鹿児島県砂利採取計画不認可処分取消裁定申請事件(判例時報1692号43頁)
判例時報という判例雑誌がある。その中から、たまたま目に付いた事例を紹介しよう。
甲会社が海砂の採取事業を行うために、土木事務所長に対し国有財産法の砂利採取「許可」申請と砂利採取法の砂利採取計画の「認可」申請をした(H11/3/2)。(砂利採取にはこの二つの許認可を必要とする。本件の問題はここにある)
そうしたら、土木事務所長は、H11/4/7付で不許可処分と不認可処分をした。
砂利採取不許可については法律に不服申立の規定がなく、また不許可処分にも不服申立方法の教示がなかった。それに対して、砂利採取計画不認可処分については、その処分通知書に不服申立方法の教示があった。砂利採取不許可処分の理由は、県砂利採取要綱で採取資格を事業協同組合員に限定していたため、甲会社が組合員でないことがその理由とされていた(甲が組合員でなかったのは、組合から加入申込みを拒否されたからであった)。そして、不認可処分の理由は、「不許可処分がなされているから採取計画に従った採取は実施できない」という理由であった。
この事実関係に照らすと、本件は、砂利採取資格を組合員に限定して砂利採取不許可処分をしたことに一番の紛争の根元であると考えられるが、手続的には砂利採取「不許可」処分を争う手続は規定されていないから、砂利採取計画「不認可」処分の取消を求めるしかないと考えられた。そこで、甲は、不許可処分の違法を大きな理由として砂利採取計画不認可処分の取消を求めた。
そうしたところ、公害等調整委員会(本件は裁判所に訴訟を提起したのではなく、公害等調整委員会に裁定を申請した。訴訟に代わる手続である)は、砂利採取不許可処分は行政訴訟手続あるいは行政不服審査手続で争うべきであって、砂利採取不許可処分についての不服申立方法の定めがなくても関係がないから、砂利採取計画不認可処分を争うことはできないとした。
これはひどい話である。甲が不服申立をする時点では、砂利採取不許可処分を争う方法がとれるかどうかは当事者にはおよそ分からぬことであって、それを後になって裁判所や公害等調整委員会が砂利採取不許可処分を争えと言って請求棄却したのである。ところが、甲が改めて砂利採取不許可処分に対して不服申立をしようとしても、それが行政庁や裁判所によって認められる保障はないばかりか、すでに不許可処分から時間が経過しており不服申立期間も徒過しているため、いまさら不許可処分を争うこともできない。国民に不親切な裁判所の典型である。
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