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第2章「瞳の奥」


大切な君の歌を
形にはめてしまって
ごめんなさい
でも私は
こうしないと
生きてゆけないから

そう言って笑おうとしたあなたの顔は
生まれたばかりの
赤ん坊のように歪んで
今にも泣き出しそうだった

疑いと否定と失望を学んでゆく人生の中で
愛情を信じることしか知らなかった
あなたの核心が
真っ直ぐに震える瞳の奥に
立ち尽くしている

人は愛しい
生まれ出るとき
みんなたったひとつ
同じものを持っている
そしてどんな時間を生きようとも
それだけはなくさずに
自分らしく修飾を加えながら
やがてまた純粋さの中に
帰ってゆく
みんな同じに
だからこそ愛しい
限りなく人々は愛しい

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