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「解放の翼」


抗うことを諦めない
虐げられた魂の大樹幹から
絞り出された樹液だけが
歴史の芳香を放つ

大地の呪縛から切り離されて
大空の3次元を舞い
無限軌道を描く
自由なる魂の主翼

両足で踏みしめるものをなくして
初めて大地が母であることを知る
メビウスをなぞることによって
抱かれている実感がある

恨むことも
憎むことも
純粋な怒りさえも
ここに来れば意味がない

思い出にキスをすると
唇の開いた形の向こう側に
ぽっかりと新しい空間が現れて
もう一人の自分へと誘なう

足りないというのなら
いくらでも証明して見せよう
やり遂げるだけの忍耐と努力を
既に幾度も重ねたのだと

大空と大地は
役割を入れ替えて
大空に産み落とされ急速に育まれた魂を
今度は大地が受け入れようとしている

たとえばこれから死ぬのだとしても
それは死ではなく解放である
この魂の航跡を見つめる
同胞達の喜びの声

人は皆同胞である
生命は皆同胞である
若さは時にわざと
正しいことを選ばないけれど

飛び立つのに理由は要らない
しかし大地に帰るのには
若い魂であればあるほど
少しばかりの言い訳がいる

生きて帰れば
歓声と抱擁に迎えられる
そして死ねば
後に続く者を確信できる

これほどの幸福
自由なる魂の主座
とうとうやり遂げたのだ
これで悔いはない

さあ行こう
新しい大地へ
それとも帰るのか
母の懐へ

どちらでもいい
両方なのかも知れない
とにかくあそこには待っている
素晴らしいものが

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