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「初めての」


幼い頃
転々としていると
言葉をなくしてしまう
自分の言葉を

故郷がわからない
どこを歩いてきたのか
言葉は語ってくれない
結構、寂しいものだ

思春期を
閉ざされていると
言葉をなくしてしまう
自分の言葉を

自分を話せない
相手と何が違うのか
言葉は語ってくれない
これは、辛いものだ

だから
言葉を探し始めた
自分が誰だか知らせることのできる
自分だけのものである言葉を

だけど
自分だけの言葉は
自分の本当のこころを
伝えてくれない

本当に欲しいのは
自分なのか、言葉なのか、こころなのか
世界の中の孤島にひとりきりで
言葉を岩に刻んでみても

それで今は
みんなの言葉を探している
世界を故郷にしたくて
自分を伝えたくて

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