「ダイ・ハード3」「ピアノ・レッスン」「ジュラシック・パーク」の共通点は?
答えは「マザーグース」 (新聞記事)
「ダイ・ハード3」「ピアノ・レッスン」「ジュラシック・パーク」…大ヒットしたこれらの映画には,意外な共通点がある.せりふなどに英国の伝承童謡のマザーグースが引用されていることだ.
大阪の高校で英語を教えている鳥山淳子さん(35)は,映画の中にマザーグースを探し続けて十年.
百七十六本の映画から見つけた八十六編のマザーグースを本にまとめた.
「ダイ・ハード3」のジョン・マクレーン刑事は,爆弾マニアのサイモンから,三十秒以内に電話番号を当てなけれは爆破すると脅される.
「セント・アイブスヘ行く途中,七人の奥さんを連れた男に出会った.
どの奥さんも七つの袋を持っていて,どの袋にも七匹の猫がいて,どの猫にも七匹の子猫がいた.
子猫,猫,袋,奥さん,セント・アイブスヘ向かったのは全部で何人?」
そしてサイモンは「おれの電話番号は555.残りの番号はなぞなぞの答えだ」と言う.
このなぞなぞ部分がマザーグースからの引用で,答えは「一人」.
マクレーン刑事は「555・0001」をダイヤルして難を逃れた.
鳥山さんとマザーグースの出あいは.一九八六年にさかのぼる.
夏休みに訪れた英国で,子供向けの常識テストを買った.
解き進むうち,思わぬ難問にぷつかった.「月を飛び越えた動物は何ですか」.
答えは「雌牛」.
理由がわからない.
そのうちマザーグースからの出題らしいと気がついた.
問題を解きたい一心で本やテープを集め始めた.
ある日,テレビで「風と共に去りぬ」を見ていて,あっと思った.
レット・バトラーが娘に向かって聞き慣れたフレーズをしゃペっていた.
「パパ,どこへ行ってたの」「おまえをくるむ毛布を探しに行っていたのさ」
「パイ・ペィビー・パンティング」というマザーグースの子守歌からの引用だった.
映画好きだったこともあり,仕事や育児の合間にのめり込んだ.
せりふにそのまま,あるいはパロディーとして出てきたり,音楽に使われていたり…….見た映画は軽く千本を越えた.
全国の愛好家でつくる「マザーグース研究会」のメンバーの力も借りた.
鳥山さんは「日本のわらべ歌が子どもの世界にとどまりがちなのに比べて,マザーグースは英語圏で新聞や雑誌の記事など,大人の世界にしょっちゅう顔を出す.
その奥の深さは驚くばかりです」と話す.
出版された本,「映画の中のマザーグース」は歌をアルファベット順に並べ,その場面を再現するとともに,引用の意図や背景を解説.巻末には映画別に発見者や用法を並べた一覧表もある.スクリーンプレイ出版.千三百円.
朝日新聞:1996.10.26 (21) 家庭欄
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