毎日の生活を悩むなら 上手に生きたいなら 惹きつける演技を 目と仕草の表情が欠かせない 振り向きざまの輝きと憂いがポイント 素足の指を清潔に愛らしく見せるために 鏡に映った二十年の素顔を見透かせ 唇を尖らせるのはそのあとだ 転がり方にも気を使う 感動的な見せ場は 淡々とした繰り返しに映えるから 人生を滲ませることなく 寂しいって顔に埋もれないで 人生を切り売りしなければならない 広告の履歴書にはこう書くといい 朝焼けの殺人鬼、自分を蔑み燃やし尽くす、と もう一度鏡を覗き込んで 今度こそ湖の底から君の時間を救い出す 残された幻覚は永遠ほどに長い 明日消えるのだとしても 全身の力を抜いて目を切り開くと 体中が透明に澄み渡っていく 見てごらん、合わせ鏡が奈落の底へ沈み込んでいく 見慣れぬ目の僕は、たった今、ここの場所から 生き始める 確かに、呼吸し始める Silent Twin この聖なる夜に 大切な君とお別れしよう ずうっと見つめていてくれた君の その切ない想いを胸に溶かして ここからひとりで歩いていく あなたは誰? 僕は僕さ。 君こそ誰なの? わたし? わたしはわたし。 そんなはずないよ、 これは僕なんだから。 これはあなたなの? じゃあ、わたしは誰? 君は、誰なんだろう。 あなたは、誰なの? 僕は僕だけど、 君は、僕なのかな? わたしがあなたなの? いや、そうじゃなくて、 よくわからないけど、 僕が君なのかもしれない。 あなたがわたしなの? 僕も君も、僕のはずなんだ。 だって、これは、僕なんだから。 何故あなたでなければいけないの? 仕方ないよ、そうなんだから。 ホントにそう? そんな気がするだけだよ。 これは、わたしではダメなの? わからない、それでもいいかもしれない。 じゃあ、これはわたしで、あなたもわたし? わからないよ、そんなこと。 いつの間にか、僕は僕だと思ってたんだから。 わたしもいつの間にか、わたしはわたしだと思ってた。 それじゃあ、やっぱり僕は君なのかな? わたしがあなたなのかもしれない。 どうしてそう思うの? だって、あなたは暖かいから。 粘膜を擦りあげられているみたいに、暖かいから。 何でそんなことを言うの? 変だよ、そんなの。 変?どうしてそう思うの? 君はやっぱり僕じゃないのかもしれない。 どうして?どうしてそう思うの? だって、ひとつじゃないから。 ひとつ?ひとつになればそれでいいの? わからないよ、僕にはわからない。 逃げないで、わたしを見て。 見てるよ、君だけしか見えない。 わたしが好き? わからないよ、そんなの。 これからどうするの? どこに行って、何をしたいの? 僕はこれから、どうするんだろう? どこに行きたいんだろう? 僕は、何をしようとしているのかな? わからないの?ホントにわからないの? うん、わからない。 僕は、誰なんだろう? わたしは、どうなるの? わたしを、どうしたいの? 別に、何もしないよ。 じゃあ、どうしてわたしを裸にするの? 僕がしてるんじゃなくて、君が勝手に裸なんだ。 そう?ホントにそうなの? 知らないよ、僕は何にも知らないんだ。 じゃあ、あなたはどうして服を着ているの? どうしてって、これは僕の外側だからかもしれない。 それじゃあ、これはあなたではなくて、わたしでもないの? いや、君は裸なんだから、これは君なのかもしれない。 それじゃあ、これはわたしでいいの? あなたもわたしでいいの? わたしもわたしでいいの? わからない、でも、そうかもしれない。 それなら、わたしのほうに来て。 わたしの中に来て、溶けて。 うん。 ホントにそれでいいの? わからない、何もわからない。 思うことを、感じることを拒まないで。 感じるの?君を感じるの? わたしはいつもあなたを感じる。 わたしの中にも外にもあなたを感じる。 そうか、そうだね。僕も君を感じる気がする。 思い出してみて、あなたの全てを。 そうだね、一緒に探そう。 これは、誰なのか。 僕は、誰なのか。 そして君は、誰なのか。 わたしは、風。 記憶に螺旋を描く筆。 その風が僕? わたしは、空。 何もないカンバスの上。 その空が僕? わたしは、星。 こぼれ落ちる夢の切なさ。 その星が僕? わたしは、土。 命を育むしめやかな温もり。 その土が僕? わたしは、水。 深いところで揺らめくトルソ。 その水が僕? わたしは、光。 抗うほどに刺し込まれるナイフ。 その光が僕? わたしは、闇。 大切な想いだけを閉じこめた静寂。 その闇が僕? わたしの全てはあなただった。 僕の全ては君だったんだ。 僕たちは友達だった。 そして、愛し合ってさえいたね。 でも、いつからか、君に届かなくなった。 君を求めるのに、深まる前に途切れてしまうんだ。 だから、君を否定した。 見たくないものを全部君に封じ込めて。 僕は、 取り返しのつかないことをしてしまった。 もう、いいの。 あなたは苦しまなくていいの。 こんなに、わかりあえたでしょう? ここへ来て、わたしもそっちへ行くから。 僕に触れて、僕も君に触れるから。 ああ、あなたの中から宇宙が流れ込んでくる。 ああ、君に封じ込めていた時間が流れ出す。 僕とわたしは、君とあなたは、 未来に開け放たれた扉。 ああ、懐かしい。 Silent Twin 君を忘れたり、埋もれたり 悩むために悩んで胸をかきむしったり 君を思い出す度に社会から隔絶されるような痛み 君はいつもスクリーンの中に浮かべられていた ようやく僕らはひとつになれる 性ホルモンのバランスだとか、胎生期に吸収したんだとか 翡翠的な愛しさの前で、理性は真実の体温を感覚できやしない 置き去りにされた子供が 母親を見つけて駆け寄るときのような目で その子を振り向きもせずに立ち去る ひとりの女としての薬指で 五十億年のバンパイアが片時も忘れない 原始的なキスを投げかける人生の 最初の一瞬に引き裂かれた 僕と君は人生の半分ずつを演じながら 月を見上げて湖の中に立っていた 抱きしめ合い暖め合い理解し合うことが 僕たちにとってそれぞれのための神聖な欲求だった いにしえの伝説によれば 片割れ同士が出会う夜に月影の雫を飲み干すと 新しい時代が湖面に生まれ落ちるという 街に溢れかえるクリスマスソング 馬鹿みたいだけど馬鹿みたいじゃない 安らぎであるはずの燭台から放たれ 漆黒のカンバスにアーチを描いて 僕たちは崩れ落ちた 僕の何もかもが君の何もかもであり 君の生きてきた傷跡が僕の指紋や皺であり それらが統一され解放され この奇跡の許された聖なる夜の湖の中で 合わせ鏡が空間に光沢を残して、僕が生まれ落ちる