「過ちは 繰り返しませぬから」 そう刻まれている 原爆の地に 厳粛な言葉が 流されても 白い鳩の群が 舞い集っても 人々の涙と祈りが 折り重なっていっても 数億キロトンを越える核が 地上を覆い尽くしているのです 今この星の支配者は 私達などではなく 鉛の中にいる あの量子力学なのです 奪命者達の囁きに彩られて 五十一年目の彼の地の上には 奇妙な冷気が流れています 肌を焦がす冷気が あの日と変わらぬ想いが 半世紀を経てもなお 残っているように思えます 技術は進み生活は変わっても 人間がそのままであり 志がそのままであり そしていったいこの私には 何ができるのでしょうか いにしえと変わらず飯を食い いにしえと変わらず悲しみ いにしえと変わらず恋をする この私にもできることがありますか 今はまだ答えは見えはしません けれどもしも平和への行進が始まるのなら そしてそれを妨げんとするものとの 避けがたい戦いがあるのなら 決して死なないようにして 陣列に加わりましょう 死なないことが唯一の勝利である そういう戦いでなければ 私は嫌なのです それまで私は いつものように飯を食い いつものように笑い いつものように歌を唄いましょう 友と冗談を言い合いながら 洗濯物など干しながら ボーっと空を眺めながら 溢れる汗をぐいぐいと拭いながら その時を忘れないようにしていましょう 溶解されていった魂達に誓うことは たったのそれだけですけれど 歴史が生きるその場所に 私は立っているのです 人を殺さないこと 人を殺させないこと あなたはただそれだけを 考えていて下さいませんか?