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「二十四時間」


地球の裏側にいる君
もしも僕と君が
ひとつであるのならば
僕が夢を見るとき
君は働いていて
君が夢を見るとき
僕は働いていて
そうやって二十三時間五十九分を
ひとつの存在として
渡っていくことができる
二十三時間五十九分汗を流し
二十三時間五十九分夢を見る
僕らは確かに
この星を生きている

そして残りの一分間が訪れる
二人がひとつの存在の表と裏ではなく
二人が二人として触れあえる時
まず気温が違っている
見つめる窓の外には別々の空がある
知らない言葉が流されている
人間も違っているらしい
生活も芸術も
歌を唄うことも全て
ひとつであった時よりも
更に深く大きなスケールで
この星の運動を感じあえるようで
僕と君の一直線は
この星の軸だ

この道は風の感動である
この空は太陽の驚愕である
コウロギはホロロロと鳴いている
そういう星の上の一分間に
千分の一の言葉と
万分の一の心を
一生懸命に擦りあわせて
背中と背中であっても
決して離れてしまわないように
目に見えない温もりを感じようとして
余りにも遠すぎるような
どうしようもなく近すぎるような
この星を回し続けたいから
最後には「またね」と言うだけにしよう

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