たことですが、私が晴れて社会人になり一人立ちしていける段階になったと母は思ったのでしょう。この時の暴力で、母の堪忍袋はとうとう切れてしまいました。ついに母は離婚を申し出たのです。どのくらい話し合ったか、母の決心が変わらないと悟った父は、とうとう離婚届けに判を押したのです。私は「やったあ!」と、心の中で飛び上がらんばかりに喜びました。私は父の気持ちが変わることを心配して、母に一刻も早く役所に離婚届けを出しに行くように言いました。けれど母は、判を押した離婚届を手にしているという安堵があったのでしょう、すぐには出しに行きませんでした。それからしばらくして、やはり恐れていたことが起こりました。父は可哀想なくらい打ちひしがれて謙虚になり、「頼むから、もう一度だけチャンスが欲しい。自分を変えるよう努力するから」というような事を言ったと思います。私は焦りました。(だめだめお母さん、だまされちゃ。そんなこと言ったって、またいつかは恐ろしいお父さんに戻るんだから)と心の中で叫びました。実際父が聞いていない所では、何度も母を説得しようとしました。けれど母は生来のお人好しで、あんな哀れな父を見たら心がほだされてしまったのでしょう。「もしもお父さんが約束を破ったら、その時はこの離婚届を出せばいいんだから、もう少し一緒に暮らしてみようと思う」と母は言ったのです。それ以上私が口をはさんでも無駄でした。私は歯がゆい思いで、あきらめざるを得ませんでした。
こうして販売実習も終わり、私は東京へ戻りました。それからさらに一ヶ月の研修後、
|
|