。ここで聴かれるヴォーカルはディストーションヴォイスとクリーントーンのヴォーカルを絡ませる暴虐性と扇情性を併せ持ったものになっています。ギターソロはミステリアスなメロディとドラマティックな展開を見せるもので、ダイナミックな楽曲を盛り上げます。続く3は小刻みなギターリフと神秘的なキーボードで構成される起伏の激しい劇的な曲で、コーラスでは開放感のあるキャッチーなメロディを聴かせます。疾走感のある正統派ヘヴィメタル風のギターリフの4はメロディアスなギターとコーラスを持ちドラマティックなクライマックスに向けて進みます。邪悪なヴォーカルがリードして80年代スラッシュメタル風の雰囲気で進行する5、ソリッドなギターで突進するスリリングなインストゥルメンタルの6を挟んで、ドラマティックなイントロから情念的なヴォーカルパート、さらにメロディアスなクリーントーンのサビが劇的さを倍増させるミディアムテンポの7では緊張感と物語性を内包するインストパートで盛り上げます。ミディアムテンポでルーズな雰囲気の8はメロウなコーラスを持ち、叙情的なメロディを積み重ねるミディアムテンポの9、ヘヴィに突進する10ではデスメタルらしい邪悪さに満ちたヴォーカルとメロディアスなギターのコントラストが印象的です。陰鬱なギターとオーケストレーションされた幽玄なキーボードによるインストゥルメンタルでアルバム自体は幕を閉じますが、ボーナストラックには裏声まで真似するキング・ダイアモンドのカバーが収められています。
 スラッシュメタル、メロディックデスメタルのスタイルを吸収しながら、オーセンティックなヘヴィメタルらしい展開とカタルシスを生み出すサウンドは、二種類のヴォーカルのコントラストと、メロディを中心としたギタープレイによる劇的効果によって、ドラマティックに“決める”ことが出来る魅力あるものになっています。切れ味鋭いプレイとダイナミックな曲展開が生み出すヘヴィメタルらしい醍醐味を与えるアルバムになってます。そして、やっぱり2003年はフレンチメタルが躍進するような気がする今日この頃です。
同系統アルバム
PERVERTIGO/THRONE OF CHAOS
EDEN/LYZANXIA
A PREDATOR'S PORTRAIT/SOILWORK





October

AXENSTAR | DIONYSUS | HAMMERFALL | LYZANXIA | MANTICORA | NILE | RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM |

PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR

パーペチュアル・トワイライト/アクセンスター

KING RECORD KICP-895 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。
 ツーバス連打で突っ走るメロディックスピードメタルを絵に描いたような1で始まるアルバムは、キーボードとギターのアンサンブルによってドラマティックに展開していくメロディ重視の方向性を保っています。ソフトな感触のハイトーンヴォーカルが唄うオープニングナンバーは、まるでこのスタイルのサウンドを代表するソナタ・アークティカのような雰囲気(ヴォーカルのテンションは低め)を持った疾走感あふれるものです。続く2はオーセンティックなメタルリフで構成されるアップテンポのナンバーで、存在感の少し薄い哀愁帯びたヴォーカルがキャッチーなメロディを唄いあげ、重みのあるギターソロが印象的にアピールします。キャッチーなメロディが炸裂するドラマティックな3はツインリードギターが叙情的に迫ります。アップテンポでストラトヴァリウス風の歌メロを中心に進む4は哀愁たっぷりのコーラスで感情を揺さぶります。緊迫感のあるギタープレイで進行する5はスピードを上げながら華麗なインストゥルメンタルが展開されていきます。再びスピードを上げて疾走する6は攻撃性もアップして興奮度も急上昇ですが、ヴォーカルが入ると少しクールダウン。リリカルなインストゥルメンタルをイントロに、ドラマティックに始まる8はメロウなコーラスを持った、疾走感と突進力の強いファストナンバーです。続くボーナストラックの9も同じ傾向の疾走ナンバーで、エンディングの10はスピード感あるイントロから高揚感を高めるメロディが怒涛のように押し寄せ、スリリングなインストが劇的な展開を見せる大作になっています。
 北欧メタルらしい哀愁と爽やかさが同居するサウンドは新世代メロディックスピードメタルの影響を感じさせながら、メロディ満載かつ流麗なギタープレイで上手くまとまっていますが、結構ぬるめで淡白にも感じさせるヴォーカルに象徴されるように、バンド自体の色は希薄だったりします。キラキラメロディとアグレッションの境界を微妙なバランスで進んでいたりしますが、どちらの側もあと一歩踏み込みが足りないような、もどかしさを感じるアルバムになってます。
同系統アルバム
SILENCE/SONATA ARCTICA
THUNDERSTONE/THUNDERSTONE
INFATUATOR/SILENT FORCE

SIGN OF TRUTH/DIONYSUS

サイン・オヴ・トゥルース/ディオニソス

MARQUEE MICP-10331 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのデビューアルバムです。ネイションのギタリストであるジョニー・ウーリンと元シナジーのドラマーだったロニー・ミラノヴィックが中心となって結成されたバンドは、同じネイションのベーシストとストームウィンドのキーボードが参加して、ヴォーカルにはラプソディーのギタリストのソロアルバムに参加していたオラフ・ヘイヤーを迎えてアルバムを製作しています。さらにプロデュースはエドガイのトビアス・サメットが務めています。
 情感たっぷりにヴィブラートを効かせて伸びやかな歌唱を聴かせるハイトーンヴォーカルが導くサウンドはネオクラシカルなフィーリングの強い、オーセンティックなスタイルのヘヴィメタルで、北欧らしい旋律を伴ったドラマティックなものになってます。希望を失うことの無いポジティヴな感情を伝える楽曲はオープニングナンバーから高揚感を高めるドラマティックなコーラスを伴って進んでいき、緻密で繊細なギターソロが盛り上げます。メロディたっぷりのストレートなスピードナンバーの2、6、パワーメタリックで攻撃的な3、9、物悲しいメロディを紡ぐ4、ヘヴィに進む5、ドラマティックな10、叙情的なバラードまで揃えたバラエティのあるアルバムになってます。
 スタイルとしては、それほど目新しいところは無いですが、経験値の高いアーティストが集まった最初からクオリティの高い楽曲が目白押しの伝統的なメロディックメタルとしても一級品のアルバムです。
同系統アルバム
HERO-NATION/METALIUM
SHADOWLAND/NOCTURNAL RITES
SECRET VISIONS/VIRTUOCITY

