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車のシートに身を沈めて シートベルトをかけて 昨日のことを考えていると 呼吸に合わせて 留め金がギシギシと 音を立てた 生きるってことは 軋み続けることなんだろう 聴診器の向こうから 関節や筋肉の 軋む音を聞いたとき 感じたことは ただの苦しみでも まして喜びでもなくて 猫が脇の茂みから飛び出して 車の前を駆け抜けていく 子猫が残っていないのを確かめて 車を走らせ始める この軋む音は 祈りなのかもしれない