意味があるとすれば、それは、その辛さを体験した者にしか書けないものを書き、同じ思いをしている子供たちにメッセージを届けることではないか)と思えるようになったのです。小学生くらいの子供には、親によって与えられる家庭環境を自ら改革したり、そこから脱したりする力は殆どありません。ただその中で悩み苦しむばかりです。しかもまだ社会的知識に乏しいこの頃は、(自分の家だけがどうしてこうなのだろう)とか、(自分だけがどうしてこんなに不幸なのだろう)と感じたり、またある場合には、(お父さんが暴力をふるうのは自分が何か悪いことをしたからではないか)と自分を責めたりして、一人幼い胸を痛めるものなのです。しかも誰に言われずとも、普段の母親の態度などから、家の中のもめごとは〈絶対に外に漏らしてはいけない秘密〉のように感じるようになっているのです。だとすれば、自分ではどうすることもできない現実を前に、子供がどうして今ある自分の生を肯定し、自分のこれからの人生に希望など持つことができるでしょうか。そう感じた私は、これまで一度もお話など書いたことがないという事実を無視して、無謀にもそのコンクールに挑戦し始めたのです。ただひたすら、そのメッセージが養護施設の子供たちのもとに届けられることを願って…。
ところが三ヶ月程かかってやっと出来上がってみると、コンクールの規定の枚数を大幅に超えていることがわかりました。多少縮めたところで規定の枚数には程遠い上、どの部分も必要に思えて削れる箇所など見当たりません。こうなっては応募をあきらめるより他
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