CRIMSON THUNDER/HAMMERFALL

クリムゾン・サンダー/ハンマーフォール

VICTOR VICP-62063 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの4枚目のアルバムです。ヴォーカリストは酒場で喧嘩を売られてケガをしたりしてしまいましたが、メンバーチェンジも無くヨーロッパでの人気の高さを引っさげて帰ってきました。
 鋼鉄風味満載のタフなギターリフで始まるミディアムテンポの1はアクセプトを彷彿とさせる勇壮なコーラスとメロディを伴って骨太なところをアピールします。ヴォーカルはいつもどおりの叙情的なメロディを唄うソフト路線ですが。続く2ではコーラスにマット・シナーが参加しての厚くて熱いコーラスの応酬に、攻撃的なリフを繰り出す押しの強さとドラマティックなギターソロを聴かせます。ライオットの“FLIGHT OF THE WARRIOR”的なスピード感を感じさせる3では高揚感を高めるサビにツインリードギターの絡みが印象的です。ヘヴィなリフのタイトルトラックはコーラスが同じ“クリムゾン”がタイトルに含まれるあの曲にちょっとー似てるような。
 荘厳さと重厚さを兼ね備えるクワイアとオルガンによるインストゥルメンタルに導かれて、メタリックなリフが展開される6は湿り気を帯びたキャッチーなメロディが盛り上がりのピークに達するかどうかの微妙なところを抑えるハンマーフォール節が炸裂する彼らの本領発揮の一曲です。アコースティックギターとストリングスで彩られるバラードの7からデヴィッド・T・チャスティンのカバーの8へと進んでいき、ザクザクしたギターリフが先導するヘヴィナンバーの9でもコーラスはひたすら熱いです。泣きメロギターが炸裂するムーディなインストゥルメンタルの10で落ち着いたところで、壮大なイントロで始まる11はドラマティックでヒロイックな空気が全編を支配する、集え!勇敢なヘヴィメタル・ウォーリアー!みたいな、そして皆でハミング。
 ヨーロッパでの絶大な支持を背景に、オーセンティックなヘヴィメタルの牙城を守りつづける彼らの姿勢はデビューから首尾一貫しており、それゆえにスタイルとしては再生産的なところも否めない訳ですが、キャッチーなメロディとそれなりにヘヴィな音像の分かりやすいヘヴィメタルは魅力的なところもあったりで、こういうソフト系なバンドは入り口として常に必要とされているのような気もする今日この頃です。そして、このスタイルのバンドは伝説になるまで同じスタイルか、路線変更で迷走して消え去るかの二つに一つですが、さて。

でも、そのラウドネスはどうなんだー。
同系統アルバム
FACELESS WORLD/U.D.O.
BEWARE THE HEAVENS/SINERGY
THUNDERSTEEL/RIOT

MINDCRIMES/LYZANXIA

マインドクライムス/リザンクシア

KING RECORD KICP-894 [☆☆☆☆☆]

 フランス出身のバンドのセカンドアルバムです。ドラマーが足を骨折したということで、このアルバムでは別のドラマーが叩いてますが正式メンバーかどうかはまだ分かりません。
 スペーシーなイントロからヘヴィで攻撃的に迫るギターリフを背景に、ドスの効いたディストーションヴォイスが高圧的に迫りクリーンヴォイスとのコーラスを作りながら、硬質なメロディを持った変則的なギターソロへと繋ぐダイナミックな1から始まるアルバムは、メガデスのデイヴ・ムステイン風の唸る歌唱を披露するダークなムードを持った起伏の激しい展開の2へと進みます。ヘヴィなリフとタイトなリズム隊による圧迫感の強い3では激情を表現するヴォーカルから哀愁のギターソロから一転、攻撃的で殺傷力の高いスラッシーなパートへと展開されます。モダンなフィーリングの非人間的な冷酷さを感じさせる機械的な攻撃性を持ったパートと情感ゆたかなヴォーカルにメロウなギターソロを聴かせるパートのコントラストが印象的な4、グルーヴィなリフに鬱屈とした情念を込めるスローテンポの5でもギターソロはあくまでも鮮やかに。鋭利なリフとディストーションヴォイスで強烈に突進するデスラッシュな6はキャッチーでメロディアスなクワイアと華麗なギターソロで劇的に盛り上げます。押しの強いメタリックなリフで組み立てる7は呟くようなヴォーカルから感情を爆発させるコーラスへと進んでいきます。叙情的なギターから哀愁帯びた歌唱で進む8はディストーションヴォイスで場面を変転させながら、リリカルなメロディを紡ぎだします。弾むようなリフの9は突進力のあるスラッシーな曲でギターソロが印象的です。情念満ちたマイナーなヴォーカルメロディで進む10は緊迫感を持ったムードに変化していきます。タイトなリフとメロディアスなフレーズを組み合わせる圧力の高い11、爆発力のあるリフでブレイクを繰り返しながら激情を高めながら進む12、 そしてボーナストラックの不穏な雰囲気のデスラッシュな13、二転三転するスリリングな展開の14に至るまで、密度の高い楽曲を揃えています。
 デス〜スラッシュメタルの流れを汲んだ、緊張感を持ったギタープレイによって作り出される楽曲は、かなり定着しつつあるディストーションヴォイスとクリーンなヴォーカルを使い分けて感情を表現するスタイルによって、凶暴性と情感を鮮やかにかつ明快に表現するドラマティックなヘヴィメタルになっています。ヴォーカリストの感情表現力は着実に向上しており、豊かなメロディを持ったインストゥルメンタルパートに攻撃的なリフと狂獣の叫びが構築する感情を発露させるドラマは緻密な展開で高い構成力と完成度を保っており、メロディアス&アグレッシヴなスタイルのバンド群から頭一つ飛び出しそうな勢いを持ったアルバムです。
同系統アルバム
DYING SUN/YYRKOON
AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE
WAGES OF SIN/ARCH ENEMY

HYPERION/MANTICORA

ハイペリオン/マンティコラ

KING RECORD KICP-893 [☆☆☆☆]

 デンマーク出身のバンドのサードアルバムです。前作から二人のメンバーチェンジを経て製作されています。アメリカの作家ダン・シモンズのSF叙事詩「ハイペリオン」をテーマにしたコンセプトアルバムの本作は、元作品にも負けないドラマティックなものになってます。
 ナレーションを加えたミステリアスでスペーシーな(宇宙が舞台だから)イントロダクションでアルバム始まります。爆発的な突進力を見せながらドラマティックに疾走する2はブラインド・ガーディアンを彷彿とさせる朗々と唄うヴォーカルスタイルと楽曲は女性コーラスにクワイアを導入しつつ、情景を強く想起させる大仰でスリリングな展開を見せるものになってます。張り詰めた空気を感じさせるミディアムテンポからアップテンポは展開する3、神秘的なフレーズを組み合わせるイントロから力強く勇壮に進む4は更にミステリアス、オペラティックに複雑に展開していきます。勢いに任せて突進する5は濃厚なメロディを奏でながらドラマ性の強いインストゥルメンタルを組み込んで劇的に突き進みます。攻撃的なリフを中心に華麗なフレーズで構成される小品の6から一転して静かなイントロで始まる7は叙情的な雰囲気で紡ぎだされる劇的な大作で、続くアグレッションを前面に押し出して疾走する8とでアルバム全体でのコントラストを作ります。さらにメタリックに疾走する9ではキーボードとギターが絡み合って更にスピードを上げていきます。アコースティックギターでヴォーカルが唄いあげるリリカルな10、メロディアスにやっぱり疾走するインストゥルメンタルの11、静けさを感じさせるイントロから女性ヴォーカルを絡めて情熱的に緊張感を持って盛り上がっていく12はエンディングにふさわしい大作になっています。
 雄々しく勇壮に力強いドラマを演出するその手法は、初期ブラインド・ガーディアンに近いスタイルで、微妙に層の薄いところで本家が離れてしまったところにある、純ヘヴィメタル的なカタルシス満載なものです。聴き手を圧倒するようなインストゥルメンタルの執拗な攻勢と、高揚感を高めるコーラスの相乗効果によってもたらされるものは物語世界を鮮やかに描き出します。ヴォーカルが少し不安定なことや曲が冗長とかもう少しまとめた方が良さそうなところもありますが、「超ブラインド・ガーディアン」タイプとか、言われるようになるかもしれません、そのうち。

