魔法珠 〜Magic･Soul〜 12
12.
「…なんっもなかったわね」
「ああ、魔族どころか、襲撃すらなかった」
「肩すかし、ですね…
嵐の前の静けさってことでしょうか」
結局、目的地まで何もなく安全に着いたのだ。
「で、ここなわけね。
その地底湖ってどうやって行くの？ 入り口とかある？
あと、魔法珠を取り込んだ後、火山はどうするの？」
「そう、ですね。どうしましょう…」
「キアルス、あんた移動出来る術、使えないか？」
「ない…こともないですが、その場所をイメージしないと……。ああ、そういうことですか」
「そうだ、場所は俺がイメージ出来る。実際に行って来たんだからな。
で、火山のことだが、サラズィアが取っている間に俺とキアルスで抑える。抑えるだけでいい。
サラズィアが吸収したら、3人の力を合わせて魔法珠がある時と同じ様な状態にしてやればいい。
結界を内側に向けて張って、水系の魔法をかけてやればいいさ。サラズィアは魔法珠を吸収した後だし、キアルスは闇精霊だしな。俺も特殊な力だから何とかなるだろう。
それに魔法珠の封印を強力にするのは上からの命令なんだろ、キアルス。なら、その結果のフォローぐらい、闇精霊にしてもらわないとな」
「わかりました。一応、上の方達に頼んでみます」
そう言って苦笑する。
「それじゃあ、やりますよ」
――空間をねじ曲げ、我の思う場所へと転移させよ――
《移動》
一瞬、全てが闇に包まれる。次の瞬間、目の前にあったのは淡い光を放つ、澄んだ蒼と碧の魔法珠。この淡い光が火山の力を抑えているのだろう。
「なんとか成功しましたね。 次は火山を抑えないと。
そうですね。まず内側に向けてフルパワーで結界を張りましょう。水系の魔法をかけ始めたら、サラズィアさんは魔法珠を取って下さい。
吸収したら、結界に力を加えて強力にして下さい。そこで水系の魔法を更に強める。
いいですか？」
「じゃあ、決まりだな」
「じゃ、しばらくお願いね」
――風よ、闇の命にて、膜を張り巡らせ結界と成せ――
《薄膜結界》
――水よ、その姿を変え結界と成せ――
《絶対零度》
二つの力が共鳴する。重なり合い、より強力な結界になる。
そして、ここからが大事である。
――水よ、風よ、闇の命にて、吹き荒ぶ嵐と化せ――
《水結吹雪》
水が凍ってゆき、雹の吹雪になる。
――水よ、全ての熱を無と化せ――
《水凍結》
空気中の熱が一気に冷えていく。
「ちょっと寒い…」
「いいから早く！
長くは保ちませんよ！！」
「わかってるって」
そう言って、魔法珠の方へ歩み寄る。
片手に一つずつそれを手に取る。2つが同時にペンダントを通して、吸収される。
そして、まずは結界の強化。
――光よ、光の命にて、全ての力を強化させよ――
《光解放》
次に、本当の目的を遂げようとする。
――水よ、風よ、光の命にて、吹き溜まる熱を抑えよ――
《冷凍風》
そうして、全員が術を止める。
「じゃあ、最後に結界の持続の術を。
全ての力を集めて下さい。私がやります。」
魔力をキアルスに送り込む。
――ここにある力を強め、その力を持続させよ――
《全増幅》
「これで、当分は大丈夫だと思います。
しばらく待っていて下さい。上の方に連絡してきます」
「ちょっと待て、キアルス。ここは冷えるんだ。
先にあたしらをさっきの場所に戻してからにしてくれ」
「俺もこれには辛いものがある。お前は感じないのか？
頼むから戻して欲しいんだが」
そう、ここはさっきの術のせいでひどく冷えている。寒くてしょうがないのだ。
「そう、でしたね。すいません。
まずは戻りましょうか」
《移動》
再び、視界は闇に包まれ、そこに現れた風景はさっきの場所だった。
「それじゃあ、ちょっと行って来ますね。
魔族には気を付けて下さい」
キアルスは、元の姿に戻った途端、すっと消えた。
「おい、サラズィア」
リアールが言葉を投げかける。
「平気なのか？ 魔法珠を5つも吸収して。
どこか調子悪いところとかないのか？」
「うーん、それが全然平気なんだよなぁ。
それどころか、魔力が増して、なお元気って感じ。
これも選ばれた特典かもな」
「いや、特典ってのとは違うだろ。
ただ、選ばれたってのは間違ってなさそうだな。でも、調子が悪くなったらちゃんと言えよ。
キアルスなんか、責任感じたりする奴だしな」
「ああ、ありがとな」
タイミング良く、その場にキアルスが戻ってくる。
「なんとか、頼んで来ました。これでここは大丈夫でしょう。
問題は最後の魔法珠ですね。全くわかりませんし。
それに今度こそ、魔族は来るでしょう。来ないということはまずありえないと思います。
最後の魔法珠のある場所が決着を付ける場所になりそうですね。
今まで以上に気を引き締めてかからないと」
さて、最後の魔法珠はどこにあるのか。
旅は終わりへと近づいている。
リアールと区別しようとしたら、サラズィアの口調が女っぽくなってしまった…
後半の方が全体的に短いのかな……？ それとも1つの章が大きくなったのか…？
10と5じゃ半分だからなぁ… 数の差が気になる……
もう、かなり終わりに近いですからね…
さあっ、次だ！！
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