「北日本新聞」平成8年5月9日(木)社会2面

アルコ−ル依存症【開放病棟で一貫治療】


富山市民病院精神科神経科 患者の不安を解消

 富山市民病院の精神神経科は五月中旬から、アルコール依存症の入院治療を、入院から退院まで一貫してかぎの掛からない開放病棟で行う。通常、入院当初は閉鎖病棟で治療しており、同病院によると一貫した開放病棟での治療は北陸で初の試み。患者の治療に対する不安を軽減することで、少しでも早い段階で入院治療を受けてもらうのが狙いだ。

 アルコ−ル依存症は飲酒が習慣化し、自分ではコントロールできなくなるもので、心身に影響を与える。近年は女性や若者、高齢者の患者が急増している。
 同病院では、週一回の外来に三十〜四十人が訪れ、常時十人ほどの入院患者がいる。入院治療は三カ月の社会復帰プログラムを組み、一カ月は閉鎖病棟、二カ月は開放病棟で治療をする。断酒して体を治すだけでなく、家族とともに今後の生き方を考えてもらうことを目標としており、カウンセリングや内観療法を重視している。
 プログラムはうまく機能しているものの、閉鎖病棟に対する不安が原因で、重傷になるまで入院しない患者が多く、効果的な治療を行う上で大きな課題となっていた。幻覚などの重い禁断症状を除き、入院時から開放病棟で治療することにより、患者の入院に対する不安を解消し、早期治療を目指す。
 同科の吉本博昭部長は「現在、入院中の隠れ飲みはほとんど見られず、相当な重症でない限り開放病棟でも治療できる。自分の力で治す、という気持ちも強まるのではないか」と話し、「家で悩んでいる患者は早めに相談してほしい」と呼びかけている。