でも、プリティ・メイズのカバーの歌はちょっと雰囲気違うような。
同系統アルバム
IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE/BLIND GUARDIAN
RAIN OF A THOUSAND FLAMES/RHAPSODY
SOMEWHERE OUT IN SPACE/GAMMA RAY

IN THEIR DARKENED SHRINES/NILE

イン・ゼア・ダーケンド・シュラインズ/ナイル

TOY'S FACTORY TFCK-87296 [☆☆☆☆]

 アメリカ出身のデスメタルバンドのサードアルバムです。ヴォーカリスト兼ベーシストとドラマーが代わってます。トリプルヴォーカルという体制を取っているものの、もの凄くタイプが違う声が揃ってるわけではありませんが、バンド名が表す古代中近東の神秘の世界を描き出す、邪悪さたっぷりの暗黒サウンドが前作同様構築されています。
 恐怖の始まりを告げる、狂乱と混沌の嵐が吹き荒れ苦痛と絶望に満ちた壮絶な展開を見せる1から始まるアルバムは、続く複雑なフレーズを詰め込んで妖しげなメロディらしきものを伴いながら突進する2、中近東の空気を感じさせるミディアムテンポの3では陰鬱としたムードを漂わせながら苦痛を描きます。再び争いの騒乱を描き出し緊張感のあるインストゥルメンタルを聴かせる戦慄の4、中近東風のイントロから凶暴な展開を見せる5はリズムチェンジを繰り返しながら壮大なパートを絡めて圧力を高めていきます。爆発的な突進力を見せる6は人知を超えた圧倒的な力を感じさせ、ドロドロした呪文を唱え続けるスローテンポの7、スリリングなギターが警戒感を高める攻撃的な8。
 組曲形式になっている9〜12ではスケール感の大きい中近東フレーズが展開され、呪われしものたちが繰り広げる忌まわしい歴史を鮮やかに描き出します。
 古代エジプトの黒歴史を描き出す孤高のサウンドは異様な迫力とスケール感を持って迫り、その呪術めいた楽曲は世界の暗黒を聴き手に突きつけます。異形の神が支配する血塗られた砂漠の匂いまで伝わりそうな、煉獄が目前に広がる魔術的なアルバムがここにあります。
同系統アルバム
ARTS OF DESOLATION/THE FORSAKEN
GATEWAYS OF ANNIHILATION/MORBID ANGEL
LITANY/VADER

TIME REQUIEM/RICHARD ANDERSSON'S TIME REQUIEM

タイム・レクイエム/リチャード・アンダーソンズ・タイム・レクイエム

MARQUEE MICP-10328 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のマジェスティックの中心人物であるキーボードプレイヤー、リチャード・アンダーソンが新たに結成したバンドのデビューアルバムです。マジェスティックの方はレーベルとの契約の問題云々で解体状態で、メンバーもほとんどがこちらに参加しています。
 シンフォニー・エックスもかくや、と思わせるスリリングな展開の連続で度肝を抜く変拍子を繰り返しながら緊張感のあるフレーズを重ねていくインストゥルメンタルパートを持った9分超の大作で幕を開けるアルバムは、中心人物であるリチャード・アンダーソンの縦横無尽のキーボードプレイを全面に押し出したテクニカルで複雑な曲構成の様式的な色合いの強いものになっています。力強いヴォーカルが唄うダークなメロディがシンフォニー・エックス的な印象を与える2、ギターでなくてキーボードが華麗に弾きまくるイングヴェイ・マルムスティーンの流れにある様式美旋律なネオクラシカルナンバーの3、バロック調のイントロからヘヴィなリフを持つミディアムテンポのドラマティックな4、速弾きキーボードが乱舞するスリリングなインストゥルメンタルの5から、プログレ風味な展開のシリアスな6、そしてクラシックとイングヴェイをパク…じゃなくてインスパイア&リスペクトしたネオクラシカルかつドラマティックに疾走する7はとんでもない代物でキーボードが嵐のように弾かれまくってます。かなりな勢いでドリーム・シアターしているテクニカルなインストの8を挟んで、ドラマティックに疾走する9までキーボードがあふれかえっているサウンドが詰め込まれています。
 リチャード・アンダーソンのキーボードプレイを中心とした、言わばオレのキーボードが一番重要だ!というイングヴェイ的なアルバムになってます。リチャード・アンダーソンの独自のフレーズとか展開とかはまだ少なくて、フォロワー状態であることは間違いありませんが、高いテクニックがもたらす緊張感と高密度の音像が有無を言わせぬ迫力を持って迫ってきます。色々なバンドのイイとこ取りなアルバムではありますが、これだけ出来るバンドもそんなに多くはないですし、色々なおいしいフレーズが一度に聴けてお買い得…

…かもしれない。
同系統アルバム
V/SYMPHONY X
APOCALYPSE/ARACHNES
DREAMLAND/DGM





Nobember

ANDROMEDA | ARWEN | INSANIA | LUCA TURILLI | OPUS ATLANTICA | REPTILIAN | RING OF FIRE | SHADOWS FALL | ZONATA |

II=I/ANDROMEDA

トゥー・イズ・ワン/アンドロメダ

MARQUEE MICP-10338 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。ノンイグジストでもプレイしている中心人物のヨハン・レインホルツが率いるバンドはデビューアルバムでは元ダーケインのヴォーカルが唄っていましたが、新たに加入したヴォーカルによってそのアルバムも取り直してリリースしたりしています。
 北欧風味のメロディアスなフレーズが詰め込まれたことによってキャッチーな雰囲気を伴ったスリリングな前作とは表情を変えた今作は、よりプログレッシヴな側面が強調された緊迫感と圧力が高まる密度の高いサウンドになってます。ドリームシアターを彷彿とさせるテクニカルで複雑な展開を見せるヘヴィ&ダークな1から始まるアルバムは、さらにヘヴィかつダークな2へと進んでいき、雰囲気はペイン・オヴ・サルベイションに近い内省的なスピリチュアルな世界へと踏み込んでいきます。テクニカルなプレイを軸に攻撃的に迫る緊張感の強い3、メロウな雰囲気で優しいムードのタイトルトラックは後半で激しく展開する大作です。ミステリアスなイントロから躍動感のあるスリリングなプレイを聴かせるかなり長編のインストゥルメンタルを挟んで、ピアノの叙情的なメロディで紡ぎだす情感豊かな6、70年代プログレ風のキーボードサウンドが印象的な7は圧迫感が強く、ピアノのイントロで始まる8は不穏なインストゥルメンタルへと進み、タイトなヴォーカルによってアグレッシヴに展開します。スケール感の大きいスペーシーな感覚のイントロの9は二転三転しながらクライマックスに向けて突き進みます。
 前作のコンパクトな判り易さがかなり後退して、アーティスティックな欲望を追求していくテクニカルな面を前面に押し出したサウンドは、聴き手に多少の忍耐を強いるものになっていて集中力を持続させるのが結構大変ですが、圧倒的なテクニックと緻密に構成される楽曲が生み出す存在感は強い求心力をアルバムに与えます。
同系統アルバム
SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER
REMEDY LANE/PAIN OF SALVATION
A SCEPTIC'S UNIVERSE/SPIRAL ARCHITECT

