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「冷たいね」


バックミラーに
夕日が暮れて
君が明日の顔をする
置いてきぼりをくわないように
僕はアクセルを踏み込む

夕闇に紫のドレス
目に映らないまま
踊っているね
胸に蘇るこの感じ
君に伝わるだろうか

十月になると
鈴音のように
草が鳴り出す
君の胸の上で
僕が溶けてく

ワイン色に
照らし出された
ふたりの夕暮れの街
何にも変わらないようにと
僕はアクセルを踏み込む

そっぽを向いたままで
目に映るものを全部
記憶にする君
呼び覚ましてよふたりのこと
稲妻が飛び込んできた

雨が降り出すと
消えていく心が
突き刺してくる
せめて君の中に
僕を残していて

十月の雨は
冬の顔をして
とても冷たいね
曇ってくガラス
君といるのに

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