魔法珠 〜Magic・Soul〜 11
11.
「あーあ、もう さいってー。
魔法珠の手がかりはなかなかつかめないし、あたし達狙ってくる奴らもたいしたことない奴ばっかり。ストレス解消にもなりゃしない」
相変わらず愚痴をこぼしてるあたし。
「だから…ストレス解消って……。そんなことでストレス解消しないで下さいよ」
闇精霊のわりにはまじめなことを言うキアルス。
「確かにいくら何でも手応えがなさすぎる。魔族の1匹や2匹ぐらいは出てこないのかよ。何なら10匹や20匹でも構わねーのに」
「2人ともいい加減にして下さい。
旅は安全な方がいいでしょう」
「スリルがない!」
と言ってのける。間髪入れずに同時に言っていた。
あたしもリアールもそんな性格ではないのだ。
「命令してる奴がわかればそいつをどうにかすればいいだけなんだがな」
「そうですね。でも、どうせ魔法珠を探してる間に向こうからやって来ると思いますよ。
ところで、リアールさん。他の魔法珠について何か知りませんか?」
「魔法珠…か。
これ以上は……、いや、確か地底湖のどこかに水と風の魔法珠があると聞いたことがある。火山だ。
2つの力を合わせて火山の噴火を抑えていると聞いた」
火山……。でも火山なんていくつもある。全部を調べるには……、いや、地底湖のある火山を選んで。それでも10ぐらいはあるだろう。どうしたら…。
「方法がないこともない。だが、時間がかかるかもしれない。術の力にも比例するがな。
強い魔力だけを追い求める。
そうだな、幽体離脱に近いものだ」
念じて、魔力をリアールに送ればいいらしい。そのかわり、術を使っている間はリアールは完全に無防備になるらしい。
しかも魔力をリアールに送っているので、何かあってもあたし達は術を使うことが出来ない。と、いうより、使ってしまえばそこで、リアールの術は途切れてしまう。もちろん剣では攻撃出来るのだが、そちらの集中をおろそかにすれば逆にやられる場合もある。
つまり、かなりの覚悟なければ無理である。
「で、やるのか? やらないのか?
敵が来たときにはおまえら2人の剣の腕だけで戦わなきゃならない。魔力の意識を逸らせば術が途切れる。
両方をやる自信がなければ辛いぞ。いい加減、敵も本腰を入れてくるだろうし」
確認するようにリアールが聞いてくる。
「やるさ、もちろん」
自信満々に答えるサラズィア。
「世界中を回るより、よっぽど楽ですし。
実際、私達は強いですからね。
ただ、魔族が出てくれば剣では倒せないので、時間稼ぎしかできませんが。その時は、なるべく早く戻ってきて下さいね、リアールさん」
「おまえら以外から出た言葉なら呆れてるぜ。
早く見つけられるかどうかは俺達3人の魔力の大きさによって決まるが、まあ、かなり早く見つけられるだろう。
俺の体の方も頼むぜ」
そう言って、呪を唱えはじめる。
――全ての源となりし力よ、我が意識を開放させよ――
《精神剥離》
サラズィアもキアルスも魔力を送り続ける。
当然のごとく現れる、いくつもの殺気。これだけ対応が早いなら、魔族だろう。
剣では倒せない。術が成功するまでの時間稼ぎをしなくては…。
「キアルス」
「わかってます。
この波動なら下級魔族でしょう。中級魔族も少々混じってますね。
あくまでも、時間稼ぎなんですから、身を守ることに専念して魔力を送り続けましょう」
「ああ。魔力が使えるようになったら、このあたしにケンカを売ったこと、後悔させてやるぜ!!」
そう言って、リアールを守るように立ち上がる。
そして、それが戦闘開始の合図となった。
剣を抜き、構えて魔族達を牽制する。当然、この剣には、リアールの術をする前に、魔力を宿してある。今、魔力を送り続けていても、それには関係ない。
物理攻撃なら、いくらでもガード出来るし、相手が近寄ってくねから、ダメージも与えることができる。しかし、魔法攻撃は威力の弱い物しか剣では無効に出来ない。
(護りの魔法もかけておけばよかったかもしれないな……
ま、過ぎたことはしゃあないか。
とにかく、守りきる!)
剣だけで下級魔族を倒し続けて随分たった頃。
あたしは何か、…そう、しいて言うならば、直感…、を感じて、その方向に振り向いた。
(魔力弾…!
そうか、向こうの方にいた中級魔族! 下級魔族随分と倒したからなぁ。
でも…剣じゃあ防げない。どうすれば……)
――闇よ、我らを護る結界を張れ――
《瘴気隔離》
魔力弾が瘴気で作られた結界に吸い込まれる。
「…リアール、いいところをもっていくじゃない。
それより場所はわかったのか?」
「ああ、見つけた。後で言う。
それよりも魔族どもをなんとかしないと」
「そのまま結界を張っていろ。
あたしが大技一発でぶっ飛ばしてやる!
魔法が使えりゃ、こっちのもんだ。今までの分、きっちりお返ししてやる!!」
――光よ、闇よ、光の命にて、その力等しく合わさりて全てを消滅させよ――
《破滅降臨》
一瞬の後には、魔族は全て消え去っていた。中級魔族は何体か、逃げたみたいだったけど。
「中級魔族が出てきたということは、かなり本気になってきてますね。
リアールさん、水と風の魔法珠の場所は?」
「ああ、南に15キロ程だ。
向こうに着いた時に上級魔族が出てくる可能性もあるな。もしかしたら、命令した奴がいるかもしれないし。
とにかく、気を付けていかないとな」
「よし、ちょっと遠いけど行くぞ!」
というわけで、新展開です
サラズィアとリアール、あっさり意気投合しちゃいましたね…
本来女だったキアルスも、全然変わらなかったりして…
次ってどうなるんだっけか……? (←自分で作って忘れた…)
でもまあ、お次をどうぞ
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