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「天井を踏む」


二段ベッドの上の段
寝っ転がるとすぐそこに
いつもは遥かてっぺんにある
天井が見えた
コンクリートかな
ザラザラの肌
この前こいつを間近で見たのは
いつ頃だったろう
少し楽しくなって
両足を天井の方へ伸ばしてみる
ううん とどかない
今度は腰を浮かせて
よいしょ まだだめ あと数センチ
それなら腰に両手をあてがって
背中を持ち上げてもう一度
うんしょっと よし 余裕があるぞ
恐る恐る 裸足の裏を近づけて

僕は今 天井を踏む

冷たくて 案外滑らか
不思議な感触
天井を踏みながら
天井を見下ろす
下から上を 見下ろしている
上と下 下と上
あれ? そういえば
床が見えないぞ
いつも床を踏んでるときも
天井は見えなかった
そうか
僕らは うつむいて歩いてるんだ

ああ疲れた
裸足の両足を 天井から離すと
重力を感じた
この疲れが癒えたとき
また天井を踏んでみようかな

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