「沈黙のメモリー」電子書籍版の解説

沈黙のメモリー  本編「沈黙のメモリー」(The Silent Memory) は石川県の地域雑誌《月刊北國アクタス》(北國新聞社刊)の1995年1月号から12月号まで連載された中編小説で、「空白のララバイ」に続く加州探偵事務所もの第2弾です。「空白のララバイ」と同じく、1回につき400字詰め原稿用紙に17枚という長さの制限があったので、雑誌掲載時には、かなり長さを調整しました。もちろん、連載小説らしく、最後に「ヒキ」を持ってくるように、構成を考えました。

 時代設定の大半は1994年で、舞台設定の大部分は石川県(とくに金沢市内)です。「空白のララバイ」では、加州探偵事務所に勤める雇われ探偵、寺田幸之輔の一人称叙述スタイルで物語が進行しましたが、「沈黙のメモリー」では、スタイルを寺田の一人称叙述と、副主人公の巻田三蔵の三人称一視点叙述を交互に持ってきました。季節も夏にしました。

 結末のある場面に著者自身も不満が残っていたので、電子書籍化するにあたって、大幅に書き直しました。電子書籍化しているときに、“インターネット”という言葉が出てきたときには、本当に驚きました。

 連載から20年余り経って、金沢では新しい駅舎はできるし、北陸新幹線は通るし、観光客は多くなるし、いくつかのレストランは閉店するし、金沢大学は移転するし、ずいぶん変わりました。電子書籍版を刊行するに当たり、編集面では、漢数字をアラビア数字に変えたり、明らかな間違いを訂正したりしたぐらいで、ほとんど変えていません。1990年代の金沢を懐かしく思いながら、電子書籍版を編集しました。(著者)

(c) 1995, 2017 by Jiro Kimura

http://www.amazon.co.jp/dp/B073TK6PJD
価格は500円です。 (2017年7月10日)



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