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「生きる」


仕事帰りの電車の中で
じいっと床を見つめてる
誰かがジュースをこぼしたシミが
スニーカーにさえ踏まれずにいる
今日もまた終わろうとしている
昨日寝る前に心に決めた反乱も
また明日に延ばされただけ

人が生きるのは苦しみでしょうか
人が生きるのは悲しみでしょうか
傷つくことや蔑まれることが
生きるということでしょうか
優しさや暖かさの使い方を
一生懸命探したでしょうか
ずるさや自己主張やそういうものを
工夫するほどに努力したでしょうか

僕が生きているということは
君に届かないのかも知れない
だけど涙がこぼれそうになるくらい
胸を熱くするものに触れていたなら
もう一度僕の周りにあるものを
信じていこうとやり直せるから
ワイン色の夕暮れの刈田を
明日は黙って見に行きたい

もしも僕が誰かを暖めているのなら
少しだけ君がそう頷いてくれたなら
今日が明日に続いてもいい
永遠に繰り返すだけでいい
だんだん冷えていく世の中に
全てをぶち壊してしまう前に
温もりを打ち込んでしまおう

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