MEMORIES OF A DREAM/ARWEN

メモリーズ・オブ・ア・ドリーム/アルウェン

KING RECORD KICP-897 [☆☆☆☆]

 スペイン出身のバンドのデビューアルバムです。男女ヴォーカルにツインギター、ツインキーボードの8人編成になってます。
 伸びのあるクセの少ない男性ヴォーカルが唄いあげる楽曲は、リリカルなパートとダイナミックなパートのコントラストの強い、クラシカルなフィーリングもあるメロディアスなものになっており、かなり力の入ったファルセット気味の高音と優雅さを持った曲展開はアングラを彷彿とさせるものでドラマティックに開放的に進んでいきます。ピアノとキーボードが絡み合う流麗なイントロダクションから始まるアルバムは、ドラマティックなキーボードが畳み掛けてスピード感を保ちながら、起伏の激しいミステリアスなフレーズによるテクニカルなインストゥルメンタルで盛り上げる2でバンドの特徴をアピールします。ピアノのリリカルなフレーズとアグレッシヴなギターリフが溶け合うイントロから華麗で繊細なメロディと物語性の強いインストを聴かせる独特の感覚を持った鮮やかな描写の3、キーボードとギターのスリリングなイントロのスペーシーな感覚を持ったテクニカル系の4でも芳醇なメロディに満ちています。癒し系な始まりでドラマティックに変転する5は、終盤にかけてインストが加速気味。メタリックなリフを叩きつけながら飛翔感のあるヴォーカルと優しい女性ヴォーカル、さらに透明感のあるキーボードをフィーチュアする6、物悲しいインストゥルメンタルを挟んで、ドラマティックに疾走するイントロからキャッチーなフレーズを連ねて盛り上げていく8、叙情的なメロディを女性ヴォーカルが歌う優しげな9も男性ヴォーカルがパワフルに盛り上げたりします。パワフルに押しまくる10は割とストレートなスピードナンバーで、ミディアムテンポで弾むリズムを持った11はやたらとヴォーカルのテンションが高いテクニカルなナンバーです。
 パワーのあるヴォーカルと妙なフックのあるインストゥルメンタルが結びついて、キャッチーだけれども期待するところとは少し違うところでやたらと盛り上がる様が、これがスペインの血か!?と感じさせるドラマティックなヘヴィメタルは、何か見えないところで今にも弾けそうな勢いのある情熱を高めつつあるような期待感を持ったサウンドになってます。なので次のアルバムでは本性を露にして欲しいものです。


そして、このジャケットの夕星姫にはノーコメントさ!
同系統アルバム
RITUAL/SHAMAN
REBIRTH/ANGRA
ARCANA/EDENBRIDGE

FANTASY/INSANIA

ファンタジー/インサニア

MARQUEE MICP-10339 [☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドの三枚目のアルバムです。ヴォーカリストが交替しています。
 大仰なイントロダクションで始まるアルバムは、やっぱり初めて聴いた気がしないメロディックスピードメタル路線なサウンドが展開されていきます。少し荒れた感じのハイトーンヴォーカルが唄いあげる希望に満ちたファンタジックワールドは、どこかで聴いたことがあるのに思い出せないイライラ感が高ま…じゃなくて高揚感を目一杯盛り上げるツインリードのギターワークのハロウィンからストラトヴァリウスへと飛翔する2から、躁状態の明るいメロディが炸裂する小気味良く突き進む3へと、マイナーメロディでアップテンポのキャッチーな4、ピアノとヘヴィリフが絡み合う5は豪華なキーボードでメタリックなリフを彩るアップテンポの壮大なコーラスの一曲です。ガンマ・レイ的なクワイアで始まる6はミディアムテンポの逞しいナンバーで、クラシカルな中間部にキャッチーだったり大仰だったりするコーラスも厚め。ドラマティックに始まる7はフックのあるメロディで引っ張るパワフルなヴォーカルが印象的なアップテンポの曲でツインリードが聴き所。扇情的なメロディでスピード感のある展開のタイトルトラックはキーボードとギターがドラマティックに盛り上げます。シリアスな雰囲気で疾走するメロディアスな9、北欧的な空気を持った10では哀愁漂うメロディがドラマティックに展開されます。明るいメロディでテンションの高い11、ボーナストラックのインストゥルメンタルはドラマティックにネオクラシカルなフレーズを詰め込んでいます。
 メロディックスピードメタル系先達バンドの影響を大きく受けながら、遂に借り物フレーズを判別できなくなるまで解体して組み込んでしまってまとめ上げる、きっと何か違う才能が花開いたコラージュメタルの決定版として末永く語り継がれる…かどうかは別にして、クオリティは一応高いアルバムになってます。
同系統アルバム
SIGN OF THE WINNER/HEAVENLY
THE DAMNED SHIP/ARTHEMIS
BEYOND REALITY/DREAMTALE

PROPHET OF THE LAST ECLIPSE/LUCA TURILLI

プロフェット・オブ・ザ・ラスト・エクリプス/ルカ・トゥリッリ

VICTOR VICP-62000 [☆☆☆☆]

