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「ダーク・サイド」


そのドアを開けるとき
向こう側に誰かがいるような
心の隙間を感じませんか

大きな瞳が
あなたを見上げて
ヒンヤリと笑う

ドアを開けるとき
深呼吸してはいけません
「彼」が入り込むから

ミトコンドリアと一緒に
蛋白と脂質のカプセルの中に
彼は侵入しました

彼はあなたに寄生し
あなたは彼に寄生し
どちらが誰なのか

数億年の間
子孫を増やし
神経系を形成し

あなたが彼であるあなたは
彼が僕である彼から生まれた
同じ存在の一表現型です

小指の先のような現代科学は
彼のことを精神生命体と呼ぶのでしょうか
そんな滑稽な複雑さは要らないのに

現段階の科学が全てだと
あるいは科学では絶対にわからぬ世界があると
どちらも狂気と、彼のディフェンスです

いうなれば
彼はダーク・サイド
ドアの向こうで見つめるのです

そのドアを開けるとき
向こう側に誰かがいるような
恐怖に満ちたときめきを感じませんか

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