「顔ダニ」は俗称で、正式な和名は「ニキビダニ」(体長が短い「コニキビダニ」も含む)。 毛包や脂腺に寄生し一生を過ごす終身寄生性のダニで、ヒトでは顔面に脂腺が多いことから主として顔の上で生活している。 分類:ダニ目−前気門亜目−ツメダニ上科−ニキビダニ科−ニキビダニ属 ニキビダニ科は5〜6属からなるが、これらはニキビダニ属を除いて数種で構成される小さな属である。 これに対しニキビダニ属は、あらゆる哺乳類に寄生しているといわれ、哺乳類ごとに個別の種がいるために、最終的に5,000種以上になるといわれている(ちなみにオーストラリアの有袋類にもニキビダニがいるらしい)。 このうち人固有種はニキビダニ(Demodex folliculorum)とコニキビダニ(Demodex brevis)の2種。 ちなみに顔ダニは寄主ごとの固有性が強く、動物のものがヒトに移ったり、ヒトのものが動物に移ったりすることはない。 寄生率:寄生率100%と一般に言われているが、手元の文献ではNuttingの報告(1976)、Fussの報告(1933)が引用元となっているようだ。Fussの報告については、見つからない場合は繰り返し調査をおこなってニキビダニを探し出したらしい。まあ、数の多少はあっても誰にでもいるといったところか。 日本人については、このようなしつこい調査はおこなわれていないようだ。 寄生部位:人体の中でも皮脂腺の発達している顔、特に、いわゆる「Tゾーン」に多く寄生している。 顔以外では頭、外耳道、胸部、臀部、外陰部(!)にも寄生が認められている。顔→都、体→地方みたいな感じ? 感染:頬ずり等の直接的な接触により感染するとされている。 また、産まれたばかりの赤ん坊には顔ダニはいないので、親や肉親などから感染しているものと思われる。 夫婦間の感染なども気になるのだが、その辺の文献が見あたらない。両親からもらった顔ダニが結婚で妻の顔ダニと交雑するとか、宿主の家族と共に歩む様な状態だったら面白いのだが…。 別名:「顔ダニ」という俗称の他、医学・獣医学関係では「毛包虫」(古い文献では「毛嚢虫」)と呼ばれることも多い。 豆知識:顔ダニには肛門がない? 顔ダニの消化管は袋小路になっており、消化カスはたまりっぱなし。これは一部のダニに見られる特徴で、それほど珍しくはないそうだが、そういうダニでも体液中の老廃物を濾しとって排出する器官(人間で言えば「小」の方→腎臓・膀胱なんか)はもっていて、仮の肛門があるらしい。しかし、顔ダニの場合、「小」の主成分であるグアニンの結晶が体の中にできてくるという報告(Desch and Natting 1978)もあって、もしかすると仮の肛門もないのかも。もしや、これってヒトの免疫から逃れるため? ニキビダニ(Demodex folliculorum)体長は、雄230〜330μm、雌240〜350μmで、毛包の皮脂腺導管開口部から浅い部分に寄生し、油分や分泌細胞を食料として一生を顔の上ですごす。コニキビダニ(Demodex brevis)体長は、雄150〜180μm、雌180〜230μmとニキビダニに比べ小型(というより短い)。ニキビダニより深い部分、皮脂腺内に寄生する。ニキビダニが3匹以上の集団で1つの毛包内に寄生している事が多いのに対し、コニキビダニは単独で寄生している。 |
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