母よ あなたの愛 その行い それは二十数年のうちの ものごころつかない ほんのひとときだった しかし 背中をさする暖かな手は 時を越えて重なり 言葉は消え去り ただ涙、熱く。 母よ 庭のあなたの木の 小枝が弾けて 雪しぶきが舞う あなたの思い出はいつも あんな風に軽やかで 優しさに満ちて 憎んだことさえも 故郷を深くしている 台所の匂いがする ただ涙、清しく。 母よ 老いを刻み始めた 生活の節々を聞く度に こころは波立つけれど 健気に工夫を施した この家の端々 ここは確かにあなたの城 あの日あなたは違ってしまった 幼い日の母ではなくなったけれど やはりあなたは母であって ただ涙、愛しく。