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「気流」


青空に浮かぶ満月と
オレンジ色の刈田の上に
一本の気流が舞い降りて
僕の愛とあなたの愛を
真空の魔法をつかって
吸い寄せている
そうしてふたりきりの秋の
無制限な切なさは
償われるように見えたけど
ひとすじの何者かのために
ふたつの愛がすれ違ってく
僕の頬とあなたの髪の
僕の驚き顔とあなたの笑顔が
そうっと意味をすり抜ける
キラキラと鈴が鳴る
雲が紫色にちぎれ飛ぶ
秋の日の気流だから

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