車窓開けばパタパタと鳴る子らの靴 信号待ちの下校時刻に 体ごとしぼりて歌う体ごとしぼりて歌う 朝のひな鳥 中性に芳香匂う今時の女神のための無関心群 秋の背に幕引く雨は朝に濃く真綿締めあぐ細き手の如 秋雨は雪の如くに積もりけり 神通の橋を越しける繁り木は驚き抜きて蒼々と立つ 神無月 灰色宿す群鳥も風の箒に清められぬる 子供らは傘を盾にす 雨よりも車の中の鬼を恐れて 若きゆえ神無き月の雨に濡れ少女は走る学舎の庭 一分を過ぎれば光に閉ざさるる最も深き闇午前五時 暁の直前の闇広く深く全てのものを受け入れている 神無路や 空・雲・風車いと惹かるメーヴェのイメージ 前世からかも 信号が息吹き返し雲の端と山の際より明くる秋かな 段々とキレイになりし子供らは生まれることから離れていきぬ 立山と見ゆる高さに雲の峰 柏手を打てや冬の蛾柏手を打ちて朽ちぬるベランダの隅 霜月の曇り眼鏡を外し見ればラーメンの面が輝いている あきつ殻 落ち葉に潜る寒上り 年の瀬に爪下の皮膚の顕れて赤子の如く鈍く疼きぬ 善き事も波は遅るる悪し事も波は返さる疾し黒瀬浜 真心を分析される世の中に雲間の雁が頷きて墜つ 黄昏に雪見と応う瀬の日かな 忘るれば罪ともならじ雪の跡 気楽とはおさらばである 積む雪よ第一幕を静々と引け 元日の不孝なれども決意せる出発なれば一人餅喰う 星を見るただ星を見る果てしなき正月二日の星を見るだけ 初湯浴み 貧し身なればせめてもの白き下着を選ぶは悲し 初湯浴み 指に絡まる流れ束の拭いし寒さまた戻り来ぬ 雪だにも懐深く絡まれば天地に染みて広がりにけり 両親の顔は光に包まれて似顔絵描けぬ ふるさとにあり