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「妹 に」


妹 それは 愛である
人間愛も情愛も
全ての愛をそそぎ込める存在だ
何のためらいもなく 愛せる者が
他にいるだろうか
これは私事であって
一般的であるとは言えぬ
人は一生をかけて
愛すべき者を求め続ける
見果てぬ夢の ひとつかも知れぬ

しかし私は
ただ生まれいずるの縁(えにし)をもって
得難きを得たるものなり

今 雪の降りしきる道を
私は 妹の温もりをぶら下げて
歩いていくのだ
前へ 前へ
この世に降る雪は
隠すべからざるものを
覆い隠すけれど
この絆だけは 隠しきれぬらしい
それでも大雪に負けそうになったら
私は この生命を
太陽の如く灼熱して
この世に降る雪を 溶かし尽くそう
そして私は 燃え尽きるのだ
この尊き 絆のために

妹よ
君がどのように変わっても
また今のままでも
どこまで征(ゆ)こうと
留まろうと
そんなことはかまいはしない
ただ妹よ
死して絆を断つことなかれ

私の全身は隅々まで
ふと気がつくと
妹の方を向いている
向日葵が太陽をなくしても
生まれ受けし絆は消えぬ
私はこの喜びをもって
妹の存在に応えることができるだろうか
私の生命は
存在し続けなければならぬ
この尊き 絆のために

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