 イタリアのバンド、ラプソディーの中心人物のギタリスト、ルカ・トゥリッリのソロアルバム第二弾です。ヴォーカルはディオニソスでも唄っているオラフ・ヘイヤーとメンバーは前作と変わりありません。
 サウンドの基本路線はラプソディーと同じ、シンフォニックなドラマティックメタルですが、舞台設定が微妙にSF寄りになっているためデジタルなエフェクトが施されたキーボードが導入されており、本家とは少し感触が異なった世界が繰り広げられています。スペーシーなSEのイントロダクションから、荘厳なコーラスをふんだんに盛り込んだスケール感の大きなドラマティックナンバーで始まるアルバムは、デジタル色とクラシカルなフィーリングが融合した華麗なキーボードサウンドが展開される鋭いスピードナンバーの3、スペーシーで壮大なインストゥルメンタルを挟んで、ミステリアスな雰囲気を高めていくインダストリアルなフレーズと豪華なドラマィックパートを組み合わせて展開する5、そして攻撃的に劇的に展開する緊張感を持った6でも畳み掛けるコーラスワークが圧倒的な量感を持って迫ります。叙情的なメロディを唄いあげる情感豊かな7、続くシングルカットされた8はスリリングなコーラスを伴ったドラマティックな疾走ナンバーです。民族音楽フレーズを取り入れた9はメタリックなリフとの相乗効果でテンションの高い躁的な世界が展開されます。荘厳なコーラスによって導かれる大作の10は、これまでのサウンドを全て詰め込んだかのような迫力と存在感を持っており、アルバムの最後を締めくくります。
 ドラマティックなシンフォニックメタルという形はラプソディーと同じながら、それとは異なるアクセントを持ったスタイルを導入することによって生み出されるサウンドは聴き手の目先を変えつつ期待を裏切らないものになっています。なぜラプソディーで無いのか?という疑問は浮かんだりしますが。
同系統アルバム
POWER OF THE DRAGONFLAME/RHAPSODY
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS
HASTINGS 1066/THY MAJESTIE

OPUS ATLANTICA/OPUS ATLANTICA

オパス・アトランティカ/オパス・アトランティカ

MARQUEE MICP-10337 [☆☆☆☆]

 元ミッドナイト・サンのヴォーカリストでスウェーデン出身のアーティスト、ピート・サンドベリが新たに作ったプロジェクトのファーストアルバムです。現在では彼はシルバーセラフやピート・サンドベリズ・ジェイドなどで活動中ですが、元を含むミッドナイト・サンのメンバーを集めたラインナップになっています。
 スリリングに突き進むイントロからのドラマティックでメロディアスなナンバーの1はソフトなフィーリングを伴ったヴォーカルと高揚感を高めるコーラスに導かれていき、ネオクラシカルな雰囲気を持ったアルバムを予感させます。続くメタリックで硬質のリフを持った2はキャッチーなコーラスがテンポを上げながら盛り上がっていきます。キーボードのイントロからストロングスタイルのリフからタイトに進む3は哀愁漂うコーラスとサビが有機的に絡み合いインストゥルメンタルがネオクラシカルに展開し、4は情感豊かにヴォーカルとギターが泣いてみるパワーバラードです。聖歌隊のような荘厳なコーラスから始まるネオクラシカルなインストゥルメンタルの5を越えて、クラシカルなフィーリングのキャッチーなリフに哀愁あるメロディが炸裂するスピード感も感じさせるドラマティックな6へと進んでいき、間髪いれずに更に神聖なコーラスに導かれるドラマティックな7と連続コンボでノックアウトって感じです。ポップな感覚のミディアムテンポの8、さらにメタリックな音像の9はソリッドで空気でちょっと毛色が変わってます。
 ミッドナイト・サンを更にドラマティックかつ勇壮にしたようなサウンドはピート・サンドベリのファンにしてみれば、待ってました!という感じの期待に応えた高品質の楽曲を提供してます。雑誌のインタビューでは売れ線のスピードメタル路線を意図的にやったと暴露してしまいましたが、狙ってこれだけのアルバムが作れる才能は凄まじいと言うべきか、はたまたこのスタイルのバンドの可能性が狭まりつつあることを嘆くべきか…。
同系統アルバム
SIGN OF TRUTH/DIONYSUS
NOW AND FOREVER/MEDUZA
BREATH OF ETERNITY/HIGHLORD

THUNDERBLAZE/REPTILIAN

サンダーブレイズ/レプティリアン

SOUNDHOLIC TKCS-45052 [☆☆☆]

 スウェーデン出身の元マジェスティックのメンバーが結成したバンドのセカンドアルバムです。ギタリストにも元マジェスティックのメンバーが加わって元メンバーが3人になってます。
 キーボードの音がほとんど聴こえないアルバムは、ダーティな声質のヴォーカルが熱唱する、疾走感のあるストロングスタイルのアグレッシヴなメタルナンバーの1で厚みのあるコーラスと思い切りの良い高速ギターソロを見せます。さらにアップテンポの2ではネオクラシカルなギターソロが炸裂し、ダークなリフのヘヴィな3では地味なキーボードソロから高速ギターソロへと展開します。ライオット風のスピードメタルな4、プレイング・マンティスみたいな泣きメロ満載のミディアムテンポのなメロディアスな5、プリティ・メイズみたいな湿ったメロディでもポップな6ではインプロヴァイズ気味のギタープレイが聴けます。哀愁たっぷりのバラードの7、70年代ロックンロールなフィーリングの8、呪術的な雰囲気が漲るミディアムテンポの9、ネオクラシカルに疾走する10はスリリングなギターバトルを繰り広げたりします。ボーナストラックの11はアップテンポでキャッチーな一曲で本編よりも良いような。さらに「剣の舞」もやってます。
 伝統的を通り越して、すっかりオールドスタイルに近づきつつあるサウンドはギターオリエンテッドな楽曲が揃ってパワーメタリックなもので、手法としてはオーソドックスに奇をてらわずクオリティも高いのですけど、これといって悪いところが無い代わりに誉めるところを見つけるのが難しい、優等生みたいな面白みの少ないサウンドになってます。抑えるべきところは抑えている、一定以上のレベルにある魅力を持ったアルバムであることは間違い無いのですが、どうにもならない煮え切らなさが残るのは何故か。
同系統アルバム
PLANET PANIC/PRETTY MAIDS
CSYSTEM X/IMPELLITTERI
XILED TO INFINITY AND ONE/SEVEN WITCHES

DREAMTOWER/RING OF FIRE

ドリームタワー/リング・オヴ・ファイア

MARQUEE MMICP-10334 [☆☆☆☆]

