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「下弦の月」


下弦の月を見ていると
まあまあ
まともな生き方など
しない方が良いように思う

自己中心で良い
気まぐれなのが良い
楽しくしているためだもの
無理はしないのが良い

アスファルトにうつ伏せて
鳴きそぼる蝉時雨
時代が悪かったのだ
それだけのこと

成功した人は妬ましく
顧みられないことはやるせなく
そういう焼け付くような気持ちでさえも
酒の肴にちょうど良いではないか

こだわりとわだかまりを捨てると
君の指の白さの波が
鍵盤を揺らしているような
ハーモニクスを感じる

下弦の月は鮮やかに
ボトムラインを支えながら
か細い光の下で
柔らかな心が溶け合う

僕の旋律は
無限に上昇し続け
更に複雑に高めあいながら
新たなる展開を迎える

肩の力を抜いて
心の感じるがままに
そうしてもきっと
保たれるから

張りつめて
追いすがらなくても
生きている証くらいなら
転がっている

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