AG:声楽作品 (1)その他
1:...メイヤーズテーブル、2:アノンインラヴ 3:ファサード
1: A SONG FOR THE LORD MAYOR'S TABLE
ヘザー ハーパー (ソプラノ)
ポール ハンバーガー (ピアノ)
(LONDON 414 664-1)..LP
上のレコードは、1972年頃、ファサードの自作自演盤に 同時に収録されたもの。
初演は、ロンドンのゴールドスミスホールで、1962年 7月18日、
エリザベート シュワルツコップのソプラノ、ジェラルド ムーアのピアノ伴奏で
行われた。1970年にはこれから作られたオーケストラ版もジャネット ベイカー、
ジョージマルコム指揮で演られている。
60年頃の未だ セリー音楽、その他 ”前衛的作曲手法”の勢いのある時代に、
全く「保守的」の印象を与えたに違いない曲で、実際 内容は 堅苦しく聞こえない
類のものであり、いわゆるシリアスな歌曲を期待すれば肩すかしとなる。
だが、この種の所詮 音楽は娯楽、とでもいうような一面の冷ややかな態度ともなる
点も、WWの根本姿勢に含まれなくはないと考えられる。こういったものを聞いて
シェーンベルクのモーゼ的くそ真面目さの系譜を引くと思っている流れと、越えられ
ないような大きなギャップをもつものとして、この歴史的時点で 当時の聴衆で感じ
る人もあったであろう。
とはいえ、・・全部で、16分ばかりの長さになる この6つの曲は、第1曲のスリ
ルあるメロディーの締まった雄弁さ、第2曲の半音階的和声の曇った階調の印象派絵
画風の静かな曲、第3曲の密集したWW好みの短2度のきしみを持つ和音の音塊を、8
分音符の繰り返し的リズム効果の伴奏するジャズ風の歌、ウイリアムブレイクの詩の
世界をアルペジオや5連譜などのピアノの変拍子の音の連なりを加えて行って装飾し
た第4曲。devil old・・etcと早口でつぶやいたりして終わるスケルツオ的な第5
曲をはさみ、最後に鐘のようなピアノの響きに包まれて終わる第6曲というぐあいに
手法的変化に富んだ しっかりしたアイディアとデッサンをもった曲といえる。
歌詞の内容も良く読めば それなりに深みのある考察やイミが、多くは込められたも
のである。
第1曲の『ザ ロード メイヤーズ テイボー』は、一応変イ長調の、アレグレッ
トジョーコソの序奏的勢いのある部分で始まり、グラチオーソ指示からの中間部は、
優しげに転調して始まる対照的部分が2回繰り返し、その終わりにはピアノ伴奏の
動きが大きくなって激していき最初の序奏的歌に戻る。そして華やかなコーダが付く
・・・出だしのピアノの書法は