 マーク・ボールズ率いる実力派豪華メンバーによるセカンドアルバムです。ソロアルバムの時にプレイしていて日本公演にも参加したトニー・マカパインが正式にメンバーになっています。
 キャッチーなコーラスで始まる一曲目で、レインボー辺りを彷彿とさせるポップ路線に転向か?と思わせるアルバムは、前作ともマーク・ボールズの「リング・オヴ・ファイア」アルバムとも違うものになってます。エモーショナルなトニー・マカパインのギタープレイと今までとは少し違う音色のヴィタリ・クープリのキーボードによってドラマティックに進み、続く2ではダークでシリアスな雰囲気を持ったクラシカルなフレーズも導入された、テクニカルなインストゥルメンタルが印象に残るヘヴィな一曲です。さらにダークな3ではエジプトな色合いを加えながら、華麗なギターと伸びやかなヴォーカル、更にミステリアスなキーボードソロを聴かせます。スリリングなキーボード&ギタープレイで始まる4は緊張感を高めながらスピード感のあるギターリフに導かれて、マカパイン&ヴィタリの二人が火花が散りそうなドラマティックな展開を繰り広げます。叙情感あふれるセンチメンタルなバラードナンバーの5で雰囲気を一転させて、神秘的な雰囲気を詰め込んだ物悲しいムードの6でもプログレッシヴな展開のインスト陣の充実度は高いです。
 ピアノの繊細なイントロから劇的に盛り上がる7はアーテンション風の疾走感のあるハイトーンヴォーカル炸裂で高速ギター&キーボードプレイのドラマティックなもので、聴き手の期待に十二分に応えるであろう曲になってます。ヘヴィなギターリフで始まる8はプログレ風のキーボードが絡んでモダンなテイストを生み出しています。エモーショナルなヴォーカルで始まる9はタイトなリズムのパートへと変化しながら、クラシカルなフレーズをも組み込んで複雑に構築されていきます。ギターとピアノの静かなイントロで始まる10は即座に激しいドラミングを引き連れてのヘヴィなパートから扇情的なヴォーカルとキーボードが絡み合うパートへと変転して緊迫感のあるインストゥルメンタルを聴かせます。劇的なパワーバラードの11を経て、ダークでデジタルな雰囲気の12、さらにボーナストラックの13はテクニカル度上昇のダークでグルーヴィなヘヴィナンバーで、スリリングなインストが聴き所です。
 ネオクラシカルなドラマティックメタルからプログレッシヴなメロディックメタルへとスタイルの方向性を変えてきたバンドですが、メンバーのポテンシャルが表現するものとしては、こちらの方が面白いと言うか可能性が広がるものになってます。そもそも真性ネオクラシカル人材がいないわけで、手広く方向性を模索し始めるのは当然の結果と言えますが、スリリングなテクニカル系バンドとしてのカラーが確立されるとなると、アーテンションの立場はいったい?って感じです。
同系統アルバム
SACRED PATHWAYS/ARTENSION
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
ONLY HUMAN/AT VANCE

THE ART OF BALANCE/SHADOWS FALL

アート・オブ・バランス/シャドウズ・フォール

TOY'S FACTORY TFCK-87300 [☆☆☆☆]

 アメリカはマサチューセッツ出身のバンドのサードアルバムです。ニュースクール・ハードコアバンド、アフターショックの元メンバーが中心となったサウンドは80年代スラッシュメタルと北欧メロディックデスメタルのエッセンスを取り込んだダイナミックなものです。
 疾走感の強い切れのいいギターリフと小気味いいドラムに、吐き捨てヴォーカルがメロディを唄いあげ、ディストーションヴォイスの咆哮が響く中、フックのあるギターソロ(アルペジオも弾く!)を詰め込んで、キャッチーかつ攻撃的に迫るサウンドはハードコアとヘヴィメタルの融合の先駆者アンスラックスを思い起こさせる感触を与えています。物悲しいメロディが心を打つインストゥルメンタルの4、9やセンチメンタルなメロディが印象的な情感豊かなタイトルトラック、更にスラッシーに叩き込む起伏の激しい5や7での哀愁漂うギターソロなどで見せる繊細な表情はバンドの多様な音楽的素養を露にします。テスタメントばりのギターソロを聴かせるスリリングな8や、アイアン・メイデンの流れを汲んだドラマティックなイントロからのスケール感の大きな10などに見られるように、 現実社会に呼応する世界観と幻想的な世界観が混在する歌詞世界もそのサウンドと共に多様な価値観を提示します。
 ジャンルの垣根を越えて多くの要素を吸収しながら、ダイナミックなサウンドを展開していくアルバムはヘヴィメタルらしいドラマツルギーを持ったものになっています。伝統的なヘヴィメタルのスタイルを受け継ぐ新世代ヘヴィメタルバンドの完成度の高い一枚です。

 で、衝撃的なピンク・フロイドのカバーはバンドのポテンシャルの高さが伺えたり。
同系統アルバム
WAKING THE FURY/ANNIHILATOR
DYING SUN/YYRKOON
AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE

BURIED ALIVE/ZONATA

ベリード・アライヴ/ゾナタ

SOUNDHOLIC TKCS-85051 [☆☆☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのサードアルバムです。新たに元CONVICTIONのギタリストが加入してツインギターに戻っています。
 ジューダス・プリーストプライマル・フィアを彷彿とさせるストロングスタイルのアグレッシヴなメタルナンバーで幕を開けるアルバムは、サウンド面でパワーメタル的な要素が強まっており、華麗で煌びやかだった前作のイメージを少し変えるものになっています。続く2では彼らの特徴的な華やかなキーボードとギターが乱舞する自動人形の舞踏会をイメージさせる派手な展開炸裂のドラマティックナンバーを繰り出してテンションが上げていきますが、聴き手を強引に振り回すメロディラインは前作で顕著だった誰にも止められそうに無い躁状態の嵐が少し落ち着いてクールダウンするギターソロと共に説得力のある展開を見せていきます。キーボードとギターが濃密に絡み合うミディアムテンポで大仰なコーラスの3でもギターソロはブルージーなプレイを聴かせています。ドラマティックなイントロダクションの4は、どことなくエキゾティックな雰囲気をかもし出しながら壮大に進んでいきます。ソリッドなギターリフとパワフルなヴォーカルでシリアスに進む5はキャッチーなコーラスと明るめのギターソロ、さらに軽やかなキーボードで開放感を生み出しながら、エンディングでは異なった表情を見せます。攻撃的なギター&キーボードでスリリングに疾走する6は彼らの真骨頂といったテンションの高い爆発力のあるナンバーになっています。間髪入れずに始まる7は骨太のダイナミックな展開を見せるドラマティックな曲です。ピアノの音色に伴われて情感豊かに唄いあげるヴォーカルから始まる8はパワーバラードとも言えるものです。緊張感を持った展開の9は叙情的なメロディで華麗かつ劇的に盛り上がっていき、インストパートでは全く違った印象を与えます。ピアノとギターのタイトなリフで高圧的に迫る10は高揚感を高めるパワーメタリックな一曲でクラシカルなキーボードソロを挟みながら密度の高い強力なサウンドを展開していきます。
 新たに加入したギタリストがプログレ寄りのプレイヤーだった影響が大きいかどうかは分かりませんが、ギターソロの質感が前作からは大きく異なっておりアダルトな雰囲気のプレイが増えています。それに伴ってドラマティックに盛り上げる手法は力押し一辺倒ではないバリエーションを広げたものになっており、パフォーマンスの向上と共に新たな可能性を感じさせます。強豪ひしめくメロディックメタルにおいて新世代バンドの最右翼と感じさせる強力なアルバムです。
同系統アルバム
RITUAL/SHAMAN
THE METAL OPERA II/TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
TO TRAVEL FOR EVERMORE/WUTHERING HEIGHTS





December

ARTENSION | CELESTY | DIVINE SOULS | GORDIAN KNOT | HOLY SAGGA | RACER X | SYMPHONY X |

NEW DISCOVERY/ARTENSION

ニュー・ディスカヴァリー/アーテンション

MARQUEE MICP-10340 [☆☆☆☆]

