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「葦と花」


夢は歩くものである
花は見つめるものである
風は歌うものである
君は想うものである

僕は泥の中に立つ
一本の捻れた葦である
現実の風に打たれ
泥の中に押し潰されても
流れる風に打たれたのだから
それは想いと同じものであり
流れ続けているのだから
失うことを恐れないで
歌を唄っていよう
泥の中に立つ葦の歌を

君は天から舞い降りた
争う一輪の花である
守りたいものがあるからと
戦う花であるがゆえに
あまりにも美しく
儚いほどに厳しく
泥を嫌い風を疎み
この世の全てに散らされているのだと
愛や信頼を失いたくないのだと
歌うことさえ苦しんでいる

僕が歩き出した夢は
あの花が泥に浮いてなお
薄紅色の輝きを失わないこと
捻れた葦の歌と
戦う花の歌が
泥の中に寄り添いながら
本当の想い合いを
風に乗せて響かせること
花は楽しげにクルクルと回り
葦は不動の一点を示す

ミクロとマクロの相似を
描き出す花の舞いを
葦はただ憧れて
泥の中で今日も一人

夢は歩くものである
花は見つめるものである
風は歌うものである
君は想うものである

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