(04/1/25)
1月6日 書記官室の隣の調停裁判官室に行くと、中島調停官との共用だが、調停官用の机も用意していただいていた。袖机もついているL字型の机で、判事の机と同じだ。以前は職員の更衣室に使用されていた部屋を、裁判官室との壁をとっぱらって、フルタイムの調停裁判官と同じになるように改装して、調停官の執務スペースもわざわざ作っていただいたそうだ。専用のパソコンも用意してもらった。恐縮の至りだ。 と思っていたところに、私の配点事件だということで、いきなり11件の新件の事件記録を渡された。いずれも申立書が綴じてあるだけで薄いが、中には書証で膨れ上がっているものもある。交通事故もあれば、相隣関係もあれば、金融機関の貸し手責任を問うものもあれば、税金の滞納処分の不服もあれば、建築関係もあれば、借家の明渡に関するものもある。いずれも昨年の11月下旬以降に申し立てられたものばかりだ。いやいや、事件数は多いものだ。ざっと一読してどこが争点になるか分かるものもあれば、どういうふうに展開していくのか全く予想もつかないものもあり、1回でまとまるかなと思うものもあれば、これは調停では難しいなと思うものもある。私には調停委員の経験はないが、調停委員の場合は、当日記録を見て初めて事件と対面することもあるのではないだろうか。それに対して、調停官の場合は、このように事前に事件の顔を見れて、事件を想像できる余裕があるから、少しは安心だ。たとえは悪いが、事前にお見合い写真を渡されて、当日ご本人と会うのを楽しみにするようなところもある。今日はまだ新年早々で、調停期日も入っておらず、裁判官室も静かで、事件記録に目を通すだけだったので、パソコンにアクセスがインストールされていたのを良いことに、自分なりの簡単な手控えを作ってみた。扉越しに書記官室から調停委員と期日の調整をする書記官の声が聞こえる。次から次に調停委員に電話をかけて日程調整しているのを聞いていると、これもたとえは悪いが、ふと、借金の返済の督促をする消費者金融の姿を想像してしまった(書記官の方ごめんなさい)。来週からいよいよ調停委員の先生方とも顔合わせをして、実際に事件を担当することになる。緊張と期待が入り交じる。 1月13日 午後は、のんびり調停裁判官室で記録を見ていたら、所定の時刻になっても声がかからず、どうしたのかなと思っていたら、「調停委員の方でもう調停が始まっていますから調停室に行ってください」と書記官から言われて、これまた、びっくり。途中から入室したが、そのまま調停委員主導で申立人から事情を聞いてもらった。話の途中で補充して事実を確認したり、争点を確認した。建築関係紛争なので、建築士の調停委員に事件を配点していたが、建築瑕疵は争点ではないと分かり(もっとも、これも相手方欠席なので、本当に建築瑕疵が争点にならないのかは、分からないが)、やや落ち着く。 今日は、2件とも相手方欠席で、事実上調停は空転。事件当事者の代理人の立場で調停に臨んでいたときは相手方欠席はしようがない(自分が相手方代理人のときは期日差し支えで欠席当然)と思っていたが、調停主宰者の立場でいると、そして目の前で申立人が今日ある程度の方向性が出ると思っていたのに相手方が欠席して調停の日がさらに延びるのは困ると言われるのを聞くと、当日になって相手方欠席が分かるというのは、切ないものがあることが初めて分かった。 調停官初日は、ゆっくり記録が読めて、それも電話が全くかかってこないとっても至福の時間を過ごせたが、今日は、調停期日に立ち会い、新件もまた配点されてその記録を読み、調停裁判官の元へ次々に評議に訪れる調停委員と裁判官との評議を片耳で聞いていると、これは随分忙しい仕事だと分かってきた。 |