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「飽食」


町中の小さなスーパーで
ごちそうの山を詰め込んだ
買い物かごをカートに積んで
頭の上にある取っ手にぶら下がって
少しずつ、でも着実に
歩んでいく小さな命
一日一日、コロコロと跳ね回って
この子が大きくなる頃に
世界が平和であるといいね
8億の飢えている人々が
この子の小さな両肩に
鎌を打ち下ろさないように
守ってあげたいと願っている
その小さな手が
愛情を包み込むように
その小さな爪が
ひび割れたりしないように
毎日毎日、見つめている
一生懸命生きて
大きくなろうとする子供達
この子達に罪はない
食べこぼしのご飯粒が
海の向こうに届かないのは
子供であることを忘れてしまった
醜い僕らの罪である
子供は小さな大人ではない
別の次元を生きる
純粋な生物だ
せめて僕らがくたばるときには
罪の償いをしていかなければならない
子供は汚れるのではなく
大人に汚されるのだ
泥んこになって遊ぶこの子は
けばけばしい僕らの自我よりも美しい
買い物かごから林檎が転がり落ちた
慌てて拾いに行ったこの子に
自分の中の子供を探して
情けなくって震えた

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