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「至福」


許さない

迷いに沈むひとり
そして全体が潤う
世の中のシステム
泣いているひとり

僕はここにだけいる
ここは許してくれるから
僕の形を包み込むから
でもいつまでだろう

ピアノの繊細な力強さ
そして僕だけのシステム
誰も救えない言葉
旋律は途絶している

だけどこれが
精一杯の幸せの形
世界に溢れる衝突の狭間で
僕は少なくとも追い出されずにいる

許さない

誰かが誰かを忘れ
泣いている誰かを忘れ
幸せの言葉を忘れ
腐りかけている

この国の中で苦しむ
あの場所で膝を折り曲げている
それが幸せからどれくらいの距離なのか
わからなくなるほどに押されたボタン

街角が楽しそうにさざめく
情愛の乱痴気な不協和音が
街灯の下をカーブしていく
僕とは違うこの街の幸せ

もう少し歩いてみよう
僕はここで生きていく
諦めない僕の心のため
許されない僕は生きる

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