 リング・オヴ・ファイアを脱退したヴィタリ・クープリ率いる多国籍バンドの6枚目のアルバムです。前作と同じオリジナルラインナップで製作されています。
 ミステリアスなイントロからダイナミックなリフ、そして壮大なメロディのヴォーカルが絡み合う1でスリリングなインストゥルメンタルが炸裂するミディアムテンポのナンバーで始まるアルバムは、テクニカルなフレーズが満載のスピード感と緊迫感のあるパワフルな2へと続いていきます。クラシカルなフレーズが独自のフレージングで表現されるアップテンポの3は彼ららしい独特のフックのある曲になっています。一転して緊張感の走る激しいドラミングが展開される4は疾走感を高めながらソフトなメロディのヴォーカルが、スリリングに進んでいく劇的なインストゥルメンタル陣とのコントラストを作りながらクライマックスに向います。ミディアムテンポでグルーヴィに進む5はセンチメンタルなヴォーカルに導かれて優雅なピアノと泣きのギター&キーボードの響きを聴かせ情感を高めていきます。クラシックのフレーズを導入された、ピアノとキーボードが華麗に舞う美麗なインストゥルメンタルの6から、中間部の劇的なインストが印象的な劇的パワーバラードの7、アップテンポのグルーヴィな感覚がキャッチーなメロディに乗って進む8は少し毛色の異なるハードロックな仕上がりになってますが、やっぱりインストは緊迫感があったりします。スリリングな疾走感のある9は優雅なコーラスを伴って、彼らの本領発揮の激しいギターとキーボードのテンションの高いソロパートが展開されます。10は7のラジオ・エディットで中間部のインストがごっそりカットされており、それじゃアーテンションじゃない!という出来で、ボーナストラックはピアノの静かなインストゥルメンタルです。
 制約を科さないヴィタリ・クープリの自由な感性と、実力のあるアーティストのコラボレーションがアーテンションの核なわけですが、ヴィタリ・クープリがこちらに専念することになって、ある種の執念にも似たテンションの高い情念が感じられる渾身の一枚になってます。ちょっとジョン・ウェストの作るヴォーカルメロディはゆったり気味で、楽してんじゃねえのか!と突っ込みいれたくなくもないですが、聴き込むにつれ何となくこれが正しいような、更にこれしか正しくないような気がしてくるので不思議です。
同系統アルバム
BLACK ON BLACK/ANDRE ANDERSEN
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY
DREAMTOWER/RING OF FIRE

REIGN OF ELEMENTS/CELESTY

レイン・オヴ・エレメンツ/セレスティ

MARQUEE MICP-10345 [☆☆☆]

 フィンランド出身バンドのファーストアルバムです。同郷のソナタ・アークティカのギタリストが一曲レコーディングに参加しています。
 若いカイ・ハンセンが無理矢理なハイトーンを使わない方向で唄っているような、お世辞にも上手いとは言えない高音系ヴォーカルが透明感のあるキーボードと、ブレーキを掛けずに疾走するギター、更に終始叩きっぱなしのドラムに導かれてオリジナルなファンタジーストーリーを紡ぎだす、いわゆる軽快なメロディックスピードメタルの典型的なアルバムになっています。シンフォニックに盛り上げたり、ピアノでリリカルに迫るキーボードのプレイや平均年齢20歳代の若さにまかせた速弾ギターの絡み合いではスリリングな空気を作り出したりしていますが、微妙な音程のブレとか不安定さが気になるヴォーカルが楽曲の魅力を損ねている部分が大きいので、聴いていくうちに少しづつ辛くなっていくような。
 あまり初めて聴いたような気がしないフレーズが少なからず見受けられるのは、とりあえず置いておいて、高揚感を煽る強力な疾走感とエピックメタル的なダイナミズム、更に熱気みなぎる充実したインストゥルメンタルを産み出す力は充分に備えており、その辺りのストレートな感覚を味わうことが出来るアルバムになってます。

 でも、このスタイルのバンドはこの辺に沢山いますので…。
同系統アルバム
PERPETUAL TWILIGHT/AXENSTAR
IMAGINARIUM/MORIFADE
GATE THROUGH THE PAST/HOLY KNIGHTS

THE BITTER SELFCAGED MAN/DIVINE SOULS

ザ・ビター・セルフケイジド・マン/ディヴァイン・ソウルズ

SOUNDHOLIC TKCS-85054 [☆☆☆]

 スウェーデン出身のバンドのセカンドアルバムです。
 リリカルな調べを伴ったイントロダクションから繰り出される、わめき系のディストーションヴォイスを率いた叙情感たっぷりのメロディに彩られる1で始まるアルバムは、同郷のイン・フレイムスのスタイルを踏襲するメロディックデスメタルになってます。さらなるメランコリックな路線を追求する2、泣きメロ炸裂で躍動的なリズムを刻む3、4、さらに囁くようなヴォーカルを導入して緩急を演出する5、ギターの濃密なプレイが官能的な6、7、ノーマルヴォイスで一層扇情性を強化する8、繊細な叙情感が支配するスローな9、アップテンポで突進気味に進む10、そしてボーナストラックはファーストアルバムの曲のデモバージョンになっています。
 強力な武器になりそうな扇情力の強いメロディを伴ったサウンドのオリジナリティは未だ確立されてはいませんが、全体的には攻撃性よりも叙情性の方が強調された、先達のバンド群のソフィスティケイトされた部分にスポットを当てており、より聴き易い方向性に向いているようです。その分激しさや攻撃性を重視する生粋のメタル耳にはヴォーカル以外のパートが甘すぎるかもしれないですが。更にアルバム構成上、似たような曲調が続くという問題は改善した方が良いような。とりあえず、ヴォーカルがもう一頑張りして更なる向上が図られないと今後の活躍が難しそうではあります。
同系統アルバム
THE ART OF BALANCE/SHADOWS FALL
AGAINST THE ELEMENTS/BEYOND THE EMBRACE
SILENCE OF NORTHEN HELL/BLOOD STAIN CHILD

EMERGENT/GORDIAN KNOT

エマージェント/ゴーディアン・ノット

MARQUEE MICP-10343 [☆☆☆☆]

 元シニックのベーシスト、シェーン・マローン率いるプロジェクトのセカンドアルバムです。
 オールインストゥルメンタルのアルバムはフュージョン的なサウンドに、ザワザワするような不安感や浮遊感が根底に流れるプログレッシヴな感覚を伝えるものになってます。静かな焔が闇に揺らめくような音の流れは、技巧が表現に従属する様々な感情を想起させる想像的な許容範囲が広くなってます。
同系統アルバム
II=I/ANDROMEDA
SQUADROPHENIA/COSMOSQUAD
BURN THE SUN/ARK

PLANETUDE/HOLY SAGGA

プラネチュード/ホーリー・サーガ

SOUNDHOLIC TKCS-85049 [☆☆☆☆]

 ブラジル出身のバンドのファーストアルバムです。カナダのSAGAに名前が似ているとアピールされてSAGGAからHOLY SAGGAにバンド名を変更してリリースされており、プロデュースに元ヘヴンズ・ゲイトでドラマティックメタル界隈で名の通ったサシャ・ピートが加わっています。。
 期待感を高めるイントロダクションから華やかなキーボードサウンドとダイナミックなメタルビートが展開されていくドラマティックなサウンドにクセの少ない伸びやかで優しげなムードのハイトーンヴォーカルが合わさった高級感漂う1で始まるアルバムは、同郷のアングラを彷彿とさせる雰囲気を持ち合わせるクラシカルなフレーズや整然とした構築美を感じさせるものになっています。続く疾走ナンバーの2は一気に高揚感を高めるメタル然としたもので、叙情感あふれるメロディとキーボードがクライマックスへと聴き手を導きます。元アングラ、現シャーマンのアンドレ・マトスがヴォーカルで参加した3はスリリングな展開を見せるミディアムテンポの曲でクラシカルな部分とテクニカルな部分が融和するものになっています。柔らかいメロディで繊細なフィーリングを伝える華麗な4、ミディアムテンポのタイトなメロディックナンバーの5、クラシカルなフレーズで構成されるインストゥルメンタルの6、ゆったり進行する7は壮大なメロディを軸に展開されていきます。叙情的なメロディのインストゥルメンタルの8から続く強い緊迫感と疾走感を持った強力な9へとの流れはクライマックスにふさわしいドラマティックなカタルシスを産み出します。 10は重厚なコーラスを伴ったイントロから攻撃的に展開されるギターリフに扇情的なコーラスとサビで一気に盛り上げる疾走感の強い曲です。
 初期アングラの繊細な部分を抽出して、スピード感のあるメロディックメタルに仕上げた印象を与えるスマートで洗練されたサウンドを作り出すアルバムは、クラシカルなフレーズを聴かせるギターに印象的なメロディが特徴的な完成度の高いものになってます。線が細いながらも安定した歌唱のヴォーカルに乱れのない演奏とデビュー作とは思えないクオリティの高さを誇る衝撃的な一枚は今後も期待大です。
同系統アルバム
RITUAL/SHAMAN
THE KINGDOM/WIZARDS
FIREWORKS/ANGRA

GETTING HEAVIER + SNOWBALL OF DOOM 2/RACER X

ゲッティング・ヘヴィアー+スノーボール・オブ・ドゥーム2/レーサーX

MARQUEE MICP-10343 [☆☆☆]

 元ミスター・ビッグのポール・ギルバートやジューダス・プリーストのスコット・トラヴィスらが在籍するアメリカ出身のバンドの5枚目のアルバムです。
 タフなギターリフでゴリゴリした触感の1で始まるアルバムは、モーターヘッドみたいなノリのタイトなミディアムテンポの2でもポール・ギルバートは弾きまくりなわけですがサビが「娘サンバ」に聴こえるのは秘密だ。70年代ロック風な雰囲気のアップテンポな3、こんどはヘヴィロック風にダルなムードが漂う4、ノリのいいロックする軽快な6、ヘヴィなリフにポップなメロディの7、ヴァン・ヘイレンでツェッペリンな8、ミステリアスなムードの9、スティーブ・ヴァイに対抗してやたらと長い一音のギターソロを弾いてしまった10、ポップな感覚を持った11、テクニック追求の初期の彼らに近いスリリングなインストの12と色々揃ってます。
 はじけた前作からの方向転換で多少シリアス路線の反動が来たのか、拡散志向が割と目立ってきた多様なサウンドを聴かせるアルバムになっていて、傾向としては普遍的な魅力を追求するヒットチャート的なフィーリングを持って楽しんで作っているのが分かるものになってます。メンバー個々人の活動も活発になっているので、これからバンドが目指すところは何処かは多分誰にも分からなくなってます。

 あ、でもライヴは異様に熱いので初回版はお買い得かも。
同系統アルバム
CRUCIBLE/HALFORD
XILED TO INFINITY AND ONE/SEVEN WITCHES
MAN AND MACHINE/U.D.O.

THE ODYSSEY/SYMPHONY X

ジ・オデッセイ/シンフォニー・エックス

VICTOR VICP-62161 [☆☆☆☆☆]

 アメリカの様式美系プログレメタルバンドの六枚目のアルバムです。
 緊張感走る鋭いギターのイントロダクションから繰り出される彼らの特徴であるヘヴィに展開するダークなリフと、既に邪悪という形容詞がふさわしい攻撃的なヴォーカルの応酬を経て、シリアスなムードのメロディのコーラスへと展開していく高圧の1から始まるアルバムは、タイトなリズムに乗ったザラザラしたギターリフで構成される、緊張感を持った展開で怪しげな雰囲気のミディアムテンポの2へと進んで行きます。存在感を主張するギターの響きが印象的なサウンドが続くアルバムは、複雑な展開を聴かせる緊迫感漲る3、サードアルバム「THE DIVINE WINGS OF TRAGEDY」に収録された“THE ACCOLADE”の続編にあたる、ピアノの美しいメロディとヘヴィなギターが融合するドラマティックな4、恐怖映画のような邪悪な空気に満ちる冷たいメロディと凶悪なギターリフによって繰り出される強力なメタルチューンの5、更に強烈な疾走感を産み出すスリリングなビートを刻むリズム印象的な6は様々な表情に変化しながら、ギターとキーボードの火花散るインストの応酬へと突き進みます。
 キーボードの静かな調べで始まる7は扇情的なメロディを紡ぎながら、情感豊かなヴォーカルとピアノが絡み合う序盤からスリリングなギターが加わる攻撃的な中盤、そして劇的な終盤へと移り変わります。そして組曲形式となっているユリシーズのオデッセイをテーマにしたタイトルトラックは、叙事詩をイメージさせる勇壮かつファンタジックなオーケストレーション全開のオープニング(I)で雰囲気を高め、アコースティックギターとヴォーカルを中心にした(II)では中盤で緊張感とムードを高めるスリリングなインストゥルメンタルを織り込み、邪悪なリフへと突入していく(III)へと進んで行きます。ピアノの調べに導かれる(IV)ではミディアムテンポでミステリアスなムードを高め、緊迫感再びの(V)でタフなメタルチューンへと移ります。緊張感走るオーケストレーションのドラマティックなインスト(VI)から、劇的な誇り高いコーラスで最大のクライマックスを迎える(VII)で楽曲は幕を閉じます。
 ボーナストラックの9はベストに収録されていたバージョンと同じようです。10はミディアムテンポの厚いコーラスが印象的な曲です。
 ヘヴィなギターサウンドを前面に押し出して、彼らの中で最もメタリックな側面が強調されたアルバムは、キャッチーな面が減ったストイックな作風になっており、密度の高い音が詰め込まれたものです。聴き手に対峙することを強制する息詰まるような高圧なサウンドと緻密な展開で圧倒する楽曲が産み出したのは、バンドの自信に満ちた完成度の高いアルバムで、独自の世界観は既に円熟の域に達したようです。
同系統アルバム
SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE/DREAM THEATER
SPACE METAL/ARJEN ANTHONY LUCASSEN'S STAR ONE
PRINCIPLES OF PAIN/ELEGY